1.日時
平成24年3月15日(月曜日)14時00分から17時20分
2.出席者
- (委員)
- 井口武雄委員長,建畠晢国際交流基金分科会長,白石隆国際協力機構分科会長,青山伸一委員,縣公一郎委員,上野田鶴子委員,上子秋生委員,小松浩委員,手納美枝委員,都丸潤子委員、榛木恵子委員,吉田和浩委員,吉本光宏委員,出雲明子専門委員
- (外務省)
- 木寺官房長,細野考査・政策評価官,齋木広報文化交流部参事官,米谷文化交流課長,越川国際協力局長,鈴木国際協力局政策課長他
- (国際交流基金)
- 櫻井理事,柳澤総務部長,下山経理部長,平野総務部次長他
- (国際協力機構,以下JICA)
- 佐々木理事,植澤総務部長,井倉総務部次長,木野本財務部次長,中村企画部次長,新井人事部次長他
3.議題
- (審議事項)
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- (1)国際交流基金の退職役員の業績勘案率について
- (2)平成23年度業務実績評価プロセスにおける「評価のポイント」について
- (3)国際交流基金第3期中期計画(案)について
- (4)JICA第3期中期計画(案)について
4.議事概要
(1)冒頭,井口委員長から,開会の辞に続き,委員の出席が定足数を満たし会議が成立していることを確認した。続いて,井口委員長が議題について確認を行い,委員各位の了承を得た。
(2)国際交流基金退職役員の業績勘案率について,細野考査・政策評価官から、業績勘案率の決定方法(留意事項等)について説明した後,国際交流基金から当該役員(2名)の業績について,また,事務局より業績勘案率(案)について説明した。続いて,同役員の業績及び業績勘案率の決定にあたって考慮すべき事情等について審議を行った結果,対象役員1名については,以下の理由により業績勘案率を1.1とすること,1名については事務局案のとおり業績勘案率を1.0とすることが決定された。
<退職役員1名の業績勘案率(1.1)の決定理由>
- 独立行政法人化とともに理事長に就任し,以後2期8年間の長期にわたって高い見識と強いリーダーシップによって法人の経営を担い,顕著な成果を挙げている。特に一般管理費,人件費,ラスパイレス指数の削減,退職公務員出身者の減少は数値として結果が出ており高く評価できる。基準業績勘案率(1.1)から減算する要因はない。
なお,委員からは,上記の理由に加え,独立行政法人化以降,事業運営における選択と集中を推進し,時代に即した柔軟かつ積極的な事業を展開した中での貢献,特に,「国際公共財としての日本語」や「課題解決型の文化交流」といった個人的見識に基づく理論的骨格を事業に与え,新しい事業展開をリードしたことは,同役員の個人的な功績として高く評価されるべきであるとの意見も表明された。
(3)平成23年度業績評価プロセスにおける「評価のポイント」について,細野考査・政策評価官から事務局案の概要を説明し,委員による審議を行った結果,必要な修正を経て別紙のとおり決定した。委員による主なコメントの概要は以下のとおり(括弧内は各独立行政法人の発言)。
- コンプライアンス部会の評価ポイントについて,昨年度版から「運営費交付金債務の執行状況」が追加されている。平成23年度は中期目標期間の最終年度であり次年度への繰り延べが出来ない。同債務の執行状況の確認は,策定当初の計画どおり事業が実施されたかの確認ともなる。平成22年度末において,国際交流基金は33億円,国際協力機構は300億円の債務残高となっているので,平成23年度においてどうなったか特に注視したい。
- 分科会の評価ポイントについて,事務局の説明では「定量的」という部分が非常に強調されているが,これは定性的評価とも併せて判断すべきものであることに留意すべきである。
- 従来、事業効果に関する測定は難しかった部分がある。各法人が業務を行う中で把握している効果,つまり今やったことが将来どれだけプラスになるかといったことについても評価に際して加味してはどうか。
