記者会見

岸田外務大臣臨時会見記録

(平成27年7月5日(日曜日)22時49分 於:大臣接見室前)

冒頭発言―「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業」のユネスコ世界遺産一覧表への記載決定について(第39回ユネスコ世界遺産委員会における審議結果)

【岸田外務大臣】本日(現地時間同日),ドイツのボンで開催されている第39回ユネスコ世界遺産委員会において,我が国が世界遺産に推薦していた「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業」が,世界遺産一覧表に記載されることが決定されました。登録を確実なものにするため,ギリギリの調整を行ってまいりました。記載されることが決定されましたことは,誠に喜ばしいことであり,関係者の皆様とともにこの決定を歓迎し,祝意を表したいと思います。
 本件は,1850年代から1910年にかけて,我が国における製鉄・製鋼,造船,石炭産業といった重工業の産業化に中心的役割を担った遺産群として,高く評価されました。試行錯誤の中,非西洋で初めて産業化に成功した先人達の努力に心から敬意を表するとともに,今回の決定により,同遺産群の果たした世界的役割が一層広く世界に知られる契機となることを期待します。
 本件の登録決定後,我が国は,世界遺産委員会の責任あるメンバーとして,国際記念物遺跡会議(イコモス)の勧告に真摯に対応していく姿勢を示すため,発言を行いました。この発言は,これまでの日本政府の認識を述べたものであり,1965年の韓国との国交正常化の際に締結された日韓請求権・経済協力協定により,いわゆる朝鮮半島出身者の徴用の問題を含め,日韓間の財産・請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みであるという立場に変わりありません。この点,外交上のやりとりを通じ,韓国政府は,今回の我が国代表の発言を,日韓間の請求権の文脈において利用する意図はないと理解をしています。なお,我が国代表の発言における「forced to work」との表現等は,「強制労働」を意味するものではありません。
 我が国としては,今後とも,同遺産群を含めた日本の資産について,世界中の方々に世界遺産としての価値を御理解いただけるよう,関係省庁と連携し,その魅力を更に世界に発信してまいります。
 この後,担当部局による記者会見が予定されていると承知しており,詳細は,そちらに委ねたいと思います。

質疑応答

【NHK 小嶋記者】本来でしたら昨日登録の審議が行われているはずでしたが,一日延びたということで,今の大臣のご発言ですと,請求権のところとforced to work,その辺がもめたのかと感じがするのですが,日韓間でどういうぎりぎりなやりとりが行われたのかということと,一日延びたということに対する関係者が現地に残ったりと,そういう点の大臣の評価について大臣がどう思われてるかお願いします。

【岸田外務大臣】まず,一日延びたということについては相手のある話です。そして関係者が多く関係している話です。登録を確実なものとするためにギリギリの調整を行ったその結果だと思います。そして具体的なやりとり,事務的な調整,事務レベルの調整につきましては,外交上のやりとりですので,詳細を明らかにするのは控えなければならないと思います。いずれにしましても相手がある中にあって登録を確実にするため,ギリギリの調整が行われたと認識しております。

【読売 佐藤記者】最後の日韓請求権のくだりで韓国政府が外交上,今後利用することはないと話されていますが,その根拠をお願います。

【岸田外務大臣】ご指摘の点につきましては,外交上のやりとりにおいて,韓国政府とハイレベルなやりとりで確認をしております。

【共同 蒔田記者】詳細に確認していないんですけれども,登録後の韓国側の演説に対するご所感はいかがでしょうか。

【岸田外務大臣】外交上のやりとりは,先ほど申し上げましたように控えたいと思いますが,韓国側の発言についても,事前に日韓間で調整を行いました。そして,その上での発言ですので問題はないと受け止めております。

【TBS 深井記者】先日の日韓外相会談で,完全に日韓で一致したと大臣はおっしゃっていましたけれども,そうした中,ここまでもつれたことについては大臣は,今,どのように御所見をお持ちでしょうか。

【岸田外務大臣】日韓で協力することは一致をしておりました。ただ,事務レベルにおいて,さまざまな調整を行ったということであります。相手のある交渉事でもありますし,また,多くの理事国も関与している会議であります。多くの関係者に理解をし,そして,丁寧に作業を行い,そして登録を確実にする,こういった作業が行われたものであると認識をしております。

【NHK 小嶋記者】これで日韓関係にですね,ここまでもつれたというのは,何か影響があるというふうにお考えなのか,それともこの前の外相会談での一致点は履行されたというふうに大臣としてはご認識なのでしょうか。

【岸田外務大臣】まあ「もつれた」という表現を使われましたが,先ほど申し上げましたように,これは事務レベルで相手のある中にあって,ギリギリの調整を行った,丁寧に作業を行った結果であると思っております。結果的に,登録が実現をいたしました。これは,大変喜ばしいことであると思っております。日韓がともに協力をし,そして日本の推薦した案件,韓国の推薦した案件,ともに今回,登録が実現をいたしました。これは,関係者とともに歓迎し,喜ぶべきことであると認識をしております。

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