
外務省独立行政法人評価委員会
国際協力機構第1回分科会議事概要
1.日時
平成20年8月27日 15時~16時15分
※7月30日に、一部委員による事前会合を実施
2.場所
外務省893会議室
3.出席者
※[ ]は、事前会合のみの出席者
(委員)
井口武雄分科会長、南直哉委員長、縣公一郎、[伊藤るり]、川上照男、[新海尚子]、榛木恵子、渡邉紹裕の各委員、青山伸一臨時委員
(オブザーバー)
入江容子、手納美枝の各委員(国際交流基金分科会委員)
(外務省)
[木寺昌人国際協力局長]、渡邉正人国際協力局参事官、梨田和也国際協力局政策課長、[伊藤直樹国際協力局政策課長(当時)]、[柴田裕憲国際協力局無償資金・技術協力課長]、日下部国際協力局無償・技協課企画官、八重樫永規大臣官房考査・政策評価官他
(国際協力機構)
[緒方貞子理事長]、黒木雅文理事、佐渡島志郎総務部長、大部一秋企画部長他
(国際協力銀行)
岡村邦夫開発業務部長
4.議題
※[ ]は、事前会合の議題
(1)[平成19年度業務実績の総括及びJICAの統合準備状況について]
(2)平成19年度業務実績評価の取組及びODAを巡る現状について
(3)平成19年度財務諸表について
(4)平成19年度業務実績評価について
(5)第2期中期目標・中期計画の改定について
(6)業務方法書の改定について
5.議事概要(事前会合を含む)
(1)平成19年度業務実績の総括及びJICAの統合準備状況について
緒方JICA理事長より、19年度の業務実績の総括及び統合準備状況について説明。ポイントは以下のとおり。
- 就任以来取り組んできた改革により、「現場強化」が進み、現場に最も近い在外事務所において相手国ニーズを的確に把握し、そのニーズに即して事業を形成、展開する等、着実に力をつけてきていると感じている。
- 改革の進展に伴い、JICAにおいて「人間の安全保障」のアプローチが浸透、確実に定着してきている。この視点を基に、統合により、技術協力、有償資金協力、無償資金協力の3スキームを一体的にどう実施していくか。TICAD IV(第4回アフリカ開発会議)においても、人々の安全の確保と、それを継続・発展させるための経済成長の視点を併せ持つ、「人間の安全保障」を中心とした日本の支援の特色、方向性が共有され、アフリカ各国首脳や国際機関からも評価された。TICADのフォローアップは今後大きな課題。
- 昨年来の各国出張、ダボス会議等国際会議への参加の際には、アフリカ各国をはじめとする国内外の関係者、国際機関等からの新JICAに対する強い期待を受け止め、良い意味で緊張もしている。JICAは実施機関として、人間の安全保障の指針の下、現場のニーズにしっかり応えていけるかは大きな試練であり、確実な成果を上げることで期待を信頼に変えていく。
- 統合に向け、「質の高い援助ができる、国際的にも発信力のある組織」となるべく、業務の流れ、組織体制を検討してきた。組織・人事の骨格は固まったが、統合後も業務体制をモニタリングしながら進めていくことが肝要と心得ている。
- 統合の効果を先取りした試みとして、本年1月のダボス会議における「クールアース・パートナーシップ」にかかる政府発表を受け、JICA内に気候変動対策室を設置した。4月にはJICA・JBIC共同で「気候変動に対する取組の方向性」を発表した。また、新JICAの課題として、研究所の設立に向け、体制や研究領域を検討中である。水準の高い研究活動により、政策立案に寄与するとともに、対外的に発信していく。
- 本年からは科学技術協力により、日本と開発途上国の大学や研究機関が共同してグローバルな課題に対処する試みも開始する予定である。研究者の能力開発・人材育成と組織の設立が重要である。
- グローバル化した社会の中では、気候変動、食料危機の問題に見られるように、世界の国々と相互依存した密接な関わりがあり、日本の将来の安心・安全と繁栄も、他の国々との共存と共生によって成立する。新JICAとして、あらゆる人々に対して”Inclusive”に発展の恩恵を確保し、ダイナミックな形で将来を創るような開発に貢献していく所存。厳しい財政状況の中で、効果・効率性を一層重視し、役職員一丸となって新JICAを創っていく。
(2)平成19年度業務実績評価の取組及びODAを巡る現状について
