世界の医療事情

パキスタン(カラチ)

平成28年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 パキスタン・イスラム共和国(カラチ市)(国際電話国番号 92)

2 公館の住所・電話番号

在カラチ日本国総領事館 (毎週土日休館)
住所:Consulate-General of Japan,6/2 Civil Lines, Abdullah Haroon Road, Karachi, 75530
電話番号:021-3522-0800 (代表)
ホームページ:http://www.kr.pk.emb-japan.go.jp/j/別ウィンドウで開く

(注)土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

 カラチは,ほぼ一年を通して暑く,特に5~6月には40℃を超えることがあり,熱中症や脱水に注意する必要があります。一方,12~2月頃は夜間の気温が下がり,かぜなどで体調を崩しやすくなります。まとまった雨が降るのは8~9月頃だけで,年間数日程度ですが,短時間の雨でも道路が冠水し,停電や交通,通信のトラブルが発生します。さらに,下水が上水道に混入したり,水たまりで蚊が発生したりして,衛生状態も悪化します。もともと塩素濃度不足のため上水道の水質が悪く,細菌,ウイルス,寄生虫(アメーバ赤痢等)に感染する危険があるため,そのまま飲むことはできません。水質管理の悪いプールや河川での遊泳も危険です。不衛生な調理場やコップ・食器等の汚染も感染源となっており,たとえ欧米系のホテルやおしゃれなカフェ・レストランの食事でも,加熱が不十分な料理には手をつけず,生もの(フレッシュジュース,生野菜,カットフルーツ,アイスクリーム等)には注意し,氷の入った飲み物は避けることをお勧めします。また,油と香辛料が多く使われるパキスタン料理により,消化不良や下痢になる場合もあります。

 外国人が受診できる水準の病院は限られており,それらの病院さえも日本と同じ医療を期待することはできません。やむを得ぬ緊急時の救急受診以外は,本邦等の先進国の医療機関の受診を優先してください。病院までの移動については,救急車サービスを提供する組織が複数ありますが,急病でも邦人が利用することはほとんどなく,私用車での移動が一般的です。旅行者の場合はホテルに医師の往診または移動手段の手配を依頼してください。

 初めて病院を受診する時はまず,RegistrationでIDカードとカルテの作成を依頼し,受診する科の受付に行き,診察を受ける前に初診料を支払います。Consultationでの問診と体温・血圧測定の後に医師の診察があります。診察の結果,医師から検査を指示された場合は,各検査室(レントゲン撮影や超音波検査はRadiology,採血・採尿はLaboratory)に移動し,先に検査料を支払ってから検査を受け,検査結果を持って再度(後日再診の場合もあり)診察を受けた医師のところに戻って説明を受けることになります。医師から次回受診の日時を指定されても予約されているわけではないので,改めて受付に行き自分で予約手続きをする必要があります。薬を服用するよう指示された場合は,診察終了時に医師から処方箋が手渡されるので,病院内の薬局に処方箋を提出し,医薬品代を支払い,薬を受け取ります。

 検査費用,診察料,入院費用,薬剤費等が,日本と比べて著しく高額であることは少なく,後述する医療機関ではクレジットカードで支払うことができます。

 しかし,大きなけがや重大な病気がある時は,近隣国の先進医療機関や日本への移送が必要となり,一千万円を超えることもある移送費用(死亡保険金や治療費用ではありません)は,ほとんどのクレジットカード付帯の旅行保険ではカバーされていませんので,十分な緊急移送費用が補償された海外旅行傷害保険への加入を強くお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

(1)旅行者下痢症

 旅行者及び長期滞在者に,食品や水,細菌・ウイルス・寄生虫感染,心身の不調等の様々な原因によって起きる,1日3~4回以上の下痢を指す用語で,吐き気,嘔吐,発熱,血便などが見られることもあります。治療として水分とミネラルの補給が重要ですが,1日5~10回以上の下痢,激しい腹痛,38℃を超える発熱,血便がある場合は,医療機関を受診して下さい。医師の指示を受けずに,安易に抗生剤や下痢止めを使用することは危険です。整腸剤で症状が改善しない場合も,病院受診を勧めます。

(2)デング熱

 蚊により媒介されるウイルス感染症です。このウイルスを媒介する蚊は昼行性ですが,1日の中で最も暑い時間よりはやや涼しい朝や夕方に活動性が増し,1年中では一番暑い季節よりも気温が下がり,特に降雨後の蚊の発生が多い時期に,最も感染の危険が高まります。蚊に刺されてから3~7日間の潜伏期間後に発症し,典型的な症状は,突然の高熱,頭痛(眼の奥が痛む),筋肉や関節の痛みと,遅れて始まる発疹です。特別な治療薬はありませんが,血液の異常による出血症状が現れたり,ショックを起こしたりすることがあるため,突然高熱が出た場合は常に,デング熱を疑って病院を受診し必要な検査や治療を受けることが必要です。自己判断で解熱剤や鎮痛剤を使用すると症状が悪化する危険があります。ワクチンがないため,蚊に刺されないことが唯一の感染予防対策で,そのためには,屋外では虫除けスプレーを使い,長袖長ズボンを着用し,家の中では蚊取り器を使用してください。また,自宅周辺の水たまり(排水溝,庭の池)の清掃と水が貯まりやすい容器(空き缶,古タイヤ)の撤去により,蚊(ボウフラ)を発生させないことが有効です。

(3)A 型肝炎

 食品,水などを通じて経口感染するウイルスの病気です。2~4週の潜伏期間後,体が非常にだるくなり,食欲が低下し,黄疸(眼や皮膚が黄色くなる)と褐色の尿が見られるようになります。ワクチンにより予防可能です。

(4)腸チフス・パラチフス

 食品,水などを通じて口から感染する細菌感染症です。突然の高熱で発症し,解熱後に腸管の穿孔を起こすなどの重症の合併症の可能性があります。腸チフスと呼ばれますが,症状は高熱だけで,お腹の症状(腹痛や下痢等)を伴わないことが多いとされています。ワクチン接種により,ある程度の感染予防効果が期待できます。途上国の中でもパキスタンを含む南アジアの地域は最も感染のリスクが高い地域と考えられており,また抗生物質が効きにくい菌が増加していることから,日本には輸入ワクチンしかありませんが,渡航前の接種を勧めます。

(5)その他

マラリア

 カラチ市内もマラリアの流行地ですが,多くの在留邦人が居住する地域に限れば予防薬服用は不要です。ただし,蚊に刺されない注意が必要で,突然高熱が出た場合は,マラリアである可能性もあるので,医療機関を受診してください。

アメーバ性髄膜脳炎

 淡水だけに生息するアメーバの1種による脳の感染症で,患者は年間数十人程度ですが,発症すると非常に高い死亡率となります。鼻の穴から水に混じって脳に侵入するため,塩素濃度の低い水道水での鼻洗浄や一部のプール,池・湖・河川での遊泳等により感染します。

ポリオ

 経口感染するウイルスの病気で,パキスタンは,世界で最も多くポリオ患者が発生する流行地です。最終のポリオワクチン接種から10年以上経過している場合は,追加接種を受けることを勧めます。昭和50~52年生まれの方は,子どもの時に日本で受けたポリオワクチンの効果が弱い可能性があり,特に注意が必要です。

(「予防接種」の項のポリオワクチン予防接種証明の情報もお読みください。)

クリミア・コンゴ出血熱

 家畜の血液やダニから感染するウイルス感染症で,カラチで感染する可能性は低いのですが,市内の各家庭で家畜の殺処分が行われる犠牲祭の時期に,動物衛生当局の検査を受けずに地方や隣国から持ち込まれる動物(ヒツジ,ヤギ等)から感染する危険があります。

