記者会見
佐藤外務報道官会見記録
(平成26年3月19日(水曜日)16時33分 於:本省会見室)
ウクライナ情勢
【朝日新聞 菊地記者】本日午前の参議院予算委員会で,安倍総理が露のクリミア編入に対して,これを非難するという言葉で露に対しての考えを示しましたけれども,これは初めて非難という言葉を使われたかと思うのですが,これに対して日本政府としては,一段階上げた抗議になっているという認識でよろしいのでしょうか。
【外務報道官】ご質問の非難するということですけれども,これは確かに初めてということでございます。
18日に,クリミアを露に編入するという条約への署名がなされたということについて,ウクライナの統一性,主権及び領土の一体性を侵害するものということで非難するということでございます。
我が国としては,力を背景とする現状変更の試みを決して看過できないということから,このような立場を表明しております。
【朝日新聞 菊地記者】予算委員会の場での総理の発言でしたけれども,露政府に対して日本政府の考えを何らか伝達されたり,伝えられているということはあるのでしょうか。
【外務報道官】露政府に対しましては,我が国の考え方・立場については継続的に伝え,働きかけをしているところでございます。
【朝日新聞 菊地記者】これまでも伝えられてきているとは思うのですけれども,本日の総理の非難するという表現,これを受けて何らか,また新しく伝えられたりということをされているのでしょうか。
【外務報道官】こちら側の立場,基本的な考え方は先方にも,それから,これは累次申し上げておりますけれども,G7の国々とも話をしながら,露との間でも話をしておりますので,ご質問の答えということで言いますと,露側にも我が国の立場は伝わっています。
【NHK 渡辺記者】今のクリミアの編入に関してなのですけれども,そうした一方で,クリミアの各都市を初めとして,あるいは露国内の各都市で,今回の編入を支持する集会が各地で開かれていたりとか,クリミアが露に戻ったということでクリミアの住民が喜んで集会を開いている,モスクワでもコンサートがあったりとかしていますが,そういう露国内のそういった受けとめというのは,日本としてはどう見ているのでしょうか。
【外務報道官】今,ご指摘のいろいろな事実関係についても,もちろん,我が国は把握しつつ外交を展開しているわけですけれども,やはり基本的に,今回の編入する条約に基づくクリミア自治共和国の露への編入は,その過程において,G7の首脳声明で示されたとおり,国際法違反があったという認識でございますので,我が国としてはこのような編入を認めることができないという立場でございます。
【NHK 渡辺記者】そうしますと,関連ですけれども,編入を露が中止するといいますか,撤回するといいますか,そうすることが望ましいということなのでしょうか。実際,露国内の世論というものは無視できないと思うのですが,それはもう現実に動いている事態があるわけですよ。それで国際社会としてどう対応するかだと思うのですけれども,日本としては何かしらの仲介をするとか,あるいはクリミア編入をやめさせた場合に,これだけ露国内で編入賛成だという声がある中で,それを押しとどめることはできるのでしょうか。
【外務報道官】ご質問については,我が国はG7の一員でもありますし,それから,露との関係でも対話を続けているという関係です。
そのような様々な状況がある中で,今回,条約への署名については非難するという立場を取り,G7の他のメンバーと共に,今回の条約に基づく編入が国際法違反があったという認識ですので,そういう基本的な考え方に基づきながら情勢を注視し,そして,今後の適切な対応を検討し,出していきたいと考えております。
中国における強制連行訴訟
【朝日新聞 菊地記者】中国の裁判所が,強制連行されたとされる中国人元労働者の損害賠償を求める訴えを受理されたということですけれども,日本政府としては,受理したということに対して,中国政府に対して何らかの対応は現時点で取られているのでしょうか。
【外務報道官】この訴訟については,2月26日に提訴されてから,政府としては関心を持って状況を注視しているということです。
おっしゃられた報道が事実であるとすれば,中国の国内で類似の事案を誘発することにもなりかねませんので,そしてまた,日中間の戦後の処理の枠組み,日中経済関係への影響,こういうものを,深刻に懸念せざるを得ません。
いずれにしても,従来から申し上げていますように,日本政府として,先の大戦にかかる日中間の請求権の問題は存在していないということですし,この考え方については累次明らかにしております考え方ですので,これに基づいて,引き続き関心を持って状況を注視していきたいというように考えています。
【朝日新聞 菊地記者】今,報道が事実であればというお話だったのですが,政府として,受理したということを確認はされていないということでしょうか。
【外務報道官】今,確認中です。