1 日時
平成25年1月29日(火曜日)14時00分から16時00分
2 出席者
(委員)
井口武雄委員長,建畠晢国際交流基金分科会長,縣公一郎委員,上野田鶴子委員,上子秋生委員,小松浩委員,手納美枝委員,都丸潤子委員,榛木恵子委員,吉田和浩委員
(外務省)
越川官房長,梅田国際協力局長,芝田国際文化交流審議官,細野考査・政策評価官,米谷広報文化外交戦略課長,鈴木国際協力局政策課長他
(国際交流基金)
櫻井理事,柄総務部長,下山経理部長,大嶋監査室長,古屋総務部次長他
(国際協力機構,以下JICA)
渡邉理事,植澤総務部長,山田企画部長,加用財務部長,木野本財務部次長,新井人事部次長他
3 議題
- (1)平成23年度業績評価結果についての政策評価・独立行政法人評価委員会(以下,政独委)2次評価意見について
- (2)【国際交流基金】第3期中期目標期間における業績評価項目及び評価指標(案)について
- (3)【JICA】第3期中期目標期間における業績評価項目及び評価指標(案)について
- (4)独立行政法人改革をめぐる現状等について
- (5)【JICA】退職役員の業績勘案率について
- (6)【JICA】財務諸表記載セグメント情報の見直しについて
4 議事概要
- (1)冒頭,井口委員長から,開会の辞に続き,出席委員が定足数を満たしていることを確認した後,議題について確認を求め,委員各位の了承を得た。また,越川官房長が挨拶を行った。
- (2)平成23年度業績評価に対する政独委2次評価意見について,細野考査・政策評価官からの概要説明を聴取した上で,井口委員長から,平成24年度業績評価においては同意見の諸点を踏まえた評価を行うこととし,国際交流基金及びJICAにおいても,同意見を踏まえた報告をお願いしたい旨述べた。
- (3)国際交流基金の第3期中期目標期間における業績評価項目及び評価指標(案)について,国際交流基金から概要以下アの通り説明すると共に,外務省から以下イのとおり主務省として関連の補足説明を行った後,質疑応答を行った。委員からの主な質問及び回答等は以下ウのとおり。同案については,以下のコメントを踏まえた改訂を行った上で改めて各委員に送付し,追加的な意見などを徴した上で3月の評価委員会において決定することとなった。
ア 国際交流基金による説明の概要
- 第2期では「I 業務運営の効率化に関する事項に関する目標を達成するためとるべき措置」,「II 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する措置」であった大項目の順序を,効率化を堅持しつつも,業務の質の向上により重点を置いた目標設定にするとの観点から構成された第3期中期計画に沿って,「I国民に対して・・・」,「II業務運営の・・・」の順序に入れ替えた。
- 第2期までは事業分野別での評価が主であったが,政府の外交政策を踏まえた地域・国別事業方針に沿った事業運営を重視するという第3期中期計画の考え方に沿って,新たに「地域・国別事業方針による事業の実施」という項目を1番目に立て,外交政策との連動性を含め総合的に評価頂くことを考えている。その次に,項目の2番目から7番目として,各部門の事業について評価頂く構成となっている。また,第3期中期計画に沿って,東日本大震災からの復興に資する事業の実施状況について項目を新設し,評価頂きたいと考えている。
- 業務運営の部分においても,第2期において外務省評価委員会及び政独委から頂いた指摘や,閣議決定をはじめとする政府方針を反映した。例えば,「関係機関との連携確保等」「内部統制の充実・強化」といった項目の設置や「在勤手当の見直し」の評価指標への追加など,各指摘事項を踏まえた項目立てや指標を設定している。
- 評価作業の合理化を図ると共に,事業を戦略的観点から評価頂くべく,第3期の評価指標は包括的かつ総合的なものになるよう整理した。その結果,小項目の数は26から25に,評価指標の数は113から56になっているが,各指標の達成度を判断頂くための具体的な報告内容は,重複を排除しつつも,第2期とあまり変わらないものとなると考えている。
- 事業を実施する必要性・意義やその成果について,より明確な説明を求められていることを踏まえ,事業の実績だけでなく,できる限り,成果の発現状況をご報告し,評価頂けるような指標を設定したいと考えている。また,特に文化交流分野は成果を数値化して示すことが難しいが,定性的なデータに加え,可能な限り定量的なデータについてもお示ししていきたい。
イ 外務省広報文化外交戦略課による補足コメント
