平成18年9月
平成18年度インターンシップ実習生のうちの5名に集まってもらい、それぞれの実習内容や外務省の印象などを自由に語ってもらいました。参加者は(50音順)、石田愛さん(信州大学人文科学研究科言語文化専攻修士1年)、石田絢子さん(上智大学グローバルスタディース研究科国際関係論専攻博士前期課程)、竹鼻千尋さん(京都大学総合人間学部3年)、辰巳千恵さん(早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科2年)、村田直樹さん(中央大学法学部政治学科3年)です。司会はIT広報室のインターン実習生が行いました。
司会:それではまず、皆さんに外務省での実習内容について話してもらいましょう。
竹鼻:私は外務報道官組織の国際報道官室というところでインターン実習をしました。国際報道官室は、主に外国における日本関連報道のフォロー及び外国人記者への発信に関わっているところで、報道ぶりの分析や、日本にいる外国のプレスに対して記者会見をしたり、海外から記者を招聘したりしています。そのなかで、私は、大使館や総領事館から外務省本省に報告される、その国の日本関連報道ぶりの月間、週間まとめを行いました。「紀子妃のご出産」、「日本の『普通の国』化」の2つのトピックの報道ぶりに関して、調査報告を作成しました。また、外国の特派員の方にもっと気楽に外務省のことを知ってもらい、外務省員と接触を持ってもらおうということで、「第一回外務省オープンハウス」が在京の特派員を招いて開催されましたが、その際、出席確認や、簡単な準備をお手伝いしました。
石田(愛):私は、領事局海外邦人安全課にてインターン実習をしました。海外邦人安全課には、総務班、緊急事態班、援護班があり、私は海外の邦人安全対策及び援護活動の一部業務を職員の方とともに行っています。最近では海外安全ホームページの改訂作業も行いました。また、領事局内の邦人テロ対策室、海外安全相談センターにて同様に実習するとともに、短期間ですが領事局政策課の仕事も体験することができました。こうした海外邦人安全課各班及び海外安全相談センター、テロ対策業務を約一週間づつ実習し、政策課の業務に触れることで、領事局業務を総合的に把握することを目指しています。
石田(絢):私のいる課は総合外交政策局の国連企画調整課で、インターン実習内容は、同課が毎年作成している「国際機関等への拠出金・出資金等に関する報告書」の平成18年度版を作る作業で、6週間ほど携わりました。その報告書というのは、過去3年間に各省庁が国際機関にどれくらいお金を出しているのかや、日本の国際機関に対する評価や、日本人の職員が何人くらい国際機関にいるのか等が書かれていて、結構おもしろいです。外務省のホームページにも載っていますので、ぜひ見て下さい。
司会:外務省のホームページは私のいるIT広報室で作っています。
村田:僕は、石田(絢)さんと同じく総合外交政策局の国際平和協力室で実習しております。僕の受け入れ室はPKO法を扱っているところで、僕はPKOに関連する資料の改訂作業を行っています。現在、16個のPKOが実施されています。日本は、ゴラン高原に自衛隊を派遣していて、僕はそれにまつわる、省内でも省外でも閲覧できる資料も作っています。
金銭面は石田(絢)さんのいる国連企画調整課が担当しているので、僕が資料を作るときはそちらのほうにも決裁をまわして、予算面のことを全部書いてもらっています。
また、外務省ホームページに掲載するために、「平和構築を担う日本人たち -先達からのメッセージ- 」と題するインタビューも行いました。
辰巳:外務報道官組織報道課実習生の辰巳です。私の課は取材調整班、情報発信班、総務班、庶務班の4つの「島」とよばれている班があり、取材の協力や、大臣や副大臣の記者会見の内容をホームページに掲載したり、国民への発信などを主に行っています。私がいるのは総務班で、いろんな仕事を手伝わせてもらっていて、ホームページに掲載する内容を書いてみたり、フィンランドに小泉総理が行く前に、官邸での記者さんに対する事前勉強会について行って資料配付したり、昨日は塩崎副大臣主催のレセプションについて行き記者の方に資料配付しました。いろんな所に連れて行ってもらい、仕事としてはすごくおもしろいです。
村田:皆さん、実習期間は何週間ですか?
