外務本省

第12回外務省タウンミーティング
町村外務大臣と語るタウンミーティング
国連安保理改革とアジア外交
(町村外務大臣冒頭説明)

日時 2005年7月16日(土)13時~15時
場所 グランキューブ大阪 12階特別会議場

国連改革に関する日本の取組み

(町村外務大臣)

 今日は、国連安保理改革とアジア外交ということで、後ほど谷川外務副大臣からアジア外交のお話をしていただきますが、私は主として国連改革のお話をいたします。
 このタウンミーティングが終わりまして、5時半過ぎぐらいの飛行機に乗り、私はニューヨークにまいります。17日の日曜日の昼間、ニューヨークで安保理改革の4大臣会合を行う予定にしており、それに向けてここからまっすぐ出発をします。その後、ニューヨークから18時間のシンガポール行き直行便に乗りまして、20日の水曜日の朝6時ごろ成田に着くというような日程にしています。
 国連改革に関する最近の動きということで2~3申し上げます。一つ目は国連改革で今どういうことがテーマになり、日本がどんなことを主に取り組んでいるのかということです。
 ここに大きく赤い印で、開発、人権人道問題、平和と安全、国連強化と書かれています。国連改革というと、国連強化の中に安保理改革が載っていますが、どうもこればかりが話題になっているように見受けられます。けれども、今年の3月に出ました国連のアナン事務総長のレポートでも、四つの大きなテーマがあるということが言われているわけです。もちろん安保理も大切ですが、日本にとってもそれ以外の問題も重要です。開発の問題、例えば日本はODAを今後、戦略的に拡充していこうとも言っています。あるいは、人権人道問題、国連人権フォーラムの強化、民主主義基金を作ろうということにも、積極的に取り組むことにしています。また、平和と安全という意味では、世界各地に紛争があるので、その紛争を未然に防止する、あるいは紛争が終わったあとの、平和を作るための実効ある機関を作るための委員会を作ったらどうかということも考えています。
 国連の強化についても、安保理ばかりではなくて、事務局がかなり肥大化をしており、必要ない職員がたくさんいるのではないかということもあります。また、国連憲章の中には、日本やドイツなど第二次大戦の敗戦国、これを旧敵国と言っていますが、その旧敵国条項というものが、驚くことなかれ、戦後60年たってもまだ国連憲章の中に残っているのです。日本はまだ旧敵国なのです。これについては10年前に、この規定は意味がないということで、削除することが決まっているのですが、現実の憲章改正は行われていません。ここも改めなければいけません。こういう幅広い国連改革のテーマがあるのだということをご理解いただければと思います。
国連安保理改革を巡る議論の現状
 その中で、特に安全保障理事会の改革について、ここで、私とドイツ、ブラジル、インドの外務大臣が並んでいますが、これは先週の金曜日、7月8日の夜にロンドンに4大臣が集まって撮ったときの写真です。ちょうどロンドンの連続爆破テロのあった翌日の夜でした。
 ここに、「枠組み決議案」という、ちょっと耳慣れない言葉が書いてあります。「枠組み」というのは、国の名前を決める前に、まず第一段階としてどういうふうに国連安保理を変えるかということです。安保理には常任理事国と非常任理事国があります。常任理事国は、アメリカ、中国、イギリス、フランス、そしてロシアです。この5か国に、我々の決議案は、6か国の常任理事国を増やし、非常任理事国についても、4か国増やすというものであり、その枠組みをまず決めようとしています。その枠組みを決めたあと、第二段階として、国ごとにどの国が常任理事国にふさわしいかを、もう1回投票しようという第二段階があるわけですが、第一段階の枠組みというものをぜひ変えようではないかということで話し合いが進んでいるところです。これに対して、アフリカが、似ているけれどもちょっと違う提案をしています。あるいは、日本などが常任理事国になるのに反対の国々が、常任理事国は増やさないで非常任理事国だけ増やすという全くの別の提案もしてくるということもあるわけです。
国連安保理改革の必要性
 安保理改革がなぜ必要なのでしょうか。国連の加盟国数だけを比較しても、これは変えなければいけないことがお分かりいただけると思いますが、国連ができた1945年(昭和20年)、このとき国連に加盟した国は、わずか51でした。もちろん、日本だってそのとき加盟していません。日本が加盟したのは1956年でこの11年後になるわけですが、そのときアジアからは51のうち、わずか9か国が加盟していました。アフリカは、たった4か国しか参加していません。それが今はどうかというと、51が191に増え、2005年の今、アフリカもアジアも53か国ということで、国の数がそれだけ増えてきました。これだけ大きな変化があるにもかかわらず、安保理の議席は、1965年に1回、非常任理事国が6から10に4か国増えただけで、今日に至るも全く変わっていません。これだけ国の数が増えたのに、この安保理の構成が変わっておらず、また、国際政治の基本的な構造がこれだけ変わっているのに安保理が現実を反映していないではないかということで、我々は改革が必要だということを申し上げているわけです。
平和愛好国家から平和支援国家へ
 それでは、日本はどうして安保理の常任理事国になる資格があるのか、その適格性があるのかというのを、いくつかお話ししたいと思います。