- 政府の外交政策との連動性については,毎年度の予算要求において掲げている重要事項を踏まえた基金の取組についてご留意の上,評価頂きたいと考えている。
- 外務省としても引き続き,国際交流基金と緊密に連携・協力して事業を進めていく所存。評価指標の達成度を測る材料の一つとして,外務省による評価も踏まえ評価頂くことを考えている。外務省による評価は,実際の事業において基金と連携する在外公館による評価も加え,外務省全体で行う。
ウ 委員からのコメント
(括弧内は,外務省外務報道官・広報文化組織及び国際交流基金からの回答・コメント)
- 大項目の「I」「II」を入れ替えた点について,第2期までは,管理部門の効率化を重視しすぎていたのではないかとの感想を新たにした。ミッションの達成度を重視した評価とすることは方向性として望ましい。
- 第3期からは,地域・国別事業方針に沿った事業と分野別事業というマトリックスになるが,地域・国別に各分野毎の事業状況を評価しつつ,分野別に地域・国毎の事業状況も評価するという手法になるのか。
(我々としてもまだ手探りではあるが,可能な限り重複を排しつつ,地域・国別と分野別の両面から報告し,評価を頂くようにしたいと考えている。(国際交流基金)) - 独立行政法人制度は,政府から提示されたミッションを独立行政法人が実施するという前提に立っている。政府の外交政策を踏まえた地域・国別事業方針に沿って事業を実施するとのことだが,この方針は,外務省からの指示ではなく,国際交流基金が独自に策定するのか。
(地域・国別事業方針や事業計画は,実態としては,外務省と国際交流基金の共同作業で生まれる面がある。目指すべき目標は外務省が提示し,その達成のために何が出来るか,国際交流基金からも提案を行って外務省と相談しつつ決めている。(外務報道官・広報文化組織)) - 前政権で方針が示されていた国際観光機構(以下,JNTO)との連携強化について,第3期における取組方針如何。
(国際交流基金とJNTOは,それぞれの主務省の下,異なるミッションを達成すべく業務を行っている。この方針が示された前政権時の閣議決定(「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」平成24年1月20日)は現時点で凍結されているが,お互いのミッションの効果的な達成に資するような連携強化については,昨年9月に報告書として今後の方針を示しているところ,この方向性に大きな変更はないと思われる。(外務報道官・広報文化組織)) - 地域・国別及び分野別の各々の切り口から評価を行うとのことだが,外交政策を踏まえた地域・国別の事業実施に重点が偏り,各分野に対する評価が疎かにならないよう留意が必要ではないか。
(平成15年の独立行政法人化に伴い,政府の外交政策に沿って事業を重点化することとなっており,地域・国別の事業実施もその一環である。各事業分野における地域・国別チーム制の導入を進めてきたが,平成24年には文化芸術分野においてもこれを導入し,基金全体として,より一層地域・国別方針に沿った事業展開が可能となった。他方,ご指摘のとおり,事業分野毎の業績という切り口での評価を頂くことも重要であり,具体的な報告及び評価の内容については,評価委員会のご指導を頂きながら,今後の評価プロセスの中でも検討し,しっかり対応して参りたい。(国際交流基金)) - 海外における国際交流基金の認知度に比べ,国内での認知度は低い印象がある。政府の事業仕分け等により国内事業が廃止となったことは大変残念ではあるが,それはそれとして,海外での事業を効果的に実施するためには,国内の関係者との協力が強まるよう,国内での認知度も向上することが非常に重要。国内における認知度向上に向けた取組も評価できる指標を設定することが必要ではないか。
(文化事業を国内外という開催場所で線引きすることは,ご指摘のとおり非常に難しく,非効率的にもなりうる。このような問題意識もふまえ,特に外交的に重要な国内イベントに際しては国際交流基金も事業可能として頂いており,例えば平成25年度には,TICAD・Vにおいて実施予定。国際交流基金としても,国内の認知度向上は大変重要であると認識しており,中期計画Iの2(5)「国際文化交流への理解及び参画の促進と支援」に関連する項目としてきちんとご報告し,評価頂くこととしたい。(国際交流基金))
- (4)JICAの第3期中期目標期間における業績評価項目及び評価指標(案)について,JICAから概要以下アの通り説明すると共に,外務省から以下イのとおり主務省として関連の補足説明を行った後,質疑応答を行った。委員からの主な質問及び回答等は以下ウのとおり。同案については,以下のコメントを踏まえた改訂を行った上で改めて各委員に送付し,追加的な意見などを徴した上で3月の評価委員会において決定することとなった。
