在外公館医務官情報

リビア

2010年10月

1.国名

 大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国(トリポリ市)(国際電話国番号218)

2.公館の住所・電話番号

 休館日:金・土曜日

3.医務官駐在公館

4.衛生・医療事情一般

 リビアは、緑のある北の地中海沿岸地域とサハラ砂漠に繋がる南の内陸部を抱え、国土の90%が砂漠と岩山の国です。人口は首都トリポリをはじめ地中海沿岸地域に集中し、他は内陸部のオアシスに点在しています。トリポリの気候は、地中海性気候に属するとはいえ、夏期(5月~9月)は暑熱が厳しく気温は摂氏50度を越えることもあり、一方冬期(11月~3月)は雨が多く、気温も下がり、天候は不安定で強風や雷雨、時には雹や霰に見舞われます。また、3月から9月にかけては、サハラ砂漠よりギブリと呼ばれる熱く乾燥した砂嵐が吹き荒れ、気温は急上昇し15~20度も高くなることがあります。砂が漂い視界が遮られる程にもなり、屋内にも多量の砂埃が舞い込みます。

 国連の経済制裁解除後、医療機関の設備は徐々に整備されてきています。私立病院では、外国資本の参入や欧州の医療機関との提携も進んでおり、欧米で教育を受けたリビア人医師やマルタや仏等の外国人医師が診察し、看護師はフィリピン人または東欧系で英語での意思疎通が可能であり基本的な診療は受けられます。MRIやレーザー機器を備え、腹腔鏡下手術を行う施設もあります。インプラント治療を行う歯科医院も現われました。しかし、制裁下で人材が流失し医療教育も崩壊し、医師やその他の医療従事者の技量の面でも、欧米日の水準には至っていません。リビア国民は、チュニス、マルタまで医療を受けに出かけているのが現状です。医薬品も、経済制裁解除後には、欧州・北アフリカ・中近東・アジア各国からの輸入品が薬局で入手できるようになりました。市販の鎮痛解熱剤等は常に購入できますが、医療用医薬品(処方薬)の供給はまだ不安定です。薬局では、服用法などの指導も行われています。輸血に関しては血液銀行制度はありません。医療保険制度はリビア人のみが対象で、外国人は加入できません。在留邦人の間では、健康診断は本邦あるいは外国で行っているのが一般的です。

5.かかり易い病気・怪我

(1)一般経口感染症

 衛生状態に関連する数々の経口感染症(感染性下痢症、腸チフス、赤痢、アメ-バ・ジアルジア原虫、寄生虫感染、A型・E型ウイルス性肝炎)が依然蔓延しています。水・食材の処理、調理及び食中毒予防対策に習熟しておきましょう。使用人の衛生教育も重要です。A型肝炎と腸チフスに対しては有効な予防接種があります。地中海沿岸地域はブルセラ病(マルタ熱)の発生地域でもあり、ブルセラ菌に汚染された生乳や乳製品(自家製チーズ等)の摂取により感染が起こっています(ブルセラ病:注意を要する感染症に再掲)。

飲料水:水道水は、南方の岩山地帯よりパイプラインでトリポリまで送られてきた地下水と、塩分の混入する海岸地帯の地下水とが混ぜ合わされて、配水されています。塩味があるばかりか、配水過程と各戸内の貯水・導水施設が不備で汚染されている可能性があります。飲用には水道水を煮沸するか、あるいはミネラルウーターを用います。

食材:国内ではアルコール飲料と豚肉製品は入手できず、かつ持ち込みも法律で禁止されています。和食の食材を置いている店はありません。肉は、羊・牛肉・鶏肉が主で時折ラクダ肉も売られています。海産物は、地中海の魚貝類が水揚げされており魚市場に直接出向けば入手できます。野菜は、人参・馬鈴薯・玉葱・長葱・茄子・トマト・キャベツ・レタス・ルッコラ・白トリュフ、果物はオレンジ・葡萄・林檎・西瓜・メロン等の他にアボガド・マンゴ・バナナ等の近隣諸国の熱帯果実も購入できます。野菜・果物とも時期によって入荷状況は大きく変動しています。農薬等の使用状況については不明です。

