在外公館医務官情報

アフガニスタン

2010年10月

1.国名・都市名

 アフガニスタン・イスラム共和国(カブール)(国際電話国番号93)

2.公館の住所・電話番号

 休館日:金・土曜日

3.医務官駐在公館

4.衛生・医療事情一般

(1)気候・地誌、環境

 首都カブールは、北緯38度と東京とほぼ同じ緯度ですが内陸部に位置し、標高は約1800メートルです。大陸性気候で年間、また日中と夜間の寒暖の差が激しく低湿度です。大別して4月〜11月の乾期と12月〜3月の雨期に分かれ、雨季と乾季の間に短い春と秋があります。

 乾期、特に7月〜9月は高温低湿で、気温が40度台、湿度が30〜40%に達する事も稀ではありません。空気は非常に乾燥しており、木陰では本邦の夏ほど暑く感じないのが常です。このため知らない間に発汗し(不感蒸泄)、脱水に陥りやすいので、水分の補充を十分に行い熱中症にならないように注意する必要があります。また、カブールは、乾期中、時に砂嵐のため土埃で市内が覆い尽くされます。

 雨期、特に冬季(12月〜2月頃)は大陸性気候のため冷え込みが厳しく、最低気温が -20度になることも稀ではありません。また降雪もあります。舗装された道路が少なく、降雨・降雪後道はぬかるみます。暖房機器は、電気・プロパンガスを利用する機器を使用しますが、室内は寒く、電気毛布などがあると便利です。

 春季と秋季は、それぞれ雨期と乾期の間に1ヶ月ほどあり、過ごしやすい時期です。また、初夏から秋季は、スモモ・マンゴ・スイカ・メロン・ブドウなどの果実、冬季にはミカンとリンゴが豊富に出回ります。

 使用するエネルギーは、電気(220〜240ボルト)とプロパンガスですが、慢性的な停電のため、発電機を利用しています。冬季にプロパンガス暖房機器を使用する場合は、住居の換気設備が不備なため、一酸化炭素中毒に注意を要します。

 首都カブールは、世界でも最も環境が汚染された都市の一つに挙げられています。低品質なガソリンやディーゼル燃料、排気ガス対策の取られていない10年以上前の中古車が市内を走行している自動車の8割以上を占めること、住民が暖を取るため古タイヤや木材を燃やすこと、頻発する停電のためにジェネレーターが絶え間なく作動することなどが原因で、大気中の窒素酸化物、硫黄酸化物は先進国基準の約100倍の濃度であり、このため2009年1月には大統領が大気汚染非常事態宣言を出しています。また、アフガニスタンには生活ごみ、医療廃棄物を含む産業廃棄物の処理システムがありません。生活用水は、上下水道が未整備のため井戸水(カルシウム成分の多い硬水)を使用していますが、前述のようにゴミ処理システムが存在しないため、井戸水から一般細菌や大腸菌などが検出されることが稀ではないので、水は必ず沸騰させたものや信頼しうるミネラル・ウォーターを、飲料水、料理用水として使用してください。
  また最近、治安は急激に悪化しつつあり、首都カブールでの自爆テロ事件やIED (即席爆発装置) を用いたテロ攻撃も増加しています。

(2)一般医療情報・医療水準

 当国においては、外国人が安心して受診あるいは入院できる設備の整った医療機関は、地方は言うまでもなく、首都のカブールにさえほとんどありません。欧米や日本製の薬剤は極限られた範囲でしか流通が無く、また非常に高価です。消毒薬やガーゼなどの基本的な衛生材料も不足しています。一般に流通している薬剤、衛生材料はイラン、パキスタン、インド製のものが多く、保存状態その他の点で信頼性に欠けるものも多々見受けられます。

 このような事情から、首都カブールおよび近隣県の在留邦人は、市内の外国系プライベート・クリニックを受診しています。

 しかし、これらのクリニックで対応できない疾患は、ISAF(国際治安支援部隊)野戦病院(フランス軍が管理運営)へ医療支援を要請するか、近隣先進国への緊急医療移送を行います。

 ISAF野戦病院における医療も、救急処置が主体であり、病態の安定後、緊急移送サービス会社を利用し国外医療機関への移送となります。移送に関しての費用は個人負担になりますので十分な保険に加入することをお勧めします。

 ISAF野戦病院は、同部隊の活動に支障のない場合にのみ医療支援を行っており、ISAF軍基地内に施設があり、アクセスするには相当の困難を伴います。

5.かかり易い病気・怪我

(1)食中毒(細菌性、アメーバ性)