狂犬病

 治療法がなく感染して発症すれば100% 死亡する狂犬病は,イヌ以外にもあらゆる動物からヒトに感染する可能性があります。カラチに多い野良ネコ(子猫も)やコウモリ(狂犬病ウイルスに感染しても発病しない)等にも直接触れないよう気をつけて下さい。動物との接触 (傷を舐められただけの場合でも感染の危険があります)があれば,直ちに傷を石けんで洗って消毒し,すぐに医療機関を受診して下さい。ペットの飼育は避けることが望ましいのですが,少なくともペットには毎年欠かさず狂犬病ワクチンを受けさせてください。

その他

 赤痢 (細菌性・アメーバ性),ジアルジア,コレラ,B 型肝炎(注),C 型肝炎,結核,蛔虫・蟯虫症等の寄生虫症,破傷風(注),日本脳炎* などが存在します。(注 ワクチンで予防できる病気)

6 健康上心がける事

 感染症予防の観点から,水と食事(特に外食時や私用のコックの衛生遵守)には常に注意しましょう。また,蚊に刺されないよう,室内用の蚊除けや肌に塗る忌避剤の使用を心がけましょう。小動物にも感染の危険があり,すべての生き物に,むやみに近づいたり触ったりしないでください。

 日射しが強いので,紫外線対策が必要です。また,熱中症に気をつけ,屋外・屋内いずれにおいても常に水分とミネラルの摂取を心掛けてください。水分が足りているか(脱水になっていないか)どうかは尿で判断することができ,量(回数)が減っていないか,また,尿の色が濃くなっていないか,が目安となります。砂塵がひどく,大気汚染があり,また乾燥しているため,サングラスやマスクが必要なこともあります。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1) 赴任者に必要な予防接種(成人・小児)

 入国に必要とされている予防接種はありません。

 2016年10月現在,パキスタン政府は,成人・小児に関わりなく,日本人を含むすべての長期(4週間以上)滞在者に対して,パキスタンから出国する際に1年以内にポリオワクチンを接種したことを証明する,指定された様式による証明書の提示を要求しています。今後変更される可能性もありますので,必ず渡航前に最新状況を確認してください。

成人

 A 型肝炎,B 型肝炎,破傷風,ポリオ,腸チフス,日本脳炎

 狂犬病ワクチンについては,事前に接種しておく方法(暴露前接種)と,動物との接触後に受ける方法(暴露後接種)があるので,出発前に旅行医学に詳しい医師とご相談ください。

小児

 日本の定期予防接種及び任意接種,A 型肝炎,腸チフス(+ 狂犬病)

 自治体のスケジュールでは間に合わない場合や接種年齢に達していない場合でも,小児科医に相談し,できるだけ多くのワクチン接種を済ませて渡航されることをお勧めします。

 カラチの医療機関で追加接種や新たな予防接種を受けることは,1) 同製品のワクチンの入手が困難または供給がないため継続性が担保されないことがある,2) 供給が不安定,3) ワクチンの保管状態が確認できない,4) 接種時の感染予防対策の遵守に不安がある,5) ワクチンによる健康被害が発生した場合の医療現場での対応に不安があり,またパキスタン政府による救済制度がない等の問題があり,お勧めできません。

日本での予防接種に関する情報入手先

(2) 現地の小児定期予防接種一覧

パキスタンの小児の定期予防接種

 Expanded Programme of Immunization:政府が無料で提供する接種義務のあるワクチン

政府が無料で提供する接種義務のあるワクチン
  初回 2回目 3回目 4回目 追加
BCG 出生時        
ポリオ (OPV) 出生時 6週 10週 14週 20~23ヶ月
DPT(注) 6週 10週 14週 20~23ヶ月  
B 型肝炎 (HBV) 6週 10週 14週    
麻疹 (はしか) 9ヶ月        

