記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年4月25日(金曜日)8時36分 於:官邸エントランスホール)

冒頭発言

(1)大臣の外国訪問

【岸田外務大臣】諸般の事情が許せば,29日(火曜日)から5月8日(木曜日)まで,デンマーク,カメルーン,そして,フランスを訪問いたします。
 デンマークは29年ぶりの外務大臣の訪問であります。海洋国デンマークとの戦略的パートナーシップを強化したいと考えています。カメルーンでは,昨年のTICADV,そして,1月の総理アフリカ訪問による大きな成果をフォローアップする初めてのTICAD閣僚会合を開催いたします。私自身3度目のTICAD関連会合出席であり,アフリカとのパートナーシップを一層強化したいと考えております。そして,フランスですが,OECD加盟50周年の閣僚理事会で議長国を務めることになります。日本経済の再生を国際社会に示し,アジアとの関係強化も推進したいと考えております。ファビウス仏外相,そして,ボコバ・ユネスコ事務局長等との会談も予定をしております。

(2)ウクライナへの緊急無償資金協力

【岸田外務大臣】先ほどの閣議でウクライナ関係で80万ユーロの緊急無償資金協力を決定いたしました。一つは欧州安保協力機構(OSCE)のウクライナ特別監視団派遣への50万ユーロ,そして,もう一つは欧州評議会によるウクライナ大統領選挙支援への30万ユーロ,合わせて80万ユーロの協力ということになります。
 ウクライナの民主主義の回復と安定化に寄与することを期待しております。

オバマ大統領の訪日

【TBS 法亢記者】オバマ大統領の訪問ですけれども,今回,国賓行事を昨日終え,また首脳会談を終え,まもなく離日されますけれども,外交上,どのようなことが成果だと思われるか,また,逆に改めて浮き彫りになった課題というのがあるのか,どのように大臣は評価されますでしょうか。

【岸田外務大臣】今回,オバマ大統領の訪日,米大統領,国賓としては18年ぶりの訪日ということになります。改めて,それぞれの外交政策,我が国の積極的平和主義,そして,米国のアジア太平洋を重視する政策,こうした政策が共にアジア太平洋地域の平和と安定に大きく貢献し,そして,この地域の平和と繁栄において主導的な果たしていく,こういったことを確認することができました。
 両首脳間で,二国間関係,そして,地域情勢,あるいはグローバルな課題,こういったことについても率直な意見交換ができたと考えています。そして,そのことによって内外に対して日米同盟が強靱なものであるということ,揺るぎないものであるということ,これをしっかり示すことができた,これは大きな成果だと思っています。
 それ以外においても経済の分野,TPP交渉につきましても精力的な協議を続けることができました。主要な課題につきまして道筋を示すことができたという評価をしております,等々,様々な分野において具体的な成果を示すことができたのではないかと認識をしております。引き続き,大切な日米同盟を強化し,そして,具体的な協力をこれから進めていく,様々な取り組みを,これからも続けていかなければならないと思っています。

【TBS 法亢記者】いま,言及されたTPPですが,関係協議の継続ということで,共同声明の発表を少し先延ばしすることになり,深夜未明,早朝ですか,閣僚級協議を一旦やろうと予定されたものが中止になったというような経緯を聞いておりますけれども,これはなかなか,どうなのでしょう,シナリオ通りにはいかないというようなお気持ちでしょうか。

【岸田外務大臣】昨日の首脳会談におきまして,引き続き担当閣僚を中心としまして真摯な交渉を継続するようにという話になりました。そして,その後,閣僚,あるいは実務者含めて関係者が努力を続けました。そして,日米間の重要な懸案につきまして道筋を確認できたという評価を聞いております。こうした真摯な取り組みが行われ議論においても3成果が上がっているということ,これは評価すべきことではないかと思っております。そして,共同声明につきましても,今の段階で最終調整中と聞いております。是非,最終調整を経てしっかりした共同声明を発出したいと考えています。