石田(愛):6週間です。
石田(絢):私も6週間。大体4~6週間ぐらいですか?
村田:僕は4週間。6週間の人はずっと同じことをやっているんですか?
石田(愛):私は領事局内の様々な業務に携わっています。よって6週間の内、業務内容は各週で異なります。いろんな班を回っています。領事局は、各班・室・課の業務内容が切って離すことができません。各業務内容について一線を引くことは大変難しい現状です。様々な業務が関連して領事局があるという感じです。
石田(絢):逆に私は6週間ほぼずっと同じ業務、拠出金の報告書の作成でした。拠出金の報告書というのは、外務省のいろんな課が関わっていて、他省庁も、国際機関に拠出しているところには協力して頂いているので、そういう意味ではずっと国連企画調整課にいたのですけど、他の課や他省庁のこともちょっと分かったかな、と思います。
石田(愛):驚いたことの一つに、インターン実習生がやっていることはあくまで本職員の手伝い程度で実際業務も認められず、流れていくものなのかなって思ってました。しかし、意外と即、反映する部分がありました。例えば、自分の準備した文書がホームページに掲載されたり、実際に一般の方から問い合わせの電話に出たりしました。ホームページの改訂業務では、朝に起案したものがすごい勢いで決裁にまわって、午後の一番ラストで掲載されたりとかもありました。
村田:辰巳さんがいるところって、本当に外と接触がありそうですね。僕はどちらかというとずっとデスクワークでした。
辰巳:そうですね、人とのつながりは多いかも知れません。ずっと座っていることはなくて、あっち行ったりこっち行ったり動いてます。
村田:ミーハーなんですけど(笑)、有名な人とかに会いました?
辰巳:いろんな国の駐日大使や、記者会見では大臣、副大臣、報道官、国会議員などにお会いしました。
村田:僕は以前、選挙の時に議員のところでボランティアしていたのですが、そのときは比較的に立場が平等でしたね。この職についたら一生そういうことはあり得ないのではないかと感じます。学生のパスポートっていうのはすごい強力だな、と思いました。
辰巳:学生って言うレッテルはすごく大きいから、どんどん行動しなさいって先輩に言われました。
村田:社会に出る前にいろいろやっておこうっていうのは、インターン実習をやってすごく思うようになりました。
司会:みなさんは、外務省にインターン実習生として入られて、入る前と後では印象は変わりましたか?
