記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成27年4月10日(金曜日)9時15分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)岸田大臣のリューベック訪問

【岸田外務大臣】今日は,冒頭,私から全3件あります。まず1件目ですが,私(大臣)は13日から16日まで,ドイツのリューベックを訪問し,G7外相会合に出席をいたします。
 今回の会合では,ウクライナ情勢,あるいはイランの核問題といった国際社会の喫緊の課題について,基本的価値を共有するG7の間で率直な意見交換を行いたいと考えています。
 来年は日本がG7議長国になります。G7の間でしっかり意思疎通を図り,来年の日本サミットにつなげていきたいと考えます。

(2)第10回日韓安保対話の開催

【岸田外務大臣】2点目ですが,4月14日(火曜日),韓国・ソウルにおきまして,第10回日韓安保対話を開催いたします。前回第9回目が2009年の12月ですので5年ぶりになります。
 この対話は,先般3月21日に開催されました日韓外相会談を受け,早期開催に向け調整をしてきたものです。現下の東アジアの安全保障情勢の下,日韓両国は,戦略的利益を共有しております。この対話が,日韓両国の安全保障分野における協力関係を強化し,この地域の平和と安定に寄与することを期待いたします。

(3)日米韓次官協議の開催

【岸田外務大臣】3点目ですが4月16日(木曜日),米国・ワシントンにおいて,日米韓次官協議を開催いたします。本協議は,我が方齋木外務事務次官,そして米国がブリンケン米国務副長官,そして韓国が趙太庸(チョ・テヨン)外交部第一次官,この3者の間で行われます。
 日米韓次官協議は,東アジアを始めとする地域情勢及びグローバルな課題といった共通の関心事項について,幅広く意見交換を行うものです。日米韓3か国の連携を確認する有意義な機会となることを期待します。以上3点です。

岸田大臣のリューベック訪問

【NHK 栗原記者】先ほど大臣ですね,13日からドイツのリューベックでG7に出席されるということでしたが,この中で,昨今,先月欧州各三国が相次いで参加を公表しましたAIIBについてはどのようなやりとりをされるお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】G7外相会議でアジアからの出席は我が国日本だけですので,日本としましてはアジアに関する問題についても,しかるべく議論をしたいと思っています。具体的な議題等については引き続き調整中だと承知をしています。

【時事通信 松本記者】G7の外相会談が行かれる際に二国間会談はご予定あるのでしょうか。特に日米等の調整状況はどうなっていますでしょうか。

【岸田外務大臣】今二国間会談につきましても調整を行っています。各国とも現地に入る時間等様々ですので,今具体的にはまだ調整中ではありますが,私(大臣)としては出来るだけ積極的に二国間会談も行いたいと思い,調整をするよう指示を出しております。

天皇皇后両陛下のパラオ共和国御訪問関連

【フリーランス 上出氏】両陛下が先般,パラオに訪問されました。そのことについての外務大臣としての意義と,もう一つ,ちょっと違う質問なのですが,これに関連していますが,この近年といいますか,最近といいますか,両陛下,それから,皇太子殿下が平和とか第二次大戦の戦争での被害を受けたこと。それと,憲法を守らなければならないという趣旨のことを非常に強く発信しております。
 これはいろいろなとり方があるのですけれども,今の政権がちょっと平和とは遠のいているといいますか,軍事同盟とかを強化していくということに対しての間接的な批判とも読み取れるような声も出ているのですが,これは微妙なあれですけれども,これについて何かご所見があればよろしくお願いいたします。

【岸田外務大臣】まず,天皇皇后両陛下のパラオ御訪問についてですが,戦後70年にあたり,天皇皇后両陛下は8日から9日にかけて,戦争により亡くなられた方々を慰霊し,平和を祈念するためにパラオ共和国を御訪問になられ,そして昨日,つつがなく御帰国なされました。
 両陛下は,さきの大戦において亡くなられた方々をしのび,平和への思いを込めて慰霊碑に献花をなされました。また,一層の友好親善のため,パラオ共和国に加えてミクロネシア連邦及びマーシャル諸島の大統領御夫妻ともお会いになられました。こうした御訪問は誠に有意義な御訪問であったと考えます。
 今回の御訪問を契機に,外務大臣の立場から申し上げるならば,特に今,申し上げました3カ国との友好親善を一層発展することを期待したいと思います。
 そして,後半のご質問につきましては,具体的にどういう点を指していろいろ言っておられるのか,十分承知しておりませんので,具体的に何か申し上げるのは控えたいと思います。平和を願われる思いは大変重要であると認識いたします。