(アウトカムは発現に時間がかかることもあり,指標のあり方を(独法)組織内でも検討しているところ。今後とも検討を進め評価委にもご報告していきたい。) - 国際交流基金分科会の評価ポイントについて,「EPAに基づく看護師・介護福祉士候補向け訪日前研修事業の実施」が挙げられているが,日本語能力の向上イコール合格率の向上というものでもなく,何をもってこの事業を評価することが想定されているのか。
(国際交流基金は,国家試験合格のための導入段階,日本語の運用能力の向上という面で携わっており,その面から評価頂きたい。) - JICA分科会の評価ポイントについて,「Ⅰ(1)『開かれた復興』のための取組 (ア)被災地の復興・防災対応への貢献(国際協力アクターとの連携推進含む)」とある。途上国における防災の取組は重要な課題であり,JICA国内センターにおける,震災の経験や防災の知見を活かした開発教育,研修の開発に関する具体的な事例についても報告頂きたい。
(JICAとしても日本の防災技術や震災の教訓を他の自然災害多発国と共有し,途上国の防災に貢献したいと考えている。経験も蓄積しながら研修員とも共に考えていきたい。) - 国際交流基金は,東日本大震災後,東北で文化交流事業を実施するなど,芸術・文化による復興への貢献に取り組んでいると承知している。震災により事業が滞ったなどのマイナス側面のみならず,震災を契機としたプラスの事業展開について,評価プロセスにおいても積極的にアピールして欲しい。
(次期中期目標・計画にも記載があるとおり,国際交流基金としても,震災を契機とした事業に積極的に取り組んでいるところであり,プラスの部分の事業実績についても説明したい。)
(4)国際交流基金の第3期中期計画について,米谷広報文化交流部文化交流課長から,第3期中期目標(案)に対する外務省評価委員会及び政策評価・独立行政法人評価委員会(以下,政独委)からの意見の概要について説明しつつ,3月1日付けで国際交流基金へ同目標を指示した旨報告を行った後,国際交流基金より,第3期中期計画(案)について概要を説明した。続いて委員間で議論を行い,同中期計画(案)について評価委員会として異存は無い旨決定した。委員からの主な意見の概要は以下のとおり(括弧内は文化交流課・国際交流基金からの回答など)。
なお,第3期中期目標については,前回(第28回)の評価委員会などを踏まえ必要な修正を行い,改めて書面による審議を行った結果,2月29日付けで外務省案に異存なしとの評価委員会意見書を発出ずみ。また,同中期計画(案)については,財政当局との協議等により大幅な修正が生じた場合には,委員長の判断により要すれば再度の意見聴取を行う予定としていたが,最終的に委員長の了承を得て,3月29日付で国際交流基金案のとおりとすることが適当である旨の意見書を発出した。
- 地域・国別事業方針による事業の実施を重視していくとの説明があったが,これに連動し,評価方法も事業分野毎の評価から地域・国別事業方針毎の評価へ変更となるのか。
(平成24年度業績の評価方法,指標については,今後,評価委員会においてご議論頂くこととなると思うが,第3期からは地域・国別の観点からの業績報告が増えることとなると考えている。) - 具体的な事業内容の面で,第2期からの変更点,第3期の特徴となる点は何か。
(スキーム毎というより,国・地域を軸に様々なジャンルの事業を組み合わせて,現地のニーズに合った計画を考えるというやり方に変わる。) - 一般管理費と事業費を合わせて対前年度比1.35%減という効率化目標について,前期と同等以上の削減率を前提として決められた数字との説明である。第2期において,一般管理費は本部事務所の移転等を通じ最大限の削減が行われたと理解しており,第3期においては一般管理費で削減できない分を事業費の削減で賄うこととなるのか。
(本部事務所の賃料削減が見込まれており,管理費削減の難しさのしわ寄せが事業費に来る事態は避けられるのではないかと認識している。)
(5)JICAの第3期中期計画について,鈴木国際協力局政策課長から,第3期中期目標(案)に対する外務省評価委員会及び政独委からの意見の概要について説明しつつ,3月1日付けで国際協力機構へ同目標を指示した旨報告を行った後,JICAより,第3期中期計画(案)について概要を説明した。続いて委員間で議論を行い,委員からは概要以下のとおりの意見があった(括弧内は国際協力局政策課・JICAからの回答など)。
