世界の医療事情

パキスタン
(イスラマバード・ラワルピンディー・ラホール)

平成28年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 パキスタン・イスラム共和国(国際電話国番号92)

2 公館の住所・電話番号

在パキスタン日本国大使館 (毎週土日休館)
住所:Embassy of Japan, Plot No. 53-70, Ramna 5/4, Diplomatic Enclave 1, Islamabad
電話番号:051-907-2500(代表)
ホームページ:http://www.pk.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

(注)土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

 イスラマバードは、福岡とほぼ同じ緯度に位置し、標高約500メートルの地点にあります。しかしながら、大陸内部にあるため、気候は過酷です。

 4月から6月は40度を超える酷暑、7・8月はモンスーンの季節(雨季)で高温多湿、11月から3月は冬にあたり日中は20度近くあり過ごしやすいのですが、夜は0度近くまで冷え込むという寒暖の激しい季節です。(ラワルピンディー・ラホールも多少の差はありますが、基本的には同様の気候です。)

 水道水は細菌・ウイルス・寄生虫・重金属などによる汚染が度々報告されており、衛生状態が良いとされるイスラマバード市内でも上水道の汚染率は50%といわれています。市販されているミネラルウォーターやソフトドリンクにも細菌が混入している粗悪品があり注意が必要です。当地では食物を介する消化器感染症が多いので、火を通していない食事は避けるようにしてください。

 イスラマバード・ラワルピンディー・ラホールには公・私立の大病院がいくつかあります。一般に公立病院での治療費は安価ですが、常に大勢の患者で混雑しており、専門医の不在により経験の少ない若い医師の診察を受けざるを得ないことも多く、また、予算不足で十分に医療設備が整っていなかったり、院内の医薬品が不足しがちであるなどの理由から、公立病院への受診はお勧め出来ません。概して私立病院は公立病院に比し衛生的で、比較的医療設備も整っており、かなりの水準の検査・治療を受けることが出来ます。しかし、医師の知識は豊富でも、医療機関全体としての連携がうまく動かない、看護師等の医療従事者の衛生観念・技術が低い、万一治療経過がおもわしくない場合のバックアップ体制が整っていない等々、多くの問題を抱えています。私立病院は日本と異なり、多くの開業医が各自で病院の建物の一部を借りて営業しており、検査や手術室、入院施設などは共有するというシステムです。この為、同じ病院内でも医師同士の連携は決して良いとは言えません。

 重傷病者は日本や医療先進国(バンコクやシンガポールなど)への緊急移送が必要となり、多額の費用が必要となることがある為、渡航前に必ず「海外旅行傷害保険」に加入されるようにお勧めします。

 病院受診に際しては、殆どの病院で英語が通じます。特に外国人の患者が多い私立病医院では、多くの医師が英・米国で教育・研修を受けています。

 基本的な受診方法は、まず受付をして診察(登録)料を払い、希望する医師の診断を受けます(希望する医師がなければ病院側が決めます)。受診に際しては、可能な限り事前に受診を希望する医師の予約を取ることをお勧めします。完全に医薬分業で、薬は医師が発行した処方箋を持って院内もしくは市中の薬局で購入することになります。パキスタンの市中の薬局では、抗生物質を含むほとんどの医薬品やワクチンが、医師の処方箋がなくても購入可能です。

 支払いは「前払い方式」ですので、支払いがなされない限り、たとえ患者が重篤な状況であっても放置される可能性があります。入院・手術に関しても同様で、保証金が支払われない限り受けることは出来ません。しかしながら、海外旅行傷害保険に加入していれば、保険会社が支払保証人となってくれますので、手持ちの現金が不足していても診療を受けることが出来ます。そのためにも海外旅行傷害保険には必ず加入される事を勧めます。

 妊娠・出産については、国全体の妊産婦死亡率が日本の約28倍(2015年、WHO統計)であり、可能な限り日本等の医療先進国での出産をお勧めします。やむなくパキスタン国内で出産する場合でも、医療水準の高い都市部の私立産科病院での出産をお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

