2019年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)評価の実施

PDCAサイクル

これまで日本は、ODA事業の透明性向上を徹底し、その説明責任の向上を図るため、①PDCAサイクル(案件形成(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、フォローアップ活動(Act)の強化、②プログラム・アプローチの強化、③「見える化」の徹底を進めてきました。

PDCAサイクルの強化について、日本は、①すべての被援助国における国別開発協力方針の策定、②開発協力適正会議の開催、③個別案件ごとの指標の設定、④評価体制の強化といった取組を進めています。

より効果的・効率的なODAを行うためには、事業レベルだけではなく、政策レベルでPDCAサイクルを強化していくことが必要です。そのため、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(いわゆる「政策評価法」)に基づいて、経済協力に係る施策等について政策評価を実施注9するとともに、中立的な立場から評価を行うべく第三者によるODA評価を実施し、評価の結果から得られた提言や教訓をODA政策にフィードバックすることで、ODAの管理改善を図っています。

第三者評価注10では、第三者が主に政策レベルの評価(国別評価、課題・スキーム別評価など)を行い、開発の視点から政策やプログラムが日本のODA上位政策や被援助国のニーズに合致しているか(政策の妥当性)、当初予定されていた目標が達成されているか(結果の有効性)、政策の実施までに適切なプロセスが取られているか(プロセスの適切性)の3つの評価項目に基づいて評価を行います。また、開発の視点に加えて、当該政策やプログラムの外交上の効果の確認も重要であるとの考えから、外交の視点からの評価も行っています。2015年度からは、原則としてすべての評価案件で外交の視点からの評価を行い、ODAの外交的な重要性および波及効果(ODAが日本の国益の実現にどのように貢献したか)を明らかにするため、外交の視点からの評価の拡充を試みています。また、評価結果は外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/hyoka.html)などで公表されており、ODAがどのように使われ、どのような効果があったのかについて国民への説明責任(アカウンタビリティ)を果たす役割も持っています。

さらに、JICAも無償資金協力、有償資金協力、技術協力それぞれのプロジェクトについての評価やテーマ別の評価を実施しています。JICAは、各プロジェクトの事前の段階から、実施の段階を経て、事後まで一貫したモニタリング・評価を行うとともに、これら3つの援助手法に整合性のある評価の仕組みを確立しています。なお、これらの評価はDAC評価5項目注11に基づいて行われ、一定金額以上の案件については、外部評価者による事後評価を実施しています。また、事業の効果を定量的に把握することは重要であり、インパクト評価注12の強化にも取り組んでいます。

なお、海外から日本のODAがどのように見られているかの一例として、2018年2月、ASEAN諸国における対日世論調査注13では、日本のODAについて、約8割近くが「日本のODAが自国の開発に役立っている」と回答しています。


  1. 注9 : 交換公文(E/N)供与限度額150億円以上の有償資金協力プロジェクト、およびE/N供与限度額10億円以上の無償資金協力プロジェクトについて事前評価を実施している。「未着手・未了案件(未着手案件とは、政策決定後、5年を経過した時点で貸付契約が締結されていない、あるいは貸付実行が開始されていないなどの案件。未了案件とは、政策決定後10年を経過した時点で貸付実行が未了である案件を指す。)」の事後評価を行っている。
  2. 注10 : 2017年度からは外務省が実施する無償資金協力についても、2億円以上の案件については内部評価を、10億円以上の案件については第三者評価を実施し、その結果を公表するとともに、これらの事後評価結果が次のODAの案件形成に活かされるよう努めている。
  3. 注11 : 妥当性(relevance)、有効性(effectiveness)、効率性(efficiency)、インパクト(impact)、持続性(sustainability)の5項目。2019年12月に一貫性・整合性(coherence)が追加され、6項目となった。
  4. 注12 : 開発事業の効果を、統計学や計量経済学の手法を用いて検証する評価方法のこと。
  5. 注13 : 外務省が世論調査機関に委託し、ASEAN10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)において、18歳から59歳までの300名を対象に、インターネットおよび一部訪問面接を併用した対日世論調査が行われた。 URL:http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006943.html
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