
第434回 外務人事審議会議事要旨
1.開催日時:
平成17年8月23日(火曜日) 17時30分~19時10分
2.開催場所:
霞ヶ関庁舎(北庁舎幹部会室)
3.出席者:
高垣佑委員(会長)
有馬真喜子委員
武政和夫委員
高坂節三委員
林貞行委員
塩尻幹事(官房長)
片上副幹事(人事課長)
能化副幹事(在外公館課長)
4.議題:
5.議事要旨:
第433回(7月25日(月曜日))の外務人事審議会の議事要旨と合わせて、別紙のとおり。
(別紙)
第433回外務人事審議会議事概要
1.副幹事より、17年度の在勤諸手当予算の概要、物価・為替の変動状況等に関する調査報告について説明した。更に、在勤諸手当に関する課題について以下の概要を説明するとともに、18年度予算要求に向け審議を求めた。
- 在勤基本手当については11年度以降、平均3割、公館長4割と大きく削減されたことに加え、その後も物価や為替の上昇分が反映されていないため、実質購買力が低下し続けている。在外職員の多くは節約と工夫に努めているが、外交活動に不自由を感じつつある。
- 特に厳しい環境下で勤務する職員につき、措置が講じられていない場合がある。アチェ・スマトラ大地震に際しては、外務省職員も多数現地に派遣されたが、緊急援助隊派遣法により派遣された者は特別の手当を支給されるが、それ以外の者は、通常の出張旅費のみで困難な業務に従事することとなった。また、イラク、アフガニスタン等、生命が日夜危険にさらされるような勤務地について十分な配慮がなされていない。治安等の理由から配偶者の同伴が不可能で二重生活を余儀なくされる場合の経費負担も考慮されていない。例えば、昨年11月、コートジボワール情勢が悪化し、大使館員の家族が本邦に退避し、子女を含む家族の住居、移動、生活費が必要になった。さらに、在外職員にとって治安と医療は深刻な問題である。公館に対する事件が年間500件近くあり、勤務環境は厳しさを増している。
- その他の課題として、国内では支給されるが、在外職員に支給されない超過勤務手当と単身赴任手当の扱いがある。在外職員は、国内職員と比較して事務所外での勤務が多い等の相違があるが、最近は、急増する外交課題に取り組むため超過勤務が常態化している。最近行ったサンプル調査では、職員平均で月45時間程度の超過勤務があった。また、在外職員は、単身赴任手当を支給されていないが、実際には、子女教育や親族介護等のため、既婚者の約3割が単身赴任で負担が非常に大きい。
2.委員から概要以下の意見があった(カッコ内は副幹事からの回答ないし補足説明)。
- 単身赴任は、国内でも難しい問題だが、在外職員についても手当が認められるためのアイディアはあるのか。(配偶者が在外職員にとって重要な役割を果たしていることを踏まえ配偶者手当を支給している以上、単身赴任について手当を支給することは難しいとの議論があり、これまで認められていない。)
- 単身赴任手当を単独では要求しないということか。(特に厳しい環境下にある勤務地での単身赴任について、職員が救われる方法を検討したい。)
- 超過勤務がこれほどありながら、手当を支給しないというのは、国内であれば問題になる。
- 公務員の場合、「予算の範囲内で超過勤務を命ずる」という制約があるので、サービス残業が目に見えていないのが現状である。在外職員については在勤手当のとらえ方と関係してくるが、もし中身の濃い超勤の実態があるのなら、面倒を見なければいけないのではないか。(法律上、在外職員に対して超過勤務手当は支給しないことになっており、その背景には、在外職員の場合、事務所外での勤務が多い等の考え方がある。)
- 人件費を巡る現在の状況は厳しいが、今日の状況と、在勤手当創設時の状況の違いを研究する必要があるのではないか。今は昔のように体面を維持するというような感覚と違う。
- 在勤基本手当が外務人事審議会での議論と関係なく3割4割と削減されるのは問題である。
- 物価と為替の変動が一定期間にある一定の割合を超えたら、自動的に在勤手当の額を変えるという仕組みにはできないのか。外務省の職員が真剣に職務に取り組んでいることについて、もっと声を大にしてはどうか。
- 邦人保護を含め在外職員は忙しいということについては市民レベルでは合意が得られるのではないかと思う。(重点外交政策目標として、「国に役立つ領事業務」や「日本企業支援」がある。国民にわかりやすく説明する事を心がけている。)
- 外交について、相当難しい状況にあるというのは皆分かってきている。経済界にも在外職員を巡る現状を説明することが有益でないか。
第434回外務人事審議会議事概要
1.副幹事より、前回審議についての補足説明を交えつつ、18年度の在勤諸手当予算の要求概要について以下の通り説明し、審議を求めた。
- ワシントンに勤務する外務省職員、諸外国外交官及び商社駐在員との給与比較において、諸外国との比較では国・機関によって制度が異なるため単純な比較は難しいが、全般に日本よりも手厚く支給されている。中身で言えば、教育関係の手当を含めて日本より手厚い措置が執られている国や、教育の側面よりも子女に要する総合的経費として手厚い手当が措置されている国がある。
- 主要商社からなる民間との賞与を含めた年収比較において、商社の水準の方が高い傾向にある。また、給与以外にも実物支給している措置があることから実質的に外務省の水準より高いものと思料される。さらに諸外国においても実物支給される措置があることから、これらを含めると相応の水準になるものと思料される。
- アチェ・スマトラ等大地震に際して、厳しい環境下における勤務及びイラクやアフガニスタンのような生命が日夜危険にさらされる在勤地に配偶者を同伴できないことにより単身赴任を余儀なくされることに伴って追加的に経費が必要となることに対して十分な対応ができていない現状にある。
