外務本省

福山外務副大臣の2010年NPT運用検討会議出席(概要)

平成22年5月6日


 福山副大臣は,5月2日(日曜日)から5日(水曜日)の日程でニューヨークを訪問。5月3日及び5月4日は日本政府代表団首席代表としてNPT運用検討会議に出席し,5月4日には,一般討論演説を実施したほか,主要関係国,国際機関との個別会談を実施。

1.NPT運用検討会議

  • (1)今次会議では,米国が核兵器保有数等に関する情報公開措置を発表し,インドネシアがCTBT批准プロセスの開始を表明し,また,国連事務総長から5つのベンチマークを提案する等前向きな演説が多く行われた。
  • (2)4日,福山副大臣は,一般討論演説を実施し,すべての締約国が立場の違いを乗り越え,協働して対応できる基盤を構築する必要があるとの総理メッセージを披露した他,要旨以下を述べた。(ステートメントはこちら(日本語仮訳英語正文))

     ア 核兵器の完全廃絶に向けた明確な約束の再確認や,強化された消極的安全保証を含む核兵器の役割低減のコミットをはじめとする,日豪共同提案に盛り込まれた具体的な核軍縮措置,
     イ IAEA追加議定書普遍化の推進,
     ウ 北朝鮮やイランの核問題の解決,
     エ 原子力の平和的利用のための国際協力に対する支持。

2.個別会談

  • (1)潘基文国連事務総長との会談(5月3日)

     ア 潘事務総長からは,日本は核軍縮・不拡散の分野において,非常に重要かつ不可欠な役割を果たしている旨述べるとともに,今年8月6日の広島原爆祈念式典に出席すると発言。これを受け,福山副大臣からは,8月の潘事務総長訪日を歓迎すると述べた。
     イ 福山副大臣からは,NPT運用検討会議においては,NPTの求心力を強め,国際的核軍縮・不拡散体制を強化することが重要,我が国として合意形成に向け努力したい,また,不拡散措置の進展のためにも核兵器国による核軍縮の同時進展とともに中国を始め透明性の向上と強化された消極的安全保証の供与が重要である旨述べた。
     ウ また,潘事務総長がCTBT早期発効の必要性を強く指摘。福山副大臣からは,我が国はCTBT発効促進に向けて引き続き積極的に取り組んでいくと述べた。このほか,北朝鮮の核問題の解決のために引き続き相互に協力していくことで一致。
     エ 福山副大臣と潘事務総長は,気候変動に関する我が国と国連との協力についても意見交換を行った。
  • (2)テ・ヒューヒュー・ニュージーランド軍縮・軍備管理担当大臣との会談(5月3日)

     ア テ・ヒューヒュー大臣は,世界の中で唯一ニュージーランドに軍縮・軍備管理担当大臣が設けられていることは,ニュージーランドの軍縮・不拡散へのコミットメントの表れである,国際核軍縮・不拡散体制の強化のためにも今次NPT運用検討会議は重要であると述べた。
     イ 福山副大臣からは,新アジェンダ連合(NAC)の一員としてニュージーランドがこれまで核軍縮・不拡散分野において行ってきた取組を評価するとともに,今次NPT運用検討会議に向けて日豪両国が共同提案した「実践的核軍縮・不拡散措置の新しいパッケージ」とNACによる核軍縮に関する提案には共通点も多く,NPT運用検討会議の最終文書への反映に向けて連携していきたい旨述べた。
  • (3)スミス豪外相との会談(5月4日)

     ア 福山副大臣より,2月に発出した日豪両外相による「核兵器のない世界」に向けた共同ステートメント,3月に日豪共同でNPT運用検討会議に向けて作業文書として提出した「核軍縮・不拡散に関する実践的措置の新たなパッケージ」は,日豪協力の象徴であり,NPT運用検討会議における合意に結びつけるため,努力を惜しまない旨述べた。
     イ スミス外相より,日豪両国は経済,戦略及び安全保障の分野においてパートナーシップを結んでおり,豪にとり域内で日本ほど緊密な関係にあるパートナーは他になく,軍縮・不拡散の分野においても協同することができ大変喜ばしい旨述べた。
     ウ スミス外相より,日豪FTA/EPA実現に向けて協力したく,実現すれば双方の経済にとりよい結果をもたらす旨述べたのに対し,福山副大臣より,鳩山政権の下で日本政府はFTA/EPAに積極的に取り組んでおり,農業問題等に関する国内的な整理は必要だが,双方にとってウィン・ウィンの形にできればよい旨述べた。
     エ スミス外相より,捕鯨問題について両国は異なる立場にあり,困難な問題であるが,本件が日豪間の非常に良好なパートナーシップに悪い影響を及ぼすべきではない旨述べたのに対し,福山副大臣より,日豪関係全般にひびが入らぬよう適切に対応すべきであると応じた。
  • (4)マルティ・インドネシア外相との会談(5月4日)

