2010年9月
アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市(国際電話国番号1)
米国の医療費は非常に高額です。その中でも、ニューヨーク市マンハッタン区の医療費は同区外の2倍から3倍ともいわれており、一般の初診料は150ドルから300ドル、専門医を受診すると200ドルから500ドル、入院した場合は室料だけで1日数千ドルの請求を受けます。例えば、急性虫垂炎で入院し手術後腹膜炎を併発したケース(8日入院)は7万ドル、上腕骨骨折で入院手術(1日入院)は1万5千ドル、貧血による入院(2日入院、保存療法施行)で2万ドル、自然気胸のドレナージ処置(6日入院、手術無し)で8万ドルの請求が実際にされています。
高額な医療費に対しては、渡航後に当地の医療保険に加入するか、渡航前に十分な補償額の海外旅行障害保険(100%カバー)に加入して備えておく必要があります。100%カバーの保険に加入していれば、キャッシュレスで受診することが可能なこともあり、また保険会社が医療費を病院側と交渉してディスカウントする可能性もあります。病気や怪我など1回の入院で数百万円から1千万円になることを覚悟してください。病状がそれ程緊急性を要しない等、事情が許せば航空運賃を負担したとしても、本邦に帰国して診療を受けた方が良いケースもあります。また、実際に当地で治療を受ける前には、加入の海外旅行保険会社に事故速報の連絡を入れて、医療機関名のみならず、当地での治療の要否についてもアドバイスを求めてから受診すると良いでしょう。
海外旅行傷害保険のキャッシュレスサービスは便利ですが、実際に行われていない手術費などが医療機関から保険会社に請求されるなど悪用される場合があります。知らない間に旅行傷害保険の限度額を超えていたという報告もありますので、保険を使用した場合は保険会社にその都度、治療内容と請求額をご自身で確認してください。海外旅行障害保険の1疾患についての支払いは金額や期間に限度(通常6ヶ月)があり、超えた場合には治療を当地で行うことが出来なくなります。
ニューヨーク周辺の“風土病"ともいえる疾患です。Borrelia burgdorferi(ボレリア菌)とよばれる細菌が原因であり、ダニに刺されることにより感染します。2008年においては、ほぼ米国全土より28,921件の発生が報告されていますが、その80%以上が米国東北部に集中しており、ここニューヨーク州(NY州)だけで全体の発生数の約5分の1を占めています。NY州の中ではSuffolk郡(ロングアイランド地域)及びWestchester郡の2地域に発生が集中しています。いずれの郡もニューヨーク市近郊に位置しています。米国東北部では鹿ダニ(Ixodes scapularis)が媒介します。鹿ダニの活動期は幼虫が5月から7月、成虫が8月から9月であり、幼虫の吸血活動が活発なところから、患者の発生時期もこれに一致した前期に大きい二峰性を示します。症状は、初期の感冒のような症状、特有な発疹、心症状、関節炎、神経精神症状と多岐に渡り慢性化が問題となっています。
1999年夏、ニューヨーク市(NYC)において西半球で初のウエストナイル脳炎(WNE)が発生し、NYCとその周辺地域にて発症者62名(入院治療59名、死亡7名)を数えました。蚊によってウエストナイルウイルス(WNV)に感染することで起こり、脳炎や髄膜炎を起こすのは感染者の約1%以下ですが、高齢者では発症し易くかつ重篤化する傾向があります。鳥が WNVの保有宿主と考えられており、鳥以外では、馬の発症、死亡例が報告されています。
本邦では「南京虫」として知られる「トコジラミ」は、 当地では「Bed Bug」と呼ばれています。シラミと名づけられていますがカメムシの仲間であり、成虫でも3mmに満たない小さな昆虫です。その名の通り床やベッドに棲みついており、 近づく動物の血液を吸って生活する吸血性の寄生昆虫です。ニューヨークは古い建物が多いため、 気候や条件が整えば大発生します。 大発生時には、 ニューヨーク市の衛生当局から注意報が発せられます。 特に暖房が入り換気が行き届かない冬場に大発生することが多く、 ホテルなどの宿泊施設でも被害がみられます。 症状は、 刺し口を中心として非常に痒く、 発赤を伴います。 痒みは刺されて2日目ぐらいがピークで、赤みは2週間以上消えないことがあります。
夏はとにかく暑熱が厳しく(気温が摂氏40度近くになる場合もある)、冬は凍る程さむい(気温が摂氏マイナス10度以下)極端な気候です。春先から花粉が飛び、当地に来てから、粉症に悩む人も多いようです。夏の紫外線は強烈です。冬場は寒さに加え空気の乾燥が激しく、乾燥による皮膚症状(乾燥性皮膚炎)や咽頭炎(乾燥性咽頭炎)に悩まされる人が多く見受けられます。冬場の加湿器は必需品です。