(1)消化器感染症

 当地では多くの消化器感染症があります。主なものは細菌性およびウイルス性の感染性胃腸炎(下痢・嘔吐・発熱・腹痛など)、腸チフス(発熱・発疹・腹痛・下血など)、アメーバ性及び細菌性赤痢(粘血便・腹痛・発熱など)、コレラ(激しい米のとぎ汁様の水様性下痢)、A型肝炎(微熱・倦怠感・黄疸など)、ジアルジア(持続する下痢など)、各種の食中毒等々があります。重症例では脱水、急性腎不全に陥るケースも散見されます。

(2)マラリア

 ハマダラカ(主に薄暮から朝方に活動する蚊)により媒介されるマラリア原虫により起こされる病気です。北部の高地を除き全土で見られ、主に三日熱マラリアと熱帯熱マラリアです。予防薬を服用しなければならないほどではありませんが、高熱が出た時はマラリアを疑い、すぐに医療機関を受診する必要があります。熱帯熱マラリアは治療が遅れますと時に死に至ります。イスラマバード市内においてはマラリア感染のリスクはほとんどありません。

(3)デング熱

 ネッタイシマカ(昼行性の蚊)により媒介されるウイルスにより起こる病気です。高熱・目の奥の痛み・筋肉痛・発疹などを生じ、時にはデング出血熱と呼ばれる出血傾向を伴い死に至ることもある重症型になることもあります。ラホールやラワルピンディーでは、毎年9月頃に感染のピークが報告されています。

(4)狂犬病

 狂犬病は発病してしまうと致死率がほぼ100%という恐ろしい病気です。パキスタンは全土が狂犬病の汚染地域で、野犬・放し飼いの犬もおり、狂犬病の予防接種を受けている犬は非常に稀です。イスラマバード市内に限れば感染リスクは低いといえますが、犬、特によだれを垂らしているような犬には絶対に近寄らないでください。地方に長期滞在される場合には、予防接種をお勧めします。万一、犬にかまれた時はすぐに最寄りの医療機関で狂犬病ワクチンの暴露後接種やグロブリン注射の必要性について相談してください。(犬以外の動物でも狂犬病ウイルスを持っている可能性がありますので、哺乳動物に咬まれた場合には、狂犬病・破傷風に対する処置を受けるべきです。)

(5)破傷風

 嫌気性菌(密封された傷で繁殖する)による病気で、古釘や木片などによる刺創や銃創や咬創が危険です。発症すると致死率の非常に高い病気ですので、予防接種をお勧めします。また、前記のような傷を受けた場合は必ず医療機関を受診して治療を受けるようにしてください。

(6)B型・C型肝炎

 血液や体液を介して伝染するウイルスにより起こる病気です。使用済みの注射器などを再利用することによりB・C型肝炎が急速に増加していると国が警告しています。医療機関を受診する際には、治療費は高くても外国人も利用する医療レベルが高い私立医療機関で治療を受けるようお勧めします。また、これらの肝炎は性行為によっても伝染します。B型についてはワクチンで予防出来ますので、予防接種をお勧めします。

(7)結核やその他の感染性疾患

 毎年10万例近くが新たに報告されており世界でも有数の流行国です。他にもリューシュマニア、炭疽、クリミアコンゴ出血熱、スナノミ症など、報告数は多くはないものの種々の伝染病の感染の機会がありますのでご注意ください。

(8)ポリオ

 ポリオウイルスが経口感染する事で感染する病気です。パキスタンは数少ないポリオの発生国であり、感染に注意が必要です。また、2014年6月以降、パキスタンに4週間以上滞在した後海外に渡航する際には予防接種記録の提示が求められることになっており、予防接種を受けておく必要があります。