(注)DPT = ジフテリア,百日咳,破傷風混合ワクチン

 邦人が利用する私立医療機関では,さらに多くの予防接種を推奨し実施しています。

Aga Khan 大学病院の場合
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
BCG 出生時          
ポリオ (OPV) 出生時 6週 10週 14週 18ヶ月 4-5歳
5種混合 (DPT + HBV + Hib(注1)) 6週 10週 14週 18ヶ月 4-5歳  
肺炎球菌 6週 10週 14週 15ヶ月    
麻疹またはMMR(注2), MMRV(注3) 9ヶ月 12ヶ月 15ヶ月 4-5歳    
髄膜炎菌性髄膜炎 2歳以降          
ほか,ロタウイルス,腸チフス,A 型肝炎,水痘(MMRV 接種者を除く)

(注1) Hib:インフルエンザ菌b型 (季節性のインフルエンザウイルスワクチンとは異なる) 

(注2) MMR:麻疹,ムンプス(おたふくかぜ),風疹(三日ばしか)の3種混合ワクチン

(注3) MMRV:MMR + 水痘 (水ぼうそう) の4種混合ワクチン

(3) 小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 American School等では,接種証明を要求される場合があるので,日本を出発する前に入学予定の学校から指定されたワクチンを接種し,医師に接種証明(英語)の作成を依頼し,必ずこれを携行してください。その際には母子手帳を持参し,これまでに受けたすべての予防接種(ツベルクリンの反応の結果も)についても記載してもらってください。

8 病気になった場合(医療機関等)

カラチ市

(1)~(3)はいずれも英語可,日本語不可。クレジットカード支払い可。

(1) Clifton Medical Services, Aga Khan University Hospital (CMS)
所在地:Behind Indus Valley School of Art and Architecture, Off Shahrah-e-Saadi, Street-11, Block-2, Scheme-5, Clifton, Karachi
電話:(021)-9925-0051, 03028201291-2 病院ホームページあり。
概要:比較的新しくきれいな建物で,1 階の入口に救急室と検査室・薬局があり,1 階奥と2 階に各専門外来があります。大学病院本院から派遣される,総合診療部(家庭医学),整形外科,眼科,歯科,耳鼻科,皮膚科,外科,泌尿器科,産婦人科等,各科の専門医は予約が必要で,また診察日や時間が決まっていて診察日でない日もあるので,電話で事前に確認してください。救急室 Urgent Care は予約なしで24 時間受診できますが,入院施設やCTはありません。多くの在留邦人が居住する DHA 地区に近いこともあり,入院の必要がない軽症~中等症の救急受診(内科・小児科系の病気)や検査目的に利用されています。
(2) Aga Khan University Hospital
所在地:Stadium Road, Karachi
電話: (021)-3493-0051,Fax:(021)-3493-4294
(021)-3486-1090, -1 (救急部:Emergency room) 病院ホームページあり。
概要:パキスタン国内で最も設備が整っていて診療科も多く,専門医の診察,入院や手術,あるいはCT,MRI,血管造影,胃内視鏡,詳しい血液検査等が必要な場合は,この病院を受診します。入院施設があり,全科 24時間受け入れ可能です。ただし,市街地から離れていて,また多数の外来患者で混雑しているので,軽症の場合の受診は勧められません。
(3) South City Hospital
所在地:St-1, Block-3, Shahrah-e-Firdous Clifton Karachi
電話:(021)-3586-2301, -2, -3,病院ホームページあり。
概要:(1) のCMS同様 DHA 地区から近く,非常にきれいな病院で入院施設もあります。
内科,外科,整形外科,産婦人科,小児科,眼科,耳鼻咽喉科,歯科等,全科に対応しています。常勤医師により毎日診察が行われていることから,小児科や産婦人科,内科等の邦人の利用があります。救急室は予約不要で 24 時間受診可能ですが,それ以外は予約が必要です。
(4) 救急車サービス (参考)
AMAN 電話:1021,Edhi 電話:115

10 その他の詳細情報入手先

(1)在カラチ日本国総領事館 ホームページ:http://www.kr.pk.emb-japan.go.jp/j/別ウィンドウで開く

11 現地語・一口メモ

 現地語はウルドゥー語ですが,上述の病院を受診する際は英語が通じます。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)をご参照ください。


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