記者会見
佐藤外務報道官会見記録
(平成26年3月12日(水曜日)16時41分 於:本省会見室)
ニューヨーク・タイムズ紙の社説に対する対応
【朝日新聞 菊地記者】日本政府がニューヨーク・タイムズ社に求めていた抗議・訂正についての経緯について教えていただきたいのですが。
【外務報道官】恐らく3月2日付の電子版の『ニューヨーク・タイムズ』に出た記事・社説のことかと思いますが,この社説につきましては2点の抗議・反論を行って,引き続き訂正を求めております。
1つのほうは,社説から訂正箇所が削除されました。これは,韓国人女性に対する謝罪を撤回するかもしれないという記述が不正確であったということで,訂正を求めていたものについてです。
もう一つは,南京事件の関係で,総理が南京事件の存在を否定したことはないと,日本政府は,旧日本軍の南京入城後,非戦闘員の殺害または略奪行為などがあったことは否定できないという立場であって,安倍総理はこれを引き継いでいるということで反論し,訂正を引き続き申し入れているところであります。これについては,回答にまだ接していないという状況でございます。
【朝日新聞 菊地記者】削除に応じた1点目なのですけれども,ニューヨーク・タイムズ社側は,この削除に応じた理由について,どのような理由で削除したということは述べているのでしょうか。
【外務報道官】もともと訂正を求めましたときに,先方のほうでは検証したいということだったわけです。ですので,検証の結果,削除は適切であると先方が判断したものと理解しております。
【朝日新聞 菊地記者】もう1点,南京事件のほうについては,まだ訂正に応じていない理由については,見解は述べられているのでしょうか。
【外務報道官】それについては,引き続き申し入れておりますので,この場で余り具体に立ち入ることは差し控えたいと思います。
慰安婦問題
【フリーランス 安積氏】韓国が慰安婦の資料を世界記憶遺産に登録しようと,今,動いている最中なのですが,日本国政府はこの動きについて,どういうように公式に見解をお持ちなのでしょうか。
【外務報道官】慰安婦の関係の,今,おっしゃったことも含めまして,我が国政府の立場というのは,従来から申し上げておりますように,我が国の基本的な立場を述べた上で,これを政治問題あるいは外交的な問題にするべきではない,というものでございます。今,ご指摘のあった件についても同じ立場で臨んでおります。
【フリーランス 安積氏】ということは,この記憶遺産に登録することには反対だということなのでしょうか。
【外務報道官】反対かどうかということもございますけれども,基本的にはこの記憶遺産の意義,それから,我が国の従来からのこの問題についての立場をさらに説明することによって国際社会の理解を得ていきたいと考えております。
【フリーランス 安積氏】その慰安婦の資料というのは,そもそも記憶遺産にはなじまないものであるというように主張していくということなのでしょうか。
【外務報道官】これは,具体的にどういうものであるかということもございますので,我が国の基本的立場に照らして適切に対応していきたいと思っております。
河野談話
【共同通信 小野記者】河野談話についてお伺いします。官房長官は先日の記者会見で,談話を見直す考えはないと述べましたが,韓国ではこの談話の作成経緯を検証するとした政府の方針に批判の声が上がっていると伝えられているのですが,外務省はこうした韓国サイドの反応をご存じでしょうか。また,日本政府の検証方針の目的や狙いについてはどう説明をされていくのでしょうか。
【外務報道官】最初の方のご質問ですけれども,先月の28日に外交部のホームページに外交部のスポークスマンの論評という形で反論が掲載されたと承知しております。
そして,二つめの日本政府の方針,あるいは狙いということですけれども,これは官房長官が述べられているとおり,一つは河野談話の見直しはしないと。
それから,もう一つは,国会でやり取りがありましたように,そのプロセスの中で,官房長官から申し上げているのは,河野談話の作成過程で韓国側との意見のすりあわせがあったのかどうか,その可能性について解明するという目的,そして,その過程においては検証チームも作ってということも述べられていますが,これは,もともと慰安婦の方には非公開という前提で聞き取り調査が実施されましたので,それを踏まえまして極秘の検証チームを作るということを述べられているというように私も理解をしております。
【フリーランス 安積氏】検証した結果,談話が成立し得ないくらいの事実が判明した場合はどういうように処理されるのでしょうか。
【外務報道官】今,官房長官から申し上げている検証というプロセスにおいて,談話自体の見直しというのは射程に入っておりません。検証チームの行うことについても,河野談話の作成過程で韓国側との意見のすり合わせがあったかどうかということについて解明するということでございますので,今,安積さんがおっしゃったような事態というのは,河野談話の見直しはしないということでございますので,そういう理解で進んでいくと思います。
【フリーランス 安積氏】そうすると,例えば,作成過程において,すり合わせがあったとして,過度の韓国側要請があって受けざるを得なかったみたいなものが判明した場合,及び16人の慰安婦の方々の証言が事実と異なった場合というように,論理的に談話の根拠となるものが全て崩壊した場合でも談話は成立するということなのでしょうか。
【外務報道官】談話の中身を振り返っていただきたいと思うのですけれども,談話の中では,いくつかの要素が盛り込まれております。そして,そこに盛られている談話の中身,これについて再検討しないということを申しているわけですね。
今,安積さんからご指摘のあった,そういう事態というのは,今,我々がやろうとしていることからは,談話の見直しはしないということですので,そういうことにはならないと思います。
【共同通信 小野記者】どういうやり方であれ,どういう目的であれ検証すること自体が韓国側は反発をするのではないかと思うのですけれども,そこに対して,韓国側にどう理解を求めていくのかというのは,どういうようにお考えでしょうか。
【外務報道官】先ほど申し上げましたような目的,あるいはプロセスについて引き続き丁寧に説明していく,それは韓国との間でもそうですし,あるいはその他の政府,あるいは関心の方々との関係でもそうだと思います。