- 人件費を巡る情勢は厳しいが、18年度の在勤基本手当の改定は、実質購買力を確保するために要求を行うこととしたい。各公館の物価及び為替の変動については、本年5月の調査報告がある。
- 勤務環境の厳しい地域については、生活環境に見合うよう、在コートジボワール、フィジー、ジンバブエ及びアンゴラの大使館と在ジッダ総領事館の5公館について在勤基本手当の引き上げを考えていきたい。
- 身体・生命への危険が大きい勤務地である在アフガニスタン及びイラクの大使館については、配偶者を同伴した勤務を行うことが不可能であることから、家族を本邦に残留させざるを得ないことにより追加的に必要となる経費を補填するため、一層の在勤基本手当の加算を行う。
- 住居手当については、家賃相場の上昇等により、在セルビア・モンテネグロ、モロッコ、パキスタン及びアフガニスタンの大使館と在クリチバ総、サンパウロ総及びユジノサハリンスクの総領事館の7公館について、適切な住居を確保するために住居手当限度額の引き上げ要求を行う。
2.委員から概要以下の意見があった(カッコ内は副幹事からの回答ないし補足説明)
- 在勤基本手当がこれまで3~4割削減されてきたという根本的な問題をどのように取り扱うのか。実質購買力の確保及び厳しい環境下での勤務に対する対応だけを要求することが果たして良いのか。要求は全体枠の中でやり繰りされるのか。(全体予算としては増額要求となる。厳しいところには純増要求するが、総合的に判断していきたい。裁量的経費、義務的経費ともそれぞれシーリングの枠内で概算要求できることとなっており、大きなコップの中で配分する仕組みになっている。)
- 熟慮の上で要求しなければ、結果的に全体では改善につながらないのではないか。11年以降の大幅削減が無理であったと正面から意見を述べた上で元の水準に戻さなければ、根本的な改善にならない。現況を矯正しなければ何年経過しても引きずったままとなってしまう。(省員皆が同様に思っていることであり、ご提言を頂いたことに感謝したい。)
- 他省庁から外務省へ異動してきた在外職員は3~4年前と比較して、手当額の違いに驚いているのではないのか。
- 総額で一律にシーリングにはめ込む方法がおかしいのではないか。あらためて全体を見直す必要がある。
- 例えば、6年間で3~4割手当額は下がったが、当時より外交活動が活発になり多忙となっている、あるいは在勤地における社会不安が増大している、という観点から理論構成はできないのか。実質購買力の確保の観点のみをもって引き上げ要求することは無謀ではないかと思う。
- 3~4割削減されたという話を伺ったが、不要な部分を削減したとして整理されたものであるから、取り戻すための理由が心情的なものでは難しい。勤務環境が厳しいため、この程度の経費が必要であるとの説明がなければ理解されないのではないか。
- 厳しい環境下における勤務に対応する要求は当然のものとして正面から行うべきもの。先進国でさえ十分な手当が措置されていないことを前面に出して要求すべきであり、諸外国あるいは商社との給与比較等のデータも活用すべきである。
- 諸外国あるいは商社のデータの活用について、教育費はどのように反映されているのか。教育費は個々によって異なること、その他引越費用が区々であるように、水準比較する際には数値を十分精査する必要がある。(給与比較は配偶者と子供2名の標準的な世帯をモデルとしてそれぞれ比較可能な手当を含めて算出している。)
- 為替と物価の指数の取り方及び算出方法を基準化すべきではないか。毎年取扱いが異なるのは適当ではない。必ず前年の額が保障されるような仕組みにならないのか。(物価変動はIMFの物価指数を基本とし、為替については要求時は外務省、査定時は財務省がそれぞれ決定している。)
- 給与水準の見直しは、長期的なものと短期的なものに区分して改善を進めていくべきである。
- 実質的な手当増を確保しなければ、現行の実質購買力の確保だけでは不十分ではないか。データを提出して更なる改善を図るべきである。(在外職員の給与は本俸と在勤手当から構成されており、在勤手当は経費であるが、15年度に大きく切り下げられたものが現行の基礎となっている。なお、支出実態は、個々の外交活動の差異等によりその支出内容が区々であることから多寡がある。)
- 外交活動を積極的に行う職員とそうでない職員がいる場合、勤務成績に反映されるべきである。
- コンサルタントなど第三者の意見及び評価を聴取することも一つの方法である。また、商社との比較を第三者に行わせ、公表できるものを提示させてはどうか(コンサルタント会社からはアドバイスを受けている。外務省と民間企業の給与制度には違いがある。提示した資料は同種の手当で比較したものである。)
- 支出項目にセキュリティー関係の経費は含まれているのか。手当額に含まれる項目として何ら問題はなく、諸外国では真に必要な経費として増額傾向にある。確定申告の際に必要経費として団体への加入経費や語学レッスン経費なども認められていることを考慮すると、在米大の一等書記官がこの経費で十分賄えていると言えないのではないかと思われる。
- 本年の人事院勧告による俸給水準の5%引き下げに対し、今後どのような対応措置を執るのか。在外勤務にかかる経費に加えて人材確保経費の要素を取り入れるなど工夫する必要があるのではないか。
- 諸外国あるいは商社との比較は信頼性のある数値で行うべきであることから、数年かけて準備する必要がある。また、予算については、最終的に大臣がしっかり獲得する必要があり、このために万全な準備をして、緻密な議論を重ね、本来必要な予算を獲得するための理論を下から積み上げておくことが必要である。本年は説明があったこの要求で進めることが精一杯ではないだろうか。時期的に大きな要求は無理である。