外務本省

山中外務大臣政務官のブラジル(リオデジャネイロ、マナウス)、パラグアイ訪問
(概要と評価)

平成18年9月

 山中外務大臣政務官は、9月3日(リオデジャネイロ着)から8日(パラグアイ発)まで、G77科学技術閣僚会合出席、ブラジルの日本企業関係者及び移住者・日系人との意見交換、パラグアイ移住70周年記念式典出席等のため、ブラジル(リオデジャネイロ、マナウス)、パラグアイを訪問したところ、概要以下の通り。

<山中外務大臣政務官の日程>
日付 時間 予定
9月3日(日曜日) 午後 G77科学技術閣僚会合出席
シバル・インド科学技術大臣との会談
日系4団体代表との懇談
9月4日(月曜日) 午後 モト・ホンダ社訪問
マナウス・フリーゾーン日本進出企業代表との懇談
9月5日(火曜日) 午前 エフィジェニオ・サーレス移住地視察(マナウス市郊外)
午後 国立アマゾン研究所所員との意見交換とアマゾン河視察
移住者・日系人代表との懇談
9月7日(木曜日) 午前 ドゥアルテ大統領、ラミレス外相との会談
カスティグリオーニ副大統領との会談
午後 パラグアイ政府、議会要人との意見交換
JICA派遣ボランティアとの懇談
移住者・日系人代表との懇談
9月8日(金曜日) 午前 日本人移住70周年記念祭典、慰霊祭出席

1.リオデジャネイロ(ブラジル)

(1)G77科学技術閣僚会合

 3日、山中政務官は、ブラジルのアングラ・ドス・レイスにて開催されたG77科学技術閣僚会合に出席し、グローバリゼーションの進行する世界における科学技術の果たす役割、日本の貢献等に関するスピーチ(英文)を行った。

(写真)(スピーチを行う山中政務官)
(スピーチを行う山中政務官)
(写真)(G77科学技術閣僚会合の模様)
(G77科学技術閣僚会合の模様)

(2)シバル・インド科学技術大臣との会談

 次いで、シバル・インド科学技術大臣とバイ会談を行い、両国の友好関係促進および現在調整中の科学技術ワークショップ等を中心に懇談を行った。

(写真)(シバル・インド科学技術大臣との会談)

(シバル・インド科学技術大臣との会談)

(3)日系4団体代表との懇談

 また、リオデジャネイロ在住の日系4団体代表と懇談会を行い、日系人の活動(環境保護活動を含む)について意見交換を行った。

(写真)(リオデジャネイロ在住の日系4団体代表他)

(リオデジャネイロ在住の日系4団体代表他)

(4)評価

 G77加盟国の多数の科学技術担当閣僚等が出席して行われた発展途上国における科学技術に関する会合に科学先進国のわが国から山中政務官が出席し、わが国の科学技術に関する取り組みや国際貢献等を伝えたことは、G77諸国にわが国のプレゼンスを示す上で大きな効果があった。
 また本会議出席の機会に行ったシバル・インド科学技術大臣とのバイ会談は両国の友好関係発展と科学技術交流進展のために有意義であった。
 更に、リオデジャネイロ在住の日系4団体代表との懇談会は、現地日系人との信頼関係増進の観点から有意義であった。

2.マナウス(ブラジル)

 山中政務官は、マナウスにおいて、マナウス・フリーゾーン(ZFM)の日本進出企業のモト・ホンダ社(オートバイ製造、従業員6千人)を訪問し、その他の同フリーゾーンの日本企業の幹部とも懇談を行った。また、マナウス近郊にあるエフィジェニオ・サーレス日本人移住地を視察、移住者代表と懇談した他、1世、2世を含む日系社会の各分野の代表者とも懇談し、アマゾン地域日系人の現状及びその将来的課題につき意見交換を行った。また、国立アマゾン研究所の研究員とアマゾンの環境問題及びその生物多様性につき意見交換を行い、アマゾン河を視察した。

 主な視察・懇談のポイントは以下の通り。

(1)モト・ホンダ社訪問

 マナウス・フリーゾーンを代表するモト・ホンダ社を訪問し、会社概要につき説明を受け、同社の経営、環境への配慮、及びフリーゾーンのエネルギー供給問題等に関して意見交換を行った。

(写真)(工場を視察する山中政務官)

(工場を視察する山中政務官)

(2)マナウス・フリーゾーン日本進出企業代表との懇談

 日本進出企業(二輪車部門、電気・電子部門他)の代表10名と懇談し、労働問題、複雑な税制、さらに二重課税や移転価格税制等進出企業が抱える問題につき意見交換を行った。政務官よりは、企業支援の観点から日本国政府としても問題解決に向け協力していきたい旨述べた。

(写真)(マナウス・フリーゾーン日本進出企業代表との懇談)

(マナウス・フリーゾーン日本進出企業代表との懇談)

(3)エフィジェニオ・サーレス移住地視察(マナウス市郊外)