 外国人が罹患する最も多い病気です。潜伏期は様々ですが、一般に感染後1 〜2 日で嘔吐、下痢、発熱、腹痛などで発症します。細菌性食中毒は年間を通じて見られますが、5月〜11月の気温の高い時期に多発します。料理人、使用人の衛生管理に注意し、手洗いの励行が大切です。外食をする際には、加熱されたものを食べる、生水を飲用しない等の注意が必要です。

・経口感染による感染症

 いわゆる食中毒以外に経口感染する疾患として注意しておかなければいけない疾患を以下に挙げます。

a)腸チフス

 腸チフスは感染症法で第3類感染症に分類される重篤な腸管感染症であり、チフス菌で汚染された水、食材を介した糞口感染の様式で伝搬します。潜伏期は通常10〜14日で初発症状は発熱が最も多く、時に39〜40度に達します。この時期に全身に皮疹が出現することがあります。その後40度台の発熱が持続し、重症の場合、意識障害が認められます。さらに進行すると下血や腸管穿孔が起きることがあります。治療は抗菌剤を用います。重症例に対してはステロイド剤を併用し、腸管穿孔に対しては外科的な治療が行われます。腸チフス菌は非常に感染力が強いので患者さんの糞便、血液に対しては十分な注意が必要です。

b)A 型肝炎

 ウイルス性肝炎の項でも述べますが、A 型肝炎はA 型肝炎ウイルスで汚染された水、食材(生野菜・魚介類など)を介して伝搬する疾患で、伝搬様式は糞口感染です。潜伏期は2 〜7 週間で、発熱、食欲不振、吐き気、全身倦怠感や皮膚や眼球白目の黄染、便の色が薄くなる等の症状が出現します。ごく稀に生命を脅かす劇症化が起こりますが、大部分は自然回復する経過をたどります。従って特異的な治療法はありませんが、必要に応じ安静保持のための入院や、食欲不振に対して補液治療が行われます。

(2)刺咬症(蛇、蚊、蜂、ダニ、シラミ、サソリ、毒蜘蛛、など)

 カブールにおいても、ダニ、シラミの大量発生、サソリの出現をみる事があります。また蚊や蝿などによる咬症は以下の項で述べる皮膚リーシュマニア症やマラリアなどの原因となるため、野外で活動する際は忌避剤などの使用を勧めます。

(3)呼吸器疾患、アレルギー疾患

 上記4.(1)で言及したように、首都カブールは湿度が低く、朝晩と日中の寒暖の差が大きく、さらに土埃が多い上に大気汚染も著しいため、普通感冒、気管支炎などの呼吸器疾患やアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギー等に罹患しやすくなります、また気管支喘息が増悪したり、空気感染で起こる呼吸器疾患が流行しやすい状況にあります。呼吸器に持病がある方は、当地来訪時、常備薬の持参をお勧めします。

(4)ウイルス性肝炎

 通常ウイルス性肝炎は、経口感染するAとE型、血液・体液などから感染するB、C、D型が知られています(その他、G型)。血液・体液で感染する肝炎は性行為感染症にもなります。当国では、A型、E型、B型、C型肝炎に注意が必要であり、A型およびB型肝炎に関しては、予防接種を勧めます。E型、C型の予防接種は未だありませんが、食中毒予防および当地で緊急輸血を必要とする事態を避ければ予防できます。ウイルス性肝炎の潜伏期は各々で異なります。症状は全身倦怠感、食欲不振、黄疸等が一般的です。A 型肝炎は時に発熱を伴い、全身倦怠感、食欲不振と相まって、病初期に普通感冒と診断されてしまうことがあります。ウイルス性肝炎は劇症化、慢性化しなければ予後良好な疾患ですが、経過観察や安静の維持のため原則的に入院治療となります。

(5)皮膚リーシュマニア症

 サンチョウバエ(Sand fly)を介して感染する寄生虫症です。虫の刺咬部が結節(しこり)、潰瘍と進行します。皮膚リーシュマニア症は、患者の個体差によって、自然治癒から難治、瀰漫例まで様々です。治療はペントスタムという薬を内服するか、患部への局所注射を行います。世界保健機関(WHO)は、首都カブール(人口200〜250万人)で年間約6万人の患者が発生していると推定しています。

