ODA評価年次報告書2021 | 外務省

ODA評価年次報告書2021

2020年度外務省ODA評価のまとめ

2020年度は、国別評価としてブラジル、モンゴル及びルワンダの3件、外務省が実施する無償資金協力個別案件の評価として平成27年度ヨルダンに対する経済社会開発計画及び平成29年度モザンビークに対する経済社会開発計画の2件、計5件の第三者評価を実施しました。また、評価手法・評価の枠組みについての調査・分析を2件実施しました。

開発の視点からの評価

政策・案件の妥当性については、総じて高い評価が得られ、開発協力大綱などの上位政策やSDGsなどの国際的な優先課題と整合した支援を実施していること、被援助国のニーズに即した支援を実施していることが確認されました。環境や教育等の分野で日本の比較優位性が発揮されていることも明らかになりました。

結果の有効性についても、全体的に高い評価となりました。政策の目標達成度合いを測る指標があらかじめ設定されていなかったため、政策実施の効果を厳密に測ることが困難との指摘もありましたが、調査・分析の結果として、被援助国の抱える開発課題に対して日本の支援が貢献していることが確認されました。

プロセスの適切性については、全ての案件について、開発課題の把握や実施プロセスにおける関係者とのコミュニケーションには問題がなく、被援助国のニーズを適切に把握し実施されていることが確認されましたが、一部の案件については、供与品引渡し後のモニタリングや記録、広報に改善の余地があることや、支援内容に関する情報公開の促進の必要性が指摘されました。

開発の視点からの評価レーティングの表

外交の視点からの評価

2015年度以降、すべての外務省ODA評価案件において、日本の国益への影響を確認する外交の視点からの評価を実施しており、評価基準として「外交的な重要性」(日本の国益にとってなぜ重要か)と「外交的な波及効果」(日本の国益にどう貢献したか)を設けています。

2020年度の評価においては、いずれの案件についても、当該国に対するODA実施の外交的な重要性が確認され、また、ODA実施により、二国間の信頼の強化や国際社会におけるプレゼンス向上、二国間の経済関係の強化、日本に対する理解度の深化等、日本の国益にとって望ましい外交的な波及効果が生じていると評価されました。

例えば、ブラジル国別評価では、両国間の政治、経済、文化面における深い関係を強化する上で、また、気候変動、核軍縮、国連安保理改革といった多くの国際的共通課題についての連携を進めていく上で、対ブラジルODAが外交的な重要性を有していることが確認されました。実際に、日本の支援が両国の友好関係促進に寄与した事例が多数見られ、進出日系企業拠点数が増加傾向にあることも、ODAが日本企業進出の一助となったとも考えられるなど、外交的な波及効果も確認されました。

提言

2020年度に実施した5件のODA評価の結果、それぞれの評価案件の個別事情を踏まえた提言がなされましたが、複数の案件に共通する提言、また、他案件へも適用が可能な提言がありました。

複数の評価案件に共通する提言

●民間連携の更なる促進

開発途上国の経済成長において、民間企業の投資活動の果たす役割はますます大きくなっており、ODAにおける官民連携促進は、日本政府の方針の一つでもあります。ブラジル及びルワンダ国別評価において、既に有益な民間企業との連携や協働の事例が存在しており、これらの連携を更に促進していくべきと提言されました。

●効果的な広報の促進とより積極的な情報公開

2020年度ODA評価5案件のうち3つの案件において、効果的広報の促進や情報公開について提言されました。2件の無償資金協力個別案件の評価では、個別事業に関して、二国間関係や支援の全体像と関連付けたり、具体的に意義や内容を説明したりなど、より効果的で印象に残る広報内容の工夫が重要と提言されました。また、ルワンダ国別評価では、政策策定の背景等について、より広い観点からより分かりやすい説明を工夫することが提言されました。

●(無償資金協力個別案件について)供与品引渡し後のモニタリングの改善

外務省が実施する無償資金協力個別案件について、調達代理機関(注)から提出される報告書をもとに、大使館による事業実施状況のモニタリングが行われているものの、引渡し後の供与品の使用状況及び想定された効果の発現状況を把握する体制が不十分であるとして、モニタリング体制の強化について提言がなされました。

(注)ODA事業において、被援助国政府との契約に基づき、入札手続、売買契約、支払など一連の調達手続を代行する機関。

個別の評価案件に関する提言のうち、他への適用可能性が見込まれるもの

●三角協力(注)における関係国間の対話の強化

開発協力大綱は三角協力を継続していくと謳っています。ブラジル国別評価では、三角協力における関係国間での密接なコミュニケーションや、継続的なモニタリング体制の整備などについて提言され、これらは、他の地域での三角協力においても参考となるものです。

