藤村修外務副大臣は,9月7日(火曜日)から9月12日(日曜日)までの間,タイ(バンコク,コンケン,ムクダハン),ラオス(サバナケット)及びカンボジア(プノンペン,シアムリアップ)を訪問したところ,概要以下のとおり。
1.東西・南部経済回廊に関する国際会議(9月9日)
9月9日,藤村副大臣とタイのカシット外相が共催し,東西・南部経済回廊に係る「ミッシング・リンク」の解消に向けたハード及びソフト両面でのベスト・プラクティスの共有及び解決策の探求を目的とした東西・南部経済回廊に関する国際会議を開催した。
藤村副大臣は,冒頭基調講演を行い,我が国のこれまでのハード・インフラ整備支援の実績を強調しつつ,日本の支援は質を重視しており,官民が連携しながらのハード整備に加え,制度面の整備や産業発展のための人材育成等のソフト面も重要である旨述べた。また,我が国として域内の連結性が向上することで貧困層が取り残されることのないよう農村開発支援等の脆弱性支援も行っていく旨述べた。
カシット外相を含む各国代表より,日本のこれまでの経済回廊整備への支援に謝意が表明されるとともに,他のメコン地域諸国及び関係国際機関等からは,ソフト・インフラ整備支援の必要性(CBTAの早期実施に向けた支援,回廊を使った新しいビジネス立ち上げ支援,税関の課題等)が強調された。
会議後,藤村副大臣とカシット外相は共同記者会見を行い,本会議の成果をまとめた成果文書を発出した。本会議の成果は,10月末の第2回日メコン首脳会議に報告されるとともに,ASEANの連結性マスター・プランにもしかるべく反映される予定。
2.東西経済回廊視察(タイ及びラオス)(9月7日~8日)
- (1)スチャート・メコン・インスティチュート(MI)所長との意見交換(7日夕刻)
藤村副大臣は,スチャートMI所長と懇談し,我が国のMI支援の現状及び東西経済回廊の発展に係る諸課題について意見交換を行った。
- (2)第2メコン橋視察等(8日)
藤村副大臣はムクダハン(タイ)及びサバナケット(ラオス)を訪問し,東西経済回廊及び第2メコン橋等,経済回廊における我が国の経済協力案件を視察した。また,ムクダハン及びサバナケットの税関では,県知事及び副知事等地方政府関係者との間で東西経済回廊の現状及び今後の活用方針等につき意見交換を行った。その後,藤村副大臣は,サバナケットにあるサワン・セノー経済特区を視察し,日・ラオス双方の関係者との間で同経済特区の現状及び経済回廊を活用した開発に関する今後の課題について意見交換を行った。
- (3)JICA関係者との意見交換(ラオス)(8日午前)
藤村副大臣は,JICAが実施している東西回廊における実践的な観光開発プロジェクト及びサバナケット県及びサラワン県において実施している技術協力プロジェクトについて,JICA関係者と意見交換を行った。
3.バンコクにおける会談・表敬等(9月8日~9日)
- (1)カシット外相との会談(9日午前)
藤村副大臣はカシット外相と会談し,日タイが協力して引き続き東西・南部経済回廊整備を支援していくことを確認した。また,藤村副大臣より,デモ被害を受けた日系企業への補償につき働きかけるとともに,村本氏死亡事件に関する真相究明についてタイ側の協力を改めて要請した。カシット外相からは,必要な情報収集も含め村本氏死亡事件の早期解決に向け引き続き真摯に取組む,日系企業への補償についても,引き続き問題解決に向けて努力する旨説明があった。その他,メコン地域協力,マプタプット問題,環境・気候変動,地域情勢等についても意見交換を行った。
- (2)アピシット首相表敬(9日午後)
藤村副大臣は,アピシット首相を表敬し,東西・南部経済回廊におけるハード・ソフト両面におけるインフラ整備・活用の重要性や気候変動問題等に係るメコン地域協力について協議した。また,マプタプット問題,村本氏死亡事件への対応,デモに係る日系企業支援等についても意見交換を行い,アピシット首相から,これらの問題の解決に向けて引き続き努力していく旨述べた。
- (3)市内視察(9日午前)
藤村副大臣は,日本留学生出身者が中心となり2007年に設立した泰日工業大学を視察し,同大学関係者より,大学の概要及び設立の経緯等について意見交換を行った。
- (4)バンコク日本人商工会議所関係者との懇談(8日夕刻)
藤村副大臣は,バンコク日本人商工会議所関係者と懇談し,商工会議所の活動状況,メコン地域における東西・南部経済回廊の役割,先般のデモ活動による日系企業に対する被害への対応等について意見交換を行った。
4.カンボジア(9月10~11日)
- (1)フン・セン首相表敬(10日午後)
藤村副大臣から,日本はメコン地域の格差是正やASEAN域内の連結性向上を支援していく旨述べた。フン・セン首相は,日本政府による日メコン首脳会議のイニシアティブを評価するとともに,日メコン協力の進展,ネアックルン橋梁建設計画の進捗等を歓迎した。また,タイ・カンボジア関係につき,フン・セン首相より,両国大使の帰任により外交関係は正常化しており,引き続き,平和的解決に向け努力していく旨発言があった。その他,シハモニ国王の国賓訪日等について意見交換を行った。
- (2)ソック・アン副首相兼閣僚評議会担当大臣との会談(10日午後)
ソック・アン副首相から,アンコール遺跡保存事業,メコン河イルカ保護支援策,貿易投資促進,クメール・ルージュ裁判及びカンボジア・タイ国境情勢に関するカンボジア政府の取組につき説明があった。藤村副大臣から,淡水イルカ保護支援策に言及し,カンボジアの一層の投資環境改善努力を求め,クメール・ルージュ裁判の早期完遂に向け,更なる資金動員努力を要請した。
- (3)ハオ・ナムホン副首相兼外務国際協力大臣との会談(10日午後)
藤村副大臣から,5月のシハモニ国王の国賓訪日により幅広い分野で協力の機運が更に増進された,日本はカンボジア和平達成以来,あらゆる面で支援してきており,今後もメコン地域開発を支援する旨述べた。ハオ・ナムホン副首相は,日本政府・国民に対しこれまでの支援への感謝の意を表明し,今後日メコン行動計画及び「グリーン・メコンに向けた10年」のイニシアティブの実施において協力していきたい旨述べた。その他,環境・気候変動などに関し意見交換を行った。
- (4)視察等(10日~11日)
10日,藤村副大臣は,プノンペン経済特区及び南部経済回廊の一部であり,日本政府が支援している国道一号線改修計画第3期区間の工事現場を視察し,夕刻には官民合同会議関係者と懇談した。
11日,藤村副大臣は,シアムリアップにて日本政府アンコール遺跡救済チームによる遺跡修復現場(バイヨン遺跡),上智大学による遺跡発掘現場(アンコール・ワット),バンテアイ・クデイ,シハヌーク・イオン博物館,バイヨン・インフォメーション・センターを視察した。また,シアムリアップでNGO関係者と懇談し,スー・ピルン・シアムリアップ州知事と意見交換を行った。