ニューヨーク市内および近郊では、鹿をはじめスカンク、 アライグマ、 リスなど様々な野生動物が生息しています。 前述の「ライム病」も鹿ダニによって病原菌が媒介されることを説明しました。
例年、ニューヨーク市内では狂犬病に感染した野生動物が確認されています。 特にアライグマの感染例が多く、市ではアライグマをはじめとした野生動物に、 むやみに近づかないように注意を呼びかけています。また、ペットに対しても狂犬病ワクチンを接種するように呼びかけています。もし、 野生動物に咬まれたり、 引っかかれたりした場合は、 すぐに多量の水で石鹸を使用して傷口を洗い流し、 お近くの医療機関に相談してください。
(1)赴任者に特に必要な予防接種はありませんが、学校入学に際しては、(3)に記した注意が必要です。
(2)小児予防接種
| 予防接種/回数 | 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 |
|---|---|---|---|---|---|
| B型肝炎 | 出生時 | 1〜2ヶ月 | 6ヶ月〜2才 | ||
| ロタウィルス | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月 | ||
| DTaP | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月 | 15ヶ月〜18ヶ月 | 4才〜6才(その後10年毎にTdを接種) |
| ポリオ(IVP) | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月〜18ヶ月 | 4才〜6才(ハイリスク) | |
| MMR | 1〜1才半 | 4〜6才 | |||
| Hib | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月 | 1才〜1才半 | |
| 肺炎球菌 | 2ヶ月 | 4ヶ月 | 6ヶ月 | 1才〜1才半 |
参照:http://www.cdc.gov/vaccines/recs/schedules/default.htm ![]()
インフルエンザ 6ヶ月以降6才まで毎年、乳児の近親者も毎年。ハイリスク者は6才以降も。
水痘(Varicella) 初回は1才〜1才半、4才〜6才までの間に2回目を奨励している。
A型肝炎 1才以降2才までに2回(半年あける)
髄膜炎菌 ハイリスク者は2才以降10才までに
ヒトパピローマウイルス 初回は11才〜12才 1回目の2カ月後と1回目の6カ月後に追加接種
(3)学校への入学・編入
学校への入学・編入時には州で規定された予防接種やツベルクリン反応検査が義務付けられています。幼稚園から大学・大学院はもとより、サマーキャンプへの参加等にも予防接種証明書の提出を要求されることがあります。この証明書がないと入学を許可されず、各種行事に参加できない場合もあります。米国 の小児予防接種には、日本の小児予防接種には含まれていないものや、接種回数が異なっている項目が多くあります。過去に実施した予防接種又は罹患歴が証明できない場合には、全て再接種を要求されることも往々にして起こっています。これを防ぐには、母子手帳や予防接種記録・証明書及び罹患証明書(医師が作成 した予防接種及び罹患証明書)等が必要です。この証明書を当地の医療機関に持参し、不足分の接種を受けて学校等の予防接種証明書を作成してもらうことになります。当地では、ツベルクリン反応陽性者は結核感染者として取り扱われます。しかし、邦人の中には去に受けたBCG接種の影響で反応が陽性となったと思われる方も稀ではなく、これら陽性者(結核感染による陽性かBCG接種による反応か)の取り扱いが度々問題となっています。
出産した病院・クリニックの小児科医が最初の健診を行います。その後、通常は1週間〜10日目頃に黄疸と体重増加のチェックを小児科でします。(児の退院時の状況で変わってきます。)小児科医は出産前に産婦人科から紹介された小児科医、又は病院で診察してもらった小児科医を選ぶこともあります。
定期健診は4週後から始まります。小児の健診は2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月の時点で健診を行います。通常は、上記健診時に予防接種も行っています。
