2005年(平成17年)6月29日
「電子政府構築計画」(2003年(平成15年)7月17日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定。2004年(平成16年)6月14日一部改定)に基づき、以下のとおり、通信機能強化システムの業務・システム見直し方針を定める。
外務省は、本見直し方針に沿って、通信機能強化システムの業務・システムについて、必要な見直しを行い、その最適化に取り組むものとする。
本方針が対象とする業務・システムは、外務省本省と在外公館、在外公館相互における公電の起案および送受信に係わる公電業務とし、具体的には、「起案業務」、「決裁業務」、「発電業務」、「来電業務」、「公電検索」及びこれらの業務を処理する通信機能強化システムとする。
通信機能強化システムについては公電の安全性を絶対条件としつつ、経済性、効率性の改善を図ることを目的に、2000年度(平成12年度)より新システムに関する調査・研究を開始し、基本設計、詳細設計及び開発、一般競争入札により機器調達を行い、2003年度末(平成15年度末)に新システムに移行し、2004年(平成16年)5月末に運用を開始した。
業務・システムの最適化に当たっては、第3章1中の1)~4)の成果を踏まえ、更なるシステムの適正化、費用対効果の創出、業務効率化を目標として、以下の5項目を基本理念とする。
(1)業務の効率化・合理化
(2)公電の送受信に係る安全性・信頼性の確保
(3)利用者に対するシステムの利便性の維持・向上
(4)情報通信技術(IT)の進展に応じた、システムの効率的・合理的な整備・運用による経費削減
(5)技術動向等の環境が変化することを念頭に置いた、システムの柔軟性・拡張性の確保
外務省は国際場裏において、我が国の政治、経済、安全保障上の国益を最大限に図ることを任務としている。その任務遂行の根幹となる、本省と在外公館、在外公館相互における公電の起案および送受信に係わる公電処理業務は国家安全保障に直接係わることから、機密性が高い大量の公電を安定かつ迅速に処理するために、通信機能強化システムが開発された。
通信機能強化システムは旧システム(レガシー・システム)(1996年度(平成8年度)に運用を開始)の問題点、改善すべき点を踏まえシステム開発を行い、2004年(平成16年)5月から新システムでの運用を開始した。
主なシステム改善及び刷新効果測定結果は以下のとおりである。
1) 特定の端末において行っていた公電処理業務を、担当官机上のパソコンを利用して行うことを可能とし、また、写真、図面等の電子データでの送付を可能とした。これにより、例えば査証審査に係る事務においては、システムの利用率が約60%から95%に上昇し、迅速な査証審査が実現した。
2) 担当官机上のパソコンに公電検索機能を提供したことにより、政策決定に係る過去経緯の調査や他部局動向等の迅速かつ適切な情報収集を可能とし、政策決定の高度化を図った。
3) 本省システム分については、平成14年度に年間約15億円(事項別内訳は(1)本省電子計算機関係経費1,140,888千円、(2)通信機器整備関係63,141千円、(3)経常事務費の内90,512千円、(4)省内LAN秘匿化関係経費163,874千円、計1,458,415千円)であったシステムの運用経費を、2004年度(平成16年度)以降年間約8億円とし、約48%の経費削減効果を実現した。他方、在外公館用通信機器については、従来機器が買い取りであったこと、FAXを用いて行っていた部分については外務省ネットワーク経費全体に含まれていたことなどから、旧システムと新システムでは機器の構成、契約形態が異なり単純に比較することは困難であるが、平成14年度は1,288,616千円(買取経費については換算額にて算出)、導入経費等一時経費及び賃貸借経費を合わせて16年度1,230,526千円、17年度920,611千円であり、本省及び在外公館を合わせると、14年度では2,747,031千円、16年度では合計2,080,946千円、17年度では合計1,714,489千円である。
4) 2006年度(平成18年度)までに本省および在外公館に配置されている通信担当官35~40人の合理化を行う予定であり、2004年度(平成16年度)に17人、2005年度(平成17年度)も17人、計34人削減する効果を挙げている。
このように通信機能強化システムによる顕著な効果が上がっているものの、業務・システムに対する改善の余地は残っている。