【TBS 法亢記者】その最終調整中の共同声明がどのような表現で盛り込まれることが期待されますか。

【岸田外務大臣】TPPについては,今,申し上げたように重要な懸案につきまして道筋を示すことができたというような内容になるのではないかとは思いますが,その文言につきましては確認をしておりません。

【TBS 法亢記者】安全保障の面ですが,オバマ大統領が初めて尖閣諸島という具体的に言及されたと,これについては米国側としては,このタイミングでこういう言及をしたというのは,どういう意味があるとお考えですか。

【岸田外務大臣】日米安全保障条約の第5条が,日本の施政下にある地域に適用されるということ,尖閣諸島を含むこの地域に適用されるということ,ここにつきましては今までも米国国務長官,国防長官,関係者から累次にわたって表明はされてきました。
 今回は,米国の最高責任者である大統領自らこの点について確認をしたという点が従来との違いだと思いますが,今回,先ほど申し上げましたように地域にとって,また,日米両国にとって大切な日米同盟の強靱さを内外に示すことができたと考えていますが,その一つの表れではないかなと考えています。

【西日本 中西記者】オバマ大統領が尖閣防衛義務に言及する一方で,日中の信頼醸成が必要だと総理に求めました。今後の日中の関係改善についてどうやって進めていきますか。

【岸田外務大臣】日中関係の重要性につきましては,我が国としましても言うまでもないことだと思っております。世界第2位と第3位の経済大国同士の関係が安定するということは,地域や国際社会にとっても大きな影響があることですから,両国が責任も負っています。
 こうした大切な二国間関係を安定させるということで,我が国も従来から,大局的な見地から対話のドアはオープンである等々,両国の関係安定に向けて努力をするべきことと働きかけを行ってきたところであります。
 こうした二国間関係につきましては,今,申し上げたように地域や国際社会にとっても大きな影響があることですので,日米両国の首脳間においても,このことが言及された,是非,安定させるべく努力をしていく,こういった点については確認をされたことだと思っております。

ウクライナへの緊急無償資金協力

【NHK 渡辺記者】先ほど発表のありましたウクライナに対する無償資金援助ですけれども,ウクライナ国内で今,キエフの政権側がロシア派の住民の占拠している状況を強制的に排除する中で死者が出ていますけれども,その今の状況の受け止めとともに,この日本の支援がどう活用されるか,日本としての狙い,込めた思いというものがあるでしょうか。

【岸田外務大臣】ウクライナ情勢につきましては,あらゆる当事者が自制と責任のある行動を行わなければならないということで,平和裏に事態が解決されることを強く望んでいます。
そして,先ほど,申し上げました我が国のウクライナ支援ですが,一つはウクライナにおける民主化の推進,もう一つは,やはりウクライナにおける対話とか統合が進むということ,こういった成果を期待します。
 民主化の推進という意味において,ウクライナの大統領選挙,5月25日に予定されていますが,大統領選挙を支援するということで30万ユーロの支援を行ったということですし,対話と統合を促進するという観点からOSCEの特別監視団への支援50万ユーロを支援するということであります。
 是非,こうしたものが民主主義の回復と,そして,ウクライナ国内における対話と統合の促進,この二つの成果につながることを期待したいと思います。

中国裁判所による商船三井船舶差し押さえ事案

【フジテレビ 山崎記者】商船三井の差し押さえについて,商船三井側が40億円の供託金を支払ったという件ですけれども,今回,供託金を支払ったということで,今後,中国で同様の事態が起こるのではないかという指摘もありますけれども,これについては大臣はどうお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】商船三井の案件につきましては,今,ご指摘のような動きがあります。今後とも商船三井とも連携しながら,国としても対応をしっかり支援していかなければと思っていますが,こうした一連の動きに関しましては,日本企業の中国における経済活動を萎縮させることにつながるのではないか,こういった懸念は持っています。

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