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第28回外務省独立行政法人評価委員会議事概要

1.日時

平成24年1月23日(月曜日)14時00分から16時40分

2.出席者

(委員)
井口武雄委員長,建畠晢国際交流基金分科会長,白石隆国際協力機構分科会長,青山伸一,縣公一郎,上野田鶴子,上子秋生,柘植あづみ,手納美枝,榛木恵子,吉田和浩,吉本光宏の各委員
(外務省)
木寺官房長,細野考査・政策評価官,村田広報文化交流部長,米谷文化交流課長,越川国際協力局長,鈴木国際協力局政策課長他
(国際交流基金)
櫻井理事,柳澤総務部長,下山経理部長他
(国際協力機構)
渡邉理事,植澤総務部長,井倉総務部次長,木野本財務部次長,中村企画部次長他

3.議題

(審議事項)
  1. (1)国際協力機構分科会の役員改選
  2. (2)国際協力機構の退職役員の業績勘案率
(報告事項)
  1. (3)平成22年度業績評価に対する政独委2次評価意見
  2. (4)中期目標期間終了時の組織・業務全般の見直し作業について
  3. (5)独立行政法人制度改革をめぐる議論について

4.議事概要

(1)冒頭,井口委員長から,開会の辞に続き,委員の出席が定足数を満たし会議が成立していることを確認するとともに,小松毎日新聞社論説委員と白石隆政策研究大学院大学学長が新たに委員に就任した旨報告した。続いて,木寺外務省官房長から挨拶があった後,井口委員長が議題について確認を行い,委員各位の了承を得た。

(2)国際協力機構分科会の役員改選について,国際協力機構分科会長を兼任している井口委員長から,昨年委員長に就任したことを受け,新しい分科会長の選出について提議があった。外務省独立行政法人評価委員会令第5条第3項の規定により,分科会所属委員の互選を行った結果,白石委員が国際協力機構分科会長に選任された。

(3)国際協力機構退職役員の業績勘案率について,退職役員の業績等について審議を行った結果,対象役員(3名)の業績勘案率を1.0とすることが決定された。なお,昨年2月の評価委員会において委員から提案のあった監事の基準業績勘案率の決定方法については,他府省評価委員会の例や,法人の業績と監事の業績は直接の関係がないこと,法人の不祥事や業績の著しい改善・不振について監事が責任を負うべき場合には,基準業績勘案率を増減して業績勘案率を決定することが可能であることから,今回は現行の決定方法を変更しないことで了承された。なお,監事の業績勘案率決定方法について,委員から以下のコメントがあった。

  • 個人の業績を理由とする加算が難しい中,基準業績勘案率を自動的に1.0とする現行の決定方法では,監事の業績勘案率が1.1以上となることは実際上非常に難しいとの問題意識に基づき,本件を提起したもの。
  • 民間企業においても企業の業績を監査役の業績として勘案するか否かは結論が出ていない論点であり,本件については今後の検討課題として欲しい。

(4)平成22年度業績評価に対する政独委2次評価意見について,細野考査・政策評価官から概要を説明するとともに,井口委員長から,平成23年度業績評価においては同意見の諸点を踏まえた評価を行うこととし,国際交流基金及び国際協力機構においても,同意見を踏まえた報告をお願いしたい旨述べた。

(5)中期目標期間終了時の組織・業務全般の見直し作業について,細野考査・政策評価官から現在までの経緯と今後のスケジュールについて説明した後,米谷広報文化交流部文化交流課長と鈴木国際協力局政策課長から,それぞれ国際交流基金,国際協力機構の「独立行政法人の主要な事務及び事業の改廃に関する勧告の方向性について」(平成23年12月9日政策評価・独立行政法人評価委員会決定,以下「勧告の方向性」)及び「勧告の方向性」を踏まえた見直し内容について改めて説明するとともに,次期中期目標(第3期中期目標)(案)の骨子について説明し,委員間で議論を行った。委員からの主なコメントは以下ア~ウのとおり。(なお,見直し内容については,今次委員会開催前に電子メールを通じた書面審議として委員に報告の上,了承を得ている。)また,次期中期目標(案)については,以下のコメントをも踏まえた改訂を行った上で関係官庁との協議等を経た後,電子メールを通じた書面による審議を行うこととなった。

ア 国際交流基金の次期中期目標(案)に対する委員からのコメント

(括弧内は外務省広報文化交流部・国際交流基金からの回答・コメント)

