
世界金融・経済危機と開発への影響に関する国連ハイレベル会合
(成果文書の主要なポイント)
平成21年6月26日
1.序文
- 世界が直面している金融・経済危機は大恐慌以来の最悪のものであり、全ての国々、特に開発途上国に悪影響を及ぼしている(パラ1)。
- 国連は、その普遍的なメンバーシップ及び正統性に基づき、国際金融システムと構造の効率的機能を改善及び強化することを目的とする様々な改革プロセスに参加するに際して適切な位置付けにある(パラ2)。
- 我々の努力は、すでに許容できない程に貧困層及び脆弱層の数が増加しているという危機の人間的コストに対応する必要性に基づいて導かれるべきであり、この人間的コストは、影響を受けている人々の人間の安全保障に対し、開発に関する重大な結果をもたらしている(パラ3)。
- 今次会合は、危機と開発への影響に対応する全ての国連加盟国の継続的かつ協調的関与の一里塚である(パラ6)。
2.行動計画
- 我々は、公的景気刺激策を実施するに当たり、あらゆる形態の保護主義、及び第三国、特に途上国へのあり得べき否定的影響を回避することを奨励する(パラ12)。
- 途上国は、短期的な流動性と長期的な開発金融の両方について、追加的資金をより多く配分されることを必要としている。我々は、適切な資金が途上国、特に最貧国に提供されることを確実にするメカニズムの調査を要請する(パラ14)。
- 途上国は、危機の影響を緩和し、マクロ経済の発展を安定化させるために、関連のWTO条項に一致する形で正当な貿易保護措置を講じること、また、最後の手段として、一時的な資本規制及び債務者と債権者の間の暫定的な債務不払いに向けた交渉を検討すること等の権利を否定されるべきではない(パラ15)。
- 我々は、金融、経済、開発の課題に直面する途上国に対して、より適切な支援を確実に実施するためにコンディショナリティを簡素化することを要請する。我々は、国際開発金融機関に対し、資金不正に直面する途上国を助けるための柔軟で、譲許性の高い、迅速な支援を行うよう要請する(パラ17)。
- 我々は、政策と戦略のオーナーシップを伴うグッド・ガバナンスの継続的な重要性を認識する(パラ19)。
- 我々は、今回の危機には、経済・金融分野への影響のみならず、人間的・社会的な影響、及びこれらへの対応を含む課題があることを認識する(パラ21)。
- 我々は、途上国における危機緩和のために国レベルでの活動を支援する際に、幅広い現場でのプレゼンスを与えられた国連開発システムの重要性を強調する(パラ22)。
- 我々は、途上国が、援助効率性の原則に調和する形で、南南協力イニシアティブを強化し、より効率的に実施するために具体的努力を継続するよう奨励する(パラ30)。
- 我々は、既存の枠組及び指針に基づいて、債権者、債務者双方の広範な参加及び債権者間の公平な負担の共有を確保した上で、公的債務再編のための拡大アプローチを模索する。また、我々は、国際協力のためにより制度化された枠組の必要性及び実現可能性を模索する(パラ34)。
- 我々は、開発目的のための特別引出権(SDR)の割当の見直しを継続する必要性を認識する。また、我々は危機による緊急の資金不足に対応するため、グローバルな流動性を増加させる上での拡大SDRの潜在性を認識する。この潜在性は更に研究されるべきである(パラ35)。
- 我々は、SDRの実施可能な機能や様々な地域的アレンジによって果たされる補完的役割を含む、より効率的な準備通貨制度の実現可能性及び適格性の更なる研究が多くの国から要請されていることを認識する。我々は、また、その研究と実施のパラメーターについてコンセンサスを模索する重要性を認識する(パラ36)。
- 国際金融機関が現在の金融・経済危機に対応できるように、引き続き改革と現代化が必要であり、また、将来の同様の危機発生を回避するためにも、それぞれのマンデートに従い、既存のモニタリング、サーベイランス、技術支援、協調的役割を強化することが重要である(パラ42)。
- 我々は、信頼性及びアカウンタビリティを向上するために、公平かつ均衡な途上国の代表制を基礎として、ブレトン・ウッズ機関のガバナンスの更なる改善が緊急に必要であることを強調する(パラ43)。
- 我々は、遅くとも2011年1月までに実施される予定の、活気のある経済を抱える国々、特に新興市場国及び途上国のシェアが増加することが期待される、IMFの次期クオータ見直しの達成を強く支持する(パラ47)。
- 国連と国際金融機関は、互いの行動を調和させることが重要である。我々は、今次会合が協力強化を確かにするための重要なステップになることを信じている(パラ50)。
3.今後の道筋
- それぞれの国において、国連、専門機関、国際金融機関による協調的アプローチを通じて、国家開発戦略を支援しつつ、国連開発システムの包括的な危機対応を更に発展させる(パラ52b)。
- 総会に対し、成果文書に含まれる諸事項のフォローアップを行うべく、アドホックで期限を区切らない作業部会を設置し、第64回総会会期末までに作業の進捗に関する報告書を提出するよう依頼する(パラ54)。
- 我々は、総会議長に、世界金融・経済危機と開発への影響を第64回総会の一般討論の主要なテーマにすることを奨励する(パラ55)。
- 国連とブレトン・ウッズ機関の合意の実施について、特に、お互いの協調及び協力の向上、相互のマンデートを促進することにつながる機会であることに焦点をあてつつ見直しを行う(パラ56d)。
- 世界金融・経済危機と開発への影響に関するアドホックな専門家パネルの設置可能性について検討し、総会に勧告する。パネルは、国際的活動や政治的な意志決定に情報を与えること、建設的対話や政策決定者、学者、各組織、民間社会の間の意見交換を促進すること等に貢献し、独立した技術的専門性、分析を提供することができる(パラ56e)。