外務本省

第12回外務省タウンミーティング
町村外務大臣と語るタウンミーティング
国連安保理改革とアジア外交
(坂元一哉大阪大学教授)

(写真)坂元一哉大阪大学教授

 大阪大学の坂元です。本日はこの催しに参加すること、大変光栄に思っております。

 このタウンミーティングも、川口前外務大臣のときから数えて、本日で12回になります。私は、近年始まったこの新しい催しは、日本外交にとって、とてもよいことだと考えております。というのも、民主主義国家の外交は、結局のところ、政府の外交政策に対して国民の理解と支持がないと、相手国や世界を動かすだけの力強いものには、とてもなりえないと考えるからです。もちろん、政府の外交政策に責任を持っている外務省は昔からそのことは分かっていたわけで、国民を代表する政治家を通じて、あるいはマスメディアや論壇、有識者の意見、各種の調査を通じて、国民世論の動向に気を配ってきたと思います。

 また、最近ではホームページが大変充実しておりますが、各種の広報、出版物を使って、政府の外交政策を国民に説明してきました。しかしながら、それらは間接的で、また一方通行的なものになりやすく、このタウンミーティングのように、直接的かつ双方向的なものではありません。この新しい試みは、まさに政府外務省と国民の間のキャッチボールのようなものだと考えます。この場で外務省は、国民に対して政府の外交政策を直接説明するとともに、国民世論の動向をよりよくつかむ。国民のほうは、外交政策について質問し、意見を表明し、注文をつけるとともに、日本と世界の関係について、見識を深める。このキャッチボールの中で、日本全体(オールジャパン)の外交センス、外交感覚を磨く、そういう場であって欲しいと考えるわけです。

 本日のテーマは、今何かと注目を集めております国連安保理改革とアジア外交ということですので、恐らく会場からは、相当厳しい球も投げられることと思います。返球は、外務大臣と副大臣がなさることですが、私は、そのキャッチボールがうまくいきますように、球拾いのような、そういうお手伝いをさせていただければと思っております。

 それにしても、国連安保理改革とアジア外交という二つのテーマ以上に、今政府と国民の対話が必要な外交テーマもないと思います。日本がドイツなどともに提出した安保理改革案を巡る議論、北朝鮮の核・拉致問題、そしてアジアの目覚しい経済発展の中で、中国や韓国との間に、さまざまな摩擦を抱えている。それらが今の日本外交を、厳しい試練の場に置いていることは、改めて言うまでもありません。私も含め、国民の側には聞きたいことがたくさんありますし、政府も説明しなければならないことがたくさんあると思います。

 また、この二つのテーマは、今まさに日本の将来のかかったテーマである、国民の関心を集めているというだけではなくて、長い歴史の中で、今年はこの二つのテーマについて考える象徴的な年でもある。そういう意味からも、本日のテーマにふさわしいのではないかと考えております。

 いうまでもなく、今年は日露戦後100周年であり、また、戦後60周年です。明治の日本が世界政治のプレイヤーの一つとして認識されることになりました日露戦争の勝利から100年、つまり1世紀。そして、昭和の日本が未曾有の敗戦で多くのものを失ってから60年、つまり還暦です。日本と世界のかかわりについて考えるのに、まことにふさわしい節目の年ではないかと思います。

 私は、この節目の年に、世界の現状をよく見たうえで、日本が世界に何を語ることができるのか。どういう世界とアジアを望むのか。国家の目標は何か。そのための戦略は何か。こういうことについて、国民的な議論を行う必要があると思っています。一度は西洋に衝撃を与え、そして東洋には希望を与えた日本が、なぜアジア太平洋戦争という大失敗に至ったのか。その歴史も、もう一度よく振り返り、そうしながら、これから未来に向けて、日本外交のあり方を考えていく、そのためにふさわしい年ではないかと考えております。

 私は、本日のタウンミーティングが、その意味でも実り多いものになることを期待しております。簡単ですが、あいさつの言葉に代えさせていただきます。

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