 移住地視察においては、入植当時の苦労話、2世・3世の農業後継者の減少に伴う移住地経済の問題が話し合われた。政務官よりは、農業経営という合理的概念の導入やより付加価値をつけることのできる農作物の加工等、移住地農業の活性化を図るための助言を行った。

(写真)(移住地関係者と山中政務官)

(移住地関係者と山中政務官)

(4)移住者・日系人代表との懇談

 西部アマゾン日伯協会関係者を始めとするマナウスの日系人代表者と懇談し、アマゾンの日系人の現状及び課題につき話し合いを行った。課題の1つとして、マナウスにおける日本語教育の推進・強化が挙げられ、政務官よりは、大学における日本語講座開設や日本語教師の育成が重要である旨述べた。
 一方、移住者代表は厳しい環境の中で苦労はしたが、日本、ブラジルからの支援を得て今日の日系社会を築きあげることができたので、今度は日系社会が日本、ブラジルに対し如何に貢献できるかを考えたい旨述べた。

(写真)(移住者・日系人代表との懇談)

(移住者・日系人代表との懇談)

(5)国立アマゾン研究所所員との意見交換とアマゾン河視察

 国立アマゾン研究所所員(森林、養殖・魚類の専門家)と共にアマゾン地域における生物多様性及び当地域が抱える環境問題に関して意見交換を行い、日本・ブラジル間の環境分野における今後の協力の方向性について議論した。

(写真)(アマゾン河視察)
(アマゾン河視察)
(写真)(専門家と意見交換する山中政務官)
(専門家と意見交換する山中政務官)

(6)評価

 エフィジェニオ・サーレス移住地においては数年ぶりの要人訪問であり、多大なる歓迎を受けた。日系人移住地視察及び日系人との懇談を通じて、アマゾンの厳しい環境で生き抜く日系人の活躍や抱える課題について理解を深めた。また、アマゾン地域の日系人の活躍を日本でも認識してもらうための広報努力の必要性、及び日伯両国の相互理解のための大学における日本語講座開設の必要性が指摘された。
 マナウス・フリーゾーンの税制問題等、日本企業の進出に関わる問題点を話し合うことで、日本政府による進出企業支援の強化の一助となった。また、国立アマゾン研究所関係者との意見交換を通じ、地球環境問題解決へ向けての包括的取り組みが重要性、環境保護分野における日本とブラジル間の二国間協力の強化の必要性も認識された。

3.パラグアイ

 9月7日、山中政務官はパラグアイにおいて、ドゥアルテ大統領(ラミレス外相同席)、カスティグリオーニ副大統領と会談するとともに、ボガード下院議長他議会有力者及びゴンサレス外務次官、カナサワ三軍司令官他政府要人との意見交換、パラグアイにおける日本人移住者・日系人代表との懇談、青年海外協力隊他同国に派遣されているボランティアとの懇談を行った。8日には「パラグアイ日本人移住70周年記念祭典」にドゥアルテ大統領他とともに出席し、日系社会の重要な節目を祝賀するとともに、先達の物故者への追悼の意を表した。

 主な行事のポイントは以下の通り。

(1)ドゥアルテ大統領、ラミレス外相との会談

 政務官より、昨年10月のドゥアルテ大統領訪日時の小泉総理との首脳結果を踏まえ、両国間の交流と協力を一層進めたいとして、昨今の二国間協力の具体例に言及しつつ、経済関係や人物交流の拡大について述べた。大統領はわが国の対パラグアイ支援に感謝の意を表明しつつ、両国間関係の更なる強化に同意した。また、双方は国連安保理改革等国際場裡の協力を進めることで一致した。また、昨年の首脳会談で小泉総理よりドゥアルテ大統領に決定を通報した円借款「イグアス水力発電所建設計画」の円滑な実施に向けたパラグアイ側の対応を要請した。
 他方、大統領よりパラグアイの日本人移住者・日系人に対する高い評価を改めて述べるとともに、今般の移住70周年祭典の開催を歓迎するとした。政務官よりは、日系社会の活躍の素地を提供したパラグアイ官民の受入れへの謝意を表明し、引き続き支援をお願いしたいと述べた。

 また、大統領より、今般の秋篠宮殿下親王御誕生への祝意が述べられるとともに、殿下のパラグアイ御訪問を楽しみにしているとの発言があった。

(写真)(ドゥアルテ大統領(左)、ラミレス外相(右)と)
(ドゥアルテ大統領(左)、ラミレス外相(右)と)
(写真)(会談の模様)
(会談の模様)

(2)カスティグリオーニ副大統領との会談

 副大統領より対日関係重視の意向を繰り返し述べるとともに、「諸外国からのパラグアイ移住にあって日本人は最も成功した例」として、日系社会への高い評価を強調した。また、パラグアイは日本の友邦・同盟国として、国際場裡のあらゆる場面で日本への協力を惜しまないと述べた。
 政務官よりはパラグアイ官民の日本人移住者受入れや国際場裡における対日協力に謝意を示しつつ、両国関係の一層の増進を確認するとともに、両国間交流強化を目的として近く予定されるJETRO三国展やパラグアイ若手政治指導者の訪日招聘、最近決定した消防車の寄贈支援等につき紹介した。また、円借款「イグアス水力発電所建設計画」の円滑な実施に向けたパラグアイ政府の対応を要請した。これに対し副大統領よりは、同計画のパラグアイ側における進捗状況につき詳細に説明の上、円滑な実施に向けた努力を約した。

