在外公館医務官情報

ボスニア・ヘルツェゴビナ

2015年4月1日

1.国名・都市名

 ボスニア・ヘルツェゴビナ(サラエボ)(国際電話国番号 387)

2.公館の住所・電話番号

3.医務官駐在公館

4.衛生・医療事情一般

(1)気候・地誌

 ボスニア・ヘルツェゴビナは旧ユーゴスラビア連邦を構成した共和国の一つで,海抜2,000メートル級の山々が連なる山岳国であり,人口388万人(静岡県より20万程度多い),面積は5.1万平方キロメートル(四国+中国地方と同程度) 国土の大部分は大陸性気候に属します(南部の一部は地中海性気候)。

 首都サラエボは1984年に冬季オリンピックを開催した都市として知られており,標高約500メートル(松本市と同じ)に位置する盆地のため,寒暖差が非常に大きく,夏期は最高気温が40℃以上となる日も見られる一方,冬期は最低気温が-20℃を下回ることもあり,オリンピック開催地らしく雪国となります。時に交通が麻痺するような積雪に見舞われます。年間を通じて比較的乾燥していますが,山々に囲まれていることから,秋期~冬期にかけてはしばしば激しい濃霧に見舞われ,飛行機が大幅に遅れたり欠航することがあります。

(2)医療水準

 平均寿命は76歳(日本83歳),乳児死亡率が日本の4倍,母体死亡率が日本の1.6倍。国が2つの構成体(エンティティー;「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(連邦)」と「スルプスカ共和国」)にわかれ,実質的に2つの国家が存在している状態で,医療教育・制度,統計等すべて別々に行われ,国として詳細を把握することが難しいのが現状です。

 ボスニア・ヘルツェゴビナの医療機関は概して老朽化した施設が多く,特に首都サラエボやスルプスカ共和国の中心都市バニャ・ルカ,その他ツヅラ,モスタルなど医大のある大都市以外では,建物だけでなく医療設備も乏しいところが多いです。

 しかし近年はEU諸国をはじめ世界各国からの支援もあり,サラエボを中心に最新の医療機器,資材,スタッフをもつ病院が増え,最も規模の大きいサラエボ大学附属病院も少しずつ新しいものになっています。私立系の高級病院も出現しており,これらの病院では在留の外国人等の利用実績もあります。専門医の中には欧米で教育を受け,それら先進国と同等の知識・技術を持っているものも多く,特にドイツやオーストリアから専門医の定期的な応援もあり心臓外科手術など高度な治療も行われています。

 ただしスタッフの質や言葉の問題等のため,緊急時以外の精密検査,手術等は邦人の方には勧められません。

(3)医療制度

 医療制度・医療保険制度とも他の旧ユーゴスラビア諸国と同様セルビアと非常に似ています。

 初診時は,居住地域の担当保健施設(ドム・ズドラブリャ)にある診療所に受診し,必要に応じて高度医療機関に紹介される仕組みになっていますが,だれでも最初から大病院に受診することも可能なため,大病院の有名科の外来は常に混み合っています。そのため,在留外国人や支払い能力に余裕のある国民は,待ち時間が殆ど無く,予約も可能な私立病院や個人クリニックを受診することもあるようです。個人クリニックの医師のほとんどは,公立病院との掛け持ちです。

 救急時は「124」あるいは「611ー111」のコールで救急車が24時間対応し,当番の公立の救急病院へ搬送されます。自分の症状と自分のいる住所と連絡の取れる電話番号を必ずちゃんと伝えましょう。英語が通じにくいケースもあるようです。なお,「122」「123」はそれぞれ警察,消防の救急番号ですのでお間違えなく。

 サラエボの場合はほとんど24時間対応のサラエボ大学救急センターに搬送されます。患者が多くトリアージ順に診ているため,軽症と判断されると長時間待たされることもあります。公立の救急病院はどこも暗く,異国での急病者にとっては不安になる要素も多いため,急病時可能ならば私立病院の救急外来受診をおすすめしています。

(4)医療保険制度

 2つの構成体のそれぞれに別個の医療保険制度があり,国民や永住者などは基本的な診療費はほぼ無料ですが,外国人は保険の対象外であり,受診時は全額自己負担となります。重症例や精密検査を要する場合などは,先進国ほどではないですが比較的高額な医療費となり,また場合によっては近隣諸国(パリ,ウイーンなど)への搬送および治療が必要となることもあるため,その費用は相当な高額となります(入院費用は数千~数万ユーロ以上,日本への緊急移送費用は1,000万円を越えることも)。当国に渡航,駐在される方には治療・救援費用等(日本への緊急移送費用のあるもの)を相当額に引き上げた海外旅行保険に加入することを強くお勧めします。

