太陽や恒星が光や熱を発しているのはこれらの星で核融合反応が起きているからである。今地上で実現しようとしている核融合反応は、水素の仲間である、重水素、トリチウム(三重水素)の2つの原子を融合させて一つのヘリウム原子と1個の中性子に変えるプロセスである。このとき反応前の重水素とトリチウムの重さの合計より、反応後にできたヘリウムと中性子の質量の合計の方が軽くなる。エネルギー(E)は質量(m)と光の速度(c)によって、E=mc2と表されることから、核融合反応ではこの軽くなった質量分のエネルギーが放出されることになる。例えば、重水素、トリチウムからなる燃料1グラムが反応して(わずか300分の1グラム程度軽くなるだけで)石油8トン分のエネルギーが発生する。
(1)豊富な資源:
燃料となる重水素は海中に豊富に存在し、トリチウムは埋蔵量の多いリチウムより生成可能であり、地域的な偏在がない豊富な資源。少量の燃料から膨大なエネルギーが得られる。
(2)固有の安全性:
核的暴走がなく(核融合反応は、地上では反応が自然に始まったり制御できずに暴走するということがなく、また、仮に故障や制御の失敗に対しても自然に反応が止まるという原理的に安全上好ましい特徴を持っている)、核分裂と比べ安全対策が比較的容易。
(3)高い環境保全性:
地球温暖化の原因となる二酸化炭素の発生が少ない。高レベル放射線廃棄物は発生しない。低レベル放射線廃棄物は発生するが、従来技術で処理処分が可能。
ITERとは、当初、国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor)の英語の頭文字をとった略語であったが、政府間交渉においては、(略語ではなく)ITER事業のために仏・カダラッシュに建設される国際熱核融合実験炉を意味する固有名詞として扱われることとなった。
(1)概要
(イ)環境への負荷が少なく人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性実証を目的に、そのための実験炉を建設・運用する国際共同プロジェクト。多国間の国際約束であるイーター機構設立協定により独自の法人格を有する国際機関であるイーター機構が設立され、同機構が国際熱核融合実験炉“イーター”を建設、運転することとなる。建設期間は約10年、運転期間は約20年を予定。
(ロ)2001年11月、日、EU、露、加の4極により、イーター機構設立協定の締結及び、サイト選定等に向けた政府間協議を開始。2003年2月、米国がイーター交渉に再参加すると共に、中国が新規に参加した。その後、韓国(2003年6月)、インド(2005年12月)が新規参加し、カナダが交渉から撤退した(2003年12月)。
(ハ)イーター本体の建設地に関しては、日本(青森県六ヶ所村)と、EU(仏・カダラッシュ)の2カ所の候補地の間で誘致交渉が行われたが、最終的には、2005年6月にモスクワで開催された6極閣僚級会合においてフランスのカダラッシュにイーターを建設することが決定した。(外務報道官談話)。
(2)経緯
1985年11月の米ソ首脳会談(レーガン・ゴルバチョフ)が発端
1988年〜2001年7月 概念設計活動及び工学設計活動を実施(米は1999年に計画から脱退。)
2001年11月〜 政府間協議開始
2003年2月 米、中国が政府間協議に参加
2003年6月 韓国が政府間協議に参加
2003年12月 カナダが交渉から脱退
2003年12月 第一回6極閣僚級会合開催(ワシントン)。イーター建設地に関する合意にいたらず。
2005年6月 第二回6極閣僚級会合(モスクワ)において、フランス・カダラッシュにイーターが建設されることが決定。
2005年11月 池田要駐クロアチア大使(当時)をイーター機構長予定者として選出
2005年12月 インドが政府間協議に参加
2006年11月 ITER機構設立協定、イーター特権免除協定署名。第1回暫定イーター理事会開催(パリ)。
2007年7月 第2回暫定イーター理事会開催(東京)
2007年10月24日 イーター協定発効
2007年11月 第1回イーター理事会開催(仏カダラッシュ)、同理事会において池田要ITER機構長予定者を正式に機構長に任命。
2008年6月 第2回イーター理事会開催(青森)
2008年11月 第3回イーター理事会開催(仏カダラッシュ)
2009年6月 第4回イーター理事会開催(茨城)
(3)スケジュール

2005年6月にイーターサイトが決定された後、イーター機構設立協定の締結交渉が集中的に行われ、2006年11月にパリにおいてイーター機構設立協定及びイーター特権免除協定が署名された。これらは、すべての署名者が、締結に向けた国内手続きを経て、国際原子力機関事務局長に批准書また受諾書等の寄託を行った後、30日後に発効することとなる。
なお、イーター機構設立協定に署名をした7極は、同協定の暫定的適用に関する取極(行政取極)を締結し、同協定の発効に先立ち、イーターの建設に向けた準備作業など、各国国内法の範囲内でイーター事業に関する協力活動を開始している。
我が国は、第166回国会の承認を得て、2007年5月にITER機構設立協定及びITER機構特権免除協定の受諾書の寄託を行った。
2007年9月、全ての参加極が寄託書をIAEAに寄託、10月にイーター設立協定は発効した。11月末の第一回イーター理事会では、池田要元クロアチア大使を初代イーター機構長に任命、その他幹部人事を決定した。