(9)花粉症

 イスラマバードでは、3月~4月が花粉症の季節です。スギ花粉などが多い日本と違い、草花、楮(paper mulberry)、インド大麻(カンナビス)による花粉症が多いとされています。

6 健康上心がける事

(1)酷暑

 北部の山岳部を除くと40度を越す日が半年以上続き、毎年多くのパキスタン人が熱中症で亡くなっています。日よけの帽子をかぶり、水分を十分に取るようにしてください。また、屋外活動時には日焼け止めを塗ることを勧めます。

(2)食事

 パキスタンの料理はいわゆるカレーが中心ですが、油を非常に多く使用しており、人によってはこの油でお腹を壊します。(下痢もしくは鼓腸:お腹がガスでパンパンに膨れる状態)また、食事は露店など一見して不衛生な所での摂取は控え、火の通っていないものは食べない様にしてください。水も、時にはミネラルウォーターでさえ汚染されていると問題になる国です。生水・氷は摂取しないようにしてください。また、町中で売っている生ジュースも危険です。比較的安全に飲用出来るのは一流メーカー製のミネラルウォーターやソフトドリンク類です。生野菜、生卵の摂取もお勧めできません。

(3)交通事故

 イスラマバードは他のパキスタンの都市と違い、車が制限されて道路が広い為、ごみごみした感じがなく一見安全なように見えますが、車の合流地点や検問ポイントなどでは我先にと割り込みをする車が多く、危険を感じることも日常茶飯事です。歩行者の道路横断には十分な注意が必要です。車が優先で、決して人が優先ではありません。イスラマバード以外の都市では、人・ロバ車・馬車・自転車・オートバイ・オートリキシャ・車・バス・トラックが渾然と互いの阿吽の呼吸で動いており、周囲の状況をよく見て行動する必要があります。また、排気ガスで大気は非常に汚染されておりますので、呼吸器の弱い方は注意が必要です。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任者に必要な予防接種

 入国に必要とされている予防接種はありません。但し、後述のとおり、4週間以上パキスタンに滞在した場合、出国時にポリオ予防接種記録が必要とされています。

成人

 A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、破傷風、ポリオ、狂犬病、日本脳炎

(注)ポリオの予防接種に関しては、2014年5月のWHO緊急勧告に伴い、パキスタンに4週間以上滞在した人は、成人・小児に関わりなく、パキスタンからの出国時に過去1年以内かつ出国から4週間以上前にワクチン接種を行った接種記録(WHO様式のワクチン接種記録もしくはパキスタン政府発行の接種記録)の確認が行われています。赴任及び4週間以上の滞在が見込まれる場合には、予め日本国内でワクチンの接種を行い、WHO様式の接種記録を作成して来られることをお勧めします。(パキスタン入国後もワクチン接種は可能ですが、接種可能な医療機関が限られており、ワクチンの輸送・保管が適切に行われていない状況も報告されています。)
ポリオワクチン接種記録の確認に関しては、今後変更される可能性もありますので、渡航前に最新状況を確認して下さい。

(注)狂犬病については、都市部では感染リスクが低いものの地方部では感染リスクの高い国といえます。都市部に限って過ごす場合には暴露前接種は必ずしも必要がありません(暴露後接種で対応)。

(注)日本脳炎についてはシンド州の一部を除き感染リスクは低いといえます。

小児

A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、日本脳炎、BCG、水痘、
3種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)、
MMR(もしくは麻疹・風疹・流行性耳下腺炎の個別)、
ポリオ(成人の部を参照して下さい)
狂犬病(成人の部を参照して下さい)

(注)日本で出来る予防注射は日本で受けてくることを勧めます。薬の輸送・保管が適切になされているかどうかチェック出来ないことや万一の場合の処置や補償が期待出来ないためです。また、入荷は常に不安定で必要な時期に必ずしも入手できるとは限りません。