ア JICAによる説明の概要
- 基金と同様の考えから,ミッションに関わる部分を先に立てるという大項目の順序の入れ替えを行っている。第1期,第2期に引き続き,第3期においても,中期計画の内容を網羅して評価頂くべく,中期計画の項立てに沿った項目及び評価指標(案)としている。その上で,第2期までに評価委員会から頂いたご意見と共に,ODAやJICAをめぐる状況の変化にも十分留意し,ポイントを押さえた評価指標を目指した。例えば,単なる実績管理の報告にとどまらず,事業の質の向上やその成果について,評価委員ひいては国民の皆様方に分かりやすい報告となるよう工夫した。
- 第2期では組織の統合という大きな課題に取り組む中で,プログラム化やスキーム毎の改善について手探りで進めてきた面がある。業績評価のための報告においても,ともすれば,スキーム毎の報告に偏ったり,課題毎の取組の中で制度上の報告をしたりと,もっと整理すべき点があった。第3期では,まず課題毎,次にアプローチ方法,そしてスキーム毎の取組,という構成に整理し,互いに関連づけながらも,できる限りメリハリをつけた分かり易い報告・評価ができるようにした。
- 第3期の評価指標案の特徴は主に5点。1点目は,政策上の重点事項に対する取組を重視している点。政策の実現に如何にJICAが貢献したかを明確に示したいと考えている。まず,ODA大綱の重点課題とされている「貧困削減・MDGs,持続的経済成長,地球規模課題,平和構築」という各分野への貢献。その次に,NGO,大学,地方自治体,民間企業等の「多様な関係者との連携強化」は,JICAが取り組むべき重要な政策課題であると認識しており,この実現に向けた取組と貢献を報告し評価頂くことを考えている。報告に際しては,インプット実績,アウトプット実績に加え,従前より評価委員会からも指摘を頂いているアウトカムについて,好事例を示したり当該国の経済社会指標などを参照することで,少しでも分かりやすく示すよう努めたい。
- 2点目として,事業効果の向上に向けた取組を重視している。すなわち,事業をより効率的に成し遂げるためのJICAの戦略的な努力が重要であるとの認識の下,「事業マネジメントと構想力の強化」という項目を新たに設け,主にプログラム化の促進に関連した具体的な取組や,PDCAサイクルを重視した取組についてご報告し評価頂くことを考えている。
- 3点目として,組織運営においても事業効果の向上を重視する。独立行政法人として,JICAには第3期の各年度において対前年度比1.4%の効率化目標が課せられているが,効率化を自己目的化することなく,縮減のプロセスにおいても質の向上に留意していく所存。
- 4点目として,評価委員会や政独委による指摘事項を的確に反映するよう努力した。例えば,第2期よりも数値目標を掲げる項目を大幅に増やすこととしている。更に,数値目標としては掲げないものの,適当と思われる部分については,業績報告の中で可能な限り多くの定量的データを示すよう努める。
- 5点目として,評価作業の合理化と共に,中期目標の実現に向けた取組についてより包括的な評価を頂くべく,細分化されていた指標の整理・統合を図り,指標数を156からその6割にあたる104とした。
イ 外務省国際協力局による補足コメント
- JICAとは直接の関係はないが,昨年,復興予算の使途に関連し様々な指摘が出たことも教訓に,引き続き,予算の適正な執行について留意していく。すなわち,毎年外務省において策定する国際協力の重点方針の中で予算執行の基本方針を示し,事業の実施について,機構と共にしっかり取り組んでいきたい。
- アルジェリアにおける邦人拘束事件に関連し,JICAにおいてもこれまで様々な安全対策をとってきている。専門家やボランティアあわせ約1,2000名もの関係者が諸外国での事業に従事しており,特にボランティアの方々は現地の奥深くに入って活動しているため,安全対策は何より重要である。外務省としても引き続き,情報の共有を徹底すると共に,JICAと共に安全対策に万全を期していきたい。
ウ 委員からのコメント
(括弧内は外務省国際協力局・JICAからの回答・コメント)
- 第3期では,第2期で重視されていた「統合効果の発揮」に関する言及がほぼなくなっている。これは,既に第2期中において統合が概ね達成され,今後は事業成果を重視した取組を行う態勢が整ったためと理解。他方,現地機能の強化や本部組織の人員配置といった組織面において,未だ改善の余地があると思われるので,これらについても報告頂き,評価できるようにすると良い。