(2)ウイルス肝炎

 リビアでの発生状況は不明。エジプト・チュニジア両隣国の状況と、両国及びアフリカ諸国からの出稼ぎ者が多数いることからも、当国でも、上記A・E型肝炎(経口感染)に加え、B・C型肝炎(血清肝炎)のいずれもが蔓延していると考えて対処した方がいいでしょう。

(3)生活習慣病・精神衛生

 アラブ・イスラム世界の慣習及び当国の社会体制に加え、通信・電力・流通・道路・下水等のインフラの整備が遅れ都市機能が粗末であることと、レストランや娯楽施設が少なく外出の機会が減り、また風俗・気候の制約から散歩・外出も儘ならぬこと等が重なり、大きな精神的ストレスとなっています。結果的に室内へ籠もる生活のため運動不足となり易く、偏った食事と相まって肥満や生活習慣病の発症や悪化する傾向が顕著です。食事に留意する、体を動かすことを心掛ける、趣味を見つける、余暇をうまく使う、定期的に国外への脱出・休暇取得する等々が有効だと思われますが、解決策を見出し実行するのは容易ではないのが現状です。

(4)暑さバテ・熱中症・紫外線障害

 高温下では熱中症が起こり易くなります。暑い時期の日中、特に日差しの強い時間帯(10時より14時)は屋外活動を控えるのが賢明です。熱中症は屋内でも起こります。水分と電解質を適時補給し、脱水を予防して熱中症を防ぎます。特に子供には充分に注意を払う必要があります。調子が悪そうな人がいたら休ませ、熱中症が疑われたら体の冷却(日陰で送風、濡れタオル・アイスノン)・水分電解質の補給を行い、医療機関への搬入も考慮します。昼寝は体調の維持に有用です。また、多量の紫外線に晒されると、短期的には日焼け(日光皮膚炎)・結膜炎をおこし、長期には白内障や皮膚癌の発生が上昇します。戸外では、皮膚の露出を避ける長袖・長ズボンの着用、日焼け止め、ひさしの大きな帽子、サングラスの利用を必要とします。

(5)花粉及び砂塵

 3月より7月にかけては沿岸部では様々な花が咲き、花粉症を起こす人が少なくありません。また砂塵でも、花粉症様症状、呼吸器症状・気管支喘息発作を来す方がいます。花粉の飛散と砂塵の時期が重なることもあり、どちらが原因なのかはっきりしないことも往々にあります。外出後の手洗い・うがいを励行し、花粉症様症状のある人では、花粉症の対策を行います(外出時の防御;眼鏡・マスク、帰宅時の洗眼・洗鼻を励行、薬剤投与等)。砂塵は屋内まで入り込みますので、室内空気清浄機の用意も必要です。

(6)注意を要する細菌感染・寄生虫感染

(7)昆虫媒介感染症

(8)有害動物

 砂漠の蠍、毒蛇、海岸の魚類・貝類、緑地の蜂、蟻による被害があります。都市近辺では岩浜には子猫ほどの鼠、人影の少ない街には野犬、ゴミ箱には野良猫が群がっているが見受けられます。飼い犬・猫のいる家庭と仕事や散歩で外を出歩くことになる人は、飼犬猫と人への狂犬病予防接種が必要です。

(9)交通事故

 交通機関は車しか無く、トリポリ市内の道路はどこも非常に混雑しています。舗装は補修が行われていなくマンホールには蓋がないという道路状況に加え、リビア人は交通規範を守らず運転も無謀であり、事故が頻発しています。これまで在留邦人には大きな人身事故は発生していませんが、接触事故は多発しています。シートベルトは文字通り命綱です。

6.健康上心がける事

(1)健康診断・慢性疾患

 赴任前には健康診断を受け、自身の健康状態については充分に把握しておきましょう。持病のある人は、その疾患自体と現在の状態及び今後の展望のついては主治医ともよく相談し、しっかり理解しておきましょう。治療経過・検査結果等及び投薬内容、アレルギー等に関しての紹介状・記録を持参された方がいいでしょう。邦人間で供血・受血を行う場合も想定されますので、献血の為の血液検査も考慮して下さい。輸血血液検査の項目については日赤や医療機関にご相談なればよいでしょう。