*緊急(受診の予約が取れない時、予約時まで待てない時も含む)及び通常診療時間外各医療センターに設置されている救急外来を直接受診する事になります。電話911にて救急車を呼べますが、この場合搬入先の指定は出来ません。また救急車は全て有料で600ドルほど費用を請求されます。行き先を選ぶには、タクシーを使って自力で行くか、希望先の医療機関の救急車を呼び搬入してもらうことになります。なお、当地の救急外来は、医療費支払い能力のない患者が受診できる唯一の医療機関でもあります。重症の緊急患者に加え、これらの患者も押し寄せてきており、いつも混雑しています。診療は重症患者の診察が優先されるため、生命に危険がないと判断された場合は数時間も待たされる事も恒常化してきています。日本人は、言葉の問題もあり、痛みなどの症状を強く訴えない傾向もあり、重症な状態でも軽症と判断され診察が遅らされてしまう事もあるようです。
下記はマンハッタンの主な救急外来です。
所在地:525 East 68th Street
電話:1-212-746-5454
概要:Para-medice service電話1-212-472-2222に連絡すれば、迎えに来て搬入してくれます。
所在地:305 1st Avenue 16th Street
電話:1-212-420-2000
ホームページ: http://www.wehealny.com/![]()
概要:日本人研修医も多く勤務しており、通訳等の援助を受けられることもあります。
所在地:550 1st Avenue 33rd Street
電話:1-212-263-7300
所在地:JFK国際空港、Building No. 198, Jamaica, New York 11430
電話:1-718-656-5344
概要:年中無休、24時間、プライマリーケアを予約なしで提供しています。また、黄熱病ワクチンを含む予防接種も可能です。旅行者保険での支払いも受け付けています。診療時間(平日9時-16時)
ニューヨーク市、主にマンハッタン区では日本人医師、歯科医師又は日本語で対応してくれる診療機関が多くあり、日本人向けの案内書、情報紙などに記載されています。下記の医療機関は、その中の一つで、日本人医師・看護師が診療にあたり、日本人担当者が対応してくれます。海外旅行障害保険に加入していれば、キャッシュレスで受診可能な場合もあります。現地の医療保険に加入されている方は、お持ちの保険が有効か、各医療機関に直接お確かめください。
注:下記日系クリニックについては、診療の質を保証するものではありません。診断・診療内容・請求内容等に疑問が生じた場合には、セカンド・オピニオンを得るようにしてください。
注:米国日本人医師会の推薦する医師のリストは下記ホームページをご覧ください。
http://directory.jmsa.org/![]()
所在地:55 East 34th Street, New York, NY 10016
電話:1-212-889-2119
概要:桑間雄一郎医師他。ウエストチェスターにも診療所あり。
所在地:725 River Road #202, NJ 07020
電話:1-201-943-4040
概要:桑間千佳医師等。
所在地:Continental Plaza 1, 401 Hackensack Ave 5th Fl. Hackensack, NJ 07601
電話:1-202-678-1900
概要:霞朝雄医師、霞竜雄医師。
所在地:18 East 41st Street, New York, NY 10017
電話:703-830-3363
概要:小柳乃里子NP等。
※「邦人医療支援ネットワーク」:ニューヨーク周辺で活動をしている医療系邦人支援グループ同士の情報交換、相互連携を目的としたネットワークが2006年1月に設立されました。日本語で病気の相談、エイズ検査情報提供、メンタルヘルス支援、DV支援、子育てについての相談等々を行っている多数のグループが参加していますのでご参照下さい。
ホームページ:http://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/g/05.html![]()
医務官問い合わせアドレス imukan@ny.cgj.org
NY総領事館医療関係 http://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/g/index.html![]()
ニューヨーク市保険局 http://www.ci.nyc.ny.us/html/doh/home.html![]()
ニューヨーク州保健局 http://www.health.state.ny.us/![]()
ウエストチェスター郡保健局 http://www.co.westchester.ny.us/health/![]()
ニュージャージー州保険局 http://www.state.nj.us/health/![]()
米国疾病対策予防センター http://www.cdc.gov/![]()