<1>最近の政治・経済・社会情勢
*1:サバンナ気候
サバンナ気候の特徴は、気温の年較差が比較的小さく、年平均降水日は40~120日で、降雨は夏に限られており、雨の降らない乾季が長期間続くことが挙げられる。
<2>開発上の課題
(1)ガーナの開発計画
*2:DAC新開発戦略
1996年5月、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)において、21世紀の援助の目標を定めるものとして「21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献(新開発戦略)」と題する文書が採択された。この開発戦略は、地球上のすべての人々の生活向上を目指し、具体的な目標と達成すべき期限を設定している。具体的には、(A)2015年までに貧困人口割合の半減、(B)2015年までに初等教育を普及、(C)2005年までに初等・中等教育における男女格差を解消、(D)2015年までに乳幼児死亡率を1/3に削減、(E)2015年までに妊産婦死亡率を1/4に削減(F)2015年までに性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)に係る保健・医療サービスを普及、(G)2015年までに環境資源の減少傾向の増加傾向への逆転、そのために、2005年までに環境保全のための国家戦略を策定、という目標を掲げている。この目標達成に向け、先進国及び開発途上国が共同の取り組みを進めていくことが不可欠として、グローバル・パートナーシップの重要性を強調している。
尚、我が国は、ガーナをDAC新開発戦略の重点実施国の1つと位置づけている。
(2)開発上の主要課題
*3:基礎教育関係指標
- 基礎教育就学率(初等教育)79・5%(男性89%、女性70%)(1990)
- 文盲率(15歳以上)35%(女性47%、男性24%)(世銀 African Development Indicators 1995)
*4:ギニアウォーム症
寄生虫Daracunculs(別名スモール・スネーク)の幼虫が寄生する微少ミジンコを含む水を飲むことにより感染。「D」幼虫が体内で約5センチ程度に成長し、足部等から皮膚を食い破ってゆっくりと出てくる。この際激しい痛みを伴うとともに破傷風、感染炎等を併発することもある。対症薬及び予防薬はなく、対策は「D」幼虫の撲滅と罹患予防(簡易ポンプ併用の井戸掘削、浄水フィルター)。
*5:構造調整改革実施の結果、ガーナは、1985年~96年の12年間、年平均4.65%の実質経済成長率を記録しており、サブ・サハラアフリカ地域の中でも高い成長率を維持している。
(3)主要国際機関との関係、他の援助国、NGOの取り組み
*6:セクター・プログラム(Sector Program)・アプローチ
1993年に、サブサハラ・アフリカの調整政策支援に取り組んでいる「サブサハラ・アフリカ特別援助プログラム」(SPA:Special Program of Assistance for Low-Income Debt-Distressed Countries in Sub-Sharan Africa)において、従来の構造調整支援中心の協力から、生産セクターへも資金を振り向けるべきとの観点から、我が国が提唱したアプローチ。援助国間の援助の重複や援助国の人材・財源の非有効利用、被援助国の開発計画との整合性の不足等の問題を解決すべく、被援助国が中心となって各セクターの開発計画を作成し、被援助国・ドナー間で同計画を吟味し、ドナーが右計画に従って調整を行った上で援助を行うという開発アプローチである。当初セクター・インベストメント・プログラム(SIP:Sector Investment Program)と呼ばれたが、現在はセクター・プログラムと呼ばれている。上記DAC新開発戦略との関連でも、被援助国のセクター開発計画の策定や援助国間協調におけるオーナーシップ、それを踏まえた援助国間協調や援助手続の共通化等のパートナーシップというコンセプトとも合致している。
<3>我が国の対ガーナ援助政策
(1)対ガーナ援助の意義
*7:我が国は、98年10月に東京で開催した第2回アフリカ開発会議(TICAD II)において採択された「東京行動計画」に従って、アフリカ諸国における援助を実施することとしているが、特に、ガーナについては、西アフリカ地域全体に裨益するプロジェクトの実施も推進することとしている。
また、TICAD IIのフォローアップの一環として、アジア・アフリカの協力推進の方途について協議するための政策対話を促進すべく、来年度前半、マレーシアにて「第3回アジア・アフリカ・フォーラム」の開催を予定している。また、アジア・アフリカ間の貿易・投資の促進を図ることを目的とする「アジア・アフリカ・ビジネス・フォーラム」が、99年10月、UNDPの主催によりマレーシアにて開催された。
(2)ODA大綱原則との関係
*8:政府開発援助大綱
我が国のODAの理念と原則を明確にするために、援助の実績、経験、教訓を踏まえ、日本の援助方針を集大成したODAの最重要の基本文書であり、平成4年6月30日に閣議決定された。内容は、基本理念、原則、重点事項、政府開発援助の効果的実施のための方策、内外の理解と支持を得る方策及び実施体制の6部から構成される。「基本理念」において、(A)人道的見地、(B)相互依存関係の認識、(C)自助努力、(D)環境保全の4点を掲げている。また「原則」において、「相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断」しつつ、4項目への配慮、すなわち、(A)環境と開発の両立、(B)軍事的用途及び国際紛争助長への使用回避、(C)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払うこと、(D)民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うこと、を定めている。