     ア 福山副大臣より,マルティ外相がCTBT批准に向けたコミットメントを発表したことを歓迎するとともに,我が国としては,今次会議においてNPTの3本柱についてバランスよく成果文書で合意したい旨述べ,日豪両国が提出した「核軍縮・不拡散に関する実践的措置の新たなパッケージ」をはじめとする我が国の作業文書に対する理解と支持を求めた。
     イ これに対しマルティ外務大臣より,核軍縮・不拡散分野において,日本ほど道義的かつ政治的権威を有する国はなく,かかる分野での協力を日インドネシア関係の模範例としていきたい旨述べ,双方は合意文書の作成に向けて協力していくことで一致した。また,先方より,この過程でNAM(非同盟運動)と日本の立場・提案について共通点を見いだす努力をしたいと述べた。
  • (5)ホイヤー独外務副大臣との会談(5月4日)

     ア 福山副大臣より,日独両外相による緊密な協力関係に基づき日独間で良好な関係が構築されていることは喜ばしい,今次NPT運用検討会議においてはモメンタムの高揚がみられており,我が国としては,最終合意においてNPTの3本柱をバランスよく盛り込みたく,かかる機会に日独間で協力を強化していきたい旨述べ,我が国が提出した作業文書に対する支持を求めた。
     イ これに対しホイヤー副大臣より,核軍縮・不拡散分野における日本の立場に感銘を受けており,3本柱をバランスよく扱うべきとの日本の考えに同意する,クリントン米国務長官による一般討論演説にみられるように,前向きに取り組んでいる米国を支持していきたい旨述べた。また,戦術核兵器の問題の重要性についても認識が一致。
     ウ このほか,両副大臣は気候変動問題についても意見を交わし,本年11月にメキシコで開催されるCOP16に向け,モメンタムを維持するため両国が協力していくことで一致。
  • (6)リャプコフ露外務次官との会談(5月4日)

     ア 福山副大臣より,日露間でもハイレベルの意見交換が進んでいることは喜ばしく,今次会議に先立ち,米露が新START条約に合意したことを評価,NPTの3本柱をバランスよく強化すべき,高揚しているモメンタムを維持し,最終合意に向けて取り組んでいきたい旨述べた。
     イ これに対しリャプコフ次官より,ロシアとしても今次NPT運用検討会議に積極的に取り組む考えであり,こうした国際的対話において日本の新政府と協力していくことにロシアのハイレベルも関心が高い,対話,協力及び連携がなければ良い結果は得られず,NPTの3本柱のすべてをバランスよく進展させることが重要である旨述べ,協力を緊密にしていくことで一致。
  • (7)天野IAEA事務局長との会談(5月4日)

     ア 天野事務局長から,先般の核セキュリティ・サミットに際して我が国政府が財政支援を発表したことについて謝意表明があるとともに,今後ともIAEAの様々な活動について貢献をお願いしたいとの発言があった。これに対し福山副大臣から,IAEAの活動は重要であり評価している旨を述べた。
     イ また,両者の間でイランの核問題,NPT運用検討会議等について意見交換が行われ,福山副大臣は,IAEAが果たすべき役割は極めて重大であり事務局長の一層の活躍を念願する旨述べた。

3.NGO主催会合等(5月3日)

 福山副大臣は,NGO主催の会合等(佐々木禎子さんの折り鶴見学,核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)サイドイベント,爆心地復元CG上映,被爆者証言プロジェクト・レセプション,連合・核禁会議・原水禁3団体との意見交換)にも出席。被団協主催原爆展を視察。被爆者との意見交換等を通じ,核兵器の惨禍の実相を将来の世代に継承していくことにつき,新たに決意を表明。


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