2010年10月
トリニダード・トバゴ共和国(ポート・オブ・スペイン市)(国際電話国番号1-868)
トリニダード・トバゴ共和国は、首都ポート・オブ・スペインの所在するトリニダード島とリゾート観光地トバゴ島の2島からなる人口約135万人、面積約5128平方キロメートルほどの国です。カリブ地域の南東部、ベネズエラに流れるオリノコ川河口、オリノコ・デルタのすぐ北側に位置し、ハリケーン・ベルトからは外れるため、その他のカリブ諸島とは様相が異なり、マラリアの風土病的流行やハリケーンの被害はほとんどありません。しかしながら、最近のデング熱の流行(2010年7月に約600例の疑い例報告のうち3名死亡)を含め、途上国に特有の伝染病は地域によって感染の危険性が高まるため、渡航者は出発の4から8週間前までに専門医(トラベル・メディスン・クリニックなど)を受診し、健康カウンセリングや予防接種などに関する十分な検討と実施を済ませてから入国されることを推奨いたします。水道の質は完全には保証されないため、ペットボトルの水を飲む、煮沸消毒を行うなどの注意も重要です。また、近年当国では、治安が悪化した状態が続いており、犯罪件数も増えています。犯罪に巻き込まれやすい行動を慎むなど、健康と共に身の安全の確保に関する責任ある行動も重要になってきます。当地医師のレベルは個々の臨床診断の質はある程度確保されていると思われますが、交通事故での受傷をはじめ、大きな傷病、疾病の治療を熟練した医療チームが瞬時に行うといった先進国と同等の高度な医療技術と医療体制は、まだまだ信頼が置けるレベルに至っていないと考えられるため、有事の際には米国などへの緊急移送費を含め、高額になりうる医療費の保障を行ってくれる海外保険に事前加入されておくことを強くお勧めします。
日中の平均気温は29℃と高いものの、夜間23℃程度で貿易風の影響で比較的過ごしやすい気候です。1~5月が乾期、6~12月が雨期です。日中は直射日光が強く、夏期は高温多湿となるので熱中症(日射病)、日焼けに注意が必要です。
帽子をかぶる、日陰に入って時々休む、必要な塩分、水分を十分に取るなどの予防策をとることが重要となります。日常生活範囲内でも熱中症は発生します。高齢者、基礎疾患のある方は特にご注意ください。
旅行者下痢症の予防として、不衛生な状態で皮が剥(む)かれた、あるいは十分加熱調理されていない果実や野菜を摂取するのは避けましょう。低温殺菌されていない牛乳やそれを用いた乳製品、アイスクリームなどの摂取は控えましょう。また、酢漬けの魚も含め未調理や十分加熱調理されていない肉、魚の摂取も控えましょう。生水、氷などの摂取はさけて、濾過されて化学的殺菌処理の行われたものか、一度沸騰させた水、または、ペットボトルの水を飲みましょう。
シガテラ毒(シガトキシン、マイトトキシンなど)によるシガテラ中毒は、熱帯及び亜熱帯の主としてサンゴ礁の周囲に生息するシガテラ毒魚を摂取することによって起こる致死率の低い食中毒の総称で、世界中で毎年約2万人もの人が中毒を起こしています。トリニダード・トバゴでも魚食後、毒素による食中毒(特にバラクーダなど)が報告されています。中毒症状は多彩(150種以上)で、食後15-30分から2-6時間ほどで現れ、1. 嘔吐、下痢などの消化器系障害、2. 血圧降下や心拍数の低下などの循環器系障害、3. 舌や喉のしびれなどの知覚異常、縮瞳などの神経系の障害、4. 脱力、関節痛、筋肉痛、痒みなどの異常が見られます。最も特徴的な症状として、ドライアイスセンセーションと呼ばれる知覚の異常があり、冷たい感じをドライアイスに触れたときのように、あるいは電気ショックを受けたように感じ、暖かいものは冷たく感じる逆転を生ずることがあります。さらに重症になると、全般的な筋肉運動調節異常、麻痺、けいれんがひどくなり、昏睡し死亡に至ることがあります。死亡率は低いが、回復には時間を要し、数ヶ月もかかることがあり、一度中毒にかかると、二度目からは過敏になり症状も重くなる可能性があり、回復期の魚食は絶対に避けなければなりません。
