2010年10月
インド(ニューデリー,ムンバイ,バンガロール)(国際電話国番号91)
インドは水事情が悪く、上水道は1日に数時間程度しか供給されません。そのため多くの家庭ではタンクを設けて水をためています。水道水は水道管の破損のために汚染されていることが多く、タンクも汚染されやすいため蛇口から出る水をそのまま飲用に供することはできません。また、地域によっては水道管と下水管が併走していることがあり、どちらの管も破損しているため下水が水道水に混入することがあります。このためコレラや腸チフスなどが流行するという事例もしばしば発生しています。
ニューデリーやムンバイといった都市部では自動車などの排気ガスによる大気汚染が著しく、喘息などの呼吸器系疾患の誘因となっています。
レストランは不衛生なところが多いので、サラダなどの生ものは食中毒の危険性があります。フルーツジュースも同様です。また、水はボトルの水を注文するようにしてください。
インドは感染症の宝庫で、様々な感染症があります。都市部でも例外ではありません。特に消化器感染症とデング熱などの蚊が媒介する感染症には要注意です。
病院については、公立病院は安価ですが不衛生なところが多く、ほとんどの邦人が私立病院を受診しています。都市部には最新の医療機器をそろえた病院がいくつかあります。高度先進医療を行える病院もありますが、ごく一部と考えた方がよいでしょう。
なお、インドは大変大きな国ですので、地域により医療事情や病気が異なります。日本では聞いたこともないような病気(感染症)のあるところもありますので、ご自分の行かれる地域についての情報を入手するように心がけてください。
食べ物や飲み物を介して感染する消化器感染症は、旅行者や在留外国人にとって最もかかりやすい感染症です。ウイルス性下痢、細菌性下痢はもちろん、腸チフス、パラチフス、細菌性赤痢、アメーバ赤痢、コレラ、A型肝炎、E型肝炎などは都市部でもよく見られます。
腸チフスとパラチフスは高熱を主な症状とする病気で、潜伏期間は1〜2週間です。必ずしも下痢や腹痛などの腹部症状を伴うとは限りません。血液検査で診断し、抗生物質で治療します。腸チフスにはワクチンがあります。
細菌性赤痢の潜伏期間は1〜4日で、発熱、腹痛、下痢(しぶり腹)、粘血便といった症状があります。診断は便の細菌検査で行い、抗生物質で治療します。
アメーバ赤痢の潜伏期間は2〜4週間と長く、症状は下痢や粘血便などです。検便で診断し、抗寄生虫薬で治療します。
コレラは潜伏期間が1日程度と短く、白っぽい米のとぎ汁状の下痢を特徴とします。下痢がひどく脱水になりやすいので、十分な点滴治療が必要となります。
A型肝炎、E型肝炎は潜伏期間が1ヶ月程度と長く、発熱や全身倦怠感といった風邪のような症状で始まり、次第に黄疸が出現します。治療薬はなく自然に治るのを待つのみですが、1%ほどは命にかかわるような重症肝炎(劇症肝炎)になるとされています。E型肝炎は妊婦が感染すると重症となり、流産の危険性が高くなります。A型肝炎にはワクチンがありますが、E型肝炎にはありません。
このほかにもジアルジアや回虫などの寄生虫疾患を含め、多くの消化器感染症があります。
デングウイルスというウイルスが、ネッタイシマカやヒトスジシマカ(日本ではヤブ蚊と呼ばれる蚊です)によって媒介されて感染する病気です。雨期の後の蚊の増える時期、9〜11月頃に流行します。潜伏期間は5〜7日で、突然の高熱で発病します。頭痛、眼の奥の痛み、関節痛、筋肉痛などの痛みを伴い、発疹もよく見られます。デング出血熱では血小板数が低下し、鼻血や血液検査の後出血が止まりにくいなどの症状が出たりします。さらに急激な血圧の低下といったショックを伴うことがあり(デングショック症候群)、こうなると大変危険な状態です。ワクチンも治療薬もないため、予防は蚊に刺されないようにすることのみで、治療は対症療法となります。解熱剤としてはアセトアミノフェン(現地ではパラセタモールとよばれます)を使用し、ほかのものは使いません。
チクングニヤウイルスがネッタイシマカやヒトスジシマカなどの蚊によって媒介される病気で、潜伏期間は数日〜10日前後、関節痛を伴う突然の高熱で発病します。症状がデング熱とよく似ているため、しばしばデング熱と間違えられるようです。主に南インドでよく見られる病気で、蚊の増える9〜11月頃に患者が増加します。通常命にかかわることはありませんが、関節痛が長期間持続することが多いようです。ワクチンも治療薬もありません。
インドのマラリアは熱帯熱マラリアと三日熱マラリアの二種類です。かつては三日熱マラリアの割合が多かったのですが、最近では熱帯熱マラリアの割合の方が少し多くなってきました。熱帯熱マラリアは治療が遅れると高率に死亡する危険な病気です。マラリアはハマダラカという蚊によって媒介される病気で、非都市部で見られることが多いのですが、ニューデリーでも年間500名くらいの患者が出ています。また、最近ムンバイのマラリア患者の増加が問題となっています。
