
第22回外務省独立行政法人評価委員会議事概要
1.日時
平成21年8月31日(月曜日)16時20分から17時40分
2.出席者
(委員)
南直哉委員長、井口武雄委員長代理兼国際協力機構分科会長、建畠晢国際交流基金分科会長、青山伸一、縣公一郎、伊奈久喜(途中退席)、入江容子、浦田秀次郎、上子秋生、新海尚子、手納美枝、榛木恵子、渡邉紹裕、柘植あづみ(臨時委員)の各委員
(外務省)
若林考査・政策評価官、門司広報文化交流部長、松永広報文化交流部部長代理、赤堀文化交流課長、須永国際協力局参事官、梨田国際協力局政策課長他
(国際交流基金)
坂戸理事、柳澤総務部長、茶野経理部長、平野総務部次長
(国際協力機構)
佐渡島理事、渡邉総務部長、岡村企画部長
3.議題
(1)国際交流基金及び国際協力機構の平成20年度財務諸表に関する意見について
(2)国際交流基金の平成20年度業務実績評価
(3)国際協力機構の平成20年度業務実績評価
(4)国際交流基金役員給与規程の改正について
(5)国際協力機構役員給与規程の改正について
(6)国際交流基金役員の退職に係る業務実績勘案率の決定
4.議事概要
(1)冒頭、南委員長から、開会の辞に続き、会議が成立していることを確認した。続いて、議題について説明を行い、委員各位の了承を得た。
(2)平成20年度財務諸表に関する意見について、若林考査・政策評価官より、各分科会での決定に従い、財務諸表を承認することについて異存がない旨の意見書を評価委員会から外務大臣宛に発出する旨説明し、了承を得た。
(3)国際交流基金の平成20年度業務実績評価について、建畠国際交流基金分科会長から、以下のとおり分科会での議論の結果について報告がなされ、分科会での取りまとめどおり決定された。
-
国際交流基金の平成20年度業務実績評価については、26の小項目の評定について「S評価が1項目」、「A評価が21項目」、「B評価が1項目」であった。また、評価対象外は3項目であった。中項目については、「A評価が12項目」、「B評価が1項目」、評価対象外が3項目であった。
(注)評定対象外は、小項目No.9(中項目No.7)(短期借入金の限度額)、小項目No.10(中項目No.8)(重要な財産の処分)、小項目No.11(中項目No.9)(剰余金の使途)であり、いずれも平成20年度においては実績がなかった。
- 総合評価案の主なポイントは、次に述べるとおり。
- 平成20年度においては、中期計画期間における業務運営効率化などに関する主要な中期的数値目標の達成に向けた効率化・経費節減、中期計画に沿った事業分野ごとの事業実施、平成19年12月に閣議決定された独立行政法人整理合理化計画への対応等、総じて順調な取り組みが行われたと評価できる。
- 運営面では、人件費については、ラスパイレス指数が国家公務員より高い理由及び基金が講じている措置の妥当性について明確に説明されているが、引き続き同指数に留意しつつ、中期的な目標達成に向かって着実に削減を進める必要がある。
- 事業面においては、日本語事業において、日本語能力検定試験の海外受験者数が前年比4%増加し、受験料収入の基金への還元額も前年比7%増となるなど、両者とも大幅に増加した前年を上回る実績を達成しており、海外日本語教育事業推進の象徴的事業となっていると評価できる。
- また、平成18年度に導入した新人事給与制度、人事評価制度については、長期的な課題として見直しやフォローが行なわれているが、職員の勤労意欲維持という観点について、今後更なるフォローや分析が必要である。
- 今後も、中期計画を着実に達成していくために、事業の質を低下させないとの大原則の下での経費削減及び外部資金の獲得努力等を継続する必要がある。
(4)次いで国際協力機構の平成20年度業務実績評価について、井口国際協力機構分科会長から以下のとおり分科会での議論の結果について報告がなされ、分科会でのとりまとめどおり決定された。
- 30の小項目の評定につき、分科会の結論は、「S評価が3項目」、「A評価が24項目」、「B評価が1項目」「対象外が2項目」となった。21の中項目については、「S評価が1項目」「A評価が18項目」、「B評価が1項目」、「対象外が1項目」となった。
(注)評定対象外は、小項目No.6(外務大臣からの緊急の要請への対応)、小項目No.25(中項目No.17)(剰余金の使途)であり、いずれも平成20年度においては実績がなかった。