シガテラ毒を蓄積する魚は、数百種とも言われていますが、その毒素は、ハリケーンや開発などによりサンゴ礁が大規模に破壊されると発生する藻類によって作り出されると考えられており、シガテラ毒魚はこの藻類を食べることによって毒化するため、初めから全てのシガテラ毒魚が毒を持つのではなく、地域、個体、時期などにより毒性にばらつきが見られます。また一般的には、草食魚より肉食魚、小型の魚より大型の魚、幼魚より老成魚、筋肉より内蔵のほうが毒性が高いとされています。この毒素は加熱調理や冷凍などによって解毒されないので十分注意が必要です。
その他、細菌性髄膜炎、サルモネラ症、赤痢、インフルエンザ、急性出血性結膜炎、らい病などがWHOにより報告されています。
棘皮動物(イソギンチャク)の幼生、指ぬき型クラゲによる刺傷(サーフィン、海上での遊技、シュノーケリング、海岸線での遊泳中など)は激しい痛みを伴った広範な皮膚炎を起こします。場合によってはショック状態になる可能性もあり十分注意が必要です。
その他、珊瑚、鮫、ウニなどによる受傷が報告されています。また、決められた区域以外、見張りのいない海岸での海水浴は水深や潮の流れが不明なため大変危険です。
AIDS患者のうち最若年者は13歳、最高齢者は86歳で、2010年4月30日現在で総数約5,300名。16~35歳までの生殖年齢女性の感染者が比較的多くなっています。また、貧困層、入所者、HIV/AIDS感染者の結核感染致死率が依然高い状況です、渡航者のHIV(human immunodeficiency virus)エイズウイルス感染者との性交渉での感染、あるいは輸血後の感染報告があります。
日頃から節度のある行動をし、十分な安全対策を講じてください。
黄熱病は1979年以降人間への感染例は報告されていませんが、1988,1995,1999,2009年にトリニダード島南部、南東部の森林地域などにおいて猿の感染、死亡報告がなされてきています。ポート・オブ・スペインでは感染のリスクが少なく、予防接種に関してはトリニダード島に長期滞在したり、地方地域までの行動が予想される方は接種することを推奨されますが、カリブ海クルーズ航海中の旅客のうち、下船しない場合や、首都ポート・オブ・スペインの都市エリアだけを訪れる場合や、乗り換えだけの場合には接種を検討すべきとアドバイスされます。一方、トバゴのみへの渡航者、高齢者の方には接種は推奨されません。なお同ワクチン接種は流行地からの入国時には入国の10日前の接種、及び10年ごとの追加免疫が必要です。
また、デング熱と呼ばれる一過性の熱性疾患(重症例では出血を伴う)を発症させるウイルス(フラビウイルス属)は、東南アジア、インド、中米、南太平洋の南北両回帰線の間にある国々を中心に分布しています。
近年トリニダード・トバゴでは毎年のように患者の発生が報告されており、2010年7月には600例の疑い症例の内3例の死亡例が報告されたデング熱の流行が確認されました。2009年3月には、トリニダード島中央部、2008年1月には、南部で100例を越す症例が確認されています。
以上のように同国での感染の危険は高いですが、予防薬、予防接種ワクチンはありません。重症化すると出血傾向を伴って致死的なデング出血熱となりえます。2003年には2289例中80例が出血熱でした。当国では約5~6年の周期で大流行しており、最近の流行年は2008年でしたが、それ以後毎年のように大発生しています。黄熱病を媒介するのと同種の蚊によって感染するため、蚊に刺されない対策を講ずることが最も大切です。
以下に示す米国疾病管理予防センター(CDC)のデング熱に関するホームページなどより最新の情報を入手するとともに、蚊に刺されないように十分な予防策を取って下さい。
●感染源
デング熱ウイルスを保有する蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなど)に刺されることで感染します。
●症状