インドの熱帯熱マラリアは最近薬剤耐性が進んでおり、従来のメフロキン単独による治療からアーテスネートを併用する治療に変更されつつあります。都市部に居住する場合には予防内服の必要はありません。
インドでは結核の罹患率が極めて高く、世界の感染者の3分の1を占めるとされています。薬剤耐性結核が増えてきているのも大きな問題となっています。
インドは狂犬病の犠牲者が世界で最も多い国で、年間1万5千人以上が狂犬病で亡くなっています。インド人は宗教上の理由で殺生を好まないため野犬がそのまま放置されており、至る所に野犬がいます。野犬には絶対近づかないようにしてください。たとえワクチンを接種していても、犬などのほ乳類に咬まれたりなめられたり引っかかれたりした場合は追加のワクチン接種等が必要であることに注意してください。
インドで最も注意していただきたいのは飲み物と食べ物です。生水や不衛生なレストラン、屋台での飲食は厳に慎むべきです。特に加熱調理されていない食品(フルーツジュースを含む)には十分注意してください。
食事の前や外出から戻ったときに手を洗うようにすることも重要です。石けんを十分泡立ててまんべんなく手を洗ってください。
インド料理はスパイシーで油も多く使われており、慣れていないと胃腸への負担が大きく下痢をしやすくなります。暑いインドでの下痢は脱水になりやすいので、水分補給に努めてください。
夏のインドは大変暑く、地域によっては湿度も高くなります。熱中症には十分な注意が必要です。遺跡など屋外の観光施設が多いため、観光の際には帽子をかぶる、ボトルの水を携帯する、無理なスケジュールを避けるなどの注意が必要です。
インドは車の運転マナーが大変悪く、交通事故も頻繁に起きています。道を歩く際には十分気をつけてください。
野犬が多いことは前項で述べましたが、そのほか牛や猿などは都市部でもよく見かけます。犬だけでなくこうした動物も危険ですので、近寄らないようにしてください。
入国にあたり義務づけられている予防接種はありません。
成人では破傷風、腸チフス、A型肝炎、B型肝炎、日本脳炎、ポリオなどを接種することをお勧めします。ただし腸チフスワクチンは日本では認可されていないため、日本国内で接種できるところは限られています(インドで接種できます)。
小児の場合は日本で行われている予防接種の他に、A型肝炎、B型肝炎、腸チフスの接種と、ポリオの追加接種をお勧めします。
動物に接することが多い場合は狂犬病の予防接種も受けた方がよいでしょう。この場合、初期免疫終了後も半年ごとに追加接種するようにしてください。また、日本脳炎ワクチンはインド国内での入手が難しいので、できるだけ日本で接種してくるようにしてください(最近は入手しやすくなってきたようです)。
インド小児科学会が勧める小児の予防接種は次の通りです。
| 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | |
|---|---|---|---|---|---|
| BCG | 出生直後 | ||||
| ポリオ(経口) | 出生直後 | 6週 | 10週 | 14週 | 15〜18ヶ月 |
| DPT | 6週 | 10週 | 14週 | 15〜18ヶ月 | |
| 麻疹 | 9ヶ月 | ||||
| MMR | 15〜18ヶ月 | ||||
| B型肝炎 | 出生直後 | 6週 | 6ヶ月 | ||
| 腸チフス | 2歳 | ||||
| インフルエンザb菌 | 6週 | 10週 | 14週 | 15〜18ヶ月 |
このほかに接種を考慮すべきワクチンとして、
水痘(生後15ヶ月以上)
A型肝炎(生後18ヶ月以上)
肺炎球菌(生後6週以上)
が挙げられています。
特にありません。
インドでは決まった乳児健診はありません。予防接種の際に簡単な診察が行われることがあるようです。
インドでは公立病院よりも私立病院の方が清潔で医療レベルも高いので、たいていの邦人は私立病院を利用します。私立病院の職員はたいてい英語を話せます。日本語通訳や日本語を話せる医師のいる病院はありません。大きな病院では外国人用窓口を設けています。
初めての受診の場合、登録料が必要となることがあります。専門医を受診する場合には事前に予約するのが原則です。インドでは医師は一つの病院にのみ所属しているとは限らないため、目的とする医師が病院にいないことがあります。受診を希望する医師がいるかどうかを事前に確認し、予約するようにしてください。
インドの私立病院では、診療記録(いわゆるカルテ、インドではPrescription=処方箋と呼ばれる)は患者に渡されます。診療記録には検査の指示や投薬内容が記載されており、検査を受けたり薬を購入したりする際にはこの診療記録を提示します。