辰巳:入る前はみんながみんな仕事に追われて、走り回っているイメージをもって入ったんです。でも、外務省に入ったら、やっぱり分担制だから、時期によって課の忙しさが違うということに気が付きました。
石田(愛):インターン実習を通じて分かったのですが、外務省職員は担当する仕事が局を越えてだいたい二年間おきくらいに変わっているということです。例えば私の担当官である、海外邦人安全課総務班の班長も、かなり長い間、報道・広報の方にいたのですが、今は領事局に来ています。なんというか、専門性やキャリア、そういうものが必要とされるよりは、どちらかというと、新しいものに対する適応能力とかが求められているのかな、というのをすごく感じました。
村田:僕は、陰でひそひそやったり、二枚舌、三枚舌を使って相手と交渉し合う、というのが外交官のイメージだったんです。実際もちろんそういう人たちもいると思うし、世界中でそういう人たちが活躍して情報を得たり交渉して、自分たちの意図するものを手にしているのかとは思うのですが、やっぱりそういう人たちの下には、ものすごく多くの人たちのロジ(ロジスティックス=支援業務)だとか、サブ(サブスタンス=実質的な内容)だとかなりの仕事があって成り立っているんだなと言うことが分かりました。外務省っていうのは5000人のチームプレーなんだな、ということをつくづく感じました。
石田(絢):村田さんの話は結構私も同感で、「外交」とか「外交官」って聞くとすごく華やかなイメージが普通はあったりすると思うのですけれど、実際仕事の九割九分九厘くらいは、ペーパーをいろいろ書いて、出して、決裁をとって、といった感じの地味な作業。でも残りの一厘、華やかで重要な部分のためにみんなが努力している、そういうところなんだな、ということがわかりました。あとは、外務省の人たちは私が描いていた「国家公務員」というのとは違いました。服装が他の省庁とは違ってカジュアルめな人が多い、というのが第一印象。それから外務省はセキュリティーが厳しいというのも感じました。
村田:あと思ったのは、僕の受け入れ室(国際平和協力室)が特殊なのかもしれないのですが、いわゆる利益集団とか圧力団体からの影響力はあんまりなくて、行政官の方が計画・立案したものが比較的通ると感じました。結構こうしたらいい、ああしたらいい、とか決められているから、「え?そんなことができるのですか?」って聞いたら、大丈夫だって言われました。地域課とかだと結構厳しいものがあるのかも知れませんが、他の省庁と比べたら、そこは結構自由に考えたものを実行できる省庁なんだなぁと感じました。
司会:ところでインターンは無給で、交通費、お昼代もでない。それでも夏休みの4週間とかの時間をかけてインターンをする意味は皆さんにとってどれくらいありますか?
石田(愛):私はむしろお金を払ってやらせてもらってもいいって思うくらい、インターンをやるのはすごく価値があるって思います。というのも、ここ(外務省)ってかなり密閉された空間で、外から内部を知りたいって思っても、それを知り得ることができないので。今は毎日毎日が勉強、本当にいるだけで外務省の雰囲気が分かり、周りの職員の方と接するだけでも勉強になっています。ですから、無給でも私は全然問題はありません。
石田(絢):私もやってよかったと思っています。学生が外務省にふれる機会って、インターンの他にもタウンミーティングとか、政策シミュレーションだとか、イベントはいろいろありますけど、それだと実態は全然わからないのですよ。私もそういったイベントに何回か参加したのですけど、インターンのようにオフィスの中まで入ることまではできない。そう考えるとインターンでいろいろなものを見られたので、頑張って良かったなって思います。
村田:それはもらえるに越したことはないですけれども、本当にそれだけの価値はあるって思います。実際働いている方のすぐ隣でデスクを貸して頂いて仕事できると言うのは、すごいありがたい話だと思います。できれば一つの課室ではなくて、2個とか3個の課室でやらして頂けると、もっといろんなことが勉強できるのではないかと思います。
辰巳:インターンが始まる前の時期、みんな夏休みの予定とかたてる訳じゃないですか。その時は「1ヶ月間、私は働かなきゃだめなんだ」と思ったんですけど、やっぱり実際入ると、いるだけでも学ぶべきことはあるし、それは外務省でしか知ることができないことだったりする。普通は社会に出てから学ぶ、電話の取り方なども身に付いてきて、一日一日が無駄じゃない。官邸に行ったり、レセプションに参加したり、普通の学生にはできないことをやっているから友人と遊ぶ時間を削って、一ヶ月働くのも構わないと思いました。
石田(絢): インターンも用事があったら休んでいいだとか、インターン同士が交流していいとか、インターンを自由にしておくためにも無給にしていると聞きました。
石田(愛):お金をもらったら、それだけの責任ある仕事をやっているのだろうかと私は気になっちゃう方だから無給の方がそういった気を使わなくてもよいのかな、と思いました。
司会:皆さん外務省に入りたいですか?