感染してから発症までの潜伏期間は通常4~7日です。発症時は悪寒を伴い、高熱が3日ほど続いたあと一旦軽快しますが、再び高熱を発するといった、2峰性の発熱を認めることがあります。特に乳幼児、子供と基礎疾患を持つ高齢者が重症化しやすいため十分な注意が必要です。高熱のほかに発症3~4日後に体幹から四肢に広がるかゆみを伴った皮膚の発赤や、重い頭痛、眼窩後部痛、筋肉・関節痛筋肉痛などの症状が3~7日ほどみられますが、通常は1週間程度で回復します。また、異なるウイルス株への2回目の以降の感染で発症が高率化する更に重篤な症状(口・目・鼻などの粘膜から大量に出血する)を伴った、デング出血熱に発展することもありえます。この場合3~6%が死亡すると言われています。
●治療・予防方法
現在のところ、デング熱ウイルスに対するワクチンはありません。また、特効薬もなく、症状を軽減するための対症療法が中心となっています。症状や経過には十分注意し、致死的な状況に陥る前に、医師の診察を受けることをお勧めいたします。
感染予防策としては、蚊に刺されないようにすることが最も大切です。戸外に出るときは、虫よけスプレー(30%DEETが推奨されますが、2歳以下の幼児には使用を避けて下さい。)を使用したり、できる限り長袖、長ズボンを着用すること、蚊の活動が活発な日の出や夕暮れ時の外出を避けること、居住空間近辺の蚊の発生しそうな下水、水回りの清掃(余分な水たまりの除去)をすることをお勧めします。
その他、小バエや、蚊によって感染するデング熱に似た髄膜炎症状も呈することのあるOropouche Feverも報告されています。
(1)屋外で活動する際には、十分な水分を摂取し直射日光に対する防衛策(適宜、必要な塩・水分を補給すること、帽子、長袖、日よけ止めクリームを使用するなど)をとりましょう。
地方、森林その他の自然環境地域を訪問する際には、虫に刺されないように防御策(長袖長ズボンを着用し、虫除けスプレー・クリームを使用するなど)をとりましょう。
(2)野生の小動物に遭遇した場合、狂犬病や、特に鳥の死骸の場合は新型のインフルエンザなどの感染の恐れがありますので、決して触らないようにしましょう。
(3)渡航者は、事前に専門医を受診するなどして、予防に関する十分な知識と対策(予防接種を含む)を備え無理のない余裕のある旅行を行い健康、安全に十分留意しましょう。海外旅行保険などに加入して高額医療費が発生する事態に備えておくことが賢明です。さらに基礎疾患のある方は、事前にかかりつけの医師、専門医などを受診し、処方箋や病気の状態、経過などを英訳した診断書などを書いてもらい、有事に対する保険の一部として携帯しておくことが勧められます。
(1)DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)、MMR(麻疹、おたふく風邪、風疹)などの定期予防接種(全ての渡航者に十年ごとの追加免疫を行って入国することが推奨されます。)
A型肝炎(1歳以上の全ての渡航者に対し最低2週間前までの接種が推奨されます。また、6-12ヶ月後の追加接種は長期の免疫獲得を促します。)
B型肝炎(全ての渡航者へ推奨されます。)
腸チフス(地方或いは流行地域への渡航や、6ヶ月以上の長期滞在者など危険性の高いグループにのみ推奨されます。)
黄熱病(年齢が満9ヶ月以上のトリニダードへの渡航者に推奨されます。妊婦、免疫不全者、卵アレルギーのある人は接種の適応外です。接種前に十分医師に相談する必要があります。カリブ海クルーズ航海中の旅客のうち、下船しない場合や、首都ポート・オブ・スペインの都市エリアだけを訪れる場合や、乗り換えだけの場合、接種を検討すべきです。一方、トバゴ島のみへの渡航者には推奨されません。流行地からの入国時には1歳以上の全ての渡航者に対し入国の10日前の接種、或いは10年ごとの追加免疫が必須です。)
(2)小児定期予防接種(およそ米国の接種方法に準拠)
| 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | |
|---|---|---|---|---|---|