- 総合評価の主なポイントは、次のとおり。
- (全般的評価)
- 全般的に、平成20年度は、旧国際協力銀行(海外経済協力業務)との統合を着実に進め、組織内の調整・融和を図りながら、新たな業務の進め方を運用し着実に業務を遂行したことに加え、統合効果の発揮に向けた新たな取り組みにも着手するなど、総じて順調と評価できる。
- 新JICAの発足に際し、技術協力、有償資金協力、無償資金協力を一元的に担う世界最大規模の二国間援助機関としての組織、業務の体制を整備し、組織に関しては、本部では地域部が司令塔となり3つの援助手法を一体的に活用する体制を構築したほか、19カ国に所在する旧JICAと旧JBICの在外事務所を一本化した。また、業務に関しては、3つの援助手法の最適な運用を可能とする業務フローを構築し、案件形成段階の迅速化を図ったほか、事業面での統合効果の発揮に向け、技術協力と資金協力を複合的に活用した支援が実現しつつある。
- 「業務運営の効率化」及び「業務の質の向上」においては、中期計画の達成に向けて取組を着実に進めたといえる。とりわけ、情報公開・広報について、国際協力の意義や国際社会の課題についても理解を促進する広報の拡充に努め、国民にも届きつつある。国民等との協力活動については、地球ひろばにおいて、市民参加協力支援の質の向上を図るとともに、外部団体による活用促進に向けた取組の結果、利用者数が大幅に増大した。災害援助等協力については、中国西部(四川省)地震災害及びミャンマーサイクロン被害対応にかかる緊急援助隊の目標時間内に派遣し、チャーター機の活用等平時の取組を活かした効果的な活動を行った。
- (新JICAの統合効果の発揮に向けての今後の課題)
- 新組織・業務体制の定期的な運営状況のモニタリングを通じ、新たな課題を洗い出し、その機動的な解消・克服を図ることが重要である。
- 統合効果の発揮に向けて、迅速化の状況及びそれに向けた取組が事業効果の早期実現につながっているかの観点からモニタリングを行い、統合のシナジー効果を発揮するための協力プログラムの開発に努めるべきである。
- 新JICAは、技術協力、有償資金協力に加え、無償資金協力の本体事業の一部を担うこととなり、職員あたりの業務量が増加しており、業務の軽量化等を通じ、組織運営の向上を図っていく必要がある。また、経費の効率化については引続き中期計画に沿って着実に実施していく必要があるが、事業の質の低下につながることの無いよう十分留意することが求められる。
- こうした効率化と質の維持・確保の要請に応えつつ、内外の新JICAへの高まる期待にも応えるためにも、新JICAの海外拠点を駆使し、現場主義をいっそう強化することが必要であり、そのために柔軟な人材配置を可能とすることも求められる。
(5)今回の評価作業の締めくくりにあたり、南委員長から、平成20年度業務実績評価に関し、「委員長所見」をとりまとめた旨説明があった。委員長所見案については、特段の意見はなく原案どおり了承された。また、平成20年度業務実績評価の結果については、独立行政法人通則法第32条に従い、政策評価・独立行政法人評価委員会に通知し、かつ、外務省のホームページで公表する旨説明があった。
(6)国際交流基金役員給与規程の改正については、南委員長から、「平成21年6月1日に国際交流基金が給与規程の一部改正を行い外務省に届出がなされた。独立行政法人通則法第53条によれば、主務大臣はその届出があった場合、その届出に係る報酬等の支払の基準を評価委員会に通知し、その基準が社会一般の情勢に適合したものであるかどうかについて、評価委員会は主務大臣に意見を申し出ることができることになっている」旨説明を行った。国際交流基金から次のとおり改正内容について説明し、特段の意見はない旨決定された。
- 「一般職の職員の給与に関する法律等」の改正を受けて、国家公務員指定職の例に準じ独立行政法人国際交流基金役員給与規程を以下のとおり改正し、役員の「特別手当」を「期末手当」と「勤勉手当」に分割し、「勤勉手当」に役員の職務実績等を反映させる仕組みを導入することとなった。
- 役員給与規程の現行の「特別手当」を、「期末手当」と「勤勉手当」に分割する。
- 「期末手当」の支給割合は、国家公務員指定職の期末手当支給割合と同率の支給割合とする。
