山中外務大臣政務官は、6月18日(ジュネーブ着)~20日(同発)、第1回人権理事会及び軍縮会議に日本政府代表として出席するためジュネーブ(スイス)を訪問したところ、概要以下のとおり。
日付 | 予定 |
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6月19日(月曜日)午前 |
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6月19日(月曜日)午後 |
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6月20日(火曜日)午前 |
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6月20日(火曜日)午後 |
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(1)開会式では、アナン事務総長、エリアソン総会議長、マータイ女史(ノーベル平和賞受賞者)がスピーチを行った。特にアナン事務総長は人権理事会が今後の地位見直しの過程で現在の総会下部組織から主要機関に格上げされることへの期待を表明した。
(2)また、各国及び国際機関の要人が多数参加する中で、我が国よりは山中政務官が出席し、理事会初日にステートメントを行うなど、我が国の人権に対する基本的考え方を提示した。
(3)山中政務官は短期間の滞在中、16の要人との会談(12ヵ国及び4名の国際機関関係者)を実施した。
マータイ女史と山中政務官
(4)山中政務官の人権理事会でのステートメント要旨(ステートメント本文はこちら)
人権理事会第1回会合でステートメントを行う山中政務官
なお、簡単にではあるが北朝鮮の人権状況に言及した韓国の潘基文外交通商部長官が、山中政務官のステートメントを聞くために、わざわざ戻ってきたことで、日本と韓国の連携を示す結果となったことは特筆すべきことである。この流れで、翌日の軍縮会議で、山中政務官の直前の潘基文長官のステートメントを山中政務官は会議場で聴取し、答礼としたことも付言する。
(5)山中政務官の軍縮会議(CD)でのステートメントの要旨(ステートメント本文はこちら)
他の国からも反応が良かった旨、軍縮代表部からの報告あり。
軍縮会議でステートメントを行う山中政務官
(1)要人との会談では、機能強化の観点から人権理事会に臨む我が国の姿勢について説明し、意見交換を行った。
(2)また、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況について、今後、国連等で引き続き取り上げていくため、国際的な連携の強化を要請した。更に強制的失踪条約の早期採択への支持を求めた。
1)アナン国連事務総長(19日)
ハイチの問題に関して、政務官が大統領就任式に出席したことから、支援に関するフォローアップ会合でアナン事務総長と7月に現地で会うという話が出た。
アナン国連事務総長と言葉を交わす山中政務官
2)シュタインマイヤー・ドイツ外務大臣(19日昼食会同席)
ドイツ・日本の今後の交流の促進と、イランの核問題、北朝鮮のミサイル発射準備の問題などに関する意見交換をおこなった。
3)ボット・オランダ外務大臣(19日昼食会同席)
イランの核問題、北朝鮮問題、アフガニスタン問題、コソボ問題、国連事務総長選等に関して意見交換をおこなった。
4)楊・中国外交部副部長(19日)
ドーハでの日中外相会談や中国首脳による日中関係重視の発言を踏まえ、青少年交流等相互理解の促進を含め前向きに取り組んで行くことで基本的に一致した。また、山中政務官よりの日中人権対話再開の提案に対し、中国側からは検討したいとの回答があった。中国側より、靖国神社参拝について提起があったのに対し、政務官は従来からの日本政府の立場を説明した。なお、北朝鮮の国内外での人権侵害に関しては、中国側は朝鮮半島の安定のための努力を支持すると説明。
5)トゥオミオヤ・フィンランド外相(19日)
次期EU議長国であるフィンランドと今後の協力・連携の強化を確認した。さらに、EUの中国への武器輸出禁止措置解除への懸念を表明し、拉致問題解決への協力を依頼した。
トゥオミオヤ・フィンランド外相と山中政務官
6)エリアソン国連総会議長兼スウェーデン外相との会談(19日)
総理のスウェーデン訪問(平成18年5月)につきフォローしていくことを確認した。また、安保理改革の進展に向け意見交換を行ったほか、平和構築委員会の今後の取り組みに関し協力していくことで一致した。さらに、山中政務官自身が5月にハイチの大統領就任式典に参加したことを紹介したところ、ハイチの復興には国連がどうかかわるべきか意見を求められたので、政務官が実情を紹介しつつ分析した。
エリアソン国連総会議長兼スウェーデン外相と山中政務官
7)ゴンザレス・メキシコ副外相(19日)
山中政務官から、人権理事会の議長に選出されたことへの祝詞を述べ、メキシコ側から、第4回世界水フォーラムへの皇太子殿下のご出席への感謝が述べられた。山中政務官より、人権理事会を対話と協力の基本姿勢で運営することと、ワーキング・グループの設置及び、ピア・レビューとマンデート・レビューの必要性を述べ、賛成を得た。また、人間の安全保障に関するフレンズ・グループの立ち上げへの協力を要請し、快諾を得た。なお、次期WHO事務局長選挙につき我が国尾身候補への支持を要請した。
8)ミシュリン・カルミ=レ・スイス外相(19日夕食会同席)
人権理事会第一回総会の成功を祝した。日本とスイスに良好な関係維持を確認。
同大臣より、女性外務大臣による女性の人権問題に関するステートメントの取り纏めを提案。基本的には賛成であるが、原案に対する意見の集約をした原案を送信するよう要請。山中政務官より、北朝鮮の人権侵害においては、脱北者も含め女性が非常に辛い立場におかれていることを強調した。