(3)我が国援助の目指すべき方向
*9:我が国の政府開発援助に関する中期政策
政府開発援助に関する中期政策(以下中期政策)は、今後5年程度にわたるODAの進め方を体系的・具体的にまとめたものであり、援助の一層効果的・効率的な実施を目指すとともに、内外に我が国のODAについての基本的考え方や具体的援助の進め方をより明らかにすることにある。
厳しい我が国の経済財政事情の下で、99年発表の今次策定の中期政策には数値目標は揚げず、策定過程においてODAの改革に関する各界の提言や意見、国会での議論、NGOとの意見交換など国民の意見を最大限取り入れる努力を行った。
中期政策は、「はじめに」、「基本的考え方」、「重点課題」、「地域別援助のあり方」、「援助手法」、「実施・運用上の留意点」の6つの部分からなっており、今次政策ではDACの新開発戦略を踏まえ、重点課題においては、経済・社会インフラ整備への協力とのバランスを配慮しつつ、従来以上に「人間中心の開発」及び「人間の安全保障」という概念を強調している。
(4)重点分野課題別援助方針
*10:我が国は、ポリオ根絶のためのワクチン供与を実施しており、85年前後には年間訳150症例見られたのが、98年には年間4例まで減少している。
*11:国際寄生虫対策
98年のバーミンガム・サミットにおいて、橋本総理(当時)は、国際寄生虫対策を効果的に推進するために、アジアとアフリカにおいて「人造り」と「研究活動」のためのセンター(拠点)を作り、国際的なネットワークを構築し、人材育成と情報交換を促進していくべきことを提案。こうした動きを踏まえ、我が国は、現在、タイ、ケニア、ガーナにおいて、人材研修などの南南協力の推進拠点を作るべく政府(外務省、厚生省、文部省)、JICA、日本寄生虫学会、NGOなどの関係者が集まり、WHO等の国際機関との連携についても視野に入れつつ準備を進めている。
*12:人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)
人口の抑制は、地球環境や食料・資源エネルギー問題と共に地球規模の問題になっているが、こうした中で、94年2月、我が国は、94年から2000年度までの7年間でODA総額30億ドルを目途に、この分野での援助を積極的に推進していくことを内容とする「人口・エイズに関する地球規模イニシアティブ(Global Issues Initiatives on Population and AIDS:GII)」を発表した。GIIは、人口や家族計画及びエイズに関する直接的な協力に加え、女性と子供の健康に関する基礎的保健医療、初等教育、女性の地位向上等、間接的に人口増加・エイズの抑制に資する協力を含めた包括的なアプローチを目指すものである。
GII推進にあたっては、これまでの15ヶ国に対して98年度までに調査団を派遣し、案件発掘・形成を推進してきた。また、この分野で国際機関との連携に努めているほか、調査段階からNGOとの参加、協力を得ている。
*13:開発福祉支援事業
開発福祉支援事業は、日本の社会福祉分野での経験を踏まえつつ、開発途上国における福祉向上活動を推進するため、現地で活動を展開しているNGOや地域組織の協力を得て、住民参加による福祉向上のモデル事業を実施するものである。
この事業は、現地JICA事務所が中心となって、現地で雇用するローカル・コンサルタントを活用して、現地で活動するNGOにモデル事業を実施させることとしている。事業分野としては、例えば、保健衛生改善、高齢者・障害者・児童等支援、女性自立支援及び地場産業振興支援等がある。また、その分野に関する短期専門家の派遣を通じ現地NGO等への技術指導も実施する。
*14:例えば、ある地方給水プロジェクトにおいては、裨益人口が約14万人に及んだものもある。
*15:我が国は、ガーナの構造調整努力を支援するため、98年度までに合計3609億円の円借款及び合計120億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。
(5)援助実施上の留意点
*16:CDFアプローチ
持続可能かつ社会的平等を実現する開発のためには、マクロ経済面と構造的、社会的、人間的な側面のバランスのとれた発展を同時に達成する必要があるとの認識に基づき、多くの開発課題を包括的に取り組むことを目的とした開発アプローチ。ウォルフェンソン総裁により提唱され、本年1月に議論用ドラフトが発表された。同ドラフトには、(1)途上国のオーナーシップと、開発当事者(政府、ドナー、民間セクター、civil society)間のパートナーシップに基づく、全体的な枠組み作り、(2)伝統的なマクロ経済分析に加えて開発における社会的、構造的、人間的側面の必要性、(3)特定国の開発取り組み状況を鳥瞰的に把握できる、透明性、説明責任、公開性に留意したマトリックスの作成、(4)途上国自身による各課題への取り組みペース、配分等、途上国のオーナーシップを最重要視すること、等が述べられている。
*17:我が国は、同研究所において、96年よりWHOとの連携による黄熱病・ポリオ感染診断技術の第三国研修を実施している。