八重樫評価官より、「独立行政法人整理合理化計画」等における、随意契約等入札・契約の適正な実施について、監事等による監査、評価委員会の事後評価におけるチェックに関する総務省からの連絡について説明。
渡邉外務省国際協力局参事官より、ベトナムにおける円借款事業にて不誠実又は不正な行為を行った株式会社パシフィックコンサルタンツインターナショナルに対する措置の実施について、また、佐渡島JICA総務部長より、JICA技術研修員受入事業における委託先である財団法人国際保健医療交流センターの不適切な経理処理の疑い及び第三者調査の実施状況について報告。
委員からの主なコメントは以下のとおり。
- 贈収賄は贈賄側及び収賄側双方の問題であり、ベトナム側における厳正な処分及び再発防止策の実施、ひいては腐敗防止に関する国連条約の批准等、ベトナム政府側に対して強く働きかけを行うべき。
- 本件のような事例により、ODA事業に対する国民の信頼を損なわないよう、しっかりと対応してほしい。
(3)平成19年度財務諸表
平成19年度財務諸表に関し、委員から特段の意見はなく、分科会として「意見なし」で合意された。
(4)平成19年度業務実績評価について
(イ)小項目(31項目)
評定について審議した結果、Sが1項目、Aが27項目、対象外が3項目となった。審議における委員からの主なコメントは以下のとおり。
- 業務運営の効率化について、業務の目的や性質により、競争性及び透明性を確保しつつ、適切な契約方式で実施すべきである。また、現地再委託を含む契約事務において、業務委託先や調達業者による不適切な経理処理及び不正行為の発生防止に十分留意すべきである。
- 効果的な事業の実施について、事業のアウトプットは十分説明されているが、更に開発途上国及び地域にもたらした具体的な開発効果の観点から説明することは、効果発現に要する期間等により困難な面もあるが、積極的に取り組むべきである。
- 広報について、発信・広報のねらいを明確化した上で、JICAにおいて成果を確認、検証するとともに、JICA事業が広く理解されるような対外的な説明を行うように努力してほしい。
- 研修員受入事業について、前期の取組を基にさらなる改善を図るべく、初年度である19年度中にいずれも制度の導入や見直し等を確実に行った。今後も、開発途上国の人材育成という目的の達成及び効率的な事業実施の観点から、JICA事業の中でも日本国内を現場として実施する事業としての特性も踏まえて、これらの制度を運営していくべきである。
- ボランティア事業について、協力隊等ボランティアの応募及び派遣人数が求人等雇用状況による影響を受け易いことに加え、ODA及びJICA事業にかかる予算が年々削減される中で、中期計画の目標としている協力の質的向上を果たしうるボランティア事業の適正規模のあり方について議論を深めることが必要である。その上で、引続き適格な人材の派遣に努めるべき。
(ロ)中項目(19項目)
小項目評定の結果をもとに審議し、Aが17項目、対象外が2項目となった。なお、異なる評定の小項目から構成されるNo.5(総論(イ)技術協力(法第13条第1項第1号)については、構成する小項目の各委員の評定を考慮して判断した結果、A評定となった。
なお、佐渡島JICA総務部長より、中項目No.2に関連して、入札・契約の実施状況及び入札・契約の適正実施確保のための仕組みについて、平成19年度監事監査意見の概要並びに調達に関する組織体制及び関連規程等について補足説明を行った。
(ハ)総合評価
内容について、委員から特段の意見はなく、文言、表現ぶりについて、井口分科会長及び南委員長に一任することとなった。
(5)第2期中期目標・中期計画の改定について
梨田外務省国際協力局政策課長より、改正機構法施行に伴う第2期中期目標・中期計画の改正案について、事前に各委員から提出されたコメント及び関係府省との法定協議の結果を踏まえた修正についてその概要を説明。各委員から特段の意見はなく、分科会として修正案に対し「意見なし」で合意された。
(6)業務方法書の改定について
梨田外務省国際協力局政策課長より、改正機構法施行に伴う業務方法書の改定について、事前に各委員に送付するとともに、関係府省との法定協議を行っている旨報告し、改定の概要を説明。各委員から特段の意見はなく、分科会として「意見なし」で合意された。
(7)最後に、井口分科会長より、長期間にわたる審議への協力に感謝する旨の挨拶があった。