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外務省独立行政法人評価委員会JICA分科会(平成23年:第1回)議事概要

1.日時

平成23年8月1日 14時~18時

2.場所

外務省893会議室

3.出席者

(委員)
井口武雄分科会長,南直哉委員長,青山伸一,縣公一郎,勝間靖,上子秋生,柘植あづみ,榛木恵子,吉田和浩の各委員
(外務省)
佐渡島志郎国際協力局長,植野篤志国際協力局政策課長,折原茂晴国際協力局事業管理室首席事務官,徳永博基考査・政策評価官室首席事務官 他
(JICA)
緒方貞子理事長,粗信仁理事,渡邉正人総務部長,岡村邦夫企画部長 他

4.議題

  1. (1)平成22年度及び第2期中期目標期間の業務実績の総括
  2. (2)第2期中期目標期間の業務実績に関する暫定評価
  3. (3)平成22年度業務実績評価

5.議事概要

(1)平成22年度及び第2期中期目標期間の業務実績の総括

 緒方JICA理事長より,22年度及び第2期中期目標期間の業務実績の総括及び東日本大震災や「アラブの春」を踏まえた今後の課題について説明が行われた。ポイントは以下のとおり。

  • 平成20年10月の統合から約3年が経過し,統合による成果・効果を実感する機会が増加した。技術協力と円借款,無償資金協力の組み合わせにより,事業の効果・成果を面的に広げることができるようになり,また,二国間ドナーのみならず国連機関,開発金融機関とも密接な関係を構築できるようになってきている。
  • こうした成果の背景には,統合後の不断の組織・業務の見直しがある。今年4月,ASEANに対する横断的支援強化の観点から,東南アジアの所掌部を1部体制とするなど,組織をスリム化した。現場機能の強化としては,途上国の現場により近いところに職員を配置するなど,在外への人員シフトを推進した他,現地職員の活用促進,経理業務の本部移管等に取り組んだ。また,現場の経験を体系化してより効果的な開発事業及び援助の実施に資するとともに,日本の知見を発信し,プレゼンスを維持していくことを目的に,研究所の体制を整備し成果を得た。
  • 業務面においては,政府の政策を着実,かつ,迅速に実施してきた。例えば,アフリカ支援ではTICAD IVの3本柱に沿った協力を実施。日本政府は,対アフリカODA倍増のコミットメントを前倒しで達成し,JICAも貢献できた。他に,アフガニスタン支援では,インフラ開発分野と農業開発分野を最重要分野として協力を継続しており,安全対策に配慮しながら,現在も58名が現地で活動している。
  • 今後の課題として,昨年末のチュニジア「ジャスミン革命」にはじまった中東・北アフリカ地域の「アラブの春」,そして,今年3月の東日本大震災は,ともに国際協力の意義やあり方を再考する大きな契機となった。
  • 中東・北アフリカ情勢については,急激な経済成長の一方で,大卒の失業率が20%を越えているなど,経済成長のプロセスにすべての人びとを取り込むことができず,また,経済成長の恩恵をすべての人びとに行き渡らせることできなかったことに課題があったと認識している。JICAが統合以来のビジョンとして掲げてきた「inclusive development」,すなわち格差のない開発の重要性を再確認すると同時に,困難に直面した。各国の安定に向けた再出発として,例えばエジプトでは選挙支援や新5ヵ年計画の策定支援など重要な協力を開始している。選挙支援については,先進国では日本だけに依頼があったものであり,これまでの二国間協力に基づく信頼感の表れと理解しており,中東・北アフリカ支援については,様々な工夫を行いながら取り組んでいきたい。
  • 東日本大震災をうけて,我が国に開発途上国を含む世界各国から数多くのお見舞いのメッセージや支援が寄せられたが,これはこれまでの国際協力を通じて培われた,各国との良好な関係の賜物と考えている。JICAも救援段階,復興段階において被災地で協力し,海外で得られた経験やネットワークが日本国内でも活用できることを痛感した。さまざまな面で物事が深く関連する相互依存の世界では,国内と海外の問題を必ずしも別々に取り扱う必要はなく,解決のための方策を一元的に検討することも可能であり,JICAは,国内と海外をつなぐ重要な役割を期待されていると理解している。