なお,第3期中期目標については,前回(第28回)の評価委員会などを踏まえ必要な修正を行い,改めて書面による審議を行った結果,2月29日付けで外務省案に異存なしとの評価委員会意見書を発出ずみ。また,同中期計画(案)について,委員の意見を踏まえた修正内容については委員長及び分科会長に一任すると共に,関係省庁との協議等による修正については委員長の判断により要すれば再度の意見聴取を行うこととしたが,最終的に委員長の了承を得て,3月29日付でJICA案のとおりとすることが適当である旨の意見書を発出した。
- プログラムアプローチへの転換が,JICAの事業目標及び評価に与える影響如何。各プログラムにおける目標や予想されるアウトカムがより明確化されていくとの理解でよいか。
(プログラムアプローチの進展により,より本質的な開発課題に近い形でのアウトカムを実現していきたいと考えている。評価については,アウトカムの発現には時間がかかり,測定指標の設定も難しいので,手法も含めて引き続き検討を進めていきたい。また,各国の開発課題に関する分析ペーパーの作成を通じ,日本の強みを活かして出来るものなど,戦略的に課題を選択する取組を進めている。) - プログラムアプローチの評価では,各プログラムの目標,つまり各プロジェクトによるアウトカム目標への貢献やシナジー効果など,期待していた成果(アウトカム)を明かにすることが重要であり,3スキームを使った取組の数で考えるようなものではない。プログラムアプローチとは,個別援助機関における手法の統合を超えて,ある政策目標に向かって様々な手段で努力するというのが本質であるので,単にJICA内の3スキームの統合を指すような誤った理解が定着しないよう留意が必要。
- 「ODAあり方検討 最終とりまとめ-開かれた国益の増進」においては,ODAを「世界の共同利益の増進」の手段として捉えている。他方,第3期中期目標や同中期計画案からは,どうしても「我が国企業」(の利益追求)を主語としているように感じられる。これは政府の「新成長戦略」をベースにしているからではないかと思うが如何。
(中期目標前文にあるとおり,世界全体の利益の中で国益を実現してくというのが基本的な捉え方。中小企業の参加は,国際貢献の担い手を増やすことで国民のODAへの共感を深めるとの考え方も背景にある。「新成長戦略」がベースなのではなく,中期目標でも明記されたとおり,「新成長戦略」とも「軌を一にするもの」であると位置づけして,こういった基本的な考え方を整理している。) - 第3期中期目標期間中の今後5年間には,新しいODA大綱や同中期計画の策定が見込まれる他、MDGs目標年の終了もある。次期中期目標・計画は,こういった重要な変化を踏まえて変更の機会が与えられるべきものであることを明らかにしておいた方が良いのではないか。
(次期中期目標期間にはご指摘のとおり重要な節目が含まれており,ODA大綱の見直し等を踏まえた必要な見直しは検討していくものと理解している。また,MDGs終了後に果たすべき役割等についてはJICA内でも議論されており,明記はしていないが意識している。) - これまでの援助の現場において,日本の援助関係者の政策対話への参加が著しく少ないのは認めざるを得ない。政策は外務省,JICAは実施部隊,と役割を峻別することでJICA関係者が消極的になることを避けるためにも,政策を担う外務省と実施を担うJICAはシームレスに繋がっていることを明かにすべきである。
(JICAから政策的な意味でのインプットを妨げるようなことがあってはならないとの趣旨の指摘と理解。JICA海外事務所との連携には留意しており,現在進めている国別援助方針の作成も,大使館の援助関係者,JICA,民間邦人関係者等が参加する現地ODAタスクフォースからの提案をベースとしている。)
(6)最後に,細野考査・政策評価官から今後のスケジュールについて説明を行った後,井口委員長から柘植委員が3月をもって退任される旨報告した上で,閉会を宣言した。