  • 効率化目標の設定を検討するとの由であるが,国際交流基金は現中期目標期間において,目標を上回る効率化を実現している。更に,当評価委員会においては,目標を上回る効率化を実現しつつ,質についても目標を達成している点を評価しており,今期中期目標期間の業績に係る暫定評価においては,効率化から質の向上に軸足を移すべき旨を意見として取り纏めたところである。効率化の重要性は認めるが,質の低下に繋がらないよう対応することを明記すべきである。
    (質の低下に繋がらないよう,効率化のみならず,政策的要請として増加している事業へ対応するための人員体制の確保についても主張したいと考えている。)
  • 2月下旬に書面審議を行う際には,当評価委員会として,効率化目標(数字)の妥当性についても検討できるよう,判断材料を提示した上で意見聴取して欲しい。
    (実現見込みのある削減策について具体的に積み上げた上で,関係官庁との協議に当たっていきたいと考えており,その内容についても判断材料としてご提示したい。)
  • 事業評価に関する取組についても言及すべきではないか。
  • 経費削減という形での効率化から,目に見えない悪影響,波及効果が広がっている可能性もあり,精査するのは非常に難しいが,その点についても当評価委員会としては注視していくべきである。
  • 東日本大震災からの復興に資する事業として,「日本ブランド」の強化をはかる由であるが,事業実施にあたっては,国際協力機構と連携できる部分があるはずである。両独法の連携は,限られたコストで最大限の成果を発揮するという効率化の観点からも大変重要と考えるが,どのような対応を考えているのか。
    (従来から,接点のある事業については両独法間で,また外務省も含め絶えず連携して実施している。当該事業についても,国際協力機構との連携を考えていきたい。)

イ 国際協力機構の次期中期目標(案)に対する委員からのコメント

(括弧内は外務省国際協力局・国際協力機構からの回答・コメント)

  • 従来の要請主義から,ドナー側から事業の構成等についてイニシアティブを発揮するプログラム・アプローチへの移行を進めていると理解しているが,次期中期目標に記載される今後の方向性如何。

    (要請主義の完全な否定ではないが,先方からの要請に基づいて事業を実施することで総花的な事業実施となっているとの意見もあった中,国・地域別に課題の分析をしっかり行った上で,援助方針や大きな構想を政府とJICAがきちんと協議・検討し決定することで,選択と集中を行う手法に現在移行しつつある。次期中期目標においては,これを更に浸透させたい。)

  • 包括的な援助方針を固めた上で実施することにより,目標を明確にして各事業を実施することとなる。評価においても,その目標が達成されているかについて評価することとなると理解。
  • プログラム・アプローチの強化は,それ自体が目的ではなく,効果的な援助,質の向上のための手段と理解。プログラム・アプローチの強化により,包括的な開発課題への対応や事業を通じて得た知見の政策レベルへのインプットなどが期待される。従来の手法の問題点と改善策,そして背景にある目的意識について中期目標の中で明らかにされることを期待。

    (途上国で開発効果を生むためには,現場での取組のみならず,政策レベルへの働きかけまで含めた対応が必要。政策的対話などを含めた積極的な貢献をしていきたい。なお,緒方理事長が提唱する「インクルーシブ アンド ダイナミック ディベロップメント」はまさにそのような発想であり,その理念が明確になるよう書きぶりを工夫したい。)

  • 事業毎のPDCAサイクルを明確化,徹底化するのみならず,事業自体が成功しても,その後のメンテナンスの不備等により十分な効果が得られない事態とならないよう,事業終了後のフォローアップやメンテナンスについても評価が可能となるよう留意して欲しい。

    (非常に重要な点である。引き渡し後も,相手側が事業運営しているかということを視野に入れ,今後の計画に引き続き反映させていきたい。)

  • 効率化に対する取組について考え方如何。

    (既に一般経費の節約努力を通じ,相当の削減を実現していると認識。今後,国際交流基金と同様,実績を踏まえた上で,関係官庁との間で効率化係数について協議していくこととなろう。効率化に向けた取組は継続していくが,物価上昇率などで日本とは全く事情の異なる途上国を含め,海外において事業を行うという特殊性も十分念頭においた検討が行われるよう要請していく。)

  • 全て定性的な目標設定となるようである。評価基準についての考え方如何。

    (政独委等からも指摘を受けてきており,これまで,定量的な評価指標として来館者数を利用するなど様々な方法を考えてきている。援助の効果やインパクトをどのように測っていくかは,JICA研究所においても研究対象としているが,現時点で具体的なアイディアがあるものではない。ご示唆を頂きつつ考えていきたい。)

  • 定量的な目標設定だけでは矮小化に繋がりやすいとの懸念がある。それを避けつつ,同時に一見定性的に見えるが重要なところは何らかの明確な指標で評価できるように工夫する必要がある。プログラム・アプローチの強化は非常に重要な取組であるが,例えば,現地からの評価が非常に高い,援助の全体像を描いたマスタープランなどを評価できるような指標があればよい。
  • PDCAサイクルはどのレベルで回すことを特に重視しているのか。