(6)マラリア

 ハマダラ蚊の媒体で感染する原虫症で発熱性疾患です。WHOによると、アフガニスタンは地中海以東で2番目にマラリア発生の多い国です。WHOと当国保健省が、アフガニスタン全34県中14県がマラリア高リスク県、低リスク県は16県、マラリアが無い県はわずかに4県と発表しており、2006年から2007年にかけての1年間の発生件数は433,412件で、この内98%が3日熱マラリアで、2%が熱帯熱マラリアであると2007年に報告しています。マラリアは主として5月から11月の乾期に発生し、治療には抗マラリア薬であるクロロキン製剤が使用されますが、生命を脅かす可能性が高い熱帯熱マラリア原虫の7割近くがクロロキンに対して耐性を有しています。首都カブールの標高は1800メートルで、マラリア低リスク地域ですが、米軍はマラリア予防薬の服用を義務づけています。マラリア高リスク地域(ナンガルハール、ラグマーン、クナール県など)への訪問は、事前に現地の医療情報を入手し、必要な予防対策を取るよう勧めます。マラリアの潜伏期間は3日熱マラリアで14日前後、熱帯熱マラリアで12日前後で、悪寒・戦慄を伴う発熱で発症します。体温は時に40度近くまで上昇し1〜2時間持続し、この熱発作が3日熱マラリアで48時間毎、熱帯熱マラリアで24時間毎に起こります。体温の上昇とともに筋肉痛、口渇、呼吸促迫等が生じ、熱帯熱マラリアは急速に重篤化し死亡に至る危険性が高いために迅速な診断が重要ですが、当国の一般医療機関にはマラリアの診断に必用な医療器具が未整備なところが多く、臨床症状のみで診断され治療が行われることが多々あります。抗マラリア薬は副作用も多いので確定診断を受け治療を行うことが望ましくそのためには設備、機材の整った信頼の置ける医療機関への受診が必要です。

(7)狂犬病

 狂犬病ウイルスに感染している小動物(犬、猫、キツネ、狸、コウモリ等)に噛まれることにより発症します。発症後の死亡率はほぼ 100 % で有効な治療法は確立していません。潜伏期間は咬傷部位により異なり、長くて数年ということもあります。むやみに動物と接触することを避けることが大切です。また予防接種があるので、仕事上、野生動物や小動物との接触が想定される際には、事前に必要な対策を取ることを勧めます。

(8)一酸化炭素中毒

 建物の換気不備のため、灯油暖房機器の不完全燃焼による一酸化炭素中毒が散発的に発生(冬季)します。灯油暖房機器を使用する際には、換気に注意を要します。

(9)高山病

 首都カブールの標高は1800メートルで典型的な高山病はありませんが、高地のため、赴任当初、頭痛、不眠、動悸、易疲労感を訴える方が多く見られます。当地到着後1〜2週間は、環境に順応するまで十分に休養をとることが大切です。

(10)熱中症

 夏期の首都カブールは、高温低湿なため、屋外で知らない間に大量に発汗することが多く、脱水に陥ることがあります。長時間、高温環境に曝されると身体の体温調節機能が障害されて、強い脱水症状、高熱が出現します。高温環境下では水分(スポーツドリンク等)の摂取に心がけてください。尿量が少なくなり始めたら要注意です。

(11)交通事故

 当国(首都カブールも)は、交通信号や横断歩道は、ほとんど無く、現地人、外国人とも交通法規を遵守することはほとんどありません。また、外国人は、治安(誘拐、自爆テロなどを恐れ)の関係もあり、徐行せず高速で運転する傾向があります。そのため、交通事故が多く、注意が必要ですが被害者の多くは、現地人の歩行者です。また、地方では荒廃した道路や車両の老朽化、整備不良などを原因とする乗合自動車の事故もしばしば報告されています。

6.健康上心がける事

(1)下水道の未整備、ゴミ処理システムの不在などが原因で、生水は大腸菌などの細菌やアメーバ、さらに重金属による汚染が報告されています。生水は絶対に飲まないようにして下さい。またコンタクトレンズ着用者は、生水は勿論ですが水道水でのコンタクトレンズ洗浄も避けるようになさってください。