(5)受診時のアドバイス

 医療機関を受診する際,医師の多くには英語が通じますが,そのレベルは個人差が大きく,詳細なニュアンスが伝わらないことがあり,年配の医師,看護師,受付などのスタッフはしばしば英語が通じませんので,通訳が必要となることがあります。公立病院に比べ私立病院のほうが英語が通じやすいようです。また,支払いは原則として現地通貨(BAM)払いとなりクレジットカードが使用出来るところはまだ少数です。

(6)水質

 首都サラエボの水道水は比較的良質で飲用可能とされています。しかし,他の地域では汚染が指摘されており,サラエボであっても水道管の質に関して問題がありますので,水道水の飲用は避けた方がよいでしょう。また,硬度が高く,腹痛や下痢を起こすこともあります。通常,在留邦人や旅行者は市販のミネラルウォーターを飲用しています。硬度が高いため石鹸の泡立ちが悪く,鉄さび等により洗濯時に着色することもあり,これも注意が必要です。

5.かかり易い病気・怪我

(1)上気道炎

 大気汚染のため,また冬は暖房にて屋内が乾燥していることなどから,呼吸器疾患になる方が少なくありません。冬の屋外は降雪と低温による水蒸気の飽和度低下の関係で見かけ上湿度が保たれているように見えますが,室内では24時間暖房のため,非常に乾燥し湿度30%を下回ることもあります。このため,鼻や喉などの上気道を傷めやすく,風邪などの上気道炎に罹患しやすくなります。 一度罹患すると,乾燥のため,上気道の絨毛運動等の排痰機能が低下し,上気道炎を慢性化したり,肺炎などの下気道炎を続発しやすくなります。 十分な性能を持つ加湿器の購入など部屋の湿度を上げる工夫,インフルエンザの予防接種,マスクやマフラーなどの使用にくわえ,規則正しい生活と十分な睡眠で,疲労やストレスを避けるなどの対策が必要です。

(2)経口感染症・下痢症

 地域によっては水や食品などの衛生環境が不備なこともあり,細菌性の食中毒やA型肝炎など,汚染された食物等を原因とする感染症には注意が必要です。食事や水などから,細菌性食中毒(サルモネラ,カンピロバクターなど),ウイルス性食中(ロタ,ノロなど)が毎年高頻度に見られ,旅行者や在留邦人もレストランや市場などでこれに巻き込まれることがあります。

(3)生活習慣病

 中長期滞在する方は食事内容の偏りなどから,生活習慣病等の発症,悪化に注意する必要があります。特に肉料理中心の食事内容などから,しばしば脂肪,塩分等が過多傾向となるため,肥満,高脂血症(高コレステロール血症),高血圧などには十分な注意が必要です。当地は日本食材の入手は困難ですが,出来るだけ和食を自炊メニューに加えるようにしましょう。

 ボスニア・ヘルツェゴビナには特徴的な風土病等は見られませんが,また,ブルセラ症やQ熱,クリミア・コンゴ出血熱といった家畜やネズミなどの動物を媒介する感染症の報告例もある他,中央ヨーロッパ地域では,森林などでダニに噛まれることによって発症するダニ脳炎が広く知られており,留意する必要があります。

(6)狂犬病・犬(動物)咬傷

 狂犬病はすべての人を含む哺乳類に感染し,発症すると,強い不安感,一時的な錯乱,恐水症 (水を見ると首(頚部)の筋肉が痙攣する),恐風症 (冷たい風でも同様に痙攣する),高熱,麻痺,運動失調,全身痙攣などの症状が起こり,呼吸障害等の症状で死亡します。人も動物も発症すると死亡率はほぼ100%です。ただし感染後(感染動物に咬まれた後)にワクチンを連続して接種することにより発症を防ぐことが可能です。

 サラエボだけで,12,000もの野犬がおり,一部に狂犬病ウイルスが認められ,毎日10人を越える動物咬傷の患者が受診すると言われています。また愛犬家が多く,動物病院でペットのワクチン接種は可能ですが,義務ではないようです。市内中心部でさえ野犬がウロウロしていて非常に危なく,公園には野生のリスやコウモリなども多いので,注意が必要です。

 これらやリス,キツネ,コウモリなどの野生動物に咬まれた場合,すぐに曝露後ワクチンを接種すべきです(必要に応じて破傷風免疫グロブリンも)。これらの動物に不用意に近づくことは危険です。