(2)現地の小児定期予防接種一覧

現地の小児定期予防接種一覧
  初回 2回目 3回目 4回目
BCG 出生時      
ポリオ(生ワクチン) 出生時 6週 10週 14週
3種混合 (DPT) 6週 10週 14週  
肺炎球菌 6週 10週 14週  
麻疹 9ヶ月 15ヶ月    
B型肝炎 6週 10週 14週  
ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型 6週 10週 14週  

(注)DPT:ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン。最近では、DPTに不活化ポリオとヘモフィルス・インフルエンザ菌b型及びB型肝炎ワクチンを加えた6種混合ワクチンを使用することもありますが、入荷は不安定です。

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 不要です。

8 病気になった場合(医療機関等)

 公設救急車はダイヤル「115」で呼ぶことができます。しかし、救命機器は不備で救命士の同乗はなく到着時間もまちまちなので注意を要します。

イスラマバード

(1)Shifa International Hospital
所在地:Pitras Bukkari Road, H-8/4, Islamabad
電話:(051)-846-3666
概要:市中心部より少し南に離れた所にありますが、邦人を含む多くの外国人が利用する私立総合病院です。内科・外科・小児科・産婦人科をはじめ各科がそろっており、24時間救急患者(小児を含む)を受け入れています。
(しかしながら、前に述べているとおり決して日本の病院のように迅速で適切な対応が期待出来るというものではありません。イスラマバードでは最高ではありますが、入院・手術を必要とするような中等・重症の傷病では医療先進国へ移動されることを勧めます。)
(2)Maroof International Hospital
所在地:Plot No.7, 10th Avenue, F-10 Markaz, Islamabad
電話:(051)-222-2920 ~ 49
概要:市中心部より少し離れた所にありますが、外国人も利用する私立総合病院です。24時間救急患者(小児を含む)を受け入れています。
(3)Kulsum International Hospital
所在地:Kulsum Plaza, 2020-Blue Area, Jinnah Avenue, Islamabad
電話:(051) - 844 - 6666
概要:市中心部にある小規模の私立総合病院です。産婦人科・小児科の受け入れは出来ないものの、24時間救急患者を受け入れています。
(4)Ali Medical Center
所在地:Kohistan Road, F-8-Markaz, Islamabad
電話:(051)-285-5174~76, 225-5313~15
概要:市内中心部近くにある小規模の私立病院。軽・中等症の傷病で通うには便利です。隣接してCT・MRI等可能なIslamabad Diagnostic Centerがあります。

(注)マラリアの診断・治療についてはほとんどの医療機関で可能です。
上記の医療機関は全て可能です。

(5)Dr. Abrar & Associates(歯科)
所在地:House No. 6-A, Ismail Zabeeh Road, F-8/3, Islamabad
電話:(051)-228-7691, 228-7692
概要:小児歯科対応可です。

ラワルピンディー

(1)Combined Military Hospital (CMH)
所在地:Tamiz-ud-din Road,CMH Road, Rawalpindi
電話:(051)-927-3423, 927-0538, 927-3426
概要:軍の病院ではありますが、一般人も診察を受けられます。外科系の診療科目が中心であり、交通事故の多発外傷などに対応可能です。病院の性格上軍の関係者が優先されます。
(2)Military Hospital (MH)
所在地:Abed Majeed Road, Rawalpindi
電話:(051)-927-3480
概要:軍の病院ではありますが、一般人も診療を受けられます。内科系の診療科目が中心であり、病院の性格上軍関係者が優先されます。

ラホール

(1)Doctors Hospital & Medical Center
所在地:152-G/1, Canal Bank, Johar Town, Lahore
電話:(042)-3530-2701 ~ 14
概要:2001年に開業した私立総合病院です。歯科はありませんが、CT・MRIなども有し、救急患者も受け入れています。

9 その他の詳細情報入手先

(1)在パキスタン日本国大使館 ホームページ: http://www.pk.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

10 現地語・一口メモ

 現地語(ウルドゥー語)がありますが、英語で十分です。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照ください。


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