(2)火が通っていない食物(外食ではサラダにも注意)は食べないようにして下さい。ミンチ類は中心部まで火が通っているのを確認してから食べるようにして下さい。

(3)火が通った食物でも、冷たくなった食物は再加熱してから食べてください。

(4)屋外の活動では、水分(水、スポーツドリンクなど)を多く摂取して脱水・熱中症に注意してください。

(5)手洗い(石鹸・清潔なタオルを使用)、うがいを励行してください。

(6)夏期は紫外線が強く、UVカットレンズ(サングラス)、日焼け止めクリームを使用してください。冬季は、皮膚の乾燥防止に保湿クリームを使用してください。冬季は、皮膚の乾燥による皮膚の掻痒が多く見られます。

(7)アフガニスタンで勤務・長期滞在を予定する場合には、健康管理は勿論ですが、精神衛生が大切です。定期的に国外での休暇をとりストレスを解放することが、精神衛生管理上大切です。最低3ヶ月毎の国外での休暇を勧めています。当地の生活・仕事環境などから、精神的に不安定な状況に陥る場合は、早めの帰国を勧めます。また、定期的な健康診断の実施と過去の検診結果を赴任時持参することを勧めます。また持病があり定期的にお薬を内服されている方に関しては、当地での医薬品の入手は困難ですから、日本から持参される必要があります。

7.予防接種(現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)PDF

(1)赴任者に必要な予防接種

(2)アフガニスタンの小児定期予防接種一覧

アフガニスタンの小児定期予防接種一覧
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目
BCG 出生児        
DTPHibHep注 6週 10週 14週    
Measles 9ヶ月 18ヶ月      
OPV 出生時 6週 10週 14週 9ヶ月

注)DTP + Hib (インフルエンザ菌b) +B 型肝炎

8.乳児検診

 本邦のような、公的サービスとしての乳児健診に相当する制度はありません。

9.病気になった場合(医療機関等)

◎カブール

(1)DK German Medical Diagnostic Center

所在地:Street 66, House 138, District 4, Zone 1, Kabul

電話:0799-136-210

電子メール:info@medical-kabul.com

ホームページ:http://www.medical-kabul.com他のサイトヘ

概要:ドイツ系のクリニックで入院病床はありません。院内は清潔に保たれています。医師はドイツ人医師とアフガニスタン人医師が駐在し、X線装置、超音波診断装置がありますが 、MRI はありません。臨床検査器具はいずれもドイツ製で概ね良好に維持されており、検査結果は信頼できるものです。薬剤は院内在庫があるが種類は多くありません。また予防接種も行っており、本邦にはない腸チフスの予防接種も在庫があります。受診の際は5,000アフガニーのデポジットが必要です。

(2)KAIA Hospital

所在地:カブール国際空港北 ISAF 基地内

概要:ISAF (国際治安支援部隊)の病院でフランス軍が管理運営しています。医療緊急時(入院処置、手術などを要する場合)は、ISAF軍病院へ医療支援を行いますが、医療関係者の同伴、医師の紹介状が必要であり、また同部隊の活動に支障のない場合のみ患者を受け入れてくれますが、一般的な医療機関受診のアクセスとは違い相当な困難を伴います。医療緊急時は大使館医務官までご相談下さい。

<いずれにしても、アフガニスタンでは入院が必要となる疾患で満足な医療を受けることは困難であり、そのような際は近隣の国へ緊急移送になります。緊急移送は個人負担ですから十分な保険に加入することが大切ですが、「世界のどこでも」とうたっている保険会社でもアフガニスタンはカバーさていない

10.その他の医療情報入手先

 アフガニスタン保健省ホームページ http://www.moph.gov.af/en/他のサイトヘ

11.現地語一口メモ

医師 ドクター

飲み薬 ダワ

注射 ピーチコリ

頭痛 サルダート

腹痛 シカムダート

下痢 イ(エ)スハール

発熱 タバ(バ)

吐き気 ディルバティ

傷 ザクハム

具合が悪い マリーズ

病院へ連れて行ってください マロ (バ)シャバハナ ババル

注)平成22年8月14日現在、アフガニスタン全土に退避勧告が発出されています。主要都市(首都カブール、ジャララバード、ヘラート、マザリ・シャリフ及びバーミアン)も、退避勧告が発出されていますが、真にやむを得ない事情で現地に残留せざるを得ない場合は、政府機関、所属団体等を通じて組織としての必要かつ十分な安全対策を取ってください。

 なお、逐次外務省海外安全ホームページ: http://www.anzen.mofa.go.jp/他のサイトヘ http://m.anzen.mofa.go.jp/他のサイトヘ (携帯版)で最新の当国治安情勢をご確認下さい。

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