評価年月日 平成22年4月26日
評価責任者:国別開発協力第一課長 清水 茂
1.案件名1-1.供与国名インドネシア共和国 1-2.案件名「マラッカ海峡及びシンガポール海峡船舶航行安全システム整備計画(2/2期)」 1-3.目的・事業内容(1)本計画は,国際的な海運の大動脈であるマラッカ海峡において,同海峡を横断して航行する小型船舶が海難事故の要因となることを防止し,不審な船を監視するための船舶航行安全システム(VTSシステム)の構築を通じて,同海峡を航行する船舶の安全確保を図るものである。 (2)シンガポール海峡を対象とする第一次事業は,平成20年11月7日に交換公文の署名が行われた。本計画(第二次)では,マラッカ海峡沿岸におけるVTSセンサー局,サブ・センター局,データ伝送用の中継局等の関連施設の設置等を行い,供与限度額は14億3,200万円である。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がインドネシア共和国政府により実施される必要がある。 (1)インドネシア運輸省海運総局航行援助局が円滑な事業実施体制をとること。 (2)運輸省海運総局航行援助局の監督の下,ドマイ地方航路標識事務所が施設の維持管理及び運営について,適切な管理体制をとること。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)マラッカ海峡は国際的な海運の大動脈であるが,狭隘な水路が多い上,浅瀬,岩礁,沈船などが多い一方,大型船舶の航行密度が高いため,海難事故の危険性が高い。 (2)同海峡では沿岸国間での往来も盛んであり,旅客フェリー等海峡を横断して航行する小型船舶が多いが,これら小型船舶が海難事故の要因となることを防止し,同時に不法行為を抑止するため,船舶の動静を監視するシステムの導入が不可欠である。 (3)同海峡の安全確保は同国のみならず,国際的な課題となっている一方,インドネシア政府のみではVTSの構築が困難であるため,我が国に無償資金協力の要請があったものである。 (4)なお,同海峡は,我が国の各種船舶も多数通行しており,本案件は我が国の海上交通の安全確保にも意義が大きい。 2-2.効率性(1)インドネシア政府とも協議の上,同国政府の予算による持続的な維持管理を可能とするため,より低コストのデータ伝送が可能なシステムとする等,設計において配慮した。 (2)建築施設は典型的な熱帯気候条件下にあり,海に近い場所に建設されるため,強い日差し,激しいスコールや強風を遮ると共に,塩害対策も考慮した設計とした。建築基準は,インドネシアの設計基準を基本とした。 (3)我が国は,対インドネシア国別援助計画において,「民間主導の持続的な成長」,「民主的で公正な社会の構築」,「平和と安定」の3分野を重点分野と定めており,本計画は,重点分野「平和と安定」の下の開発課題「治安確保」に合致する。また,マラッカ海峡への船舶航行安全システム(VTS)設置は,インドネシア運輸省が策定した運輸部門の開発戦略である「運輸省戦略計画2005年~2009年」の下の開発計画の1つとされている。 2-3.有効性(1)年間約90,000隻(我が国関係の船舶は約14,000隻)が航行するマラッカ海峡沿岸三カ国の中で,唯一VTSが整備されていなかったインドネシア沿岸域に同システムが導入・整備され,船舶の監視活動が可能となる。 (2)事故船舶の位置,状況等に関する迅速な情報把握,提供及び関係機関との連携体制が構築され,不法活動に対するインドネシアの対応力,法令執行能力が向上し,不法船,不法活動が抑止される。 (3)本案件の実施により,ASEAN最大の経済規模を有するASEANの中核国であり,石油・天然ガスという我が国のエネルギーの主要供給国の1つであるとともに,東南アジア地域の我が国の政治・経済面での重要なパートナーとであるインドネシアと我が国との二国間関係強化への効果が期待される。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)インドネシア共和国政府からの要請書 (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能) (3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |