世界の医療事情

イラク

平成28年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 イラク共和国(バグダッド)(国際電話国番号964)

2 公館の住所・電話番号

在イラク日本国大使館 (毎週金土休館)
住所:Embassy of Japan, International Zone, Baghdad, Iraq
電話:+870-772-543-197 (代表),領事 +964-(0)77-0494-2018
ホームページ:http://www.iraq.emb-japan.go.jp/Japanese/index_j.html別ウィンドウで開く

(注)金土以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

(1)衛生・環境

 首都バグダッドは、チグリス川の河畔にあり、国土のほぼ中央の内陸部に位置し、北緯33度と大分市とほぼ同じ緯度ですが、気候は砂漠気候で、1年を通じて快晴の日が多く、夏期には最高気温が50℃を超える日もあります。冬は比較的温暖で過ごしやすいですが、夜間や早朝は冷え込むため暖房が必要です。また一年を通じ気温の日較差が大きいのが特徴です。年間降水量は123ミリと少なく、降雨は冬期に集中しますが、雪が降ることは殆どありません。例年、春先には砂嵐に見舞われ、眼や喉を痛めることがあります。また航空機の飛行等が妨げられることも少なくありません。一年を通して常に乾燥しているため、知らない間に発汗し(不感蒸泄)、脱水に陥りやすいので、水分の補充を十分に行ってください。特に気温の上がる夏期には熱中症にならないように注意する必要があります。他には、サングラスを着用して日光と埃から眼を守るようにしてください。

 治安情勢等については、外務省海外安全ホームページ別ウィンドウで開くで最新の情報をご確認ください。

(2)一般医療情報・医療水準

 当国は、長く続いた戦乱、その後の不安定な治安状況や最近のイラク・レバントのイスラム国 (ISIL)の侵攻に伴う治安の悪化もあり、外国人が比較的安心して受診、あるいは一時的にも入院できる医療機関は非常に限られています。バグダッドのインターナショナルゾーン(IZ)内には、米軍からイラク政府へ移管された病院があり、平成24年4月より、救急外来棟、外来棟が再オープンし、一般診療を開始しています。バグダッド国際空港に隣接して、やはり元米軍の病院で現在は米国務省が管理し、そこから委託を受けた米民間会社が運営する病院があります。但し受診に関してはいろいろな制約があり、外国人の利用は生命の危機等の重症の傷病の場合に限られています。なお、IZ(International Zone / Green Zone)以外の地域、いわゆるバグダッドのレッドゾーンには重症例にも対応可能な公的病院や私立病院も存在しますが、治安の問題からこれらの施設の利用はお勧めできません。治療費は高額になることもあり、さらにイラク国内で対応できない疾患の場合は緊急移送が必要となるためイラク国内で利用可能な医療保険に追加加入しておくことが必要です。(通常の海外旅行傷害保険はイラク国内での疾病・事故を担保していません。)

5 かかり易い病気・怪我

(1)腸チフス

 汚染された食べ物や時として性行為で感染します。潜伏期間は7から21日間。腹痛,発熱(高熱),関節痛,下痢,血便等の症状を起こします。治療が不適切だと重症化して腸穿孔を起こし腹膜炎を併発します。予防接種があります。(7 予防接種参照)

(2)感染性腸炎(下痢)

 食べ物や水から感染します。腹痛、悪心、嘔吐、激しい下痢、発熱等の症状を起こします。

(3)A型肝炎

 食べ物(主に生もの・生野菜)や水から感染します。全身倦怠感、発熱、食欲不振等の症状と黄疸が表れます。予防接種があります。(7 予防接種参照)

(4)熱中症(脱水症)

 春から秋にかけては日差しが強く、湿度が低いので汗をかいても自覚せずに脱水を起こしやすくなります。水分補給に気をつけてください。

(5)リーシュマニア症

 イラクでは広範囲にサシチョウバエによって媒介されるリーシュマニア症が存在します。多くのイラク駐留米兵が皮膚リーシュマニア症に罹患しています。症状は皮膚に潰瘍や結節が生じ、治癒しても醜い瘢痕が残る場合もあります。稀に内臓リーシュマニア症に罹患する場合もあります。長袖・長ズボンを着用し、防虫対策を心がけるようにしてください。

