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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成22年4月23日
評価責任者:国別開発協力第二課長 小野 日子

1.案件名

1-1.供与国名

 パキスタン・イスラム共和国

1-2.案件名

 「アボタバード市上水道整備計画」

1-3.目的・事業内容

 本計画は,ハイバル・パフトゥーンハー州(旧北西辺境州(NWFP))アボタバード県のアボタバード市及び周辺地区における給水能力不足の解消,給水普及率の向上を図り,対象住民の生活環境を改善することを目的とする。供与限度額は36.44億円であり,表流水取水施設建設(4か所),導・送水管敷設,浄水場建設,井戸建設・ポンプ設置(4か所),既存井戸更新(12か所)等を実施するもの。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がパキスタン政府により実施される必要がある。

(1)本計画により整備された上水道施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)パキスタンにおいては,給水事情の改善を目的として,中期開発計画(2005-2010)及び国家飲料水政策2007を策定し,安全な水の供給率を2004-2005年における人口の65%(都市部85%,地方部55%)から,2010年には人口の76%(都市部95%,地方部65%),2015年には93%までに上昇させることを目標にしている。また,国家飲料水政策には,2020年までに全人口に安全な飲料水を安定して供給し,水系伝染病による疾病や死亡率を減少させることが挙げられている。

(2)ハイバル・パフトゥーンハー州アボタバード県のアボタバード市及び周辺地域における水道は,長年地下水のみに依存してきたが,近年の市域拡大と人口増加及び井戸の揚水量低下により,給水能力の増強が急務となっている。現在の給水普及率は57%であり,加えて1日の給水時間が1時間未満である地域もあり,安定的な給水が行われていない。さらに,一部の井戸では過剰揚水による地下水の不足やポンプの老朽化が著しく,今後長期的な使用が困難という課題も抱えている。

(3)そのため,アボタバード県においては,地下水のみでなく,河川水による上水道整備の計画を策定したが,パキスタン政府では技術的,財政的に本事業の実施が困難なため,我が国に無償資金協力の要請があった。本件はアフガニスタンと国境を接するハイバル・パフトゥーンハー州における民生安定の事業としても,その実施の意義は大きい。

2-2.効率性

 本件を実施するに当たり,2015年の計画給水量に対して表流水からの取水で賄えない不足量を地下水で補う計画とし,また,地下水からの取水についても,既存の井戸を可能な限り活用することで施設規模を最小とし,コスト縮減を図った。

2-3.有効性

(1)本件の実施により,以下のような成果が期待される。

  • 現在の給水人口が113,900人であるのに対して,安定的で安全な水を216,400人に供給することが可能になり(102,500人増),給水普及率が2009年の57%から2015年には92%に改善することが可能となる。
  • 井戸ポンプの故障等により現状の給水時間が数時間未満であったものが,24時間給水が可能となる。
  • 安全で充分な飲料水を供給することで,公衆衛生環境の改善に寄与し,対象地域の社会・経済活動の活性化が期待できる。

(2)また,パキスタンの国家飲料水政策では,給水普及目標を2015年までに全国民の93%にすることを目標としており,本件の実施は,同国の開発計画に合致する。我が国の対パキスタン国別援助計画においても,「安全な飲料水の確保と衛生改善」を開発課題として支援を行う方針とされており,我が国の援助方針とも合致する。

(3)本計画の実施により,日本とパキスタンの二国間関係強化への効果が期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)パキスタン政府からの要請書

(2)JICA基本設計調査報告書

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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