
外務省独立行政法人評価委員会JICA分科会(第1回)議事概要
1.日時
平成21年7月29日 14時~17時45分
2.場所
外務省666会議室
3.出席者
(委員)
井口武雄分科会長、南直哉委員長、伊藤るり、上子秋生、榛木恵子、渡邉紹裕の各委員、柘植あづみ臨時委員
(オブザーバー)
手納美枝国際交流基金分科会会長代理
(外務省)
木寺昌人国際協力局長、須永和男国際協力局参事官、梨田和也国際協力局政策課長、若林啓史大臣官房考査・政策評価官他
(JICA)
緒方貞子理事長、佐渡島志郎理事、渡邉正人総務部長、岡村邦夫企画部長他
4.議題
(1)平成20年度業務実績の総括
(2)平成20年度業務実績評価
(3)21年度業務実績報告(補正予算分)
5.議事概要
(1)平成20年度業務実績の総括
緒方JICA理事長より、20年度業務実績の総括及び新JICAに対する内外からの期待に応えるべく進めている最近の取組及び今後の課題について説明が行われた。ポイントは以下のとおり。
- 統合直後から技術協力、有償資金協力、無償資金協力の3つの援助手法を一元的に運用する業務方法や組織体制による運営を開始するとともに、海外においても19カ国の旧JICA及び旧JBIC事務所を統合。幸いにして大きな混乱もなく、新JICAとしての最初の半年を着実に始動することができたと考えている。
- 新JICA発足にあたり、民間連携室や地球ひろば等を中心とし、国内における地方自治体、大学、民間企業、NGO等とのパートナーシップを一層推進。また、JICA研究所を設立し、国際的な開発に関する議論に貢献すべく、「平和と開発」、「成長と貧困削減」、「環境と開発/気候変動」、「援助戦略」の4つの重点分野を設定。海外の優れた研究機関等とのネットワークを拡大し、より質の高い研究の実施につなげるとともに、国際的な成果の発信を目指す。
- 世界的な経済危機に関し、アフリカにおいても経済危機の影響が顕在化しているが、先日のアフリカ開発銀行で行った講演等の機会でも、日本としてTICADⅣの公約の着実な実行に資するべく、機構も万全の取組を進める旨説明。一方、経済危機の影響が深刻なアジアにおいては、インドネシア、フィリピン、モンゴルへの金融危機対応の円借款及び技術協力を開始。
- オバマ政権誕生とともに新たな意義を持つようになったアフガニスタン・パキスタン支援については、3月に総理特使として訪米し、互いの最も得意な分野で協力を進めることで合意。また、世界銀行・日本政府共催の「パキスタン支援国会合」の成果を踏まえ、我が国ODAの実施機関としてしかるべく取り組む所存。
- 昨年10月には、ワシントンで新JICA設立記念シンポジウムを世界銀行と共催。また、米州開発銀行とは新たに業務協力協定を結ぶに至るなど、国際機関やドナーからの高い期待が寄せられていることを実感。日本国内の期待も高く、対アフリカ政府開発援助倍増や地球規模課題に対する指導力発揮が「骨太の方針2009」に盛り込まれたほか、21年度は約10年ぶりにJICA予算の減少傾向に歯止めがかかった。また、21年度補正予算(第1号)により、金融・経済危機への緊急支援等のための追加措置がなされたことも、機構に対する期待の現れと捉え責任感を持って受け止めている。
- グローバル化社会においては、経済危機や気候変動、感染症などの問題が特に途上国の社会的弱者に影響を及ぼすとともに社会不安や治安の悪化につながり、我が国を含む国際社会の平和と安定を脅かしうることを、新JICAとして深く認識。「全ての人々が恩恵を受けるダイナミックな開発」をビジョンに、人間の安全保障の視点を反映した取組を進め、組織・業務の効率化を行いつつも柔軟に現場強化を進めることで、援助の成果が確実に人々に届くよう、効果的な協力を行う所存。
(2)平成20年度業務実績評価
若林官房考査・政策評価官より、「独立行政法人整理合理化計画」を踏まえ、独立行政法人の業績評価に当たって、業務・マネジメント等に係る国民の意見募集を行い、その結果を評価に適切に反映させるべく、20年度JICA業務実績報告書に対するパブリックコメントを外務省ホームページにて募集したが、寄せられたコメントはなかった旨報告。加えて、梨田外務省国際協力局政策課長及び渡邉JICA総務部長より、評価委員会が、監事による監査の状況を踏まえ連携して評価を行えるよう、監事監査の進捗に係る補足資料につき説明。
(イ)小項目(30項目)の評定
評定について審議した結果、分科会の第一次案として、Sが3項目、Aが24項目、Bが1項目(「重要な財産の譲渡等の計画」)、対象外が2項目となった。審議における委員からの主なコメントは以下のとおり。
- 組織運営の機動性向上に関連し、本部事務所の移転が形式的なものでなく、名実ともにJICAとして円滑な業務の推進に資するように期待する。
- 事務手続きの効率化について、随意契約見直し計画は進捗しているが、形式的に競争入札等に移行するだけでなく、真に競争性の向上を図るように留意すべし。また、契約業務の質の確保にも留意が必要。
- 経費の効率化を進めつつも、事業の質の低下につながらないような取組が求められる。
- 情報公開・広報について、積極的な広報姿勢への転換は評価するが、引続き国民の評価についても検証し、理解を得られるよう、より一層努力することを期待する。
- 環境社会配慮について、環境社会配慮ガイドラインの早期一本化及び運用を期待するとともに、事業面での環境、気候変動案件についてより具体的な報告を期待。
- 民間連携室の設置について、市民参加協力と民間企業への対応にかかる役割分担及びリエゾン機能の強化が重要と思うが、どこにアクセスしても均質な対応が得られるよう、本部・国内機関の連絡体制の拡充に向けた取組を期待する。
- 重要な財産の譲渡等の計画について、計画した財産の処分ができなかった理由を評定に明確に記載し、今後は不動産市況等を踏まえ、適切なタイミングで処分すべし。
- 監査の充実について、海外におけるコンプライアンスの取組を進めていく必要あり。
(ロ)中項目(21項目)の評定
小項目評定の結果をもとに審議し、Sが1項目、Aが18項目、Bが1項目、対象外が1項目となった。なお、異なる評定の小項目から構成されるNo.4(事業に関する横断的事項)、No.8(国民等の協力活動)については、構成する小項目の各委員の評定を考慮して判断した結果、A評定となった。
(ハ)総合評価
総合評価に盛り込むべきポイントに関し、事務局作成の資料を基に行った議論を踏まえ、第2回分科会までに事務局にて一案作成の上、各委員の意見聴取を行うこととした。
(3)21年度業務実績報告(補正予算部分)
渡邉JICA総務部長より、補正予算に伴う中期計画変更に係る21年度業務実績報告における扱いについて説明。
(4)最後に、井口分科会長より、長時間にわたる審議への協力に感謝する旨の挨拶があった。