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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成22年4月23日
評価責任者:国別開発協力第三課長 石塚 英樹

1.案件名

(1)供与国名

 ケニア共和国

(2)案件名

 「エンブ市及び周辺地域給水システム改善計画」

(3)目的・事業内容

 ケニア中央部のエンブ市における水不足と不安定な給水状態を解消するために,浄水場,送水管,配水池,給配水管の建設・敷設を行うとともに,維持管理用機材,水質試験機材等の供与等を行い,住民に対して安全な飲料水を安定的に供給する事業であり,供与限度額は25億6,000万円である。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がケニア政府により実施される必要がある。

 ア.本計画により供与された機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
 イ.施設の維持管理等,活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

(1)必要性

ア. ケニア政府は,2008年に長期開発計画である「Vision 2030」を策定し,生活水準の向上,国際的な競争力及び経済成長を2030年までに達成することを目標としている。同計画では,全国的に不足する水需要を改善するため上下水道の整備を優先課題とし,そのための諸事業の実施が提示されている。また,1999年には「国家水政策」が発表され,その具体化のために2002年に施行された「水法」に基づき給水分野の行政改革を進めている。さらに,2007年には,飲用及び生産活動に要する水の供給を通じた貧困撲滅を目標とした「国家水資源管理戦略(2007-2009)」が策定され,その基本的な目的の一つとして,水資源の公平な配分及び持続可能かつ効率的な水利用が示されている。

イ. 本件対象のエンブ市は,首都ナイロビに近いケニア国東部州の中心都市であり,全国の浄水施設改善計画においても重点都市とされている。他方,既存の浄水施設の能力不足や配水管網の未整備,老朽化等により,給水区域の人口約13.9万人(2008年)に対し,現在の給水人口は,約3.7万人(26%)にとどまっている。このため,特に乾季には生活用水を得るために水汲み等に数時間を費やす家庭も多く,また,不衛生な小川や雨天後の水たまり等に頼っており,水因性疾患の流行の一因となっているなど,水系伝染病感染の危険性や水汲み労働に係る負担等,生活環境の改善が急務となっている。

(2)効率性

 本計画の施設の運営・維持管理にあたっては,ケニア政府と十分に調整の上,人材育成などの組織強化への支援を行い,本件協力の効率性向上を図っていく。

(3)有効性

ア. 本件の実施により,次のような成果が期待される。

(ア)エンブ市上水道の浄水施設能力が現在の 10,000立方メートル/日から21,000立方メートル/日に倍増される

(イ)給水量の増加に伴い遠隔地への給水が可能となり新たに約168,000人に給水が可能となる(対人口比: 41%→87%)。

(ウ)安全で衛生的な飲料水が安定的に供給されることにより,水因性疾患(下痢,コレラ等)発生件数の減少に寄与し,女性や児童の大きな負担となっている水運搬労働が軽減される。

イ. ケニアは,ソマリア,スーダンなどの和平プロセスに意欲的であり,地域内の交易拠点でもあることから,同国への支援は,アフリカにおける平和構築に資するとともに域内経済への波及効果も大きい。
 ケニア政府にとって,エンブ市及び周辺地域の給水施設の整備は緊急課題であり,TICAD IVの支援分野の一つである「アフリカの水開発」分野の支援にも該当することから,我が国として本件支援を実施する意義は大きい。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)ケニア共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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