(2)持参すべき薬品類

 ここ1年で、当地での入手できる医薬品は格段に増えましたが、まだまだ制限があります。また、同じ薬剤が存在しても、日本のものとは剤形・含有量が異なることが少なくはありません。いわゆる家庭常備薬と個人的に必要な薬(処方薬・持病の薬等;薬剤名は英語にて明記)は持参することになります。処方薬については主治医とよく御相談され、次回の帰国分まで処方を受けて来たほうがいいでしょう。眼鏡やコンタクトレンズは予備・洗浄液を含め持参します。虫さされ予防には、蚊除け、虫除けスプレー等各種昆虫忌避剤(虫よけスプレー)や、バルサン・殺ゴキブリ剤などの家庭用駆虫剤も有用です。布団についたダニ等の処理には、ダニ用布団乾燥機が有効といわれており、喘息・アトピーの人がいる家庭では用意してくると役に立つと思います。高血圧では家庭血圧測定機、気管支喘息・肺気腫ではピークフローメーター及び気管支拡張剤吸入用家庭用ネブライザー、糖尿病では血糖測定器(及び試験紙)を持参し、しっかり自己管理して下さい。

7.予防接種(現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)PDF

(1)赴任者に必要な予防接種

 黄熱病は、同汚染地域から入国する場合のみ義務付けられています。サハラ砂漠以南は同汚染地域であり、同地域を訪ねる予定がある場合は接種してく必要があります。

接種しておくのが望ましい予防接種
成人
ジフテリア破傷風混合トキソイド(Td) 基礎接種3回 以降10年毎に追加接種
ポリオ(IPV:注射ワクチン) 追加接種1回
麻疹、風疹、耳下腺炎ワクチン(MMR) 1回
水痘ワクチン 1回
B型肝炎ワクチン(HepB) 3回接種 追加接種必要なし
A型肝炎ワクチン(HepA) 2又は3回接種 追加接種必要なし
腸チフスワクチン 1回接種 3年間有効
狂犬病ワクチン(組織培養) 基礎接種3回 3年毎に追加接種
インフルエンザワクチン 1回 毎年
小児(詳しくはかかりつけ小児科医に相談してください)
BCG
百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン(DTaP)
ポリオ(OPV:経口ワクチン又はIPV:注射ワクチン)
ヘモフィルスインフルエンザ菌b型融合ワクチン(HbCV)
肺炎球菌ワクチン(PCV)
麻疹、風疹、耳下腺炎(MMR)
水痘
B型肝炎ワクチン
A型肝炎ワクチン
腸チフスワクチン
狂犬病ワクチン(組織培養)

※次のホームページにて、それぞれの予防接種についての分かり易い説明が手に入ります。
  http://www.immunize.org/vis/#japanese他のサイトヘ
  http://www.wakutin.or.jp他のサイトヘ

(2)小児定期予防接種一覧

現地の小児定期予防接種一覧
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目
BCG 出生時 入学時      
ポリオ(OPV) 出生時 6週 10週 14週 18ヶ月
DTP 6週 10週 14週 18ヶ月  
B型肝炎 出生時 6週 9ヶ月    
MMR 8ヶ月 18ヶ月      

(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明

 上記の当国予防接種計画に挙げられた予防接種・英訳の接種証明が必要です。

8.乳児健診

 日本のような乳児健診の制度はありません。

9.病気になった場合(医療機関等)

 私立医療機関を掲載します。公立病院は非常に混雑しており、アラビア語以外は通じないことが殆どで、かつ設備も私立に比較して見劣りします。

◎トリポリ

(1)Medical Center of the Libyan British (以前のスイスクリニック)総合病院

所在地: Ben Ashour, Jraba Street, Tripoli
Jraba St.Ben Ashour St.Al Jala'a Roadとの間。Ben Ashour St.から来ると右側のモスクの前、左側の4階建で建物の裏手に専用駐車場がある。