(2)第2期中期目標期間の業務実績に関する暫定評価

 事務局作成の資料を基に行った議論を踏まえて,事務局で改めて案を作成し,第2回分科会までに各委員にコメントを照会することとなった。議論の主な内容は以下のとおり。

(イ)業務運営の効率化
(委員)
国別のローリングプランは,独法評価に当たっての先進的な取組として,ぜひ進展させてほしい。
(JICA)
国別分析に今後本格的に着手し,それをベースに支援のプログラム化を進め,ローリングプランを作成していく方針。
(ロ)国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上
(委員)
各援助手法を一体的に運用したプログラム単位での目標を設定し,次期中期目標策定に当たっては,それらプログラムを達成するための取組を中心とした計画枠組とすべき。
(JICA)
各独法を横並びで評価する観点から法定の目標設定・評価枠組も必要と理解しており,また,継続性の観点から従前と全く異なるものとすることにはならないかもしれないが,他方,開発援助の成果を考えるに当たってプログラムの視点は重要であるため,検討していきたい。
(ハ)財務内容の改善に関する事項,施設・設備に関する計画,人事に関する計画
(委員)
現場主義として,邦人職員のみならず現地職員の採用や指示命令・報告系統の更なる明確化等に包括的に取り組むべき。

(3)平成22年度業務実績評価

 冒頭,徳永官房考査・政策評価官室首席事務官より,独立行政法人の業績評価に当たって,業務・マネジメント等に係る国民の意見募集を行い,その結果を評価に適切に反映させるべく,22年度JICA業務実績報告書に対するパブリックコメントを外務省ホームページにて募集したが,寄せられたコメントはなかった旨報告。

(イ)部会活動報告(コンプライアンス部会)

 青山委員よりコンプライアンス部会の活動及び部会評価コメントについて,報告・説明が行われた。

(ロ)小項目(32項目)の評定

 評定について審議した結果,分科会の第一次案として,イが0項目,ロが6項目,ハが24項目,対象外が2項目となった。審議における委員からの主なコメントは以下のとおり。

  • 事務手続きの効率化について,「随意契約等見直し計画」の達成に向け,競争性のない随意契約の見直しや一者応札・一者応募について不断の取り組みは必要だが,全ての契約を機械的に競争入札に移行するだけでは,行政コストも含め非効率化を招く恐れがある。競争を行うべき契約について,一定期間経過後に見直しを行うことも必要。また,業界の人材(受注者)不足も1者応札の原因となっている。状況を踏まえて契約方法を検討すべき。
  • 経費の効率化については,業務経費や一般管理費等,数値目標を大幅に上回った実績である。それぞれの独法の役割は千差万別であり,JICA単体で見ると相当改善しており,削減努力も評価しないと,独立行政法人制度の本来の趣旨に反し,法人の設置目的を達成できなくなってしまう。
  • JICAの職員の給与水準について,削減実績は評価できるが,今後の取り組みに加えて,十分な説明を求める。
  • 統合効果の発揮に関し,国別分析を通じ,3スキームの戦略性を高めていくことが重要。併せて,国別分析を活用した開発途上国や他ドナーとの現場での議論を進めていくことが必要。
  • 広報については,受益者に対する広報や現地ジャーナリストとの連携等,日本国民以外に国際社会に対する広報も積極的に取り組んでほしい。
  • 事業評価のフィードバック体制を充実している点は,高く評価できる。
  • ボランティア事業の抜本的な見直しのうち,帰国ボランティアの活用等の取組は高く評価できる。
  • 国民参加支援について,18万人もの来訪者や,NGOとの連携取組の観点等から,地球ひろばの展示や説明は評価される。行政刷新会議等からの指摘にもきちんと反論すべき。
  • JICA研究所の成果は,他のR&D等の研究機関と同様に論文数等を指標とするのではなく,政策の実施機関として,政策形成にどの程度反映されているのか等とすべき。
  • 監査の充実として,府省評価委員会にコンプライアンス部会を設置しているのは他に例がなく,同部会に対するJICAの適正な対応は高く評価できる。
(ハ)中項目(23項目)の評定

 小項目評定の結果をもとに審議し,イが0項目,ロが3項目,ハが19項目,対象外が1項目となった。なお,異なる評定の小項目から構成されるNo.4(事業に関する横断的事項),No.8(国民等の協力活動)については,構成する小項目の各委員の評定を考慮して判断した結果,ロ評定となった。

(ニ)総合評価

 総合評価に盛り込むべきポイントに関し,事務局作成の資料を基に行った議論を踏まえ,第2回分科会までに事務局にて一案作成の上,各委員の意見聴取を行うこととした。

(4)最後に,井口分科会長より,長時間にわたる審議への協力に感謝する旨の挨拶があった。

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