外務本省

第12回外務省タウンミーティング
町村外務大臣と語るタウンミーティング
国連安保理改革とアジア外交
(谷川外務副大臣説明)

日時 2005年7月16日(土)13時~15時
場所 グランキューブ大阪 12階特別会議場

背景:アジアの絆と共同体形成

(谷川外務副大臣)

 私からは、東アジアの共同体の形成についてお話をさせていただきたいと思います。
 今、アジアは経済的にも大変発展してきており、これがヨーロッパで実現しておりますEU(欧州連合)の方向に、アジアが進んでいったらいかがなものかという思いがあり、このような構想が出てきているわけです。その出てきた背景について、まずご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、その背景の第一は、90年代後半以降、東アジアのそれぞれの国々が、大変な経済発展を遂げており、この東アジア地域内の経済的な結びつきが急速に深まってきています。日本、中国、韓国、そして、ASEANの諸国に、香港、台湾を加えた地域の域内の貿易シェア、すなわち貿易による結びつきの度合いは、1980年の約33%から2003年の53.3%まで高まっています。これは制度的な枠組みを持つ北米自由貿易協定(NAFTA)が大体44.5%ですし、EUが60.3%となっています。そうしますと、アジアが53.3%ですから、EUにも匹敵します。アジアとの関係は日本の中でも特に関西が、皆さんがたご存知のように大変、昔から古いお付き合いがあります。
 そのよい例としては、日本と貿易を地域別シェアでみると全国よりも関西が10ポイントぐらい上回っているわけです。また、関西の代表的な松下電器が、50年以上も前からタイで事業展開しておりまして、さらに最近ではベトナムに、電器製造の会社や販売の会社を設立しているという状況です。
 また、第2の背景としては、東アジアではASEANを中心にして、さまざまな協力の体系が生み出されています。日本、中国、韓国、ASEANとともに、ASEAN+3という協力の枠組みも発展しており、それに加えて、オーストラリア、ニュージーランド、インドも、ASEANとの首脳会議を行っています。
 第3の背景としては、アジアの通貨危機が1997年に起こったわけですが、2001年の米国同時多発テロの事件等の出来事を契機として、地域域内の協力の重要性が認識されてきています。
 以上、申し上げましたとおり、域内の諸国の相互依存関係がますます深まっていますので、今日における東アジアと日本との関係をどう構築していくかということは非常に大切です。特にそのためにも、太古の昔からアジア、中国、韓国等と非常に関係の深いこの大阪が、しっかり頑張っていただかなければならないと思っているところです。
協力の深まりと広がり
 次のスライドですが、ただいま申し上げましたように、東アジア諸国との経済連携関係が大変深まっており、自由貿易協定、また経済連携協定が、それぞれの国々と現在いろいろと締結、また締結する努力をしているわけです。それぞれの分野といいますと、いろいろな分野があります。貿易投資やITの分野、通貨金融の分野、テロ防止のネットワーク、麻薬取引の防止、海賊対策、人身売買の禁止など、いろいろなことで努力をしています。また、国境を越える対策として、皆さん、ご存知のように、自然災害や津波もありますが、SARSや鳥インフルエンザなどの感染症、いろいろなことがあり、それぞれに協力が実際に進んでいるところです。
(1)未来の共同体に向けて
 それでは、未来志向の共同体に向けて、どういう考え方で臨んだらよいのかということですが、この点は私としては、やはり基本的な考え方として、開かれた地域主義、そして機能的協力中心主義、そして民主主義、自由人権等の尊重、WTO等のルールを守るというこの3点を挙げます。
 まず第1に、開かれた地域主義ですが、これは共同体形成に向けて東アジア地域協力をASEANと日中韓、すなわちASEAN+3を中核としながらも、同時に地域協力に貢献する意思と能力を持つすべての国々とも、一緒になってやっていく必要があるという意味で、また、これらの国のすべてを包含し、さらに域外にも広めていくという意味では、ASEAN+3に加え、オーストラリア、ニュージーランド、インド、アメリカなど、それぞれの国々とも、自由貿易協定のネットワークを含め緊密な協力を確保する必要があると思っています。
 第2の基本的な立場である機能的協力中心主義ですが、これは東アジアでは自由貿易協定や金融、国境を越える問題等への対処等幅広い分野における協力をいろいろする必要があります。民族、宗教、政治、理念、いろいろなことがかかわってきますので、そういうことをどのように包含しながら進めていくかということが重要であろうと思っています。
 それと、いちばん大事なのは、やはり民主主義、自由、人権尊重ということをしっかりとお互いに守っていくということです。そうなりますと、皆さんがたよくご存知の、中国はどうなのかという話が出るわけで、これがやはりいちばん悩ましいところではないかと私は考えております。
(2)未来の共同体に向けて
 次に、未来の共同体に向けての考え方ですが、本年の12月には第1回東アジア首脳会議がマレーシアで開催される予定です。この首脳会議には、ASEAN+3に加えて、オーストラリア、ニュージーランド、インドが参加する方向です。東アジア首脳会議では、各国の指導者が共同体形成に向けて、地域協力の一層の促進を進めるとともに、共通の価値観を持ちながら、率直に意見を交わす必要があると思っています。その場合に、特に日本の果たすべき役割は大変大きいものがあると思っていますので、ぜひ国民の皆様、特に関西を中心とした大阪の皆様方に、支持をお願いをしたいと考えているところです。
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