戦争責任等

【フリーランス 西中氏】今,冒頭でG7の外相会談のことで,価値観を同じくするということを強調されておっしゃっていましたけれども,先般,ドイツのメルケル首相が来られたとき,やはり日本の歴史問題,戦争責任の問題にどう向き合うかということなどにも言及されたと思うのです。
 そういった戦争責任の問題,先日も参議院で民主党の藤田幸久議員の質問で朝鮮人・韓国人のB・C級戦犯の質問がありまして,それで岸田外務大臣が大変胸が痛むという答弁もされているのですけれども,こういった歴史認識に向き合う際に,やはり個別の問題,慰安婦問題も含めて,日韓条約で終わりということではなくて,この間の国連の人権勧告等に従うような動きが必要であると思うのです。
 例えば,ドイツなんかと価値観を同じくするというのであれば,やはり戦争責任の問題にもう一回,戦後70年で向き合う必要があると思うのですが,それについて改めて大臣の考えを聞かせてください。

【岸田外務大臣】いくつかご質問の中に要素があったと思いますが,ドイツのメルケル首相はドイツの戦後における対応についてお話しされたとは承知しております。ただ,日本とドイツ,戦後の歩み,置かれた状況は違いますので,それを比較するということはまた難しいのではないかと思います。そして,この歴史に真摯に向き合う。これは大切な態度であると思います。
 そして,個別の問題についてどう向き合うかということですが,例えば慰安婦の問題につきましても,安倍総理がたびたび発言されておられますように,この筆舌に尽くしがたい,つらい思いをされた方々のことを思い,心が痛む。こうした発言をされています。こうした思いは歴代総理と全く変わらないと思っていますし,こうした思いは私(大臣)も同じであります。
 この慰安婦の問題についても,日本は法的には完全かつ最終的に解決済みであると考えていますが,それに加えて,アジア女性基金の設立,「償い金」,「医療・福祉事業」,あるいは歴代総理の「おわびの手紙」。こうした取り組みを続けてきました。是非こうした取り組みについても,正しい事実認識に基づいてこの評価をしていただくことは重要なのではないかと思います。
 こうした正しい評価のもと,日本としては引き続き,人権侵害のない21世紀を実現するために全力を尽くしていきたいと考えています。

中国全人代常務委員会副委員長の訪日

【時事通信 松本記者】日中関係についてお伺いします。
 今,全人代の副委員長が来日されていますけれども,行政府間だけではなくて,立法府間,議会同士の交流も実現したわけですが,まずこの受けとめをお伺いしたいことと,昨年11月のAPECの首脳会談以来,日中関係というものは改善に向かっているというご認識があるのかどうか。日中関係の現状についての認識をお聞かせください。

【岸田外務大臣】まず,4月8日から11日にかけて全人代の吉炳軒(きつ・へいけん)常務委員会副委員長を団長とする全人代代表団が衆議院の招待によって訪日し,衆議院代表団との間で日中議会交流委員会を開催中であると承知しています。こうした交流を積み重ね,大局的観点から日中関係を発展させていくことは大変重要であると思いますし,その中にあって,日中の議員交流あるいは議会間交流,こうした取り組みは非常に有意義であると認識いたします。
 そして,日中関係の現状についてですが,昨年11月,北京APECの際に首脳会談,そして外相会談が日中の間で行われました。その後,様々な分野,あるいは様々なレベルにおいて対話・交流が再開されている。こうした状況にあります。
 先般3月21日,日中外相会談を行いました。その外相会談の際にも,日中間の関係については良い流れが起こりつつあるものの,まだ不十分である。一層努力をする必要があるという認識において,王毅(おうき)外交部長との間でも一致をいたしました。
 ぜひ,引き続き戦略的互恵関係にのっとって,日中関係を発展させていくべく努力を続けていきたいと考えております。

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