 現在日本では,予防的(曝露前)狂犬病ワクチン接種が難しいですが,可能であればセルビアに来る前に受けた方が望ましいでしょう。当地では医療機関で,治療のための曝露後ワクチン接種や免疫グロブリン治療は可能ですので,緊急時の対応は問題ありません。

 2014年に在留邦人女性が野犬に囲まれ咬傷を負う事件がたてつづけに2件ありました。受診した救急外来で破傷風ワクチンのみの処置でWHO推奨の狂犬病ワクチンの曝露後接種が等書行われなかったことがありました。当地の一次医療機関の狂犬病暴露後の発症予防に関する認識が低いことがあり注意が必要です。

6.健康上心がける事

(1)夏期は最高気温が40℃を超えることもあるので,野外での活動,スポーツ等は熱中症,脱水に十分な注意が必要です。 粉末のスポーツ飲料や経口補水液(「オーエスワン」など)を持参すると便利です。 また,山々に囲まれており紫外線が非常に強いため,紫外線対策が必要となります。外出時には,サングラスの着用や日焼け止めの使用を勧めます。

 さらに食品の洗浄,加熱といった基本に注意して,食中毒の予防を心がけて下さい。

(2)ボスニア・ヘルツェゴビナの人々の交通マナーは非常に悪く,道路等も未整備なところが多いため,交通事故には細心の注意が必要です。また冬期には道路が凍結したり,激しい降雪に見舞われることもあるので,これらへの対策や注意も必要となります。さらに,ボスニア・ヘルツェゴビナ国内には未だ数多くの地雷が残っており,危険地域はもちろんのこと,それ以外の地域でも安全が未確認な場所への不用意な立ち入りは避けるべきです。

(3)ボスニア・ヘルツェゴビナでは日常の買い物や食事などに不便を感じることも多く,娯楽施設も非常に限られ,特に冬期は厳しい寒さや悪天候が続くこともあり,人によってはストレスを強く感じることもあるかもしれません。長期滞在される方にはスポーツや習い事,外国への旅行,ショッピング等でのリフレッシュが勧められます。

(4)男女とも喫煙率が高く,飲食店も分煙といってもパーティションがない状態で席を分けているだけのケースが大部分であるため,外食すると必ずといっていいほどで間接喫煙の被害を受けます。バス停などや歩きタバコも多く,マナーが悪い人が多く,子供連れのときなどは,たばこ接触による火傷のケースも報告されています。

(5)南部には2,000メートル級の山が多く,この高度でも慢性疾患の有病者や子供・老人にはAcute Mountain Sickness症状(いわゆる高山病の山酔い症状)が出ることがあります。

7.予防接種

現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国のために必要な予防接種はありません。赴任する方には,成人では,A型肝炎,B型肝炎,破傷風,ダニ脳炎の予防接種を,小児では,日本の定期接種の他には,A型肝炎,B型肝炎,ダニ脳炎,ポリオ追加(3回目以降)を勧めています。また,水痘,おたふくかぜも接種されていない小児の方は,接種することを勧めます。当地で,おたふく風邪,麻疹,風疹それぞれの単独ワクチンは手に入りません。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

 定期予防接種も連邦は,2012年よりDTP+IPVの4種混合ワクチン(Infarix Polio)を使用して以下のように大幅に改訂され,それまの任意接種ワクチンが大幅に定期接種に移行ました。

 スルプスカ共和国でもほぼ同じですが,5歳時のDTPを,18ヶ月で行い,6歳でDTを行っています。MMR(麻疹,おたふく風邪,風疹)それぞれ単独のワクチンは入手できません。

現地の小児定期予防接種一覧
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
BCG 出生時          
ポリオ(OPV)     18ヶ月   14歳  
ポリオ(IPV) 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 5歳    
DTaP 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 5歳 14歳
Td(*1)
18歳
TT(*1)
Hib 2ヶ月 4ヶ月 18ヶ月      
MMR     12ヶ月 6歳    
B型肝炎 出生時 1ヶ月 6ヶ月      

*1ポリオは経口生ワクチンまたは不活化ワクチン。

(3)小児が現地校に入学・入園する際はワクチン接種証明書が必要になることがあります。また,インターナショナルスクールの場合も同様にワクチン接種証明書が必要になることがあります。

8.乳児健診

 ボスニア・ヘルツェゴビナにおける小児の健診は,生後6歳までは概ね1ヶ月~1年毎に行われています。健診は原則として国公立系の施設で行われ,料金は無料です。

9. 病気になった場合(医療機関)

 救急時は「124」あるいは「611ー111」のコールで救急車が24時間対応し,当番の公立の救急病院へ搬送されます。自分の症状と自分のいる住所と連絡の取れる電話番号を必ずちゃんと伝えましょう。英語が通じにくいケースもあるようです。なお,「122」「123」はそれぞれ警察,消防の救急番号ですのでお間違えなく。