(6)住血吸虫症

 池や湖等の淡水浴中に皮膚から感染する感染症です。プール等の塩素消毒を施行している場所以外の淡水に入ることは避けてください。

(7)狂犬病

 バグダッドやバスラで2003年以来狂犬病の発生件数が増加しています。狂犬病の動物から咬傷を受けた後,適切な時期にグロブリン,ワクチン投与を受けず発症した際の死亡率はほぼ100%です。イラクでは医療事情の問題から狂犬病ワクチンの入手が困難な可能性もあるため、事前に狂犬病ワクチンの予防接種をすることをお勧めします。

(8)刺咬傷(ダニ、シラミ、サソリ、毒蜘蛛、蛇、蚊など)

 宿泊施設などでダニ、シラミの大量発生、サソリの出現をみる事があります。

(9)中東呼吸器症候群(MERS

 イラクでは患者発生は詳しく報告されていませんが、2012年他国で初めての症例が報告されて以来、中東地域特にアラビア半島で多くの症例が報告されている新型コロナウイルスによる呼吸器感染症です。潜伏期は2~15日,主な症状は発熱,咳,息切れです。感染しても症状が現れない軽症の人もいますが,高齢者や基礎疾患のある人では重篤化することがあります。現在有効な治療薬はありません、また死亡率は40%~50%といわれています。

(10)コレラ

 数年周期で流行します。発生時には、発生地域での滞在、飲食には十分注意してください。発生状況については外務省の危険情報(ホームページ)でもお知らせしております。

6 健康上心がける事

(1)手洗い(石鹸・清潔なタオルを使用)、うがいを励行してください。

(2)生水は絶対に飲まない様にしてください。ミネラルウォーターを飲用してください。

(3)火が通っていない食物(外食では特にサラダに注意)は食べないようにしてください。ミンチ類は中心部まで火が通っているのを確認してから食べるようにしてください。

(4)火が通った食物でも、冷たくなった食物は再加熱してから食べてください。

(5)屋外の活動では、水分(水、スポーツドリンク等)を多く摂取して脱水・熱中症に注意してください。(6)夏期は紫外線が強く、UVカットレンズ(サングラス)、日焼け止めクリーム(SPF15以上)を使用してください。冬期は皮膚の乾燥による皮膚の掻痒が多く見られますので、乾燥防止にワセリン等の保湿クリームの使用を勧めます。

(7)イラクで勤務・長期滞在を予定する場合には、精神衛生を含めた健康管理が重要です。定期的に国外での休暇をとり、精神的な緊張等からくるストレスを解放することが大切です。最低3ヶ月毎の国外での休暇を勧めています。当地の生活・勤務環境などから、精神的に不安定な状況に陥る場合は、早めの帰国を勧めます。また、肉体的にも知らない間に健康を損ねている場合があります。定期的な健康診断・人間ドック等の実施を勧めます。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者に必要な予防接種

成人

  • A型肝炎ワクチン・B型肝炎ワクチン:過去に接種済みでも免疫(抗体)が形成されていない場合は再接種してください。
  • 破傷風ワクチン:過去5年以内にブースター接種(追加接種)を受けていない場合は、必ず接種してください。特に土壌に接する機会が多い方にはお勧めします。
  • 腸チフス:特に地方に行く機会がある方にはお勧めます。経口ワクチンと注射ワクチンがあり、経口ワクチンは6歳未満、注射ワクチンは2歳未満の小児には勧められません。
  • 狂犬病ワクチン:動物と接する機会が多い場合は接種をお勧めします。
  • ポリオワクチン:2014年に14年ぶりにイラクでポリオ(急性灰白髄炎)の患者が発生しています。当国は,世界保健機関(WHO) がポリオワクチンの投与ないしは追加接種を勧奨する国の一つですので渡航前にワクチン接種をご検討ください。経口ワクチンと注射ワクチンがあります。

小児

 定期予防接種(DPT、MMR、水痘等)は全て接種することをお勧めします。また、成人と同様にA・B型肝炎ワクチン、及び必要に応じて、腸チフスワクチン、狂犬病をお勧めします。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

イラクの小児定期予防接種一覧
予防接種 初回 2回目 3回目 4回目
BCG 出生時
DTP 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 18ヶ月
B型肝炎 出生時 2ヶ月 6ヶ月
OPV/IPV 出生時 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月
麻疹 9ヶ月
MMR 15ヶ月 4-6歳
Hib 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 18ヶ月
ロタウイスル 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月

(注)ムンプス、風疹の個別接種は行われていない。

(注)Hib及びロタウイルスの予防接種プログラムは2012年に始まったばかりで、まだ一般的にはなっていません。

8 病気になった場合(医療機関等)

