1.国連総会特別会合の経緯と概要
- (1) 8月19日、藤村外務副大臣はニューヨークの国連本部にて開催された、パキスタン洪水被害に関する国連総会特別会合に出席。
- (2) 本件会合は、国連の計約4.6億ドル(約391億円)の緊急アピール(初期緊急洪水対応計画)の発出(8月11日)や潘基文国連事務総長のパキスタン訪問(15日)を受けて、急遽開催が決定されたもの。16日にクレーシ・パキスタン外務大臣から岡田大臣宛の書簡にて、同会議へのハイレベルの参加要請がなされた。
- (3) 同会合には、潘基文国連事務総長、クリントン米国務長官、グァナカー・ベルギー外相(EU代表)、キャノン加外相、ミッチェル・英国際開発大臣、エスパーセン・デンマーク外相、ダーヴトオール・トルコ外相などが出席。
2.藤村副大臣の発言要旨
- (1) 今般の洪水被害に対するこれまでの我が国の支援(総額約1,440万ドル)につき説明するとともに、自衛隊のヘリコプターのパキスタンへの派遣について所用の準備を進める旨発表。
- (2) 日本として、可能な限り、パキスタンの緊急支援・復旧・復興の各段階に応じた取組を継ぎ目なく支援すること、及び日本が世界銀行及びアジア開発銀行(ADB)が実施する被害ニーズ調査(DNA)に参加することを表明。
3.主な発言
- (1)潘基文事務総長
今般、現地を視察し、2004年のインド洋津波と2005年の地震の被害を上回る甚大な被害を及ぼしており、「スローモーションの津波」ともいうべき事態であることを実感した。国連アピールに対し、既に国際社会からアピール総額の約60%の資金援助が表明されている。国際機関は支援活動に向け努力しているが、被害は今後も拡大が見込まれ、国際社会からのさらなる支援が必要。特に、食料・シェルター・医薬品等のニーズが高い。
- (2)クレーシ・パキスタン外相
現在、パキスタンは、水・食料・シェルター・医薬品といった緊急の人道支援とともに、破壊されたインフラの復旧という中長期的な復旧・復興を必要としている。パキスタン政府は、救援活動に全力を尽くしているが、国際社会からの支援を必要としている。
- (3)クリントン米国務長官
米は、洪水発生直後から、食料支援やヘリコプターの派遣を行うなど、NDMA(パキスタン国家災害管理庁)と協調し迅速な支援を実施。6千万ドルの追加支援を行う。これにより、米の支援総額は1.5億ドルとなる。そのうち、92百万ドルは国連アピールに充足されることになる。
4.採択された決議の主な内容
- (1) 被災者に対する完全な連帯及び共感を表明。
- (2) 国際社会、特にドナー各国、国際金融機関、関連国際機関、民間セクター、市民社会が、洪水による被害を和らげるとともに、中長期の復旧・復興ニーズに応えるため、パキスタン政府を完全に支持・支援することを求める。
- (3) 国連事務総長及び国連機関がパキスタンにおける人道・復旧・復興に関し、国際社会の協調をはかり、効果的で、即時かつ適当な国際的な支持・支援を動員することを求める。
- (4) 第65回国連総会における国連事務総長の報告を求める。
5.バイ会談
- (1) 藤村副大臣は、今回の特別会合の機会に、国連本部内において、クレーシ外相や潘基文国連事務総長と会談を行った。藤村副大臣から、クレーシ外相と潘基文国連事務総長に対し、我が国の支援とヘリコプターの派遣の準備について伝え、ヘリコプターの派遣について安全面での措置がなされることや、支援がしかるべく実施されるよう努めて頂きたいと依頼したところ、先方からも、日本の支援の効果的な実施に協力したい旨発言があった。
- (2) クレーシ外相からは、我が国の支援に対し謝意が表明され、陸路ではアクセスできない地域への支援において、ヘリコプターはきわめて重要であるとして、その派遣準備が進められていることを高く評価する旨の発言があった。
- (3) 潘国連事務総長からは、我が国のパキスタンに対する支援およびヘリコプターの派遣の準備が進められていることに謝意が表明されるとともに、先般の広島・長崎訪問は最も印象深いものであり、核廃絶の決意を新たにするものであった、9月の国連総会の機会に、MDGs、生物多様性、核軍縮等に関するハイレベル会合を行うので、日本の参加を期待するとの発言があった。
- (4) さらに、ホルブルック米特使より、藤村副大臣に対し、日本のリーダーシップを高く評価する旨述べるところがあった。
6.今後のパキスタン関連予定
- 8月中旬 被害ニーズ調査(DNA)開始予定(報告書は10月半ば完成予定)
- 10月15日 パキスタンフレンズ閣僚会合 (於:ブリュッセル)