(統合効果の発揮については,プログラム化の成果に関する報告を通じて,統合によるシナジー効果をお示しし,評価頂きたいと考えている。人員配置など組織面での改善の取組については,引き続き,業務運営に関する項目(第3期中期計画2.「業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置」に係る評価項目)においてご報告し,評価頂きたい。(JICA)) - 事業実績のみならず,成果を重視した評価を目指すというのは,適切な方向。ただし,ご提示頂いた指標案においては,成功事例を中心としたご報告になりがちであり,取組そのものを検証することが必要。また,開発事業の成果を示すことは非常に難しいが,可能な限り成果についてご報告頂きたい。
- 「国別分析ペーパー(Analytical Work:AW)の策定実績及び活用促進に向けた取組状況」が指標案として設定されているが,AWについて,策定した数ではなく質に対する検証をどのように担保するのか。
(AWは作れば良いものだとは思っていない。AWの活用状況や反映状況をチェックすることで,質についてもきちんと検証していくこととしたい。(JICA)) - 技術協力に関し,これまでの評価委員会において,現場レベルでの経験や教訓の活用について指摘した経緯があるが,第3期の評価においてこの点はどのように反映されるのか。
- 第3期中期計画の1(5)「国民の理解と参加の促進」に係る評価について,同計画(5)の「(イ)ボランティア」,「(ロ)市民参加協力」,「(ハ)広報」,更には,同計画(6)「多様な関係者の『結節点』としての役割の強化」に関して,それぞれ別個の項目として評価する立て付けになっているが,これらが全体として「国民の理解と参加の促進」という成果にどう結びついているのかを評価できるよう工夫して頂きたい。
(中期計画1(6)については,中小企業の海外展開やNGOとの連携という政策課題について,主務省からの強い要請もふまえ,項目として新設したもの。(5)の各項目とオーバーラップする部分もあり,総体的な報告ができるよう留意したい。(JICA)) - 第3期中期計画の1(7)(ロ)「男女共同参画」に係る評価は,事業におけるジェンダーへの配慮を対象としたものであるが,JICAの組織内における男女共同参画の推進状況についてはどこで報告・評価を行うのか。
(組織内における男女共同参画については,既に推進のメカニズムが整備されており,その実施状況などについて報告し評価頂くことを検討したい。(JICA)) - 安全対策を適切に講じるとあるが,具体的にはどのような内容が想定されるか。
(安全対策については情報の共有が最重要と認識。従前より行ってきているが,外務省が有する情報について,今後もきちんと共有を図りたい。なお,現在政府においても検討が進んでいるが,テロ対策との関連では,テロの根源の一つとされる貧困を解消するアプローチなど,JICAが果たせる役割は大きいと考えている。(外務省国際協力局))
- (5)独立行政法人制度改革をめぐる現状等について,細野考査・政策評価官から概要を説明した。
- (6)JICA退職役員の業績勘案率について,細野考査・政策評価官から,前回(8月)の評価委員会において審議された当評価委員会の決定に対し,政独委より,特段の意見はない旨の通知があったため,井口委員長名でJICAに決定結果を通知した旨報告した。
- (7)JICAの財務諸表記載セグメント情報の見直しについて,国際協力機構から,概要以下アの通り説明があった後,以下イのとおり質疑応答があった。
ア JICAによる説明
- 評価委員会からのご指摘も踏まえ,第3期中期計画においては,セグメント情報等の充実を図り,財務内容の一層の透明性を確保することとなった。これに基づき,セグメント情報については,「財源別」(運営費交付金事業,委託事業,自己資金事業など)であった従来の区分を「業務別」(技術協力,無償資金協力など)に変更し,業績報告書との関連性を持たせた上で,形態別(業務委託費,専門家等手当,旅費交通費など)の実績額も記載し,経営情報として求められる各業務の形態別実績額を分かりやすく確認できるようにした。
イ 委員からの質問(括弧内はJICAによる回答)
- セグメント区分を従来の「財源別」から「業務別」に見直したとのことだが,従来のように運営費交付金の使途は確認可能か。
(見直し後の案では,「事業収益」の内訳に「運営費交付金収益」の項目があり,各業務別の運営費交付金の充当額が示されている。)
- (8)最後に,細野考査・政策評価官から今後のスケジュールなどの連絡事項を伝達した後,井口委員長から閉会を宣言した。