平成23年9月
(1)テロの脅威は依然として深刻
(イ)国際社会によるテロ対策進展に伴い、一定の成果もみられるが、国際テロ組織「アル・カーイダ」及び関連団体の活動は未だ軽視し得ない。加えてアル・カーイダと直接の接触がなくとも、その思想を信奉し、テロ手法を模倣する組織あるいは個人による過激主義活動が新たな脅威を形成している。
(ロ)我が国は以前、ウサマ・ビン・ラーディン(2011年5月に死亡)等のものとされる声明においてテロの標的の国の一つとして名指され、現実にも過去にアル・カーイダ関係者が我が国に出入国していたことが判明しており、我が国及び我が国の権益に対する直接的なテロの脅威が存在することは否定できない。また、我が国に地理的に近接し、政治・経済的にも密接な関係を持ち、我が国の権益が多い東南アジアにおいても、国際テロ組織によるテロが発生している。
(2)テロ対策
テロは、いかなる理由をもってしても正当化できず、断固として非難されるべきものである。テロを撲滅、防止するために、第一に国内のテロ対策の強化、第二に国際的な協力の推進、第三に途上国等に対するテロ対処能力向上支援、の3点を中心に粘り強い努力が必要である。
(イ)国内テロ対策の強化が重要
国際社会がテロとの闘いを進める中で、我が国がテロ対策の抜け穴となってはならず、また、我が国自身の安全確保のためにも、条約その他の国際約束を遵守し、各国と調整しつつ、国内テロ対策を強化する必要がある。
(ロ)テロとの闘いでは国際協力が不可欠
アル・カーイダ等の国際テロ組織は、高度に発達した情報通信技術や国際交通網等の現代社会の特性を最大限利用し、国境を越えて活動している。そのため、国際社会のすべての国が幅広い分野において緊密に協調し、テロに対する脆弱性を克服し、テロリストに安住の地やテロの手段を与えないことが重要である。一国のみで完結しうる問題ではなく、国際協力が不可欠である。
(ハ)途上国等に対するテロ対処能力向上支援が必要
途上国の中には、テロとの闘いに向けた政治的意思はあるが、テロへの対処能力が必ずしも十分でない国が存在する。特に、我が国の権益が集中する東南アジア地域を対象として我が国の安全に関連する分野をはじめとしたテロ対処能力向上を支援することは、我が国にとっての重要な責務の一つである。
(1)国内テロ対策の強化
政府の各部局はこれまで、出入国管理、テロ関連情報の収集・分析、ハイジャック等の防止対策、CBRN(化学・生物・放射性物質・核)テロ等への対処、国内重要施設の警戒警備、テロ資金対策等の分野を中心にテロの未然防止に関する諸施策を推進してきている。
外務省は、国内テロ対策が国際基準に合致し、国際的な調整の下に行われることが重要との観点から、テロ防止関連条約の締結と国内法整備の確保、国連安保理決議に基づくテロ資産凍結の実施確保等の活動を行っている。
更に、政府は2004年12月、16項目の具体的措置を含む「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、紛失盗難旅券情報の国際的共有、入国規制強化、スカイ・マーシャルの導入、外国人宿泊客の本人確認強化、テロに使用されるおそれのある物質の管理強化、情報収集能力の強化等を実施している。
(2)幅広い国際協力
多国間レベル、地域レベル、二国間レベルにおいて、国際社会におけるテロ対策の努力、主に、1)テロ対策の緊急性・重要性に対する政治的意思の形成、2)国際基準の作成、3)情報交換やテロ対策特措法に基づく協力などの実際的な協力、4)諸外国のテロ対処能力の強化に対する協力等に積極的に参画している。
(3) 途上国のテロ対処能力向上支援
東南アジア地域や我が国の安全に関連する分野で、ODAも活用しつつ積極的に支援を実施している。
(4) テロを助長する要因への対策
テロを生み、これを助長している背景に存在する諸問題への対処も必要であるとの認識の下、ODA等を有効に活用しつつ、以下の取組みを展開している。