 一つは、日本は戦前の反省のうえに立って、戦後は一貫して平和国家として、平和を愛好し、最近は、平和を作り、平和を支援する、そういう積極的な役割を果たしていこうということでやっています。一部の周辺国から、日本は軍事大国になったとか、あるいは、日本は戦前の侵略を美化しているなど盛んに言われますが、とんでもない話です。日本は戦後、平和の国として歩んできており、その活動、その実績に自信があるからこそ、安保理常任理事国になる資格が自らあると認め、多くの国々がそれを認めているわけです。
 防衛政策についていえば、一度たりとも自衛隊が、海外に戦争をしにいったことはありません。専守防衛が国の基本方針でありますし、国際紛争があったときも、それを助長しないように武器輸出三原則を決めたり、核兵器廃絶に向けたさまざまな取組みも行ったりしています。それから、世界の平和を作るために国連を通じた貢献、例えばPKO(国連平和維持活動)を、カンボジアや東ティモールに出したりということをやったりしています。また、先ほど申し上げたODA(政府開発援助)を熱心に提供しています。あるいは、人ということで自衛隊が今イラク、あるいはアフガニスタン(インド洋)に行っています。これも、国際平和を作るための積極的な取組みです。それ以外にも、青年海外協力隊とか、最近はシニア海外ボランティアということで中高年の方々が青少年の人たちと一緒になって世界の平和作りに励んでおられています。そういう平和国家「日本」としての歩みというものに我々は自信を持っているから、安保理常任理事国になろうとしているわけです。
国連を通じた積極的貢献
 特に国連を我々は重視しております。日本は、どちらかというと、ややもすると国連信仰に近いほど「国連というのはすばらしい」という思いが強いわけです。
 今ここにいくつか写真が載っております。例えば平和の定着として、イラク・ヨルダンの国境に緩衝地帯があり、難民キャンプに支援をしていますが、そこにいる女の子の写真です。
 それから、人間の安全保障ということで、セネガルで井戸を掘ってその井戸の周りに人が集まっています。
 それから次は、軍備管理について、ロシアが古い原子力潜水艦を持っており、これを処分できなくて困っています。下手したら日本海にバサッと捨ててしまうかもしれず、そんなことをされたら困るということで、ロシアの古い原子力潜水艦を解体して、しっかりと処理するような事業を日本が支援をしています。
 あるいはユニセフによるはしか予防接種です。これはこの間、大変な津波の事故があったインドネシアのバンダアチェというところで、伝染病がはやらないようにということで予防注射をやりました。
 こういうことを、国連を通じて日本は積極的な貢献をやっているという実例です。
国連への財政分野での貢献
 それから、これをご覧いただきますと、日本がどれだけ国連等の運営に協力をしているのかということがお分かりいただけると思います。アメリカは、分担金全体の22%、日本は19.5%を拠出しています。実は今の安保理常任理事国、英仏中露、この4か国全部合わせても、わずか15.3%しか資金を拠出していません。日本は非常任理事国なのに19.5%も出しており、お金を出しているのだからものを言わせろという、それほどがめついことを言うつもりもありませんが、しかしこれも別に私どもは恥じることなく、これだけの貢献をしているのです。
日本の果たしてきた経済的援助並びに人的貢献
 日本の資金を通じて、こんなこともいろいろやっているという写真が載っています。例えばガーナの写真がありますが、これは日本の無償援助で作られた井戸のそばで子供たちが喜んでいる姿です。
 真ん中の上にモルディブと書いてありますが、ここにも津波が襲いました。ところが、ここにテトラポットが並んでいます。この日本の援助でお渡ししたテトラポットをここに並べておいたおかけで、モルディブは海抜1.5m位の本当に平たい島国なのですが、モルディブの首都が全部流されてしまわずに救われたと言って、モルディブから大変感謝をされたものであり、日本の援助の実例です。
 それから、これは中国の北京の国際空港ですが、これは日本の円借款約300億円で作られています。このことを中国政府がちっとも宣伝しないといって批判もあるわけですが、現実に中国の窓口の北京の空港が、日本の援助によって作られたのだということを、中国の人も知らないし、日本の人も、もしかしたらあまり知らないということで、ちょっと挙げさせていただいています。
 カンボジア、アフガニスタン、イラクでは、いずれも自衛隊が活躍していますが、アフガニスタンの写真は選挙をやっているところです。イラクでは、一生懸命、病院に医療機器などを搬入して、彼らの人道復興支援に自衛隊の皆さんが努力している姿です。
国連安保理と日本
 最後になりますが、このようなことで国際社会における日本の発言力が常任理事国になれば強化されます。それから安保理で、今常任理事国としてアジアを代表するのは中国1か国ですが、それはやはりアジアの声を中国だけが反映するというのは、いかにもバランスが悪いのではないかということで、今、日本より、日本とインドがアジアを代表して常任理事国に、中国と並んで出てはどうかという提案をしています。
 また、先ほど申し上げました、常任理事国になれば、国際の平和と安定のために、日本が建設的な役割をより大きく果たせることができるという意味で、私どもは今、一生懸命その活動をやっているところです。正直言って、そう簡単な選挙ではありませんが、今、最後の努力を傾注して、何とか実現するように努力をしているところです。
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