ODA評価年次報告書2023 | 外務省

ODA評価年次報告書2023

2022年度外務省ODA評価のまとめ

2022年度は、国別評価3件(ラオス、タジキスタン、トルコ)、外務省が実施する無償資金協力個別案件の評価2件(2016年度及び2017年度対キューバ無償資金協力「経済社会開発計画」)の計5件の第三者評価を行った他、「過去のODA評価案件(2015~2021年度)のレビュー」も第三者に委託して実施しました。

開発の視点からの評価

国別評価3件の評価結果

政策の妥当性については、いずれの国も我が国の上位政策や相手国政府の開発政策及び国際的な優先課題に整合しており、また、我が国の比較優位性をいかした支援が実施されており、ラオス及びトルコは「極めて高い」、タジキスタンは「高い」となりました。

結果の有効性については、各国において計画された事業において、新型コロナ等の影響がありながらも概ね効果を発現していることが確認されました。ラオスは「極めて高い」、トルコは「高い」という評価結果となった一方で、タジキスタンでは外部条件の影響もあり想定した効果が発現していない事業や、報告書に効果の記載がない事業が確認された結果、「一部課題がある」と評価されました。

プロセスの適切性では、各国とも政策策定プロセスは適切に行われていました。実施においても各国の状況に応じて、適切な支援スキームの選択・組合せや他の開発パートナー、本邦企業、NGO等との連携により支援の効果を高める取組が見られました。その結果、ラオスとタジキスタンでは「高い」と評価された一方、トルコにおいては技術協力協定締結の遅れから一部事業が実施できず結果として政策の妥当性と結果の有効性の確保に影響を及ぼしたとして「一部課題がある」と評価されました。

開発の視点からの評価レーティングの表

レーティング基準
極めて高い: 全ての検証項目で極めて高い評価結果であった。
高い: ほぼ全ての検証項目で高い評価結果であった。
一部課題がある: 複数の検証項目で高い評価結果であった一方、一部改善すべき課題が確認された。
低い: 複数の検証項目で低い評価結果であった。

(注1)国別評価の場合

(注2)無償資金協力案件の評価の場合。なお、令和2年度に実施した「外務省が実施する二国間無償資金協力個別案件の評価についての分析・評価手法の分析」の結果を踏まえ、令和3年度から、開発の視点と外交の視点とを統合し、「外交的な重要性」にかかる検証項目は「計画の妥当性」に、「外交的な波及効果」にかかる検証項目は「結果の有効性」に含めている。

無償資金協力個別案件2件(廃棄物収集車、都市整備関連機材等)の評価結果

計画の妥当性については、ハバナ市だけでは難しい廃棄物管理や災害対策のニーズに合致しており、また、日本人キューバ移住120周年や日本・キューバ外交関係樹立90周年などの時宜を得た援助であったことが確認され、それぞれ「高い」との評価になりました。

結果の有効性についても、廃棄物の収集量や自然災害で発生した倒木の撤去などに十分活用されていることが確認され、それぞれ「高い」という結果となりました。

外交の視点からの評価

2022年度の国別評価においては、評価対象国それぞれが当該地域において地政学的に重要な役割を持っており、評価対象国の経済社会発展に我が国がODAを通じて寄与することは、当該国及び当該地域の安定と繁栄を促すことにつながるなどの外交的な重要性が確認されました。また、人材育成等を通じた日本への理解・関心の深化、親日派・知日派の増加、友好関係の維持発展に加え、経済面での呼び水効果や国際社会における日本のプレゼンス強化への貢献など一定の外交的な波及効果も確認されました。

提言・教訓

2022年度に実施した5件のODA評価の結果、それぞれの評価案件の個別事情を踏まえた提言がされました。それらのうち、複数の案件に共通する提言、また、他案件へも適用が可能な提言は以下のとおりです。

複数の評価案件に共通する提言

● 広報活動の一層の強化

過去のODA評価においても繰り返し提言されていますが、ODAの成果を外交力としていかすために、今回の評価においてもラオスとトルコで現地及び国際社会への発信につなげる広報活動の強化の必要性が指摘されました。

● 我が国の比較優位性の活用の継続

トルコでは防災協力、ラオスにおいてはこれまでの支援で培われた信頼など、我が国の比較優位性を活用しながら援助が実施されているほか、ODA予算や援助スキームが限られるタジキスタンにおいては、無償資金協力案件と技術協力を組み合わせるなど、様々な工夫を通じた効果的・効率的なODAの活用が評価され、このような取組の継続が提言されました。

● 三角協力(注)プログラムの拡大・推進

トルコにおいては、開発協力庁及びトルコ政府機関との連携強化による三角協力プログラムの拡大・推進が提言され、キューバではより現実的な開発課題の解決を目指すために、JICAが先行して支援を実施した周辺国の経験から学ぶことが提言されました。

(注)援助国と被援助国が有するリソースとノウハウを効果的に生かし、協力して第三国を支援すること。

他への適用可能性が見込まれる提言

● 国際機関連携無償資金協力案件におけるモニタリングの強化

タジキスタンの評価において、国際機関連携無償資金協力案件の報告書の未提出や不明瞭な記載によりアウトカムが確認できないとの指摘があり、報告書の適時提出や管理体制の向上と、記載内容の統一化が提言されました。これにより、事業のモニタリングが容易になり、類似案件との比較がしやすくなる旨言及されています。

過去のODA評価案件(2015~2021年度)のレビュー

ODA評価(第三者評価)案件を主たる対象に、平成27年に閣議決定された開発協力大綱の主要項目に照らして分析を行い、大綱との整合性、達成状況等を確認し、今後のODA政策及びその実施に際して考慮すべき事項、新大綱に盛り込むべき視点等についての提言を得るために実施しました。

開発協力大綱に関する提言としては、戦略性の明確化、大綱の構造・内容の一貫性とメリハリの強化、「実施上の原則」「実施体制」で引き続き重要と思われる項目への取組(特に軍関係者の関わる支援関連等)が挙げられました。

開発協力政策及びその実施に関する提言としては、開発協力の実施における戦略性の強化、実施体制の強化(他アクターとの連携、モニタリング・評価、広報)、成果指標の設定(戦略・優先度の明確化、国民へ分かりやすく伝える手段)が挙げられました。

ODA評価手法に関する提言では、政策レベルのODA評価と開発協力大綱の結びつきの強化、評価結果を導くプロセスの明示が挙げられました。

 

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