ジャン・ピンAU委員長
AU加盟国元首・代表団長
第16回AU閣僚執行理事会の開催にあたり、心からのお祝いを申し上げます。
アフガニスタンに関するロンドン国際会議に出席後、ぜひともAU閣僚執行理事会に出席したいとの思いから、この度エチオピアを訪問させていただきました。それはアフリカの問題は、アフガニスタン同様、国際社会が一致して取り組むべき重要課題と確信しているからです。また、日本政府の代表としてアフリカ諸国の皆様に自分の言葉で日本のアフリカ重視の方針をお伝えしたかったからです。
今、アフリカは自らの努力により世界金融・経済危機を乗り越え、再び成長軌道を目指しています。また、貧困削減や感染症対策等ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に取り組んでいます。日本としても、アフリカ諸国のこのような努力を全力で支援していく所存です。鳩山内閣は2012年までのアフリカ向けODA倍増や貿易・投資の促進等、TICADIVの約束を必ず実行する方針です。また、昨年、ボツワナでのフォローアップ会合でお約束した、支援の早期実施に努めているところです。
日本は、約束の着実な実施のために、本年も5月にTICADフォローアップ閣僚級会合をアフリカにて開催する方向で準備を進めています。この会合でアフリカの皆様としっかりと議論するとともに、アフリカの声を国際社会に伝えていく所存です。
今回のAU総会のテーマとして情報通信技術(ICT)を取り上げたことは大変時宜を得たものと考えます。ICTは、開発・成長に大きな可能性を与えるものです。この観点から、日本はアフリカのICT分野において、過去3年間で放送分野のインフラ整備やICT分野の人材育成等に約1.2億ドルの支援を行ってきました。日本は、アフリカの成長におけるこれらの重要性を踏まえ今後も支援を継続していきます。
また、日本は、ICT分野を含め、日本の優れた科学技術をアフリカの開発のために積極的に活用したいと考えております。そのために、2008年に日アフリカ科学技術大臣会合を開催しました。今後とも、このプロセスも利用して、アフリカ諸国と議論を深めたいと思います。
アフリカの開発・成長のために、ICTと並んで重要なアジェンダが気候変動問題です。この問題がアフリカの開発・成長の妨げになってはならないと考えます。鳩山総理は、昨年9月の国連気候変動首脳会合で温室効果ガス削減目標として、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提に、2020年までに1990年比25%削減という高い目標を掲げました。これは当時停滞していた気候変動交渉の状況を打開することに貢献したと考えています。
先般のCOP15には、私も政府代表の一人として参加してきました。新たな枠組みに合意できなかったことは非常に残念ですが、首脳級の交渉により「コペンハーゲン合意」をまとめ、全体会合において本合意に留意する決定が採択されたことは有意義な成果と考えており、この成果を踏まえて前進することが必要です。気候変動の問題は、その悪影響に脆弱なアフリカにとって死活的に重要であり、途上国への資金援助も盛り込んだコペンハーゲン合意への支持表明を呼びかけたいと思います。また、日本としても積極的に支援を行ってまいります。その意味で、コペンハーゲン合意と、2012年末までの約3年間で官民合わせて概ね150億ドルの適応・緩和への途上国支援を行うとした鳩山イニシアティブを、しっかりと関連づけ、その実施を進めていく考えです。
日本は、COP16に向け、アフリカ自身の真の利益は何かという点について共通の理解を得ながら、地球環境のために行動するアフリカ諸国と一層協力していきます。アフリカ自身も合意形成のために真剣に取り組んでいただきたいと思います。
平和と安定の問題について、一言申し上げます。日本は、この問題に対するAUの努力を評価するとともに、これまで以上にAUとの協力を強化してまいります。また、日本自身としても、ソマリアやスーダンへの支援やアフリカ自身の平和維持能力向上について、一層の貢献を行っていく方針です。
最後に、現在国連では、安保理改革に関する政府間交渉が進展しており、改革の早期実現を目指す機運が高まっております。我が国としても、早期に具体的な成果を得るべく、アフリカとの協力を強化していきたいと考えております。
今回のAU閣僚執行理事会における議論が、アフリカ諸国の開発目標の実現や地域の平和と安定のために実り多い成果をもたらすことを心から期待しています。
平成22年1月
日本国外務副大臣
福山哲郎