 サラエボの場合はほとんど24時間対応のサラエボ大学救急センターに搬送されます。患者が多くトリアージ順に診ているため,軽症と判断されると長時間待たされることもあります。公立の救急病院はどこも暗く,異国での急病者にとっては不安になる要素も多いため,急病時可能ならば私立病院の救急外来受診をおすすめしています。

◎サラエボ

(1)Klinički Centar Univerziteta u Sarajevu(クリニチュキ・ツェンタル・ウニベルジテタ・ウ・サラエヴ)(Koševo コシェボ)

住所:Bolnička 25, Sarajevo

電話:033-297-000,033-297-708,033-297-979

ホームページ:http://www.kcus.ba/別ウィンドウで開く

概要:救命救急センターを含む全科を有する最も大きい国立大学病院,総合病院。科別の建物がある構造から,新しい中央棟に少しずつ移転している。24時間オープン。

(2)Abdulah Nakaš Opća Bolnica(アブドゥラフ・ナカシュ・オプチャ・ボルニツァ)

住所:Krančjevićeva 12, Sarajevo

電話:033-285-100,033-285-113, 救急センター:033-285-428,033-285-261

ホームページ:http://www.obs.ba/別ウィンドウで開く

概要:救命救急センターを有する公立系総合病院。24時間オープン。

(3)Pedijatrijska Klinika, Klinički Centar Univerziteta u Sarajevu(ペディヤトリスカ・クリニカ, クリニチュキ・ツェンタル・ウニベルジテタ・ウ・サラエヴ)

住所:Patriotske lige 81, Sarajevo

電話:033-566-400 救急外来exp.435

ホームページ:http://www.kcus.ba/pedijatrijska_klinika別ウィンドウで開く

概要:2009年に新病院に移転した国立大学附属の小児科専門病院。24時間オープン。NICU完備。

(4)Poliklinika Sunce(ポリクリニカ・スンツェ)

住所:Trg Međunarodnog Prijateljstva 20, Sarajevo

電話:033-755-547,033-755-560,033-755-561

ホームページ:http://www.bosna-sunce.ba/poliklinika-sunce-agram別ウィンドウで開く

概要:内科,外科,婦人科,神経科,泌尿器科,耳鼻咽喉科,放射線科など。私立系クリニック。入院設備なし。値段は高いが待ち時間はない。夜間,休日の対応なし。

(5)Dom Zdravlja Centar Vrazova(ドム・ズドラブリャ・ツェンタル・ブラゾバ)

住所:Vrazona 11, Sarajevo

電話:033-210-280

概要:一次救急診療。公立保健センター。入院設備なし。夜間,休日の対応なし。

(6)Dental Practice Quick smile(デンタル・プラクティス・クイック・スマイル)

住所:Zmaja od Bosne 7, Importanne Centar, 6sp, Sarajevo

電話:033-212-089,033-444-333

ホームページ:http://www.quicksmile.info/別ウィンドウで開く

概要:歯科専門クリニック。平日8時-19時, 土曜8時-16時, 夜間,休日の対応可能。外国人が多い。

10.その他の詳細情報入手先

 大使館ホームページアドレス:http://www.bosnia.emb-japan.go.jp/index_j.html 別ウィンドウで開く

11. 現地語一口メモ

医師:doktorlijecnik(ドクトル,リェチニック)

飲み薬:lijek(リェク)

座薬:čepići(チェピチ)

注射:injekcija(イニェクツイヤ)

頭痛:glavobolja(グラボボリャ)

胸痛:bol u grudima(ボル ウ グルーディマ)

腹痛:bol u trbuhubol u stomaku(ボル ウ トルブフ/ボル ウ ストマク)

下痢:proljev(プロリェブ)

発熱:groznica(グロズニツァ)

吐き気:mučnina(ムチュニナ)

傷:ozljedarana(オズリェダ/ラナ)

気分が悪い:osjećam se losebolestan sam(オセチャム セ ロシェ/ボレスタン サム)

病院へ連れて行ってください:možete li me odvesti u bolnicu(モジェテ リ メ オドベスティ ウ ボルニツ)

風邪をひく:prehladen sam Imam obicnu prehladu(プレフラジェン サン/イマム オビチュヌ プレフラドゥ)

下痢をする:imam proljev(イマム プロリェブ)

めまいがする:imam vrtoglavicu(イマム ブルトグラビツ)

ここが痛い:boli me ovdjeimam bolove ovdje(ボリ メ オブディエ/イマム ボロベ オブディエ)

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