(注)援助国と被援助国が有するリソースとノウハウを効果的に生かし、協力して第三国を支援すること。

●人事異動や省庁再編が頻繁に発生する国における対応

モンゴル国別評価では、頻繁な人事異動や省庁再編等のリスク軽減のため、協力対象となる組織内での情報共有の仕組みの導入や、省庁再編についての事前の情報収集・対応策の準備などの取組強化について提言されました。類似の状況は他の途上国においても見られると思われ、そうした国々でも考慮すべき教訓と考えられます。

提言への対応策

ODA評価の各案件についてなされた提言のそれぞれについて、外務省は対応策を策定しています。2020年度に実施した5件のODA評価の対応策の例は以下のとおりです。

ブラジル国別評価では、三角協力における関係国間の対話の強化が提言されました。ブラジル開発国際協力庁との定期協議を引き続き実施し、全体の方針についての協議を行う他、実施中のプロジェクトについて、状況の変化に柔軟に対応できるよう、三か国共同での定期的なモニタリング体制の確立について検討していきます。

モンゴル国別評価では、頻繁な人事異動に対するリスク軽減の取組強化が提言されました。案件の進行中に人事異動があった場合でも、それまでに得られた成果や知見が的確に引き継がれる仕組みを構築するためにモンゴル側と協議を行う他、技術移転の方法も工夫していきます。

ルワンダ国別評価では、日本企業等の多様なアクターとの連携促進が提言されました。知日派のルワンダ人人材の育成や両国企業間のネットワークの構築を促進するため、ABEイニシアティブ(注)やICT分野の技術協力プロジェクトを引き続き実施していきます。

(注)アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ。アフリカの若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供するプログラム。

平成27年度ヨルダンに対する経済社会開発計画の評価では、効果的な広報の実施について提言されました。今後の類似案件では、地域外交や国際的開発課題に鑑みた案件の外交的意義について分かりやすい広報に努め、その案件のみならず、責任ある国際社会の一員としての我が国の難民支援や人道支援のあり方をアピールする内容となるような広報の実施に努めます。

平成29年度モザンビークに対する経済社会開発計画の評価では、調達品の引渡し後のモニタリングの改善について提言されました。今後の類似案件では、消耗品や消費財の活用による効果を事後に確認することの難しさを認識し、あらかじめ先方政府に報告書の提出等を求めることで、調達品の使用状況や効果の発現状況を確認するように努めます。

評価手法・評価の枠組みについての調査・分析とそれを受けた対応

2020年度は、5件のODA評価に加えて、「過去のODA評価案件(国別評価)のレビューと国別評価の手法に関する調査研究」及び「外務省が実施する二国間無償資金協力個別案件の評価(第三者評価)についての分析・評価手法の提案」を実施しました。これらは、それぞれ国別評価と無償資金協力個別案件の評価について、過去の実績を踏まえ、今後のより良い評価のあり方の検討を目的としたものです。

●過去のODA評価案件(国別評価)のレビューと国別評価の手法に関する調査研究

国別評価がより政策に反映されやすいようなタイミングで実施されることが有益であるとの提言のほか、アルファベットや数字を用いたレーティングについては、分かり易さは増すものの、評価される側の評価結果の建設的な受け止めを阻害する面もあるため、両面を考慮し、レーティングの目的を踏まえて評価結果の表し方を決定することが望ましいと提言されました。これを受けて、2021年度の国別評価においては、評価対象国の選定に際し、国別開発協力方針改訂を評価年度の翌年度に控えている国を優先的に検討しました。また、2021年度からはアルファベットによるレーティング表記は取りやめ、評価結果は評語でのみ表すこととしました。

●外務省が実施する二国間無償資金協力個別案件の評価(第三者評価)についての分析・評価手法の提案

案件の特質を踏まえて、「開発の視点」と「外交の視点」を統合し、評価基準として「計画の妥当性」と「実施と結果の有効性」の2つを用いること、政策レベルの評価で用いる目標体系図は必須とせず、評価チームは案件の基本情報をまとめた「評価案件概要表」を作成すること、レーティングはこれまでと同様の4段階を維持するがアルファベットの併記はしないことなどが提案されました。これらの提案を踏まえ、2021年度以降は、新たな評価基準・手法を用いた評価を実施することとしました。

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