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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成22年1月29日
評価責任者:国別開発協力第一課長 清水 茂夫

1.案件名

1-1.供与国名

 フィリピン共和国

1-2.案件名

 「オーロラ記念病院改善計画」

1-3.目的・事業内容

 フィリピン共和国オーロラ州において、病院施設の建設及び医療機材の整備により州立病院であるオーロラ記念病院の機能を強化、改善する。本事業により、オーロラ州の保健医療サービスの中核病院が改善され、同州の全住民約20万人の保健・衛生環境が向上する。供与限度額は10.89億円。フィリピンは民主主義、市場経済等の価値を我が国と共有する、東南アジアで地政学的にも重要な国であり、本件協力を実施することは同国との二国間関係のさらなる発展に資する。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がフィリピン共和国政府により実施される必要がある。

 (イ)本計画により建設する病院施設及び整備する医療機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

 (ロ)建設用地、仮設用地の確保や障害となる構造物の移設等に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)フィリピン政府は、総合的な保健医療水準の向上のため、地域保健システム強化を中心に改革を進めており、様々な取組を行っている。他方、首都マニラの所在するルソン島において、保健サービスの地域間格差は依然として大きく、マニラ東方のオーロラ州は病院の一床あたりの人口が2,800人(全国平均は1,000人)、医師一人あたりの人口が11,800人(同1,100人)であるなど、他の地域と比較して著しく状況が悪い。

(2)オーロラ州内には、現在手術や集中治療等を実施できる病院が存在せず、手術や集中治療を必要とする場合は、隣接する州の病院まで4時間かけて搬送しなければならないが、台風の被害を受けた際など、災害時には隣接州までの道が通行不能になることもあるため、オーロラ州における保健医療の能力強化は緊急の課題となっている。

(3)フィリピン政府も、かかる状況を重視し、比国においてオーロラ州の中核病院であるオーロラ記念病院の整備を優先事業として医師等の配置や運営強化を図っている。他方、同国の厳しい財政状況から、病院施設の改修、拡張、機材の整備は困難であり、我が国に無償資金協力を要請したものである。

2-2.効率性

 病院施設については、オーロラ州のトップレファラル(中核)病院であることから、災害時には復興の拠点となることを考慮して建物は堅固な構造の仕様とする一方、比側での運営・維持管理の継続性についても考慮して、現地仕様・現地工法を基本とした適切なグレード、規模のものとするとともに、建設資材についても現地調達可能なものを最大限使用することとしている。
 また、機材整備についても、本計画により新設される病院施設の機能、レベル及び活動規模を勘案し、実施後の維持・運営に問題の無い適切な内容にするとともに、既存機材を有効利用し、新規整備機材を必要最小限の数量にするなど、効率の良い計画となっている。

2-3.有効性

(1)オーロラ記念病院の診療機能の向上と規模の拡大により、手術や集中治療等が実施可能となるほか、診療可能な疾病の範囲が拡がり、受入可能な患者数が増加する(入院患者で年間約7,700人から13,000人)。

(2)州外へ搬送せずに診療可能な患者数が年間約800名増加し、その身体的・経済的な負担が軽減される。

(3)施設の改善(救急患者の観察室の設置、病室のプライバシーの確保、院内感染防止設備の設置など)により、診療サービスの質が向上し、医療従事者の負担も軽減される。

(4)オーロラ州の保健医療サービスの中核施設の改善により、同州の全住民約20万人の保健・衛生環境が向上するとともに、MDGs(ミレニアム開発目標)の実現にも資する。

(5)フィリピンは民主主義や市場経済等の価値を我が国と共有する、東南アジアで地政学的にも重要な国であり、本件協力を実施することは同国との二国間関係のさらなる発展に資する。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)フィリピン共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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