日本漁船「第31吉進丸」に対する銃撃・拿捕事件に際し一名の死亡者及び三名の被拘留者が発生したことを受け、山中外務大臣政務官が現地に派遣された。札幌・根室にて情報収集に努めるとともに、海上保安庁の巡視船にて国後島へ出向き、犠牲者ご遺体の引き取り、拘留乗組員との面会並びにロシア当局責任者との面談を行った。
日付 | 時間 | 経過 |
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8月17日(木曜日) | 午後 | 札幌市内にて以下の関係者と会談 ・高橋はるみ北海道知事 ・自民党道連事務局長 丘珠空港より中標津空港へ航空機で移動後、自動車で根室入り 藤原弘根室市長と会談 |
8月18日(金曜日) | 午前 | 早朝より根室市内にて以下の関係者と会談 ・土屋品子衆議院議員(外務委員会理事)、前原誠司衆議院議員(前民主党代表) ・四島交流訪問団西澤団長(中標津町長)ら ・小池晶道議会議員(自民党道連総務会長)ら ・廣野秀夫北海道根室支庁長 四島交流日本側訪問団ロサ・ルゴサ号出航見送り 根室湾中部(湾中)漁業協同組合訪問 |
8月18日(金曜日) | 午後 | 乗組員ご家族訪問、記者会見、巡視船さろまにて国後島古釜布に向け出発 ロシア当局と面会について交渉の末、同港沖合にて船中泊 |
8月19日(土曜日) | 午前 | はしけにて代表面談について交渉の上、上陸 日ロ代表団面談(ロシア側代表者は以下のとおり) ・ジャブレ―エフ サハリン沿岸警備局次長 ・イワノフ 現地国境警備支隊長 ・セミョンチェフ 現地国境警備支隊次長 ・コ―ワリ 南クリル地区長 拘留中の3名の乗組員と面会 盛田光広さんのご遺体引取り、はしけ内で黙祷 さろまにご遺体を収容し、古釜布港を出港 |
8月19日(土曜日) | 午後 | 根室港着岸後、根室海上保安部にてご遺族によるご遺体確認 別室にて3名のご家族へ面会について報告 記者会見 |
(イ) 高橋北海道知事との会談(知事公邸)
知事から、事件への抗議と遺体の早期返還、乗組員の早期解放について要望書が手交され、山中政務官の迅速な派遣への感謝が表明された後、以下の要請・意見を伝えられた。
席上、水産林務部長より、派遣された山中政務官が北海道水産政策審議会委員として長く尽力した実績と現地事情に精通していることへの信頼感について謝意が表明された。
(ロ) 自由民主党北海道支部連合会(自民党道連)事務局長との面談
自民党道連として対策本部を根室に設置したこと、及び、自民党議員は直近の四島交流について自粛すべきとの判断もあり、道議会議員2名が抗議のため渡航を取りやめたことについて説明があった。
(ハ)藤原根室市長との会談
藤原市長より、北海道の水産事情及び北方領土の事情に詳しい山中政務官が迅速に現地派遣されたことに、とても心強い、との感謝が表明された。
重ねて、事件への抗議と遺体の早期返還・乗組員の解放について要請があり、以下の要請・意見が伝えられた。
(イ)四島交流日本側訪問団に参加のため根室入りしていた土屋品子衆議院議員(外務委員会理事)、前原誠司衆議院議員(前民主党代表)との意見交換
意見交換を通し、今回の銃撃・拿捕事件に関し、与野党の枠を超えて協力するとの共通認識を得た。
(ロ)四島交流訪問団西澤団長(中標津町長)等による表敬訪問
一旦は団長辞退を表明したが、四島交流は北方領土問題解決へ向けての重要な事業であるとの各方面からの慰留を受け、今回の訪問を成功させたいとの思いに至り、団長として出航する、との西澤団長の決意を伝えられた。
(ハ)自民党道連対策本部小池道議会議員等による表敬
自民党道連対策本部の議員等より、抗議のため四島交流辞退をした旨伝えられるとともに、山中政務官に対し、2月の「北方領土の日」式典に続く根室への派遣に関し謝意が述べられた。
(ニ)廣野秀夫北海道根室支庁長による表敬
遺体の引取りに加え、3名の乗組員と面会し解放を実現してほしいとの要望が伝えられた。また、山中政務官が北海道農業・漁業政策の審議会委員として尽力した経緯に対する謝意を伝えられ、できる限りの助力をしたい旨申し出があった。
(ホ)四島交流日本側訪問団ロサ・ルゴサ号出航見送り
山中政務官より渡航者に対し、現地住民の方々に事件の顛末を伝え、遺体の即時返還、乗組員の即時釈放に関し理解と支持を広げるよう要請し、根室港にて出航を見送った。
(ヘ)根室湾中部(湾中)漁業協同組合訪問
訪問には理事全員が出席し、遺体の早期引取り、乗組員の早期釈放への尽力、漁業の現状の理解と安全操業、北方領土問題解決への国の取組につき要請があった。
この時点で、天候不順のため、遺体引渡しのため国後へ向かっているサハリン駐留のロシア側責任者が古釜布港では上陸できず、他の地点から上陸し陸路古釜布へ向かっているとの情報を確認した。
(ト)乗組員のご家族訪問
山中政務官は、乗組員のご家族のご自宅を訪問した。
坂下船長ご家族、盛田氏ご家族、紙屋氏ご家族と面会し、状況を説明した上で励ましの言葉をかけ、ご家族の言葉をお預かりした。
川村氏ご家族については不在のため面会できなかった。
(チ)記者会見
根室海上保安部にて、これから国後島に向け出航する旨の会見を行った。
(リ)海上保安庁巡視船さろま出航
出航が決定したが、ご遺体引き取りについては確約がとれていたものの、3名の乗組員との面会等についてはその時点では白紙であった。
風が強く吹き、寒さが厳しくなってきたため、山中政務官は地元関係者の配慮により用意された帽子、長袖上着を着用し、支庁長、市長、漁協関係者、報道陣等の見送りの中、出航した。
(ヌ)国後沖到着
ロシア当局より悪天候のためはしけを出せないためご遺体引渡しは翌日に延期したいとの連絡があり、一時間近くにわたり無線を通じての洋上交渉が行われた。
根室港への一時帰港も選択肢としてあげられたが、波のうねりの強い湾外で待機することになったとしても、毅然として引渡し・面会まで引き下がらない姿勢を顕示することが重要であるとの山中政務官の判断から、洋上待機を決定。この交渉で、ロシア当局より、翌朝の乗組員3名との面会につき基本的合意を取り付けた。
(イ)はしけ上での交渉
ロシア側により用意されたはしけは日本より供与した希望丸である。
はしけまで出迎えたロシア側代表は、以下の通り。
上陸後、乗組員3名との面会及びご遺体引渡しを行う、とのロシア側説明に対し、山中政務官より、乗組員3名との面会、ご遺体引渡しに加え、ロシア当局責任者による事件概要の説明を受けた上で日本側要求を伝達したいとの強い要求を伝え、最終的にロシア側が受け入れて、上陸した。
(ロ)日ロ代表団面談
面談では、山中政務官より以下の内容について厳重に抗議を行った。
これに対し、ロシア側より以下の説明がなされた。
これらの説明に対し、山中政務官は以下の点につき強く反論した。
以上の抗議、要求に伴い、以下の事項が日ロ間で確認された。
また、ロシア側からは、船長以外の2名については、船長より早く解放されるとの見通しが示された(8月30日に解放された)。
(ハ)3人の乗組員との面会
山中政務官は、「友好の家」にて拘留中の乗組員3名と面会した。
面会時は、ロシア側代表者、カメラマンら複数のロシア側関係者が終始同席していたため、日本政府の代表者に対し違法操業を認めたかととれる発言を残さないことが適当との判断から、事実関係については質問せず、体調などへの気遣いや現状の確認などを行った。
その後、ロシア側代表にも内容が伝わるよう同時通訳を要請した上で、山中政務官は、3人に対し以下の立場について改めて伝え、ひとりひとりと強く握手を交わして励まし、退出した。
(ニ)ご遺体引取り
雨のため岸壁では引取りを行わず、はしけ内でロシア側よりご遺体の引渡しを受けた。
山中政務官より黙祷の呼び掛けがあり、全員で一分間の黙祷を行った。その後巡視船さろまに収容し、古釜布を後にした。
(ホ)ご遺体の確認
根室港着岸後、根室海上保安部内で、山中政務官が付き添い、盛田光広氏のご家族がご遺体と対面し本人確認を行った。
その後いったんご遺体は旭川医科大学に運ばれ、司法解剖が行われ、終了後直ちに根室に戻されご遺族に引き渡された。
(ヘ)3名のご家族への報告
山中政務官は海上保安庁内の別室にて拘留されている3乗組員の家族に面会し、国後での様子等について詳細を伝えた。
(ト)記者会見
北海道根室支庁においてご遺体の引取りと3乗組員との面会に関する記者会見を行った。