9)コリンダ・グラバル=キタロビッチ・クロアチア外務・欧州統合相(19日夕食会同席)
同大臣から、クロアチアと日本はサッカーで引き分けであったが、日本の高円宮妃とともに観戦し、日本を非常に身近に感じた。クロアチアのような独立間もない国においては、女性問題はまだ緒に付いたばかりであり、今後の女性大臣との協力を提案した。日本のこれまでの女性の地位に関する法的な取組と現状を披露し、今後の協力を約束。なお、北朝鮮の人権侵害においては、脱北者も含め女性が非常に辛い立場におかれていることを強調した。
スイス・クロアチア主催女性閣僚対象夕食会の様子
10)ウィティット北朝鮮人権状況特別報告者との会談(20日)
拉致問題を含む北朝鮮の人権問題の取扱いの基本方針を確認すると同時に、政務官から、同報告者の報告に、3カ国被害者家族の訪日、拉致被害者家族の訪米、韓国家族の訪日などの最新の動きを説明し、同氏から資料の提供の依頼があった。なお、同報告者の任期延長に関して、日本は支持する旨伝えた。
ウィティット北朝鮮人権状況特別報告者と山中政務官
11)エレラ・ウルグアイ外務次官(20日・先方より申し込み)
人権理事会に対する基本姿勢の一致の確認。安保理改革の進展に向け意見交換を行った。さらに、山中政務官側からの北朝鮮の拉致問題及び、同外務次官から児童の商業的性的搾取の問題に関しても協力を確認。
12)サマラシンハ・スリランカ災害管理・人権問題担当大臣(20日・先方より申し込み)
津波に際する我が国の支援に対して謝意表明がなされ、引き続き関連の協力を進めていくことで一致した。また、人権問題の存在するスリランカ政府が人権問題担当大臣ポストを新設したことの意欲への理解を求めた。山中政務官より、明石代表も尽力していることでもあり、今後のスリランカの和平と人権問題の解決を期待する旨を述べ、さらに、次期WHO事務局長選挙につき我が国尾身候補への支持を要請した。
サマラシンハ・スリランカ災害管理・人権問題担当大臣と山中政務官
13)アルブール国連人権高等弁務官との会談(20日)
人権理事会をどう運営するつもりかの説明を求めたが、明確な指針は未定。
同高等弁務官はカンボジア訪問に関する感想を披瀝。北朝鮮の人権問題を報告に盛り込むよう日本側から要請したことも踏まえ、23日の同高等弁務官の報告では、北朝鮮の人権問題に言及された。
アルブール国連人権高等弁務官と山中政務官
14)マセメネ・レソト法務大臣(20日)
同大臣より、日本の支援に感謝の意。また、近隣諸国にも人権蹂躙を行っている国があるとして、北朝鮮による拉致家族の問題への理解を示した。山中政務官より次期WHO事務局長選挙につき我が国尾身候補への支持を要請した。
マセメネ・レソト法務大臣との会談
15)オリ・ネパール副首相兼外相(20日・先方より申し込み)
民主主義の定着に向けた努力につき説明を受け、日本の支援に期待が示された。
山中政務官から、日本としても、ネパールが今後民主的な国家として安定することへの期待を述べ、人権問題での協力を期待する旨述べた。
オリ・ネパール副首相兼外相と山中政務官
16)マッカートニー英国貿易産業省及び外務・英連邦省閣外大臣(20日)
主要関心国の一つである英国と今後の協力・連携の強化を確認した。
マッカートニー英閣外大臣と山中政務官
山中政務官は、国際機関邦人幹部職員との昼食懇談会を行った。それぞれの立場からの意見交換を行った。その際、国連職員の女性が、山中政務官の著書「運良く女性に生まれたら、世界を舞台にひと仕事」を読んで感激し、現在の職業を選んだ旨述べた。
(1)山中政務官は人権理事会開会式等各種行事に参加。ハイレベル・セグメント初日の力強いステートメントの発出、限られた日程の中でありながら、多数の要人との内容のある会談等を通じ、今次、人権理事会のスタートに際し我が国のプレゼンスを最大限に示し、以下の我が国の基本的立場を提示したことは非常に有意義であった。
(イ)均衡のとれたアプローチを重視し、人権理事会が効果的かつ結果重視たることを期待する
(ロ)北朝鮮による拉致問題は複数の国に及ぶ国際的な広がりを持つ問題であり、その解決に向け国際的な連携を訴え、また、北朝鮮に民主主義尊重、国際社会との関係構築を求める
(ハ)人間の安全保障に基づく社会的弱者の保護・能力強化を含め、人権分野で具体的施策に取り組む
(2)人権理事会が如何に実効性を担保するかが今後の課題であり、そのためのフォローアップが必要。対話と協力を基調としつつも、今後の活動方法の議論を通じ、国際的連携により実効的手段を確保することが肝要。特に、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況については、今後の人権理事会、国連総会第3委員会などを注視しながら、議論を通じて如何に具体的な対応をとることができるかが課題。
(3)軍縮会議におけるステートメントは議論を喚起するような内容であったが、話し終えると同時に、幾つかの国の大使等が握手を求めてかけ寄り、「われわれが言いたくてもいえないことを、スパッといってくれた」、「これで、10年間停滞していた軍縮会議が動き出す良いきっかけとなった」等のコメントを述べた。このことからも、山中政務官のステートメントが説得力を持ち、軍縮会議に貢献した事の証左といえる。今後我が国としては、FMCTの交渉をはじめとするCDにおける実質的作業の開始が早期に実現するよう引き続き努力していくことが肝要。
(4)日本側の要請も踏まえ、23日のアルブール人権高等弁務官の報告の中に「北朝鮮の人権問題」が明言された。
(5)また、日本がステートメントの中で強調した強制的失踪条約(「拉致」が明記されている)が29日にコンセンサスで採択されたことで、今後の国連総会での採択へのはずみとなった。