    (基本的にはプロジェクトレベルのPDCAだが,プログラム毎のPDCAも両輪として行っていく。ただし,プログラムレベルについては,評価の枠組みがテーマ別,国地域別となっていて全体像を評価する仕組みがないこともあり,試行錯誤しながらやっているところ。)

  • 必ずしも定量的である必要はないが,もう少し,評価の指標となるような具体的な要素を盛り込む必要があるのではないか。

    (例えばボランティア事業であれば平成23年7月の海外ボランティア事業のあり方及び同事業の実施のあり方の抜本的な見直し結果に挙げられている具体的な改善メニューへの言及等について,書きぶりを検討したい。)

  • 東日本大震災に際し,海外援助の経験を活かした積極的な活動が行われたと承知。これは防災,コミュニティ作り,各関係者の結節点としての役割強化など,今後の開発事業に活かされていくであろうものであり,次期中期目標において,今次震災対応からの教訓の活用についても記述したらどうか。
  • 一定のアウトプットを少ないインプットで達成しても,一定のインプットでアウトプットを最大化しても,いずれも効率化である。今後の事業規模について将来の方向性如何。少なくとも,事業規模の縮小を発想の出発点とすることは,日本が国際社会でコミットしている各種支援の規模に鑑みても齟齬がある。ODAの規模そのものを永続的に縮小するという方針が決まっている訳ではないと考えるが,経費の削減と事業の規模そのものの関係についても考えていくことが必要。
  • 日本の国益や日本企業支援があまりに強調された形となるのは,これまで国際社会が日本に寄せてきた信頼は,ODAの便益が日本に還元される形での事業実施によって得られた訳ではないことに鑑みても,少なくとも中期目標としては適切ではないのではないか。

    (日本の経済発展にも資するようODAの活用を考えていくべきとの考え方は,国内的にはODAに期待される点になっており,政府としても重視している。予算措置もこのような視点からなされている実情がある。ご指摘の趣旨は理解したので,書きぶりについては引き続き検討したい。)

  • 日本の国益と援助相手国の利益がトレードオフの関係にある訳ではない。「開かれた国益」が国際協力の精神に反するとは思わないので,堂々と記述したら良い。
  • 多様な関係者の「結節点」としての役割を強化するとのことだが,ただのつなぎ目ではなく,各々の関係者を最も効果的に動かす役割を担うことが重要。

    (「ODAのあり方に関する検討 最終とりまとめ」における記述はまさにそうした趣旨である。)

ウ 両法人共通のコメント

  • 効率化係数について,現中期目標期間で相当の努力を行い,目標を超過した削減を達成している。目標を超過して削減したところを出発点として更に効率化するのは理に適わないので,政府内で検討する際には,現中期目標期間での目標超過分についても勘案した検討が行われるよう,しっかり対応して欲しい。
  • 事業の効果が中期目標期間をまたいで発現することもある。また,事業そのもののみならず,その波及効果までも念頭においた評価を行うよう留意したい。
  • 効率化とは,費用対効果が基本的な視点だが,コスト削減という観点に限って言えば,将来にわたる効果,アウトカムまで念頭において評価するのは難しく,アウトプットに限定した評価にならざるを得ない面がある。
  • 評価の価値をどのように活かしていくのか,事務局側にもさらに検討して欲しい。

(6)独立行政法人制度改革をめぐる議論について,細野考査・政策評価官から,「独立行政法人の制度・組織の見直しの基本方針」(平成24年1月20日閣議決定)について概要を説明し,委員からは以下のとおりコメントがなされた。

  • 平成26年4月から新制度への移行を目指す由だが,その際には中期目標を新たに設定し直すこととなるのか。(事務局より,詳細は未定である旨回答。)
  • 国際交流基金と国際観光振興機構との統合あるいは連携強化の在り方について検討を行うための協議においては,所管する省庁間のみならず,実際に事業を行っている現場たる法人同士が話し合う場を設定すべきである。
  • 国際業務型法人の海外事務所の機能的統合について検討を進めるとのことだが,この閣議決定からは,ワンストップサービスの実現により,誰がどのような利益を得るのか,何のために実現すべきなのかが明確に見えてこない。
  • 同海外事務所の機能的統合を検討する際には,各所在国の実情を念頭においた柔軟な検討を行うべきであり,全ての国に一律的な対応をとるのは適切でない。先進国と途上国では,求められるサービスや効率性の実現方法も全く異なってくる。どのような場で誰が検討を進めるのかが重要であり,所管する省庁のみならず,独立行政法人,更には現地事務所のスタッフの意見を踏まえた検討が不可欠である。

(7)最後に,細野考査・政策評価官から今後のスケジュールについて説明を行った後,井口委員長から閉会を宣言した。

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