評価年月日 平成21年5月21日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲
1.案件名1-1.供与国名フィリピン共和国 1-2.案件名「カミギン島防災復旧計画」 1-3.目的・事業内容フィリピン共和国南部のミンダナオ島とビサヤ諸島に挟まれたカミギン島において、大規模な土石流の危険性がある河川流域の砂防施設(2カ所)と台風により損傷した橋梁(1カ所)の復旧を行う。本事業により住民の防災能力を高めるとともに、安全で円滑な交通を確保し、地域の活性化と貧困低減を図る。供与限度額は10.13億円。フィリピンは民主主義、市場経済等の価値を我が国と共有する、東南アジアで中核的な役割を果たしている国であり、同国との友好関係は重要。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がフィリピン共和国政府により実施される必要がある。 (イ)本計画により整備された砂防ダム及び橋梁の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)フィリピンにおいては、毎年台風・暴風雨による洪水被害を受け、被害額は国家予算の2%に相当する76億ペソに達しており、フィリピン政府は中期国家開発計画(2004-2010)の重点項目の中に、自然災害に対する安全度の向上による災害弱者対策を掲げている。 (2)本件の対象地であるカミギン島は、観光開発の高い可能性を有しているほか、ミンダナオ島を含む諸島経済とマニラ首都圏を連結する、新たな物流の拠点として大きな期待が寄せられている。同島においては2001年11月の台風ナナンにより、死者、行方不明者250人、被害総額約5億円に上る大規模な土石流が発生し、災害発生後、我が国は災害に対する基本計画の策定支援等、防災体制の強化に係る支援を行ってきた。しかしながら災害防止施設の整備等のハード面の対策について、フィリピン政府では対応しきれず、河川に土石堆積物が残留していることから今後の豪雨により同様の災害が発生する危険性が生じている。また、被災した橋梁は大きく変形する損傷を受けたままの状況で使用し続けており、安全かつ円滑な交通が確保されていない状況にある。 2-2.効率性(1)本計画に必要な建設資材については可能な限り同島内での調達を図るように、資材の用途別選別、強度等の能力の検討を行った。 (2)本計画の対象範囲は、防災・安全で円滑な交通流の確保を図るための最小限の施設整備とした。 2-3.有効性(1)本件整備橋梁は、台風ナナンにより2001年に損傷を受け、現行は安全性の問題から通行が制限され、走行は5~10キロメートル/時の徐行に限られており、橋長約40メートルと比較的短い橋でありながら、カミギン島の幹線道路である周遊道路全体の円滑な通行を阻害している。本件計画により、同橋梁を含めた周遊道路の通行速度が平均約50キロメートル/時に改善され、災害時の緊急交通、物資の輸送能力も向上する。また、砂防ダムの建設により、土砂災害による人命、資産、国道、橋梁等の被害が軽減される。 (2)カミギン島における技術協力等防災対策と防災施設の整備(本計画)の組み合わせにより総合防災モデルとしてフィリピン国内の他の地域での応用も可能となる。 (3)カミギン島(人口約8万人)における物資の安定輸送による物価の安定、観光産業の発展が期待できる。 (4)フィリピンは民主主義や市場経済等の価値を我が国と共有する東南アジアで中核的な役割を果たしている国である。フィリピン側からの強い要請を受け、本件協力を実施することは同国との関係強化を図る上で効果的。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)JICAの基本設計調査報告書 (2)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |