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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成22年5月17日
評価責任者:国別開発協力第一課長 清水 茂夫

1.案件名

1-1.供与国名

 カンボジア王国

1-2.案件名

 「ネアックルン橋梁建設計画」

1-3.目的・事業内容

 タイ(バンコク),カンボジア(プノンペン),ベトナム(ホーチミン)を結ぶ,南部経済回廊の一部である国道一号線の,メコン河渡河地点であるネアックルンに,橋梁(主橋梁640メートル,取付け橋1,575メートル,取付け道路3,245メートル)を建設するもので,供与限度額は119.4億円である。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項が,カンボジア王国政府により実施される必要がある。

(1)公正な市場価格調査に基づく被影響住民への適正な補償費用等の確定。
(2)確実な補償費用等支払いに基づく,円滑な用地取得,住民移転,家屋・資産等の補償。
(3)不発弾調査・処理の実施。
(4)建設工事に必要な電力・水の確保。
(5)被影響住民に対する継続モニタリングの実施。
(6)建設後の適切かつ継続的な維持管理。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)カンボジア国家戦略開発計画では,2006年から2010年の間に約2,000キロメートルの主要幹線道路及び幹線道路の整備を行うことを目標に掲げている。特に国道一号線は,アジア・ハイウェイの一部として,タイ(バンコク),カンボジア(プノンペン),ベトナム(ホーチミン)を結ぶ国際幹線道路の指定を受けており,カンボジア国内の主要幹線道路としてだけでなく,インドシナ半島南部地域にとっても重要な路線と位置づけられている。

(2)国道一号線のメコン河渡河地点にあるネアックルンでは,現在フェリーが運行しているが,交通需要の増加により2008年にはフェリー3隻体制での輸送の限界に達しており,フェリー待ち時間は繁忙期には7時間程度となっている。

(3)このような状況のもと,国道一号線のボトルネックを解消し,より安全で円滑な道路交通を確保することを目的に,ネアックルン地点に橋梁を建設するための支援を要請してきたものである。

(4)我が国は,持続的な経済成長と安定した社会の実現をカンボジア支援の重点分野としており,経済基礎インフラの整備はその中心的分野の一つである。本事業により「南部経済回廊」を通じる輸出入・交通・交流等が円滑となり,カンボジア国内のみならず,メコン地域全体の経済発展に寄与する。

(5)2009年11月の第1回日本・メコン地域諸国首脳会議においても,本件橋梁の重要性について日メコンの首脳間で認識が共有されている。

2-2.効率性

(1)メコン河渡河時間が,現行のフェリー利用による渡河時間(閑散期約1時間~繁忙期7時間程度:待ち時間を含む)と比較して5分程度に短縮される。また,24時間の渡河通行が可能になる。

(2)現状4,000~5,000台/日の交通量が,2030年には約17,000台/日まで増加すると想定され,本橋梁の供用開始後30年間の車両走行費用や旅行時間費用の節約など,約3,300億円の便益が見込まれる。

2-3.有効性

(1)本橋梁の開通により,「南部経済回廊」を通じる輸出入・交通・交流等が円滑になり,カンボジア国民全体(1,340万人,2008年)に裨益することに加え,メコン地域全体の経済発展,ASEAN域内の格差是正,ひいてはアジアの域内協力の推進及び東アジア共同体の構築に寄与する。

(2)本件は,フン・セン首相を筆頭にハイレベルからの期待が非常に大きく,メコン地域全体の経済発展にも資する案件であることから,その実施意義は大きい。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)カンボジア王国政府からの要請書

(2)JICAの準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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