- 「勤勉手当」の支給割合は、独立行政法人評価委員会の業績評価の結果及び各役員の職務実績等に応じて別に定める割合とする。ただし、役員への勤勉手当支給額の総額は、国家公務員指定職の勤勉手当の総額の上限を定めた支給割合と同じ支給割合を基礎額に乗じて得た額の総額を超えないものとする。
(7)続いて、国際協力機構役員給与規程の改正についての審議に移り、南委員長から、「平成21年4月1日に国際協力機構より外務省に届出がなされ、独立行政法人通則法第53条に従い、当評価委員会に通知があった」旨説明を行った。国際協力機構から次のとおり改正内容について説明し、特段の意見はない旨決定された。
- 平成21年度の役員に係る地域手当の暫定支給割合を1年間据え置く。
- 独立行政法人国際協力機構役員給与規程において、地域手当は、国家公務員の地域手当を定める「一般職の職員の給与に関する法律」に準ずることとしている。機構は、役員給与規程附則の経過措置規定により、平成20年4月1日から平成21年3月31日まで国と同様100分の16とする措置をとっていた。
- 21年度は、国の地域手当が100分の17に引き上げられたが、機構は、100分の16とする措置を平成22年3月31日まで延長する。
(8)国際交流基金役員の退職に係る業績勘案率については以下の審議を行った。
- 南委員長から、「本年8月5日付けでA理事が退職したので、独立行政法人通則法に基づいて、退職に係る業績勘案率のご審議頂きたい。また、昨年12月の第20回委員会会合においてB前理事の業績勘案率について1.0とすることで決定したが、会計検査院が不当事項とした件について追加的な確認がなされたことを受け、その件に主として関わったA理事の業績勘案率の決定に併せ、B理事の業績勘案率の本文を一部修正する必要が生じたので、今回は両者を併せてご審議いただきたい。」旨説明した。
- これに続き、若林考査・政策評価官より、「理事の退職金の金額を算定する際の業績勘案率の決定に当たっては、平成17年3月7日当評価委員会決定(「外務省所管独立行政法人の役員の退職に係る業績勘案率の決定方法について」)のとおり、各年度の独立行政法人評価の結果から導き出せる「基準業績勘案率」をベースに行うことになる。その際に、政策評価・独立行政法人評価委員会の独立行政法人評価分科会が決定した「役員退職金に係る業績勘案率に関する方針」及び同補足説明を考慮に入れる必要がある。」旨説明した。
- その後、国際交流基金から両理事の業績について概要を次のとおり説明した。
- B理事は欧州地域を担当する理事として、基金の欧州における活動の中で重要性の高いパリ日本文化会館の運営に関する官民協力の推進に特に意を用いる等、特段の貢献を行った。
平成19年度事業において会計検査院から(400万円の)助成金確定手続に関する不当事項の指摘を受けたことについては、B理事は事案発生当時経理部を担当する理事ではあったが、当該助成金交付を行った日米センターを担当する理事は別の理事であった。助成事業については、国際交流基金の事業の大半が海外向けということもあり、助成対象者との連絡面や多様な言語による関係書類への対応の必要性などから、経理部ではなく、各事業部門が担当することが合理的であるとの考えに基づき、確定を含む助成金交付に関する手続の流れが作られている。
- A理事は、総務部業務を担当した。平成19年度からの第二期中期計画及び同年度に策定された独立行政法人整理合理化計画の実行について基金全体の作業進行を指導監督した。一般管理費削減といった、その中でも重要な事項で既に平成20年度までに具体的成果が出ている。また、中長期的諸課題への対応及び組織の柔軟性と機動性を高めることを目的として、段階的な機構改革を中心となって指揮し、組織内部からの業務と組織の見直し及び意識改革をリードした。また、米州地域の担当理事として、我が国外交上の必要性を踏まえるとともに、域内各国の状況を把握しつつ、効果的に文化交流事業を実施するため、文化・芸術、日本語、日本研究・知的交流の各部署に助言や指導を行った。