電話: 021-3619693、ファックス:021-3619692

概要: MRIを含む最新の西欧製の医療機器を備え、歯科及び入院施設を持つ総合病院。自前の救急車保有。スイスジュネーブ大学病院と提携。院長はスイスの医科大卒。医師・看護婦・事務の病院職員は英語を解し、院内各表示も英語併記している。

(2)Medilink International Clinic 救急・一般外来診療・緊急移送

所在地:Got Alshal, Road, suok, Algbb, Tripoli

電話:021-4837292  緊急連絡携帯電話:091-2103302

概要:仏人医師(救急専門医2名、うち女医一名)が、小児より成人までの一次外来診療を行っている。慢性疾患治療にも対応。観察室及び整備された自前の救急車を持っている。英語も堪能。会員制のWalking Blood Bankを経営している。緊急移送保険会社AXA提携医療機関。

(3)Saint James clinic: 一般外来診療・歯科

所在地:Wesayat El Bderi, Ben Ashour, Tripoli

電話:021-711-3092, 021719-0843 ファックス:021-360-7204

概要:マルタのSaint James Hospital(本院)より一般医1名が交代で派遣され常駐しており内科一般の診療にあたる。また昨年末より歯科診療(歯科医は仏大職員の配偶者女性)も開始。本院より各科の専門医が定期的(毎月~隔月)に来訪し診療や予定手術を行っている。医師・受付英語堪能。

(4)Europe Assistance =Carthage Medical Center Tripoli  救急・緊急移送

所在地: Al Andalus, Tripoli
Girgaresh Road のRegataOil Instituteとの間の小道を海側に進み、5本目のT字路を右折、個人住宅街の中で右側の塀に50センチ四方の看板"EuropeAssistance"が目印。

電話: 021-483-3625

概要: 緊急移送保険会社ヨーロッパアシスタンス(EA)のトリポリ事務所兼提携医療機関。救命救急対応及び観察病床もある。整備された自前の救急車を持っている。チュニジア人救急医が常駐。アラビア・仏・英語堪能

(5)Al Afia Clinic 総合病院(トリポリ市郊外、国際空港近くに位置する)

所在地: Gasser Ben Geshier, Tripoli, Libya
Airport Road の空港終点から来て1番目のインターチェンジを右折、町に入って最初のラウンドアバウトを右折して500メートル先の左側4階建。

電話: 021-563-3900~4

概要: 入院設備のある総合病院。MRIを持つ。院長は英国の医科大卒外科医

10.その他の詳細情報入手先

在リビア日本国大使館領事班・医務班

米国疾病対策予防センター旅行情報・北アフリカ編 http://www.cdc.gov/travel/nafrica.htm他のサイトヘ

WHO医療・保健情報リビア http://www.who.int/countries/lby/en/他のサイトヘ

Traveler's Health 著者DAWOOD 出版社OXFORD PRESS

こどもの救急 財団法人日本小児科学会運営 http://kodomo-qq.jp他のサイトヘ

子育てインフォ 母子保健運営 http://www.mcfh.co.jp他のサイトヘ

11.現地語一口メモ

医師:タビーブ(tabi-b)

薬:ダワーウ(dawa-u)

注射:ホクナ(hoqnq)

頭痛:スダーウ(suda-u)

胸痛:アラム・サドル(alam sadr)

腹痛:アラム・バトヌ(alam bath)

喉頭痛:アラム・ホンジュラ(alam honjra)

下痢:イスハール(isha-l)

嘔吐:タルジーウ(tarji-u)

炎症:イルティハーブ(iltiha-b)

腫れ:ワラム(waram)

発熱:ハラーラ(hara-ra)

傷:ジャルフ(jarh)

蛇咬傷:アッダト・タアバーン(addat thaaba-n)

蠍咬傷:アッダト・アクラブ(addat aqrb)

潜水病:ダグト・ジスム(daght jism)

病院へ連れて行ってください:ラウ・サマフト・ターホドニー・イラー・ムシュタシュファ(law samahtu ta-khodni-ila mustashfa)

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