検査を受けた場合、検査結果は各自で取りに行くのが一般的です。検査室で結果がいつ出るかを教えてくれますので(教えてくれなければ確認してください)、病院の結果受取窓口で受け取るようにしてください。2回目以降の受診の際には、診療記録と検査結果を自分で持って行きます。
私立病院の医療費は安くはありませんので、インドに来られる方は必ず海外旅行傷害保険等に加入するようにしてください。
入院に際しては部屋のランクにより室料が異なるのはもちろん、診察料金も異なることが一般的です(室料が高いと診察料金も高くなる)。入院時には前払い金(デポジット)の支払いを求められます。
次に挙げる病院は、特に断りのない限り小児診療を含め24時間対応可能です。
所在地:Sarita Vihar, Delhi-Mathura Road, New Delhi 1100766
電話番号:011-26825708、26825604、26925858(救急番号:1066)
ファックス:011-26825595
ウェブサイト:http://www.apollohospdelhi.com ![]()
概要:インドでは最大級の規模で、設備も最新のものをそろえています。日本人を含め外国人がよく利用しています。外国人向け窓口をしてExecutive Loungeが設けられています。ニューデリーには入院設備を持たない外来専門のApollo Medical Center(所在地:Building No.1, Sector-B, Nelson Mandela Marg、電話番号:011-26134825)もあります。また、ニューデリー近郊のNoidaにも新しく病院がオープンしました(Apollo Hospitals、所在地:E-2, Sector-26, Noida 201301, UP、電話番号:95120-2445353)。
所在地:1, Press Enclave Road, Saket, New Delhi 110017
電話番号:011-66115050、66114545(救急番号:40554055)
ファックス:011-2651-0050
ウェブサイト:http://www.maxhealthcare.in ![]()
概要:ニューデリーとその近郊に7つの病院を持つ医療グループの中心的病院です。
別棟に心臓・血管センターがあり、ここにはニューデリー地域を受け持つ救急センターがあって、グループで十数台所有する救急車を管理しています。病院は新しく清潔で、最新の設備をそろえています。外来専門のMax Medcenterを利用する邦人も多いようです(所在地:N-110、 Panchsheel Park, New Delhi、電話番号:011-26499870)。ニューデリー近郊のNoidaやGurgaonにも系列病院があります(NoidaのMax Hospital 所在地:A-364, Sector-19, Noida 201301, UP、電話番号:95120-402666、 GurgaonnのMax Hospital 所在地:Block-B, Sushant Lok-1, Gurgaon 122001, Haryana、電話番号:95124-6623111)。
所在地:Sector-B, Pocket 1, Aruna Asaf Ali Marg, Vasant Kunj, New Delhi 110070
電話番号:011-42776222(救急番号:42776444)
ファックス:011-42776221
ウェブサイト:http://www.fortishealthcare.com ![]()
概要:規模は大きくありませんが、新しく清潔な病院です。ニューデリーおよびその近郊に約10の系列病院を持っています。ニューデリー日本人学校から近く、生徒・児童も利用しています。心筋梗塞などに対するカテーテル検査・治療はここではできないため、系列の病院で行われています。他の病院と異なり病院専属の医師が多いことと、入院の場合部屋のランクにかかわらず診察料金等が同じになっているのが特徴です。
所在地:Sector 51, Gurgaon 122001, Haryana
電話番号:0124-6767999
ファックス:0124-6767997
ウェブサイト:http://www.artemishospital.com ![]()
概要:ニューデリーに隣接するグルガオンに新しくできた病院です。海外の先進国でトレーニングを受けた医師を集めています。
所在地:Sector 38, Gurgaon 122001, Haryana
電話番号:0124-4411441
ファックス:0124-4834111
ウェブサイト:http://www.medanta.org ![]()