 イラクでは安全かつ医療設備の整った医療機関はなく、病気になった場合には国外での治療を第一に考慮する必要があります。緊急時の応急処置・緊急移送対応が可能な病院も限られており、状況によっては対応が非常に困難な場合もあります。なお、イラク国内では、固定電話網が殆ど機能していないため、記載の電話番号は受付とコンタクトパーソンの携帯電話です。電話番号も変更することが多くいため、病院などの場所を事前に確認しておくことをお勧めします。

バグダッド

(1)Ibn Sina Hospital
所在地:International Zone (IZ)内、在イラクオーストラリア大使館の隣
電話:0770-444-6261、0770-538-0505、0790-187-8958
概要:2009年9月まではイラク駐留米軍管理下で外傷専門病院として機能していましたが、その後、イラク政府に管理が移管され、ながらく改装、医療設備の整備等が行われていましたが、2012年4月より、外来棟、救急棟などがオープン。引き続き手術室、入院病棟等を整備中です。外来診療科には、内科、外科、整形外科、産婦人科、小児科、耳鼻咽喉科、救急外来、及び歯科があります。24時間救急対応可、救急車あり。(注意、International Zone内へ入る事が必要)
(2)Medical City
所在地:Bab-Al-Moatham, Rusafa地区
電話: 0790-192-6016, 0790-194-8207
概要:バグダッド市内の保健省に隣接する複数の病院からなる病床総数3,000床以上の中東でも有数の規模を誇る病院で形成外科、心臓血管外科、脳神経外科を含む全診療科を有し、バグダッド大学医学部の教育病院でもあります。脳外科手術、心臓バイパス手術も行われており、64CT、1.5 ステラMRI等の最新のME機器も配備されています。救急外来は24時間対応で受け付け後一般救急外来か外傷用外科救急外来に振り分けられます。ただしRed Zoneに位置するため受診にあたっては十分注意が必要です。
ホームページ:http://medicalcity-iq.net/en/index.php別ウィンドウで開く
(3)Baghdad Diplomatic Support Center
所在地:バグダッド国際空港隣接
電話:米大使館のMedical Duty Officer(緊急連絡担当医)を通じて連絡。
概要:元米軍基地内にあった病院で現在は米国務省が管理し、Comprehensive Health Service社(米民間会社)が運営しています。24時間対応可能な救急外来と入院設備がありますが、外国人の利用は四肢切断と生命の危険がある等の重大な傷病時に限られています。また、原則的に国外移送を前提としており、入院期間も極短い期間に限定されています。

エルビル

(1)PAR Hospital
所在地:Sixty Street, Mamostayan Qr, Erbil
電話:066-210-7001, 066-210-7002, 0750-448-9497
概要:心疾患専門病院。24時間対応可能。2012年に開設された病床数120を有するエルビルで最大のプライベートホスピタルです。診療科は歯科を含み精神かを除く全科あり、経皮的冠動脈形成術、腎臓移植などの実績がありCT、MRI,血液透析装置など配備されています。診療受付時間は24時間対応です。
ホームページ:http://www.emc-hospitals.org/別ウィンドウで開く
(2)LST(Life Support Team) Hospital
所在地:Building 809, Italian Village, Erbil, Kurdistan Region, Iraq
電話:+964(0)750 361 2040,+964(0)750 041 8035(病院代表)
概要:小さなクリニックですが、緊急移送にも対応しております。
(3)Emergency Management Center (EMC) Hospital
所在地:Sixty Street Ministry of Justiceの隣
電話:0750-446-4548、0750-743-3526、0750-470-7549
概要:24時間対応。

9 その他の詳細情報入手先

(1)在イラク日本国大使館 ホームページ:http://www.iraq.emb-japan.go.jp/別ウィンドウで開く

10 現地語・一口メモ

 医師・看護師は英語を話せる場合が多いですが,アラビア語が出来るとよりスムーズに受診できます。英語に関しては,「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照願います。

日本語 アラビア語

  • 医師:ドクトール
  • 飲み薬:アドウィア
  • 注射:ホクネ
  • 頭痛:スダー
  • 胸痛:アラム フィッサデル
  • 腹痛:アラム フィ マーイダ
  • 下痢:イスハール
  • 発熱:ハラーラ
  • 嘔気:シュオール ビッタカイオ
  • 傷:マジュルーフ
  • 具合が悪い。:アナ マリード
  • 病院へ連れて行って欲しい。:ホドニー イラ ムスタシュファ

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