
外務省独立行政法人評価委員会
国際協力機構第1回分科会議事概要
1.日時
平成19年8月1日(水曜日)13時30分~
2.場所
外務省南庁舎(893号室)
3.出席者
(委員)井口武雄分科会長、南直哉委員長、縣公一郎、伊藤るり、川上照男、城山英明、榛木恵子、渡邉紹裕の各委員
(外務省)塩尻孝二郎官房長、廣木重之国際協力局参事官、上村司国際協力局政策課長、藤原直考査・政策評価官他
(国際協力機構)緒方貞子理事長、黒木雅文理事、粗信仁総務部長、大部一秋企画・調整部長他
4.議題
(1)独立行政法人整理合理化計画について、及びJICAの統合をめぐる現状について
(2)平成18年度及び第1期中期目標期間の業務実績の総括について
(3)平成18年度業務実績評価について
(4)第1期中期目標期間の業務実績評価について
5.議事概要
(1)独立行政法人整理合理化計画について、及びJICAの統合をめぐる現状について
事務局より、行政減量・有識者会議での議論や今後作成予定の独立行政法人整理合理化計画に関する説明が行われた。
また、粗JICA総務部長から、新JICAの本部について、7月の業績評価説明会にて候補物件の選定経緯等につきJICAより説明し、委員からは、統合時から同じ屋根の下で業務を行うべしとのコメントをいただいたが、特段の異論がなかったところ、今後適切に準備を進めていきたい旨、報告があった。
(2)平成18年度及び第1期中期目標期間の業務実績の総括について
緒方JICA理事長より、18年度及び第1期中期目標期間の業務実績の総括について説明が行われた。ポイントは以下のとおり。
- 就任以来、様々な改革に取り組んできたが、「現場強化」が進み、ニーズの的確な把握、事業の迅速化など、想定していた成果が着実に上がっている。18年度は改革の「仕上げの年」として、成果や進捗状況をレビューしたが、現場強化の完成に向けては、在外事務所と本部のコミュニケーションを強化する必要性やナショナルスタッフの一層の活用といったことが課題である。改革の進展に伴い、JICAにおいて「人間の安全保障」のアプローチが浸透、定着してきたことも実感。「人間の安全保障」の視点を開発援助事業に適用していく上で、重要なのは「人々のそばにいて、現場で変化を起こすこと」であり、今後も一層、目線を人々に向けつつ、人々の生活に具体的な変化を起こすような協力を行っていきたい。
- 今後の課題としては、来年10月の新JICA発足がある。「新JICA」は政府の行財政改革の議論の過程で具現化したものであるが、国内のみならず、他のドナーや途上国から寄せられる期待は相当に大きいと認識。新JICA発足の効果は、「Speed Up(迅速化)」、「Scale Up(高度化)」、「Spread Out(拡大)」の3つの「S」で説明できる。JICAとJBICが同じ機関として一体となって事業を行うことで、スキーム間の調整がより緊密、迅速(Speed Up)になる。成果が上がったパイロット事業を、資金協力を投入して中央や地方政府を巻き込むことで、より大きな成果の発現、高度化(Scale Up)が期待できる。マイクロファイナンス等資金協力と草の根の協力活動を連携させることで、コミュニティ開発が面的に拡大(Spread Out)する。新JICA発足によって、日本の開発援助に新たな付加価値をつけることは、途上国にとってのメリットはもちろんのこと、日本国内での理解や支持を得ていく上で、大変重要。
- 日本のODA予算は、過去10年間で約38%減、2006年の実績で世界第3位となり、日本の安全と繁栄が世界の安定と密接な関係があること、また、日本が果たすべき国際社会の一員としての役割を考えれば、極めて大きな危惧を抱いている。ODA予算の削減は行財政改革の結果であるものの、一方で、個人的には、日本国民の途上国に対する関心はそれほど低下していないのではないかと感じている。こうした国内の関心や理解に支えられて、よりよい事業を展開することが、新JICAの使命であり、「シナジー(相乗)効果」を十分に発揮できる体制づくりに向けて、着実に準備を進めていきたい。
