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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成22年3月24日
評価責任者:国別開発協力第三課長 石塚 英樹

1.案件名

1-1.供与国名

 イエメン共和国

1-2.案件名

 「地方給水整備計画」

1-3.目的・事業内容

 本計画は,イエメン5州(サヌア州,アルマハウィット州,ダマール州,イッブ州,タイズ州)において,イエメン側にて既に建設済みの深井戸を水源とした給水施設を整備することにより,対象の19地域の住民の給水環境を改善する。
供与限度額は15億9,400万円であり,揚水機器,送水ポンプ及び送配水管等を供与する。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がイエメン共和国政府により実施される必要がある。

(1)本計画により整備される給水施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)イエメンは,多くの村落が山岳地帯に点在しているが,十分な給水施設がなく,本件対象5州も,安全な水へのアクセス率が49%以下(2008年)と低い地域である。安全な水の供給が困難な地方部では,湧水や溜まった雨水等の不衛生な水の利用による水因性疾患の罹患や,女性や子供の湧水箇所までの水汲み労働負担等が生じており,貧困を助長する一因となっている。

(2)地方給水公社は,各地の地方自治体や水組合等と協力して,地方給水の整備に取り組んでいるが,一人当たり国内総所得(GNI)が950ドル(2008年世界銀行)とアラビア半島諸国中最も低い水準にある同国では,厳しい財政状況等により,自助努力による整備にも限界があることから,我が国に無償資金協力を要請してきたものである。

2-2.効率性

(1)本計画を実施するにあたっては,イエメン政府と十分に調整した上で,住民主体の運営・維持管理が適切に実施されることを目的に,技術支援及び衛生啓蒙活動を行うなど,本件協力の効率的・効果的実施に努める。

(2)本件で供与する給水施設は,イエメン政府が掘削済みの既存深井戸を水源として使用することから,水量,水質等が事前に確認されており,効率的な施設整備が可能である。

2-3.有効性

 本件の実施により,以下のような成果が期待される。

(1)本件給水施設の整備を行うことにより,対象地域の住民が安全で安定した水の供給(1人1日当たり0.02~0.04立方メートル)を受けることができるようになる。

(2)これまで,水汲み労働を主に担当していた女性,子供の拘束時間,過酷な労働が軽減される。

(3)水問題はイエメンの重要な開発課題であり,2006年から2010年までの開発目標を定めた第3次貧困削減開発計画において,地方給水を優先分野の一つとしている。また,水・環境省は2015年までに地方給水率を45%(2007年全国平均)から72%以上へ向上させることを目標とする「国家水セクター戦略・投資プログラム(2008年~2015年)」を策定しており,本件はイエメンの政策に合致するものである。

(4)イエメンは我が国が石油の9割を依存している中東に位置し,年間2,000隻の我が国関連船舶が航行する欧州航路に面していることから,イエメンの安定に資する本件支援は,ひいては我が国のエネルギー安全保障等にも貢献するものである。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)イエメン共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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