2010年10月
パキスタン・イスラム共和国(イスラマバード,ラワルピンディー,ラホール)(国際電話国番号92)
イスラマバードは、ほぼ福岡と同じ緯度に位置し、標高約500メートルの地点にあります。しかしながら、大陸内部にあるため、気候は過酷です。
4月から6月は40度(時には50度)を超える酷暑、7・8月はモンスーンの季節(雨季)で高温多湿、9月に入ると気温も徐々に低下し始め過ごしやすくなり、11月から3月は冬にあたり、日中は20度近くあり過ごしやすいのですが、夜は0度近くまで冷え込むという寒暖の激しい季節です。(ラワルピンディー・ラホールも多少の差はありますが、基本的には同様の気候です。)
水道水は細菌・ウイルス・寄生虫・重金属などによる汚染が度々報告されており、一番衛生状態が良いとされるイスラマバード市内でも上水道の汚染率は50%といわれています。市販されているミネラルウォーターやソフトドリンクにも細菌混入している粗悪品があり注意が必要です。当地では食物を介する消化器感染症が多いので、火を通していない食事は避けるようにして下さい。
イスラマバード・ラワルピンディー・ラホールには公・私立の大病院がいくつかあります。公的病院での治療費は安価ですが、常に大勢の患者さんらで混雑しており、専門医の不在により経験の少ない若い医師の診察を受けざるを得ないことも多く、十分に医療設備が整っていなかったり、予算不足で院内の医薬品が不足しがちであるなどの理由からお勧め出来ません。概して私立病院は公立病院に比し衛生的で、比較的医療設備も整っており、かなりの水準の検査・治療を受けることが出来ます。しかし、医師の知識は豊富でも医療機関全体としての機能が有機的にうまく動かない、看護師等の医療従事者の衛生観念・技術が低い、万一治療経過がおもわしくない場合のバックアップ体制が整っていない等々、多くの問題を抱えております。簡単な治療・検査や風土病の治療以外は先進国での受診を勧めます。重傷病者は日本や医療先進国(バンコクやシンガポールなど)への緊急移送が必要となり、多額の費用が必要となります。為に、必ず「海外旅行傷害保険」に加入されるようにお勧めします。
私立病院は日本と異なり、多くの開業医が各自で病院の建物の一部を借りて営業していて、検査や手術室、入院施設などは共有するというシステムです。この為、同じ病院内でも医師同士の連携は決して良いとは言えません。
病院受診に際しては、殆どの病院で英語が通じます。特に外国人の患者が多い私立病医院では、多くの医師が英・米国で教育を受けています。
基本的な受診方法は、まず受付をして診察料を払い、希望する医師の診断を受ける(希望する医師がなければ病院側が決めます)。可能な限り事前に受診を希望する医師の予約を取ることをお勧めします。診察の結果、検査が必要となると、その都度会計へ行き、支払いをしてから検査を受け、その後医師の診断を受けるということを繰り返します。完全に医薬分業で、薬は医師が発行した処方箋を持って院内もしくは市中の薬局で購入することになります。パキスタンの市中の薬局では、抗生物質を含むほとんどの医薬品やワクチンが、医師の処方箋がなくても購入可能です。
支払いは「前払い方式」ですので、支払いがなされない限り、たとえ患者さんが死に面していても放置される可能性があります。入院・手術に関しても同様で、保証金が払われない限り受けることは出来ません。しかしながら、海外旅行傷害保険に加入していれば、保険会社が支払保証人となってくれますので、手持ちの現金が不充分であっても診療を受けることが出来ます。そのためにも海外旅行傷害保険には必ず加入される事を勧めます。
妊娠・出産については、国全体の妊産婦死亡率が日本の50倍以上(2010年、WHO統計)であり、可能な限り日本等医療先進国での出産をお勧めします。やむなくパキスタン国内で出産する場合でも、医療水準の高い都市部の私立産科病院での出産をお勧めします。幸い、過去数年間に日本人がイスラマバード所在の一部私立産科病院で出産されたケースにおいては、大きな問題は報告されていません。
(1)消化器感染症:当地では多くの消化器感染症があります。主なものは 細菌性およびウイルス感染性胃腸炎(下痢・嘔吐・発熱・腹痛など)、腸チフス(発熱・発疹・腹痛・下血など)、赤痢(アメーバ性・細菌性、粘血便・腹痛・発熱など)、コレラ(激しい米のとぎ汁様の水様性下痢)、A型肝炎(微熱・倦怠感・黄疸など)、ジアルジア(持続する下痢など)、各種の食中毒等々があります。重症例では脱水、腎不全に陥るケースも散見されます。