石田(絢):私は今大学院でしている国連研究に必要だから外務省のインターンを希望しました。日本が国連に対してどういう風にアプローチしているのか、日本がお金をどれくらい出して、どれくらいプレッシャーをかけているか、とかそういうことを知りたくて。でも、外務省でいろんな人と話していくうちにけっこう外務省おもしろそうだなあ、ちょっと入ってみたいかな、と思い始めているところです。
石田(愛):私は外務省に入りたいって思ったことは今までありませんでした。本年度内閣府主催の青年交流事業に参加し、内閣府職員をはじめ、青年として参加した省庁の人との対話を通して、国家業務もちょっと面白いかなと思いました。最近は本当に面白いなって思います。でも外務省というよりは、やっている仕事の内容の方にますます面白みを感じています。現在のインターン業務に関連して、邦人保護活動や広報活動とかマスコミ関係とかもやってみたいなっていうふうにちょっと変わってきています。
村田:僕は一応入省を希望してるので、どんなところかなっていうのを知りたくてインターンに応募しました。そして、外務省って言うのは役所なんだな、というのをつくづく感じました。内実を見られて本当によかったな、と。実際の外務省と乖離した、イメージの中の外務省を官庁訪問で語らないで済んだので。
司会:一般的にイメージする外務省っていうのはどんなものですか?
村田:「毎日レセプション。」でも、それは課によって違うのではないかな、と。今聞いていると、プレス関係の人は人と接する機会が多いし、僕みたいに資料作っている人はずっと作っているし…。一概にそうだ、そうじゃない、ってことは分かっていたんですけど、実体験として感じたと言うところですね。
辰巳:私はまだ2年生なので、将来については全然決めてないですけど、高校生の時からずっと外交官になろうと頭の中で描いていて、将来の夢として先生にも親にも言ってきたんです。でも実際、そんな簡単に言っているけど、国家I種ってすごく難しい試験らしいし、どうなんだろ?と思って親に相談したら、「ちゃんと自分の目で見てガツンとへこたれてきなさい!現実を見てきなさい!」って言われて来ました(笑)。
でも実際来てみて、むしろもっと興味がわいてきてしまったというか、本当に楽しい所なんだ、こんなに働きやすい所なんだ、っていい感じのギャップを感じてびっくりしましたね。本当はもっとすごいダメ出しされて、私には外務省むいてないって思いに来たんです。「出て行け」って言われると思いきや、全然!! 仕事や課題とかもたくさん与えてもらっているし、毎日が充実して1日があっという間に過ぎてしまいます。やりたいことがまた増えてしまって困りましたね。
司会:一言で言うと外務省ってどういうところ?と聞かれたら、何と答えますか?
村田:華やかなところもあるけど、役所だよって。法律に基づいて活動しなければならないところなので、厳格なルールのもとでよく言えば手堅くやっているんですけど、悪く言えば、いまいち柔軟性に欠けるところもあると思うのですが、そういうところが他の役所と変わらないという意味で、役所だよって。
辰巳:課の人が言っていたんですけど、普通の企業とかで働くと、お金とかになって、成果が見えるじゃないですか。公務員というのは、国のためにやる仕事だから、どんなに頑張っても成果が見えないことだってある、ということを言っていました。それをやりがいって感じるか、つまらないって感じるかはその人次第ですよね。目に見えた方がやりやすい仕事もあるし、そうでなくて人のためを思ってやる仕事がいいっていう人もいるし。
石田(絢):さっきも言いましたが、地味な仕事が九割九分九厘で派手な仕事が一厘。でも、やっぱり日本を守っている重要な所なんだな、と思いました。
石田(愛):本職員の方は仕事に誇りを持っているのだ、と感じました。疲れている時があっても、仕事に熱意があるから続けられるのかなと思いました。体力的・精神的に問題があっても、やっぱりやりたい事というのをみなさんしっかりもっているところなんだな、と感じました。
司会:それではこの辺で座談会を終わりにします。みなさん、ありがとうございました。