- 「調査・研究」については、世界規模の援助機関として知的発信を行うのは当然であり、改正機構法において「調査・研究」を本業の一つとすることが明確になった。新JICAでは、JICAの国際協力総合研修所、JBICの開発金融研究所を統合して、新研究所を設置する予定である。
- JICA事業も含め、日本が国内外の期待に応え、質の高い開発援助を行っていくためには、ODA予算のこれ以上の減少傾向に歯止めをかけ、予算増に反転すべき時期が来ていると強く感じている。JICAとしても、独立行政法人制度の下で、効率化イコール予算削減ありき、といった画一的な議論に陥ることなく、事業の内容やあり方を十分に踏まえて、必要な予算措置を求めていくことが重要であると考えている。
- 独立行政法人整理合理化計画については、その策定に当たってJICAの取組が的確に評価され、組織や業務のあり方についても適切な検討がなされるよう、JICAとしても説明責任を果たしていく考えである。
(3)平成18年度業務実績評価について
(イ)小項目(34項目)
評定について審議した結果、Sが4項目、Aが27項目、対象外が3項目となった。審議における委員からの主なコメントは以下のとおり。
- 現場主義を推進するため、在外強化の取組を組織全体として積極的に展開したことは高く評価できる。今後は、在外強化の効果を確実に発現することが重要であり、その効果について、本評価委員会をはじめ、外部に対してわかりやすい説明を求めたい。
- 事業の主要な投入の単位当たり経費の効率化について、適切な目標管理の観点から、今後は、必要に応じ中期目標期間中に自己目標としての数値目標を見直すことなども検討すべきである。
- 研修員受入れの内容改善と帰国研修員フォローアップについては、これらの取組によりもたらされる事業上の効果、相手国にとってのインパクトの発現が期待される。
- 開発教育支援について、取組の結果としてもたらされる教育効果を明らかにし、国際協力に関わる人材育成や国民の関心の向上などの面からも、本評価委員をはじめ、外部にわかりやすく説明することが重要である。
- 災害援助等協力事業については、被災国政府・国民からの評価も含め、他国の緊急援助活動との比較の視点を持ちつつ、本事業の効果向上に向けて活動から得られた経験や教訓のフィードバックを図られたい。
(ロ)中項目(18項目)
小項目評定の結果をもとに審議し、Sが3項目、Aが13項目、対象外が2項目となった。なお、異なる評定の小項目から構成されるNo.2(業務運営全体の効率化)については、構成する小項目の重要性を考慮して実質面から判断した結果、A評定となった。
(ハ)総合評価
総合評価に盛り込むべきポイントに関し、事務局作成の資料を基に行った議論を踏まえ、第2回分科会までに事務局にて一案を作成の上、各委員にコメントを照会することとなった。
(4)第1期中期目標期間の業務実績評価について
(イ)中項目(18項目)
評定について審議した結果、Sが4項目、Aが12項目、対象外が2項目となった。審議における委員からの主なコメントは以下のとおり。
- 業務運営全体の効率化について、引き続き効率化への取組は必要であるが、中期計画上の目標値を上回る削減が達成された点は、高く評価できる。
- 人材養成確保については、必要とされている人材が養成されているかも含め、質の確保、人材活用の観点からの取組を拡充することが求められる。
- 調査研究については、年々変化する開発途上国の発展段階及びニーズを的確に把握し、適切な案件発掘・形成を行う上でも、精度の向上が求められる。また、開発途上国にとって先行モデルとなる日本やアジアの取組経験を含め、外部への発信に引き続き努めるべきである。
(ロ)総合評価
総合評価に盛り込むべきポイントに関し、事務局作成の資料を基に行った議論を踏まえ、第2回分科会までに事務局にて一案を作成の上、各委員にコメントを照会することとなった。
(5)最後に、井口分科会長より、長時間にわたる審議への御協力に感謝する旨の挨拶があった。