(2)マラリア:ハマダラ蚊(主に薄暮から朝方に活動する)により媒介されるマラリア原虫により起こされる病気です。北部の高地を除き全土で見られ、主に三日熱マラリアと熱帯熱マラリアです。予防薬を服用しなければならないほどではありませんが、高熱が出た時はマラリアを疑い、すぐに医療機関を受診して下さい。熱帯熱マラリアは治療が遅れますと時に死に至ります。イスラマバード市内においてはマラリア感染のリスクはほとんどありません。
(3)デング熱:熱帯シマ蚊(昼行性)により媒介されるウイルスにより起こる病気です。高熱・目の奥の痛み・筋肉痛・発疹などを生じ、“死んでしまうのではないか?"という恐怖心を起こさせるほど症状は重く、時にはデング出血熱と呼ばれる、出血傾向を伴い死に至ることもある重症型になることもあります。(特に幼少児)
(4)狂犬病:狂犬病の汚染地域で、野犬・放し飼いの犬もおり、狂犬病の予防接種を受けている犬は非常に稀です。犬、特によだれを垂らしているような犬には絶対に近寄らないで下さい。万一犬にかまれた時はすぐに狂犬病のワクチン(狂犬病の可能性が高い場合には、グロブリンも)を最寄りの医療機関で規定回数分受けて下さい。(犬以外の動物でも狂犬病ウイルスを持っている可能性がありますので、哺乳動物に咬まれた場合には、狂犬病・破傷風に対する処置を受けるべきです。)狂犬病は発病してしまうと致死率がほぼ100%という恐ろしい病気です。
(5)破傷風:嫌気性菌(密封された傷で繁殖する)による病気で、古釘や木片などによる刺創や銃創や咬創が危険です。発症すると致死率の非常に高い病気ですので、予防注射を受けられておくことを勧めます。また、前記のような傷を受けた場合は必ず医療機関を受診して治療を受けるようにして下さい。
(6)B型・C型肝炎:血液や体液を介して伝染するウイルスにより起こる病気です。使用済みの注射器などを再利用することによりB・C型肝炎が急速に増加していると国が警告しております。治療費は高くなっても信頼出来る医療機関で治療を受けて下さい。また、これらは性行為によっても伝染します。
(7)結核は、毎年10万例近くが新たに報告されており世界でも有数の流行国です。他にもリューシュマニア、炭疽、ポリオ、クリミアコンゴ出血熱、スナノミ症など、報告数は多くはないものの種々の伝染病の感染の機会がありますのでご注意下さい。
(8)花粉症:イスラマバードでは、3月〜4月が花粉症の季節です。スギ花粉などが多い日本と違い、草花、梶の木(paper mulberry)、インド大麻(カンナビス)による花粉症が多いとされています。
(9)食事:パキスタンの料理はいわゆるカレーが中心ですが、油を非常に多く使用しており、人によってはこの油でお腹を壊します。(下痢もしくは鼓腸:お腹がガスでパンパンに膨れる状態)
(10)交通事故:イスラマバードは他のパキスタンの都市と違い、車が制限されて道路が広い為、ごみごみした感じがなく一見安全なように見えますが、車の合流地点や検問ポイントなどでは我先にと割り込みをする車が多く、危険を感じることも日常茶飯事です。歩行者の道路横断には十分な注意が必要です。車が優先で、決して人が優先ではありません。イスラマバード以外の都市では、人・ロバ車・馬車・自転車・オートバイ・オートリキシャ・車・バス・トラックが渾然と互いの阿吽の呼吸で動いております。
北部の山岳部を除くと40度を越す日が半年以上続き、毎年多くのパキスタン人が熱射病で亡くなっています。日よけの帽子をかぶり、水分を十分に取るようにして下さい。また、屋外活動時には日焼け止めを塗ることを勧めます。
交通事故には十分に注意して下さい。また、排気ガスで大気は非常に汚染されておりますので、呼吸器の弱い方は注意が必要です。
食事は露店など一見して不衛生な所では食べず、また、火の通っていないものは食べない様にして下さい。水も、時にはミネラルウォーターでさえ汚染されていると問題になる国です。生水・氷は摂取しないようにして下さい。また、町中で売っている生ジュースも危険です。比較的安全に飲用出来るのは一流メーカー製のミネラルウォーターやソフトドリンク類です。生野菜、生卵の摂取もお勧めできません。
狂犬病(<暴露前接種>:犬にかまれる前にあらかじめ予防接種を受けておく。基礎免疫後、半年または1年毎に追加接種が必要かつ、咬傷直後に追加接種必要。<暴露後接種>:咬傷後に一定の方式で6回接種+場合によってはγグロブリン接種も必要)
髄膜炎菌性髄膜炎(流行時には必要)
3種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)、
MMR(もしくは麻疹・風疹・流行性耳下腺炎の個別)、