概要:インドでは有名な心臓外科医が、理想の病院を目指して開院しました。2010年8月時点では、産婦人科、小児科など一部の診療科はまだ開設されていません。将来的にはショッピングモールなども併設した複合医療施設を目指しているようです。
所在地:12,New Marine Lines, Mumbai 400200
電話番号:022-22067676
ファックス:022-22080871
ウェブサイト:http://www.bombayhospital.com ![]()
概要:1950年設立で、800床以上を有する大病院です。建物の古さは否めませんが、医療機器は最新のものをそろえています。外傷、心臓疾患、脳卒中などたいていのことに対応可能です。
所在地:60-A, Bhulabhai Desai Road, Mumbai 400026
電話番号:022-23667788、23671888、23672888
ファックス:022-23672666
ウェブサイト:http://www.breachcandyhospital.org ![]()
概要:従来ムンバイ在住の外国人がよく受診する病院として知られていましたが、現在では患者のほとんどはインド人です。外国人としてはアメリカ人やイギリス人が多いそうです。病室は全室個室です。
所在地:15/17 Maharshi Karve Marg, Mumbai 400004
電話番号::022-67570111
ファックス:022-67570777
ウェブサイト:http://www.saifeehospital.com ![]()
概要:もともとは古い歴史のある病院ですが、建て替えられ近代的なビルとなりました。入院病室の室料はリーズナブルですが、病床数はあまり多くありません。フィットネスセンター、ヨガ教室、アーユルベーダなどもあります。
所在地:A-791, Bandra Reclamation, Bandra (W), Mumbai 400050
電話番号:022-26421111、26552222
ファックス:022-26407655
概要:ベッド数300の比較的空港に近い病院です。医療機器は最新のものがそろえられています。外来診療は午前8時から午後10時までですが、午後4時以降はプライベート外来(Private OPDと呼ばれ、医師個人が病院の施設を利用して患者さんを診るという形式をとっています。このため、午後4時以降の診察には予約が必要です。
所在地:Four Bungalows, Andheri(W), Mumbai 400053
電話番号:022-3099-9999、30666666
ファックス:022-30972030
概要:インドの大手財閥であるリライアンス系列の病院。2009年に新しくオープンしました。ムンバイ中心部からやや遠いのが難点ですが、大変ゆったりとした作りになっています。付き添い家族のためのホテルも併設しています。
所在地:154/11,Bannerghatta Road, Bangalore 560076
電話番号:080-40304050
ファックス:080-41463151
ウェブサイト:http://www.apollohospitals.com ![]()
概要:2007年にオープンしたばかりのアポロ病院グループ系列の病院です。最新の医療機器をそろえ、ほぼすべての診療科に対応できます。受診に当たっては事前に予約しておくことをお勧めします。
所在地:98, Airport Road, Bangalore 560017
電話番号:080-25024444、25023344
ファックス:080-25266757
ウェブサイト:http://www.manipalhospital.org ![]()
概要:1990年設立でベッド数650床の大病院です。最新の医療設備をそろえ、先端医療も行っています。患者数が多いので、受診前に予約した方がよいと思います。
所在地:#26/1, 80 Feet, Dr. Rajkumar Road, Malleshwaram West, Bangalore 560055
電話番号:080-3989-8969
ウェブサイト:http://www.columbiaasia.com ![]()
概要:米国資本の病院で、バンガロールにはもう一つ規模の小さいColumbia Asia Hospital-Hebble(Kirloslar Business Park, Bellary Road, Bangalore)があります。そのほかインド国内にはコルカタやグルガオンなどにも病院があります。院内各部門がオンラインでむずばれており、検査データが外来や病棟の端末で見られるなど、インドの病院としては進んだシステムになっています。
在インド日本国大使館ホームページ:http://www.in.emb-japan.go.jp/index-j.html ![]()
医療機関では英語が通じます。