| B型肝炎 | 3ヶ月 | 4~5ヶ月 | 6ヶ月 | ||
| DTP | 3ヶ月 | 4~5ヶ月 | 6ヶ月 | 18ヶ月 | 5歳 |
| Hib | 3ヶ月 | 4~5ヶ月 | 6ヶ月 | ||
| ポリオ | 3ヶ月 | 4~5ヶ月 | 6ヶ月 | 18ヶ月 | 5歳 |
| MMR | 12~15ヶ月 | 5歳 | |||
| 黄熱病 | 12~15ヶ月 |
(出典:http://www.health.gov.tt/sitepages/default.aspx?id=155
)
トリニダード・トバゴでは、ポリオの予防接種を5回(本邦は2回)行います。また、水痘はなく、黄熱病の接種があります。Hibは米国などに比し1回少ない(本邦にはない)。施設の衛生状態や医療従事者の技量、副反応の際の救急集中治療施設の不足などから、可能な限り先進国(米国など)或いは、本邦で接種するよう前もって十分な計画を立てて実行することが勧められます。ポリオは経口ワクチンを使用しています。なお、9~12歳児にはジフテリア、破傷風毒素、黄熱病ワクチン追加接種が必要です。その他、インフルエンザ・ワクチンはリスクの高い小児には施行されます。
妊娠中から地域の保健センター(国民への公共サービス)などで無料で行われていますが、自主的に登録する必要があります。また、当国人との婚姻関係がない場合(外国人の扱いを受ける場合)はこのサービスは受けられません。その他に必要な乳幼児定期予防接種を小児科等で接種する際に同時に健診が行われています。必要があれば専門医に紹介されます。なお、上記のように公共病院の小児科を受診する資格を有する場合はワクチン接種等の医療費は全額無料です。但し、病院の基本的衛生環境(他の外来入院患者からの感染、医療スタッフからの医原性(院内)感染のリスクが高いと考えられます。)は本邦に比し著しく劣るため、あくまでも自己責任の原則のもと、十分注意して医療機関を選択してください。
市の中心部からはやや遠いものの、邦人、その他の外国人なども利用する総合病院です。検査室は週7日24時間営業しています。
ベッド数54床でほぼ100パーセントの使用率だそうです。
フルタイムのドクターはいないため、常時何人のドクターがいるかはばらつきが大きいようです。
比較的清潔で、新しい建物が建築されたばかりです。
所在地:239 Western Main Rd, Cocorite
電話:622-9798
日本国大使館に隣接する、市内で最も大きな規模の医療施設でいくつかの施設に分かれています。MRI Centreで精密検査も行えます。
外国人がかかりやすい市内の大きな私立総合病院施設としては選択の余地がないものの、邦人の受診の際、医療スタッフの質に疑問点が生じる報告がありました。
所在地:18 Elizabeth Street, Port of Spain
電話:628-1451
トリニダード島内最大の医療施設です。
所在地:169 Charlotte Street, Port of Spain
電話:623-2951
所在地:Fort King George, Scarborough
電話:631-2551
当地医療機関受診の際は、現金による医療費の前払いが必要です。高額の医療費を請求されることがありますので、それに見合った医療保険の事前加入を強くお勧めします。また当地の医療レベルは均一でなく、外来検査に行った際に、針の使い回しを見かけたといった報告や、誤診によって市街地より隔絶した隔離病棟に送り込まれたなどといった、医療面でのトラブルも報告されています。
トリニダード・トバゴ保健省:
http://www.health.gov.tt/
(英語)
トリニダード・トバゴの健康情報:
在トリニダード・トバゴ日本大使館: ホームページ:
http://www.tt.emb-japan.go.jp/houjin-page.htm
(日本語)
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主要言語―英語をご参照下さい。