例えば、公電の発電までに掛かる時間の大半は、決裁および協議に費やされており、紙による事務運用および多段階での決裁等が要因となっている可能性がある。
一方で、公電の情報量は漸次増加傾向にあり、公電の印刷処理に時間が掛かることで、印刷物がプリンタに放置されてしまうという事象が発生しており、このことは情報漏洩につながる恐れがある。また、システム環境の整備が遅れている在外公館への情報伝達については、手動による公電の送受信を行っており、誤送信等の危険性が残っている。
このような現状を踏まえ、外務省として政府全体における最適化計画方針との整合性をもって業務・システムの最適化を進めていくためには、以下の課題に取り組む必要がある。
まず、これまで以上に迅速かつ確実な事務遂行を実現するにあたっては、決裁方法および決裁段階の見直し等による公電処理業務の効率化および合理化の推進を図る必要がある。
また、セキュリティ機能の更なる強化により、公電の安全性と信頼性の確保に万全を期する必要がある。加えて、システムの処理速度等を改善し、利用者に対する利便性の維持・向上を図る必要がある。
さらに、システムの効率的・合理的な整備および運用を行い、一層の経費削減に努めるとともに、技術動向等の環境が変化することを念頭においたシステムの柔軟性・拡張性の確保を図る必要がある。
ア 決裁の効率化
公電の決裁および協議については、今後策定予定の府省共通の文書管理に係る最適化計画との整合性を図りつつ、紙による決裁事務を電子化し、ワークフロー機能を実現することにより、迅速な決裁事務運用を図ることを検討する。
その際、多段階におよぶ決裁階層の見直し、決裁権限の委譲など決裁の簡素化の可能性についても検討する。
イ 情報の整理と取扱いの見直し
外務省全体の情報のセキュリティ分類や取扱いの見直しの過程で公電に載せるべき情報及びその取扱いの変更の可能性を検討する。
ウ 他業務システムとの連携
公電処理業務と関連する他の業務システム(査証関連システム、会計関連システム、人事関連システム、文書管理システム等)との電子データ交換により、人手による情報転記作業と転記ミスの削減を行い、迅速な事務遂行の支援と業務時間の縮減を図る。
ア セキュリティへの配慮
公電は、外務省文書管理規則第8条に記載のとおり、サーバー上に作成され保存される電磁的記録が正本であることから、適切な文書管理を徹底し、セキュリティ強化を図る。
イ システムパフォーマンスの改善
公電処理業務に係る統計情報と通信機能強化システムの各種ログ情報をシステムパフォーマンスの改善に活用する。
ウ 公電システムのバックアップ機能の整備
大規模災害、テロ、人災等の不測の事態に対応するためシステムの地理的分散を伴う冗長化を図り、システムのバックアップ機能を整備する。
ア 通信機能強化システムの適用拡大
システム利用環境の整備を積極的に推進し、適用の拡大による利便性の向上と公電処理業務の効率化を図る。
イ システム処理速度の向上
アプリケーションやサーバー等ハードウェアを見直すことにより、一層のシステム処理速度の向上を図る。
ア 資産の有効活用
他システム(ユーザー認証、公信システム、文書管理システム等)との機能の共通化・共同開発・共同利用について、通信機能強化システムからの提供を検討し、重複投資の抑制及び提供機能の高均質化を図る。
イ システム経費の削減
最新のサーバー統合技術やネットワーク技術等を考慮し、現状のシステム機器を見直して、サーバーハードウェアやネットワークに係る経費の削減の可能性を検討する。
なお、一般競争の導入を検討する。
最新技術動向の変化を把握し、通信機能強化システムへの導入を検討することにより、システムの柔軟性及び拡張性の確保を図る。
外務省ネットワーク最適化計画において検討される省内ネットワーク基盤を利用する。
上記のほか、業務・システムの見直しにおいて、最適化の効果を測定する機能を導入する等、継続的かつ自立的に最適化に取り組む仕組みについて検討すると共に、既存の法令、制度による制約が存在する場合は、関係法令、内部規程等の改正を行う。
また、「業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)」の別添3 「業務・システムの最適化に係る共通見直し指針」を踏まえ、見直しを行う。
本見直し方針を踏まえ、外務省情報化推進委員会の下、「業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)」に沿って、2005年度末(平成17年度末)までのできる限り早期に、通信機能強化システムの業務・システムの最適化計画を策定する。