ポリオ(日本は2回ですが、3回を推奨します)
狂犬病(成人の部を参照して下さい。)
髄膜炎菌性髄膜炎(流行時には必要)
※上記のうち、腸チフス・髄膜炎菌性髄膜炎の予防注射は、日本国内では限られた医療機関のみで接種可能です。当地医療機関でも接種可能です。
※日本で出来る予防注射は日本で受けてくることを勧めます。薬の輸送・保管が適切になされているかどうかチェック出来ないことや万一の場合の処置や補償が期待出来ないためです。
| 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |
|---|---|---|---|---|
| BCG | 出生直後 | |||
| ポリオ(経口) | 出生直後 | 6週 | 10週 | 14週 |
| 3種混合 (DPT) | 6週 | 10週 | 14週 | |
| 麻疹 | 9ヶ月 | 12〜23ヶ月 | ||
| B型肝炎 | 6週 | 10週 | 14週 | |
| インフルエンザb菌 | 6週 | 10週 | 14週 |
※DPT:ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン。最近では、DPTに不活化ポリオワクチンとインフルエンザb菌のワクチンを加えた5種混合ワクチンを使用することもある。
※MMR:麻疹(はしか)・流行性耳下腺炎(おたふく風邪)・風疹の3種混合ワクチン。通常は麻疹のみ。自分でMMRを持ち込めば接種可能
不要です。
公的な乳児健診システムはない。必要に応じ、個別に小児科医に依頼する。
公設救急車はダイアル「15」で呼ぶことができます。しかし、救命器機は不備で救命士の同乗はなく到着時間もまちまちなので注意を要します。
住所:H-8/2, Islamabad
電話:(051)-460-3666
概要:市中心部よりは少し離れた所にあるが、邦人を含む多くの外国人が利用する私立総合病院。内科・外科・小児科・産婦人科をはじめ各科がそろっており、24時間救急患者(小児を含む)を受け入れている。
(しかしながら、前に述べているとおり決して日本の病院のように迅速で適切な対応が期待出来るというものではありません。イスラマバードでは最高ではありますが、入院・手術を必要とするような中等・重症の傷病では医療先進国へ移動されることを勧めます。)
住所:Main Markaz, F-8, Islamabad
電話:(051)-285-5174, 285-5175
概要:市内中心部近くにある小規模の私立病院。軽・中等症の傷病で通うには便利。隣接してCT・MRI等可能なIslamabad Diagnostic Centerがある。
住所:Zahoor Plaza 38-E, Blue Area, Islamabad
電話:(051)-227-2350, 227-2351
概要:大統領府から至近のブルーエリアにある小規模の私立病院。
※マラリアの診断・治療についてはほとんどの医療機関で可能です。
上記の医療機関は全て可能です。
住所:House No. 25, School Road, F-7/1, Islamabad
電話:(051)-265-1922, 265-2697
概要:比較的大きい。小児歯科対応可。
住所:City Centre, F-7 Markaz, Jinnah Super Market, Ialamabad
電話:(051)-265-2262 〜 265-2264
概要:小児歯科対応可。小規模だが日本語対応可(Mr.Nadeem)。
住所:Tariq-Abad Road, Lalkurti, Rawalpindi
電話:(051)-561-32602 〜 3
概要:軍の病院ではあるが、一般人も診察を受けられる。外科系の診療科目が中心。交通事故の多発外傷などに対応可能。
病院の性格上軍の関係者が優先される。
住所:The Mall Road, Rawalpindi Cantt, Rawalpindi 46000
電話:(051)-561-34993 〜 5
概要:軍の病院ではあるが、一般人も診療を受けられる。内科系の診療科目が中心。病院の性格上軍関係者が優先される。
住所:152A-G/1, Canal Bank, Johar Town, Lahore
電話:(042)-530-2701 〜 14
概要:2000年に開業した私立病院。CT・MRIなども有し、開心術もこなしている。郊外にあるが設備などは良い。
大使館医務官電子メールアドレス:adminjapan05@nayatel.pk
医療機関では英語が通じます。