2019年度外務省ODA評価結果
2013年度ペルーに対する次世代自動車ノンプロジェクト無償資金協力の評価<概要>
(注)下記は、評価チーム作成の評価報告書に基づき、外務省ODA評価室が作成したものです。
全文はこちらからご覧いただけます。
評価者 (評価チーム) |
評価主任 | 稲田 十一 専修大学経済学部教授 |
アドバイザー | 所 康弘 明治大学商学部専任准教授 |
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コンサルタント | 有限責任 あずさ監査法人 | |
評価対象期間 | 2019年9月~2020年3月 | |
現地調査国 | ペルー |

ペルー外務省公用車として活用される供与車両
評価の背景・対象・目的
ノンプロジェクト無償資金協力は、貧困削減などの経済社会開発に取り組んでいる途上国を支援するため、国外から資機材などを購入する資金を開発途上国に対して供与する無償資金協力である。その中でも「次世代自動車ノンプロジェクト無償資金協力」は、エネルギー効率が良く環境負荷が低い日本の次世代自動車を調達し、次世代自動車の普及促進を図り、環境分野などでの努力を支援する援助形態であり、日本企業の海外展開促進にも大きな期待が寄せられている。本評価調査は、平成25年度に交換公文に署名した「対ペルー次世代自動車ノンプロジェクト無償資金協力」(供与額12億円)について事業評価を行い、結果を公表し、今後の案件策定に有益となる提言を得ることを目的とする。
評価結果のまとめ
● 開発の視点からの評価
(1)案件の妥当性
本事業は、日本の上位政策、ペルーの開発ニーズ、国際的な優先課題に整合し、また、日本の比較優位性をいかしたものであった。ただし、日本の自動車メーカーの市場展開という目的について、本援助形態による実施が、具体的に何をもって目的達成とするのか不明のため、適切な施策であったか判断できないという点において、課題もあったものと考えられる。次世代自動車ノンプロジェクト無償資金協力の支援枠組みにおいて、具体的な目標や成果指標に関する説明が十分ではなく、個別事業と援助形態の政策的な目的及び位置付けについては、より明確な説明が必要と思われた。(評価結果 : 高い
)(2) 結果の有効性
インプット・アウトプットは適切であり、次世代自動車は良く活用され、維持管理されている。アウトカム・インパクトについては、納入された次世代自動車が10年間稼働した場合の温室効果ガス削減効果を計算すると共に、ペルーの自動車市場において、日本の自動車メーカーが高いシェアを占め続けていることを確認した。ただし、評価調査では、本事業がペルーにおける日本車及び日本製次世代自動車の普及促進に繋がったとまでは結論付けることはできなかった。ペルー政府は積極的に環境政策を導入し、社会の環境意識も高まっているものの、一般国民レベルにおける本事業に関する認知度は低いと思われる。評価調査では、本事業による具体的な日本製次世代自動車の普及促進効果、環境対策への後押し効果は見出せなかった。(評価結果 : 高い
)(3) プロセスの適切性
本事業は適切に計画され、日本側関係者はペルーのニーズを理解していた。また実施手続は正しく行われ、機動性・迅速性が確保された。環境対策に重点をおいた点で、本事業の目的及び方向性は、国際協力機構が実施するペルーとの協力事業とも整合している。在ペルー日本国大使館は、広報・情報公開活動に積極的に取り組み、複数の現地メディアにより本事業は報道された。(評価結果 : 極めて高い
)(注)レーティング: 極めて高い
/高い /一部課題がある /低い● 外交の視点からの評価
(1)外交的な重要性
日本のODA政策、経済外交政策を踏まえ、本事業は日本とペルーの二国間関係上重要であったと評価した。特にペルーの自動車市場の重要性を鑑みて、日本企業・国民の繁栄に向けて重要であったと評価した。
(2)外交的な波及効果
一般国民レベルにおける認知度の低さを課題と認識したものの、第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)において次世代自動車が使用され、ペルーのイメージ向上や環境意識のアピールに繋がったことなど、本事業がペルー政府から歓迎され、日本のプレゼンス向上と親日感情の醸成という効果を発現したことを確認した。また、単純な日本車の販売量だけでなく、より広い観点から日本の自動車メーカーの裨益を捉えた場合、本事業が日本企業に対して様々な正の波及効果を発現していることを確認した。
評価結果に基づく提言
(1)協力内容に関する情報公開の拡大
本事業の目的や背景は、日本外務省及び在ペルー日本国大使館などによる公開された関連資料に明確には記載されていない。このため日本国民は、本事業が何故必要であったのか、どこに何が供与されたのか、事業内容や協力金額が妥当であったのかなどを知ることが出来ない。国民への説明責任を果たす情報公開を行うと共に、国民の理解を促進するよう取り組む必要がある。
(2)相手国内におけるさらに積極的で、効果的な情報発信・広報の実施
日本の自動車メーカーのペルー展開促進については、少なくとも自動車メーカーの潜在的な顧客であるペルー国民に対する効果を見いだせなかった。また、一般国民レベルにおける日本への理解や認知度の向上、日本企業のプレゼンスの向上といった効果も見いだせなかった。今後、日本製品の普及促進を図る次世代自動車ノンプロ無償を実施するに当たって、現地側の業界団体に対する情報発信や日系社会を通じた宣伝効果の活用などの対応を検討すべきである。
(3)ノンプロジェクト無償資金協力(現・経済社会開発計画)の目的・成果指標などの対外的公表
ノンプロジェクト無償資金協力(現・経済社会開発計画)は、これまでに名称の改変や、援助対象の差異により細分化された下位の事業形態が複数創設・整理統合されてきた経緯があり、その目的が第三者である一般国民の目線からは理解し難くなっている。このため、ノンプロジェクト無償資金協力(現・経済社会開発計画)の事業を計画・実施するにあたっては、その具体的内容と共に、事業の目的、目指すべき成果指標などを示した資料を作成し、国民に公表することを提言する。当該資料の内容や公表時期については、実現可能な作業手順や方法を検討する必要がある。