(写真)(カスティグリオーニ副大統領との会談)

(カスティグリオーニ副大統領との会談)

(3)パラグアイ政府、議会要人との意見交換

 パラグアイ外務次官、外務省儀典長、駐日大使、三軍司令官、大統領補佐官、下院議長他与野党の有力議員・対日友好議連関係者と懇談。これら要人より、対日関心、対日関係重視の姿勢が示されるとともに、日系社会のパラグアイ社会への貢献と同国官民の敬意・信頼に係る言及、及びわが国の対パラグアイ経済協力に対する謝意表明があった。山中政務官よりは、パラグアイ政府、議会、国民のオーナーシップの重要性を強調しつつ、わが国の今後の支援の継続を表明。
 また、円借款「イグアス水力発電所建設計画」ほかわが国の対パラグアイ経済・技術協力諸案件や、経済関係の活性化、文化交流の拡大等に関し率直かつ活発な意見交換が行われた。

(写真)(政府、議会要人との意見交換)

(政府、議会要人との意見交換)

(4)JICA派遣ボランティアとの懇談

 ニホンガッコウ(元文科省国費留学生が設立した私立学校)生徒に迎えられ、会場の日本パラグアイ人づくりセンターへ入場。JICAパラグアイ事務所長より同国におけるボランティア活動につき説明の後、同国に派遣されている青年海外協力隊、シニアボランティア、日系社会青年ボランティア計8名との間で懇談を行った。山中政務官は、これらボランティアより各々の活動概要や工夫点につき聴取、その労をねぎらい、こうした技術協力を含めわが国のプレゼンスがパラグアイ官民より評価されている点に言及しつつ激励した。また、ボランティアからは、派遣に際してのケア(特に語学面)、帰国後のフォローアップの充実の必要性等について希望が寄せられた。

(写真)(人づくりセンターへ入場)
(人づくりセンターへ入場)
(写真)(ボランティアとの懇談)
(ボランティアとの懇談)

(5)移住者・日系人代表との懇談

 移住70周年祭典関係者等、パラグアイの日系社会代表者と懇談し、同国における移住者・日系人の現状や、日系社会の今後の課題につき意見交換を行った。山中政務官よりは、パラグアイの移住者・日系人の勝ち得てきた評価や信頼が、良好な日本・パラグアイ関係の基礎となっていることに触れつつ、日本政府としてパラグアイ社会経済開発を引き続き支援したいと述べた。日系社会代表者よりは、右社会に対する日本政府の諸支援に感謝するとともに引き続き宜しくお願いしたいとの希望や、日系社会として日本・パラグアイ関係の発展に引き続き協力したい、日系社会を積極的に活用して欲しいとの意見が寄せられた。

(写真)(移住者・日系人代表と山中政務官)

(移住者・日系人代表と山中政務官)

(6)日本人移住70周年記念祭典

 開拓物故者慰霊祭、祭典記念プレートの開幕、記念式典及び祝賀会に出席した他、日系社会物産展の視察、高齢移住者との懇談を行った。ドゥアルテ大統領他とともに出席した記念式典において、山中政務官は祝辞を述べ、移住者の労苦を偲び、その努力と勤勉さ、不屈の大和魂で現在の安定と反映を築き、パラグアイ官民の高い評価を得たことを称えつつ、こうした評価を背景にパラグアイは今日南米随一の親日国となっており、良好・緊密な両国関係を今後一層発展していくことにつき、ドゥアルテ大統領他パラグアイ要人との間で意思を確認したとのスピーチを行った。ドゥアルテ大統領からはこれに対し、移住者・日系人への敬意と今次祭典への祝意、及び、両国間の信頼と連帯を今後一層強化したいとの意思が表明された。

(写真)(記念プレート除幕)
(記念プレート除幕)
(写真)(記念式典)
(記念式典)
(写真)(記念式典)

(記念式典)

(7)評価

 日本とパラグアイとの友好関係の背景の一つに、農業分野を中心としてパラグアイ社会に大きく貢献してきた日本人移住者・日系人の活躍と、これに対する同国官民の高い評価と信頼がある。これら移住者・日系人の努力にわが国政府として敬意を表し、以てこうした良好な両国関係を一層強化するとの観点より、移住70周年記念祭典への山中政務官というハイレベルの出席は意義深いものがあった。
 また、大統領、副大統領、外相といった政府要人、下院議長等の議会有力者との間で両国間の協力、交流をレビューし、その今後のあり方につき大所高所からの意見交換を行う機会を持ったことは、伝統的に良好な日本・パラグアイとの関係の更なる発展のため有益であった。併せ、円借款「イグアス水力発電所建設計画」の円滑な実施に向け、パラグアイの与野党の議員に案件の重要性に係る認識を促し、協力の表明を取り付ける等、実体的な成果を得たことも有意義であった。

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