平成19年度事業における会計検査院から助成金確定手続に関する不当事項の指摘については、A理事は事案発生当時の米州担当理事であり、事案にかかる事務を監督すべき立場にあった。本件は、助成対象団体から提出された領収書の記載内容について、助成金の確定権限と責任を有する日米センターが原本での事実確認をすることなく助成金の確定処理を行ったことによるものであるので、当該責任は日米センターに帰すものと考えられる。なお、昨年12月以降の動きについては既に分科会では説明したが、会計検査院から指摘を受けた領収書作成の経緯について、国際交流基金の職員が当該助成対象団体に赴くなど再三説明を求めたが回答が得られず、不誠実な対応を続けたことから、平成21年7月6日付けで当該助成金の交付決定を取り消し、助成金の返還と加算金の支払いを求めている。本件に関し、日米センターに対するB理事の監督責任に鑑み、基金は本年7月に処分を行った。
- これを受け、若林考査・政策評価官から、A理事の業績勘案率を0.9とし、B理事については前回の決定通り1.0とするとの案を説明した。
- これに続く、委員の意見等は次のとおり。(括弧内は独法または事務局側の回答)
- B理事は昨年6月に退任しているが、何故こんなに時間がかかったのか。
(B理事については、昨年12月の評価委員会で1.0ということで決定をいただいたが、その後会計検査院の不当事項指摘の原因となっている助成対象団体への追加的な調査を行う必要が出てきたので、その結論を得るのに時間がかかった。)
- 業績勘案率については平成17年3月7日付けの委員会決定に従って計算すれば両理事とも1.1となるところを事務局の提案は1.0と0.9となっているが、この判断の根拠は何か。
(政独委の方針で原則として業績勘案率は1.0を基本とすることになっている。総務省とも担当レベルで考えを聞き、また、責任の所在等を勘案してこのように提案したもの。)
そのことは良く知っているが、そのようなことだと業績勘案率を決める制度の趣旨がだんだんと損なわれていくのではないか。その点を事務局にもよく考えて欲しいということで質問したが、説明は理解した。
- 1.0を基本として、責任の軽重を勘案して、マイナスをしていくという考えなのか。
- 本件については、いちいち書類の細かいことまで理事がチェックするわけではなく、果たして理事の責任を問うほどの事案かとも思える。業績勘案率に関しては当委員会としての考えで判断して良いのではないか。
(基本的には各府省評価委員会が決定すべきことであるが、冒頭で事務局から説明したとおり、政独委の方針を勘案する必要がある。理論的には1.0を超えることもありうるが、今回は説明申し上げた諸々の点を考慮して1.0と0.9ということで提案した。)
- 今回の件については、経理部は合議先ということで事案の軽重も考慮して事業部が責任を負うとの判断について異論はないが、これを敷衍して行くと経理部のチェック機能が働いていなかったことを公に認めてしまうことにならないか。大きな会計上の処理については経理部の責任は残っていると思うが、その点はどうか。
(今回の事案を契機に助成金の確定にあたっては、経理部の所管で、外部専門家を含む助成確定審査委員会を設置し、必要に応じ同委員会において助成確定を審査することなどにより経理部の関与を強めていく措置を講じた。)
- 会計検査で指摘されるような書類を決裁したという点で経理部に全く責任がなかったということはできないと思うが、本件は経理部の責任を問うほどの事案ではないということではないのか。
(会計検査院からは、会計書類が真正なものであるかどうかを調査すべきとの指摘を受けたが、本件で問題となった領収書には旅行会社の社判が押されており、これを確たるものとした経理部の判断は業務上の手続きとして通常どおりだったと言える。ただし、助成金の確定に関しては十分な注意を払っていかなければならないと考えており、委員会の設置、さらに確定に関するチェック機能を増やすことで今後同様の事態が生じないよう努力する。)
- 以上の議論を受け、南委員長から、本件は経理部の責任というよりは経理部に合議する前の段階で書類のチェックをきちんと行うべきであった事業担当部署の責任であると思われるということで、事務局の提案どおり決定することに異存はないか確認したところ、特に異論はなかったので、事務局案のとおり決定した。なお、南委員長から、国際交流基金は今回の評価委員会での意見をしっかりと受け止めて必要な措置を講じて欲しい旨付言した。
(9)最後に、今回の会合をもって退任する伊藤委員、浦田委員及び渡邉委員への感謝の意が表明され、南委員長が閉会を宣言した。